2010年 02月 22日
イコライザー |
イコライザーといっても、目的によってまったく違う意味になります。本来は均一化するといういみです。部屋の特性を均一化するときのように用います。この頃では、録音時や演奏会の時に有る特定の周波数帯を上げたり下げたりして音の色づけやハウリング防止に使われる意味が普及しています。
私たちの時代では、フォノイコが一般的ですね。RIAAカーブとかDECCAカーブがそうです。レコード盤に音を刻むときに振幅の大きな低音部は一定の大きさで、減衰がおこる微妙な高音部は増強して一定の大きさにその他の部分は直線的に結んだ線がイコライザーカーブです。小さくした低音部はイコライザーアンプで上昇して、反対に大きく刻まれた高音部は減衰して再現します。それにより沢山の情報が溝に均一に刻まれ、長い時間の再生が出来るようになりました。LPではピッチも細かくしましたから、78回転のSPに比べて大幅に長時間収録することが出来たのです。
録音技師は大きな振幅が来るときにピッチ間隔を開け、小さな時はピッチを詰めるかに命をかけて仕事をしていました。加えて、ただカーブをフラットにするのではなく、レコード盤の材質の特性を活かした音づくりをしていたのです。勢いの良い音楽はより元気に、優しい曲はムーディーにイコライザーを活かして音を刻んだのです。それらの技術の集計がレコードブランドを作り上げていきました。そこからデッカサウンド・フィリップスサウンドのように、一聴しただけでブランドが解るようになったのです。
旧いレコードファン・モノーラルのレコード収集家の中にはイコライザーカーブの微妙な違いを楽しまれている方もお見受けします。しかし、そのカーブは様々な組み合わせがあり一筋縄ではいかないようです。そしてアメリカのスタンダードであるRIAAに統一される前に有ったColumbia カーブやRCAカーブも、実際にはRIAA一本でも再現できると思います。低音に余裕が無い装置だとクリチカルに出やすいのですが、装置の再現性、許容性が上がってくると、さほどイコライザーカーブを気にしなくとも良くなってきます。レコード再生ではイコライザーばかりではなく、物理的な調整をきっちりとやらないとそもそも音が拾えないからです。その意味で、イコライザーだけに数百万円もするのはやりすぎだと思います。もっとも、その点ではケーブル一本に百万単位で掛けるのも同じく常軌を逸した行為でしょう。細部にこだわりすぎると全体像を失う例ですね。
よく、CDは20KHZまでしか再現していないから音が悪いのだという声を聴きました。しかし、CDのレコードやテープとの音の差は、決して周波数帯域だけで決まっているわけではありません。PCM変換やクロックの差に、今までにない違和感を人々が感じているからでしょう。周波数帯域だけの問題ではないのです。フォノイコライザーが要求している40dbの増幅はアンプでは優しいことではありません。特に最低域の再現性と最高音20KHZ以上の領域では、アンプの方が限界を超え、歪みや特性を悪化しているのが現実です。理論だけでアナログは良いわけではありませんし、オリジナルレコードだから全て音が良いわけでも無論無いわけです。先人達の試行錯誤の上に経験値として成り立っているのは、何もオーディオに限ったわけではないのです。前述のレコードのカッティング技術に見られた技術的な修練はどこの分野でも有るからです。
しかし、テープのイコライザーは少し意味が違ってきます。録音時にはテープそのものが持つ磁気特性に合わせて決められたバイアス・弱音時のレベル調整が必要です。厳密にはテープ一つ一つ違っています。そして基準テープの音に特性を合わせて、調整を厳密に取ることがテープの基本だからです。基準テープにヘッドの調整もレコードのカートリッジの調整と同じように行われなければ正しい入力が得られません。そしてテープ特有の周波数が上がると出力も変化するテープの特性を合わせるためにテープのイコライザーカーブが有るのです。現在では、アメリカのNABとヨーロッパ規格のCCIR/IECがあります。NABはよき時代のアメリカンサウンドで、CCIRは研ぎ澄まされたヨーロッパの冬の音というイメージがあります。テープの特性に合わせてありますから、スピードによって面積が変わるので19センチと38センチでは補償量も変わってきますね。私自身は、38センチはCCIRで19センチはNABの音が好きです。
もっとも聴かれるスピーカーによってもそのカーブは変わってきます。Quadの平面SPではCCIRの方がより生きるようです。私の所では、テープは主にジャーマンフィジックスのユニコーンで鳴らされています。シングルSP特有の素直な特性がテープの特徴と合ってモニター的にも的確な判断が出来るからです。また、再生する帯域もレコードやテープのアナログサウンドとマッチしています。
アナログ始めました。という若い人たちがアナログの泥沼に入る前に現在進行形のデジタル技術にどれほど浸り、苦労していたかが問われます。アナログにすれば即、いい音など有るわけがないからです。簡単にレコードの方が音が良いという前に、数十年間苦労してきた先人達と同じだけの知識を持っているかを問うてください。何十年も迷走した結果見えてくるものが有るからです。オーディオは決して格好ではありません。また、チューニングの神様呼ばわりされるほどの事でもないからです。誰もが基本に忠実にやれば、再現性の有るのがオーディオです。再現性の高度のちがいが、高さではなくオーディオの熱さに出てくるようです。40年以上オーディオを研究してきた人と、昨日今日始めた人とでは同じ言葉を話していても意味が違ってきます。40年以上前に等に通り過ぎた世界を金科玉条のように言い続けるのもおかしいし、まったく尊敬も払わないのももっとおかしな現象です。イコライザーは低い位置に均等化するのではなく、より高い位置を目指す支えになって欲しいと願っているのは私だけではないと思います。
私たちの時代では、フォノイコが一般的ですね。RIAAカーブとかDECCAカーブがそうです。レコード盤に音を刻むときに振幅の大きな低音部は一定の大きさで、減衰がおこる微妙な高音部は増強して一定の大きさにその他の部分は直線的に結んだ線がイコライザーカーブです。小さくした低音部はイコライザーアンプで上昇して、反対に大きく刻まれた高音部は減衰して再現します。それにより沢山の情報が溝に均一に刻まれ、長い時間の再生が出来るようになりました。LPではピッチも細かくしましたから、78回転のSPに比べて大幅に長時間収録することが出来たのです。
録音技師は大きな振幅が来るときにピッチ間隔を開け、小さな時はピッチを詰めるかに命をかけて仕事をしていました。加えて、ただカーブをフラットにするのではなく、レコード盤の材質の特性を活かした音づくりをしていたのです。勢いの良い音楽はより元気に、優しい曲はムーディーにイコライザーを活かして音を刻んだのです。それらの技術の集計がレコードブランドを作り上げていきました。そこからデッカサウンド・フィリップスサウンドのように、一聴しただけでブランドが解るようになったのです。
旧いレコードファン・モノーラルのレコード収集家の中にはイコライザーカーブの微妙な違いを楽しまれている方もお見受けします。しかし、そのカーブは様々な組み合わせがあり一筋縄ではいかないようです。そしてアメリカのスタンダードであるRIAAに統一される前に有ったColumbia カーブやRCAカーブも、実際にはRIAA一本でも再現できると思います。低音に余裕が無い装置だとクリチカルに出やすいのですが、装置の再現性、許容性が上がってくると、さほどイコライザーカーブを気にしなくとも良くなってきます。レコード再生ではイコライザーばかりではなく、物理的な調整をきっちりとやらないとそもそも音が拾えないからです。その意味で、イコライザーだけに数百万円もするのはやりすぎだと思います。もっとも、その点ではケーブル一本に百万単位で掛けるのも同じく常軌を逸した行為でしょう。細部にこだわりすぎると全体像を失う例ですね。
よく、CDは20KHZまでしか再現していないから音が悪いのだという声を聴きました。しかし、CDのレコードやテープとの音の差は、決して周波数帯域だけで決まっているわけではありません。PCM変換やクロックの差に、今までにない違和感を人々が感じているからでしょう。周波数帯域だけの問題ではないのです。フォノイコライザーが要求している40dbの増幅はアンプでは優しいことではありません。特に最低域の再現性と最高音20KHZ以上の領域では、アンプの方が限界を超え、歪みや特性を悪化しているのが現実です。理論だけでアナログは良いわけではありませんし、オリジナルレコードだから全て音が良いわけでも無論無いわけです。先人達の試行錯誤の上に経験値として成り立っているのは、何もオーディオに限ったわけではないのです。前述のレコードのカッティング技術に見られた技術的な修練はどこの分野でも有るからです。
しかし、テープのイコライザーは少し意味が違ってきます。録音時にはテープそのものが持つ磁気特性に合わせて決められたバイアス・弱音時のレベル調整が必要です。厳密にはテープ一つ一つ違っています。そして基準テープの音に特性を合わせて、調整を厳密に取ることがテープの基本だからです。基準テープにヘッドの調整もレコードのカートリッジの調整と同じように行われなければ正しい入力が得られません。そしてテープ特有の周波数が上がると出力も変化するテープの特性を合わせるためにテープのイコライザーカーブが有るのです。現在では、アメリカのNABとヨーロッパ規格のCCIR/IECがあります。NABはよき時代のアメリカンサウンドで、CCIRは研ぎ澄まされたヨーロッパの冬の音というイメージがあります。テープの特性に合わせてありますから、スピードによって面積が変わるので19センチと38センチでは補償量も変わってきますね。私自身は、38センチはCCIRで19センチはNABの音が好きです。
もっとも聴かれるスピーカーによってもそのカーブは変わってきます。Quadの平面SPではCCIRの方がより生きるようです。私の所では、テープは主にジャーマンフィジックスのユニコーンで鳴らされています。シングルSP特有の素直な特性がテープの特徴と合ってモニター的にも的確な判断が出来るからです。また、再生する帯域もレコードやテープのアナログサウンドとマッチしています。
アナログ始めました。という若い人たちがアナログの泥沼に入る前に現在進行形のデジタル技術にどれほど浸り、苦労していたかが問われます。アナログにすれば即、いい音など有るわけがないからです。簡単にレコードの方が音が良いという前に、数十年間苦労してきた先人達と同じだけの知識を持っているかを問うてください。何十年も迷走した結果見えてくるものが有るからです。オーディオは決して格好ではありません。また、チューニングの神様呼ばわりされるほどの事でもないからです。誰もが基本に忠実にやれば、再現性の有るのがオーディオです。再現性の高度のちがいが、高さではなくオーディオの熱さに出てくるようです。40年以上オーディオを研究してきた人と、昨日今日始めた人とでは同じ言葉を話していても意味が違ってきます。40年以上前に等に通り過ぎた世界を金科玉条のように言い続けるのもおかしいし、まったく尊敬も払わないのももっとおかしな現象です。イコライザーは低い位置に均等化するのではなく、より高い位置を目指す支えになって欲しいと願っているのは私だけではないと思います。
by TANNOY-GRF
| 2010-02-22 05:55
| オーディオ雑感
|
Comments(6)
Commented
by
(Y)
at 2010-02-23 00:15
x
理屈はさりとて、イコライザーカーブとレコードがマッチングした時の音の躍動感を知ってしまうと、やはりイコライザーの存在意義を感じずにいられません。ただし、本来の音楽がかく鳴るべし、という物差しと言うか指標が聞く側に無いと、迷い道くねくねです。誰にもお勧めは出来ませんが、MM型カートリッジでイコライザーカーブをいじる楽しさは、アナログならではと言って良いでしょうね。
Commented
by
SNOOPY
at 2010-02-23 12:47
x
35年来使ってるコントロールアンプ、EQもへたり気味なので思い切って
フルレストア。筐体と電源トランスぐらいが古い部品で他は新しく作り直しました。RIAAカーブも元にもどりご機嫌な毎日です。やはりアナログって楽しいですね、いじり代が多くて。デジタルで録ったものもアナログミックスしテープで楽しんでいます。
フルレストア。筐体と電源トランスぐらいが古い部品で他は新しく作り直しました。RIAAカーブも元にもどりご機嫌な毎日です。やはりアナログって楽しいですね、いじり代が多くて。デジタルで録ったものもアナログミックスしテープで楽しんでいます。
Commented
by
(Y)
at 2010-02-24 17:37
x
SNOOPY様、はじめまして。
僕もときどき愛聴盤のCDを2/38で録音して聴いています。テープは大量に消費しますが、テープ独特のコンターと言うか、アナログ・サウンドにハマると戻れませんね。
僕もときどき愛聴盤のCDを2/38で録音して聴いています。テープは大量に消費しますが、テープ独特のコンターと言うか、アナログ・サウンドにハマると戻れませんね。
Commented
by
SNOOPY
at 2010-02-24 17:45
x
(Y)様こちらこそ始めましてです。
昨日もピアノトリオのデジタル録音をテープに落として遊んでました。
リールが回ってるのって、なにかそそられますね。子供さんなら絶対に
手を出すでしょうね。本能かな。
昨日もピアノトリオのデジタル録音をテープに落として遊んでました。
リールが回ってるのって、なにかそそられますね。子供さんなら絶対に
手を出すでしょうね。本能かな。
Commented
by
TANNOY-GRF at 2010-02-25 14:22
SNOOPYさんは、神戸にお住まいの方でSTUDERのA80とDENONの DH610Sをお使いのかたですか?
テープ好きの方々と交流を深めております。一度 左記のメールアドレスまでご連絡いただけますでしょうか?
またお仲間の方々をご紹介いただければ嬉しいです。
テープ好きの方々と交流を深めております。一度 左記のメールアドレスまでご連絡いただけますでしょうか?
またお仲間の方々をご紹介いただければ嬉しいです。
Commented
by
SNOOPY
at 2010-02-25 23:25
x
そうです、そのSNOOPYです。メールって手がありましたね。
早速送信いたしました。
早速送信いたしました。