2011年 12月 09日
コンサートホールの再生 |
コンサートホールのお話しをしてきましたが、まだまだ訪れたいホールは沢山あります。現在は、インターネットで、ほとんどの予約が完了できますから、NEXTNEXTさんの様に、半年から一年前に、しっかりと計画を立てて、実行に移せれば、長年の夢は簡単に実現するのです。私の様に仕事のついでに何とかと考えていたのでは、いつまで経っても実行できませんね。
それでも、はじめて海外に行ってから35年間もの間には、様々なホールを訪れることが出来ました。レコードだけ聴いていたのでは、実際に鳴っている本拠地のサウンドとの差は想像も付かないのです。私の場合は、やはりウィーンの体験と、ロンドン交響楽団の本拠地、バービカンでの響きの差には驚かされました。レコードでのロンドン交響楽団は、DECCA録音の所為でしょうが、鮮鋭な響きのするオーケストラだと思っていましたが、ドライなロイヤルフェスティバルホールとはまったく違い、木の香りがするようなバービカンホールでは、とてもレコード録音からは想像が付かない柔らかな響きがするのです。
何時もお話をしていますが、レコード録音と実際の音のイメージが一番近いのが、アムステルダムのコンセルトヘボーでの響きですね。特に後方の席の音は、アナログレコードがうまくかかった時のPhilips録音その物です。Philips が録音モニターに使っているQuad ESL63 proの音は、会場と同じ音がします。そして、CDの時代になっても、音の差が一番小さいレーベルだと思います。
この差は、やはり録音の仕方にあると思います。会場のアンビアンスを活かして録音しているPhilipsと、レコードでの音の再構築を目指していた、DECCA録音との差だと思います。私の家でも、DECCA録音は、いろいろな音の加工が見えてきて、音量のバランス的に不自然なところも、時として感じることがあります。スポットライトが当たったように、その楽器が急に大きくなるような事があるからです。それは、やはり情報量とダイナミックレンジに制限があった、アナログレコード用に収録されていたからだと思います。
レコードの再現するソニックステージとCDの時代にマスターテープから変換された音を聞き比べると、一番大きな差は、ダイナミックレンジの拡大です。60年代の録音には、マスターテープと制作工程で重ねられたダビングによるテープヒスが聞こえます。それを単純にフィルターを掛けた場合、一番肝心な音の鮮度まで奪っているようにも感じます。高域をカットすると、一番影響を受けるのは、低音楽器の微妙な動きです。柔らかなコントラバスやチェロ、ヴィオラの動きが、一辺に見えなくなってきます。
オーケストラの響きを支えているのが、ハーモニーを支える、ヴィオラや木管楽器では中段にいる、クラリネットやファゴットの動きです。フルート、オーボエは常に主役です。金管楽器では、やはりホルンの響きが重要ですね。そして、オーケストラの再生に欠かせないのが、バストロンボーンやチューバの再現性です。この部分が充分に再現できていれば、最大の音量を出す、大太鼓もしっかりと出てくることだと思います。
それらの指向性の少ない音の再生が、コンサートホールの音の再現には欠かせない要素だと思います。その意味でも左右のSPの微妙な位置調整が、その貴重な位置情報を再現するのに重要な役割を果たしています。また、主旋律を弾くことの多い第二ヴァイオリンの再生も交響曲の再生には欠かせません。私が、何時も説明に使っている、第二ヴァイオリンが第一バイオリンと同じ、左側に配置されて、コントラバスが右側後方に来る、自称「雲竜型」の配置と、第二ヴァイオリンが右側に来て、チェロとヴィオラがが中央部分、コントラバスが左後方に配置される、左右のバランスが良い、「不知火型」のオーケストラでは、特に右側の再生装置の位置や質が大事になってきます。旋律を奏でているのは、第二ヴァイオリンであることも多いのです。その響きが、左右のバランスがとれて美しい「不知火型」の様な対向配置のオーケストラ、それを指示する指揮者が私は好きです。
アナログレコーでは、内側に進んでいく、ターンテーブルとアームのインサイドフォースによって、左側の音が強くなる傾向にありました。インサイドフォースの力を無視するほどの針圧を掛けていた時代のカートリッジは別ですが、正しくインサイドフォースのバランスを取ると、右側の音が出てきて、コンサートホールでもオーケストラの響きに近づきました。しかし、レコードの構造上、どうしても内周部では音の歪み、ダイナミックレンジの減少が気になっていました。その問題を根本的に解決していたのが、CDの出現前はミュージックテープだったのです。
いまだに、CDよりアナログレコードの方が暖かい音がするとか、迫力有る音がすると言われる方が多いのは、私には驚きです。私達の年代は、ステレオ再生にはテープがありました。その音の本質的な差を経験していると、CD持つ優位性を理解されているはずです。分解能の方を重要視される方は、CDのいわゆるもやもやした感じになじめず、高価なクロックを導入したり、より明快な音がする、アップサンプリングのいわゆるハイレゾの音を求められるようですが、音のバランス、位相の再現性を重要視する場合は、元の44.1/16bitの方が、腰の据わった音がして好ましく感じます。
私がユニコーン用に使用している、工藤さんのCD34改のアナログ的な音は、市販の機器ではCD12ぐらいだと思います。そのCD12を使われている方々も、結局アナログレコードがよいと言われる心情は理解はできますが、まだまだ、CDの音の可能性を聴かれていないのではと、懸念しています。そのCDの枠を取り外したのが、96Khz/24Bit 以上のいわゆるハイレゾ音源ですが、現在の録音の主流である、ワンビット5.6MHz の極めてアナログ的な音の前では、PCM特有の音が聞こえて、私自身は、それほど興味がないのです。もっとも、私が使用しているヴィンテージスピーカーでは、そのハイレゾを再生しきれていないとのお叱りは覚悟の上ですが(笑)。
先日、香港でKentと話をした折、いまだに38/2TRの圧倒的なサウンドには、どのメディアも到達していないと、日暮れて道はまだ遠い実態を確認し合いました。ようやく、スペック的に5.6MHzが追いついてきたのですから。一秒間に38センチものスピードで、走らせて収録していた膨大な情報量は、12分で、1Gもの広大な領域を必要とする、ワンビットの5.6MHz方式で無ければ入りきらないのでは、との感を深めています。そのマスターテープやワンビットの生データを再生すると、まったく異なる次元の音がして、オーディオ的なほとんどの問題は、実は情報量の問題だったと気づかされるのです。その差を認識して、少しでも近づけるようにする試みを行っているのかも知れません。
それでも、はじめて海外に行ってから35年間もの間には、様々なホールを訪れることが出来ました。レコードだけ聴いていたのでは、実際に鳴っている本拠地のサウンドとの差は想像も付かないのです。私の場合は、やはりウィーンの体験と、ロンドン交響楽団の本拠地、バービカンでの響きの差には驚かされました。レコードでのロンドン交響楽団は、DECCA録音の所為でしょうが、鮮鋭な響きのするオーケストラだと思っていましたが、ドライなロイヤルフェスティバルホールとはまったく違い、木の香りがするようなバービカンホールでは、とてもレコード録音からは想像が付かない柔らかな響きがするのです。
何時もお話をしていますが、レコード録音と実際の音のイメージが一番近いのが、アムステルダムのコンセルトヘボーでの響きですね。特に後方の席の音は、アナログレコードがうまくかかった時のPhilips録音その物です。Philips が録音モニターに使っているQuad ESL63 proの音は、会場と同じ音がします。そして、CDの時代になっても、音の差が一番小さいレーベルだと思います。
この差は、やはり録音の仕方にあると思います。会場のアンビアンスを活かして録音しているPhilipsと、レコードでの音の再構築を目指していた、DECCA録音との差だと思います。私の家でも、DECCA録音は、いろいろな音の加工が見えてきて、音量のバランス的に不自然なところも、時として感じることがあります。スポットライトが当たったように、その楽器が急に大きくなるような事があるからです。それは、やはり情報量とダイナミックレンジに制限があった、アナログレコード用に収録されていたからだと思います。
レコードの再現するソニックステージとCDの時代にマスターテープから変換された音を聞き比べると、一番大きな差は、ダイナミックレンジの拡大です。60年代の録音には、マスターテープと制作工程で重ねられたダビングによるテープヒスが聞こえます。それを単純にフィルターを掛けた場合、一番肝心な音の鮮度まで奪っているようにも感じます。高域をカットすると、一番影響を受けるのは、低音楽器の微妙な動きです。柔らかなコントラバスやチェロ、ヴィオラの動きが、一辺に見えなくなってきます。
オーケストラの響きを支えているのが、ハーモニーを支える、ヴィオラや木管楽器では中段にいる、クラリネットやファゴットの動きです。フルート、オーボエは常に主役です。金管楽器では、やはりホルンの響きが重要ですね。そして、オーケストラの再生に欠かせないのが、バストロンボーンやチューバの再現性です。この部分が充分に再現できていれば、最大の音量を出す、大太鼓もしっかりと出てくることだと思います。
それらの指向性の少ない音の再生が、コンサートホールの音の再現には欠かせない要素だと思います。その意味でも左右のSPの微妙な位置調整が、その貴重な位置情報を再現するのに重要な役割を果たしています。また、主旋律を弾くことの多い第二ヴァイオリンの再生も交響曲の再生には欠かせません。私が、何時も説明に使っている、第二ヴァイオリンが第一バイオリンと同じ、左側に配置されて、コントラバスが右側後方に来る、自称「雲竜型」の配置と、第二ヴァイオリンが右側に来て、チェロとヴィオラがが中央部分、コントラバスが左後方に配置される、左右のバランスが良い、「不知火型」のオーケストラでは、特に右側の再生装置の位置や質が大事になってきます。旋律を奏でているのは、第二ヴァイオリンであることも多いのです。その響きが、左右のバランスがとれて美しい「不知火型」の様な対向配置のオーケストラ、それを指示する指揮者が私は好きです。
アナログレコーでは、内側に進んでいく、ターンテーブルとアームのインサイドフォースによって、左側の音が強くなる傾向にありました。インサイドフォースの力を無視するほどの針圧を掛けていた時代のカートリッジは別ですが、正しくインサイドフォースのバランスを取ると、右側の音が出てきて、コンサートホールでもオーケストラの響きに近づきました。しかし、レコードの構造上、どうしても内周部では音の歪み、ダイナミックレンジの減少が気になっていました。その問題を根本的に解決していたのが、CDの出現前はミュージックテープだったのです。
いまだに、CDよりアナログレコードの方が暖かい音がするとか、迫力有る音がすると言われる方が多いのは、私には驚きです。私達の年代は、ステレオ再生にはテープがありました。その音の本質的な差を経験していると、CD持つ優位性を理解されているはずです。分解能の方を重要視される方は、CDのいわゆるもやもやした感じになじめず、高価なクロックを導入したり、より明快な音がする、アップサンプリングのいわゆるハイレゾの音を求められるようですが、音のバランス、位相の再現性を重要視する場合は、元の44.1/16bitの方が、腰の据わった音がして好ましく感じます。
私がユニコーン用に使用している、工藤さんのCD34改のアナログ的な音は、市販の機器ではCD12ぐらいだと思います。そのCD12を使われている方々も、結局アナログレコードがよいと言われる心情は理解はできますが、まだまだ、CDの音の可能性を聴かれていないのではと、懸念しています。そのCDの枠を取り外したのが、96Khz/24Bit 以上のいわゆるハイレゾ音源ですが、現在の録音の主流である、ワンビット5.6MHz の極めてアナログ的な音の前では、PCM特有の音が聞こえて、私自身は、それほど興味がないのです。もっとも、私が使用しているヴィンテージスピーカーでは、そのハイレゾを再生しきれていないとのお叱りは覚悟の上ですが(笑)。
先日、香港でKentと話をした折、いまだに38/2TRの圧倒的なサウンドには、どのメディアも到達していないと、日暮れて道はまだ遠い実態を確認し合いました。ようやく、スペック的に5.6MHzが追いついてきたのですから。一秒間に38センチものスピードで、走らせて収録していた膨大な情報量は、12分で、1Gもの広大な領域を必要とする、ワンビットの5.6MHz方式で無ければ入りきらないのでは、との感を深めています。そのマスターテープやワンビットの生データを再生すると、まったく異なる次元の音がして、オーディオ的なほとんどの問題は、実は情報量の問題だったと気づかされるのです。その差を認識して、少しでも近づけるようにする試みを行っているのかも知れません。
by TANNOY-GRF
| 2011-12-09 02:24
| オーディオ雑感
|
Comments(7)
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by
NEXTNEXT
at 2011-12-22 17:19
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> NEXTNEXTさんの様に、半年から一年前に、しっかりと計画を立てて
ホント大変!
今日も来年のオザワ-ベルリン・フィルに会社の御前会議がぶつからないように裏工作をしておりました(申し訳ありません!!)。
ホント大変!
今日も来年のオザワ-ベルリン・フィルに会社の御前会議がぶつからないように裏工作をしておりました(申し訳ありません!!)。
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by
TANNOY-GRF at 2011-12-23 09:17
NEXTNEXTさん、凄いですね〜。私も見習わなければと思っています。
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torosan
at 2011-12-26 12:00
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いつも拝見させて頂いております。
ちょっと質問です。
NAGRAからの音声をバランスケーブルで接続してMR-1000で録音すると入力レベルが高いようで歪んでしまいます。
入力ボリューム調整では、歪みは改善せず、アンバランスケーブルで
接続すると改善されました。
TANNOY-GRF様は、どのように接続されていますか。
ちょっと質問です。
NAGRAからの音声をバランスケーブルで接続してMR-1000で録音すると入力レベルが高いようで歪んでしまいます。
入力ボリューム調整では、歪みは改善せず、アンバランスケーブルで
接続すると改善されました。
TANNOY-GRF様は、どのように接続されていますか。
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TANNOY-GRF at 2011-12-26 16:38
torosanさん コメントありがとうございます。お問い合せのレベルの件ですが、出力のレベル調整を、基板上の端子で行い、レベルを合わせております。
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torosan
at 2011-12-26 20:46
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早々のご回答ありがとうございました。
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sutora
at 2011-12-28 09:10
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毎回楽しく拝見させております。12月9日付けの”コンサートホールの再生”は同感です。特にCDにおいてもレコードとの差は大きくはないのです。アンプ側の位相特性、動特性が問題と思っております。今ではSACD,ハイレゾ(音質重視=重箱をつついてる音源)(?)にメーカーが舵をきっているようにも思え残念です。が。もっと”音楽”を聴かせて(鳴らして)と思いたくなります。
私のカセット(テイアックR9000)、DAT(ソニーDTC-57ES)は古いですが現役で、”音楽”を奏でてくれます。
やはり腰の据えた音が大事です。と
今後もためになるオーデイオ雑談楽しみにしております。
私のカセット(テイアックR9000)、DAT(ソニーDTC-57ES)は古いですが現役で、”音楽”を奏でてくれます。
やはり腰の据えた音が大事です。と
今後もためになるオーデイオ雑談楽しみにしております。
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GRFの部屋
at 2011-12-28 09:12
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sutoraさん ありがとうございます。本当にその通りですね。私も、カセットや4トラックテープで音楽を充分楽しんでおります。