2012年 05月 12日
ヤンソンスの指揮は |
ヤンソンスが、コンセルトヘボウの常任になってかなり経ちます。でも、シャーイの時と同じように、なかなかチケットが取れず、相当前から準備してチケットを取らないと聴けません。その為だけに、ヨーロッパまで行かないと無理でしょう。私の様に仕事のついでというのでは、相当難しいのです。それだけに今回は本当に僥倖でした。二日間の公演でこの一枚だけが残っていたのですから。
この券の前から4列目というのは実際は三列目で、ステージの真下のかぶり付きです。難点は近すぎて演奏中、首を上げていなければならないので疲れました(笑)。しかし、良いこともあります。今回の公演は、Strauss の Also sprach Zarathustraと Metamorphosen そして 'Der Rosenkavalier'からの組曲でした。二曲目のメタモルフォーゼンは、オーケストラが23 人のソリストとして演奏する、特別な曲です。。英雄の葬送行進曲で終焉を迎えるリヒャルト・シュトラウスの遺言です。全員が違うパートを演奏する様が、かぶり付きで見ることができました。
その弦の柔らかいこと!前々回、このホールで、ベルギー国立管弦楽団を聴いたのですが、その時も柔らかさを感じました。ベルギー楽派という演奏があるのだなと実感しました。しかし、今回のコンサートマスターのVesko Eschkenazy の音の素晴らしさは、勿論ヴァイオリンも違いますね。このGuarneri del Gesu作のヴァイオリンの音を目の前で聴けたことだけでも良かったですね。特にこのホールで聴くとまったく違う響きがします。すべての楽器の音が柔らかいのです。これは、同じヤンソンスが振っている、バイエルンの響きと聞き比べてみれば、すぐに差が判ります。コンセルトヘボウの会場で聴くコンセルトヘボウ楽団は特別なのです。
第一曲目は、ヤンソンスお得意の「ツァラストラはかく語りき」です。冒頭のオルガンの最低音のヴェーという音の出方から驚きました。ヤンソンスは何時もオーケストラには笑顔で接しています。その笑顔が突然シリアスになる瞬間がいいですね。極めて的確な指揮で、オーケストラは間違えようがありません。その指揮振りを見るだけでも価値がありました。コンサートマスター達には、兄弟のように接しています。その彼らにクライマックスでは、うなり声があげてきます。それに答えて、二人のコンサートマスターの演奏の素晴らしいこと。とても切れ味のいい音を出していました。この曲は、コンサートマスターがソリストのように歌うところがありますが、完璧でしたね。
オーケストラのレベルは大変高く、ベルリンやウィーンと同じでしょう。その他のオーケストラは、どこかに危なげなところがあったり、弦がきつかったり、金管が不安定な感じが少なからずありますが、このオーケストラは安心して聴いていられます。どこも、余裕を持っているし、スピードも最速のスポーツカー見たく出るのですが、どこかのんびりとオープンカーでゆっくり走っている感じもします。その点が、ベルリンフィルとの違いでしょうか?特にサイモン・ラトルの場合は、カーブを何時も限界まで追い込んでいるような感じがします。勿論、ベルリンフィルは、どのようなきついカーブも破綻なく回るのですが、タイヤが減るのが早いような感じは否めません。また、ウィーンフィルも、ドイツ系の曲は、まったく問題ないのですが、フランスやイタリア物になると、少し、合わないようなところも感じるのです。
その点、コンセルトヘボウは、何時も余裕があります。柳に風のように受け流しているようです。クライマックスになっても、常に余裕を感じるのは、滅多にありません。シカゴや昔のレニングラードは、もう少し低域が暗くなります。迫力はあるのですが、軽い感じが出ませんね。
最後の曲は、「薔薇の騎士」からの抜粋でした。ヤンソンスの演奏は聴いていて楽しいのです。ムラヴィンスキーのような圧倒的な力で演奏するのではなく、あくまでも、明るく楽しい演奏です。それに答えるコンセルトヘボウの技術の高さと、どの様な場面でも破綻しない演奏ですね。シュトラウスの曲も楽しく、スターウォーズのホルンのようで面白いですね。でも、この様に安心して聴いていられるオーケストラは、思ったよりも少ない物です。そして、このホールで聴く音は格別です。
最後のクライマックスも素晴らしかったです。力を目一杯溜めていながら、風のように一瞬で終わりました。そのにくい終わり方に唸りましたね。
演奏が終わってからの聴衆の反応は、全員スタンディングオーベーションで、ロックの演奏会場にいるような熱気でした。八時十五分から始まる演奏会は終わるのは十一時近くになります。表に出ると、会場に散在していた日本人がグループツアーできているのが分かりました。私は目の前のパーキングから車を出し、暗くなったアムステルダムの街を走り、今まで鳴り響いていた音を反芻していました。数ある中の演奏会でも、ひょっとしたら、ムラヴィンスキーとは違った意味ですが、それに次いで良かった演奏会でした。一生の間でも滅多に聴けない演奏で大変僥倖でした。
この券の前から4列目というのは実際は三列目で、ステージの真下のかぶり付きです。難点は近すぎて演奏中、首を上げていなければならないので疲れました(笑)。しかし、良いこともあります。今回の公演は、Strauss の Also sprach Zarathustraと Metamorphosen そして 'Der Rosenkavalier'からの組曲でした。二曲目のメタモルフォーゼンは、オーケストラが23 人のソリストとして演奏する、特別な曲です。。英雄の葬送行進曲で終焉を迎えるリヒャルト・シュトラウスの遺言です。全員が違うパートを演奏する様が、かぶり付きで見ることができました。
その弦の柔らかいこと!前々回、このホールで、ベルギー国立管弦楽団を聴いたのですが、その時も柔らかさを感じました。ベルギー楽派という演奏があるのだなと実感しました。しかし、今回のコンサートマスターのVesko Eschkenazy の音の素晴らしさは、勿論ヴァイオリンも違いますね。このGuarneri del Gesu作のヴァイオリンの音を目の前で聴けたことだけでも良かったですね。特にこのホールで聴くとまったく違う響きがします。すべての楽器の音が柔らかいのです。これは、同じヤンソンスが振っている、バイエルンの響きと聞き比べてみれば、すぐに差が判ります。コンセルトヘボウの会場で聴くコンセルトヘボウ楽団は特別なのです。
第一曲目は、ヤンソンスお得意の「ツァラストラはかく語りき」です。冒頭のオルガンの最低音のヴェーという音の出方から驚きました。ヤンソンスは何時もオーケストラには笑顔で接しています。その笑顔が突然シリアスになる瞬間がいいですね。極めて的確な指揮で、オーケストラは間違えようがありません。その指揮振りを見るだけでも価値がありました。コンサートマスター達には、兄弟のように接しています。その彼らにクライマックスでは、うなり声があげてきます。それに答えて、二人のコンサートマスターの演奏の素晴らしいこと。とても切れ味のいい音を出していました。この曲は、コンサートマスターがソリストのように歌うところがありますが、完璧でしたね。
オーケストラのレベルは大変高く、ベルリンやウィーンと同じでしょう。その他のオーケストラは、どこかに危なげなところがあったり、弦がきつかったり、金管が不安定な感じが少なからずありますが、このオーケストラは安心して聴いていられます。どこも、余裕を持っているし、スピードも最速のスポーツカー見たく出るのですが、どこかのんびりとオープンカーでゆっくり走っている感じもします。その点が、ベルリンフィルとの違いでしょうか?特にサイモン・ラトルの場合は、カーブを何時も限界まで追い込んでいるような感じがします。勿論、ベルリンフィルは、どのようなきついカーブも破綻なく回るのですが、タイヤが減るのが早いような感じは否めません。また、ウィーンフィルも、ドイツ系の曲は、まったく問題ないのですが、フランスやイタリア物になると、少し、合わないようなところも感じるのです。
その点、コンセルトヘボウは、何時も余裕があります。柳に風のように受け流しているようです。クライマックスになっても、常に余裕を感じるのは、滅多にありません。シカゴや昔のレニングラードは、もう少し低域が暗くなります。迫力はあるのですが、軽い感じが出ませんね。
最後の曲は、「薔薇の騎士」からの抜粋でした。ヤンソンスの演奏は聴いていて楽しいのです。ムラヴィンスキーのような圧倒的な力で演奏するのではなく、あくまでも、明るく楽しい演奏です。それに答えるコンセルトヘボウの技術の高さと、どの様な場面でも破綻しない演奏ですね。シュトラウスの曲も楽しく、スターウォーズのホルンのようで面白いですね。でも、この様に安心して聴いていられるオーケストラは、思ったよりも少ない物です。そして、このホールで聴く音は格別です。
最後のクライマックスも素晴らしかったです。力を目一杯溜めていながら、風のように一瞬で終わりました。そのにくい終わり方に唸りましたね。
演奏が終わってからの聴衆の反応は、全員スタンディングオーベーションで、ロックの演奏会場にいるような熱気でした。八時十五分から始まる演奏会は終わるのは十一時近くになります。表に出ると、会場に散在していた日本人がグループツアーできているのが分かりました。私は目の前のパーキングから車を出し、暗くなったアムステルダムの街を走り、今まで鳴り響いていた音を反芻していました。数ある中の演奏会でも、ひょっとしたら、ムラヴィンスキーとは違った意味ですが、それに次いで良かった演奏会でした。一生の間でも滅多に聴けない演奏で大変僥倖でした。
by TANNOY-GRF
| 2012-05-12 14:55
| 音楽旅行
|
Comments(14)
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seibo
at 2012-05-12 22:03
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これは想像するだけで素晴らしそうですね。リヒャルトシュトラウスのオーケレストレーションはCDで聞いていても美しいのですから、それがすぐれたホールと演奏者の両方がうまくマッチした組み合わせで聴くことができるなんてなんて素晴らしい体験でしょう。メタモルフォーゼンなんてそのまま椅子に座って動けなくなってしまいには自分が椅子と同化して消えてなくなるような気がしたのでは?良い演奏(場所を含めて)と出会う機会は本当に稀有な体験ですね。
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O
at 2012-05-12 22:04
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羨ましい限りです。また一杯やりながらお話をお聞かせ下さいね。
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プー博士(Dr.Pooh)
at 2012-05-13 10:18
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最近オープンリールに目覚めたのですが、これまで年数回程度しか演奏会に行っておりませんでしたのを、GRFさんに刺激を受けてまた聴きにいく機会を増やそうと思っています。カミさんはウイーンで演奏会巡りしたいというのが夢のようです。
SEIBOさん 一週間に2000キロも走り回る合間に、見つけた本当のオアシスでした。SEIBOさんのお好きなリヒャルト・シュトラウス。ローゼンカバリエの序曲が鳴った瞬間、心が浮き立ってくるのが解りました。楽しい演奏が、RCOの特徴ですね。メタモルフォーゼンは全身が耳になっていましたが、余りの美しさに気が遠くなる寸前でした。アントワープの渋滞通過にエネルギーを取られていたので・・・
Dr.Poohさん ご夫婦で行かれるのなら、ウィーンとザルツブルグですね。ブダペストとプラハが加わればいう事無いのでしょうか!
Oさん 先日は中途半端で済みませんでした。それでも、やはり風邪を引きましたね。昨日の晩は、疲れが出て一気に熱が出始め、布団に潜り込んで、がたがた震えていました。
一杯やるのは、是非、日本酒にしましょう!蕎麦をつまみに・・・
一杯やるのは、是非、日本酒にしましょう!蕎麦をつまみに・・・
初めまして。私はイギリス在住で昨日ロンドンでRCOを聴きました。素晴らしい演奏会だったようで何よりです。お伺いしたいのですが、メタモルフォーゼンは指揮者ありでしたか?昨日は指揮者なしだったのです。もしかしてヤンソンスが体調が悪かったせいかとの話もあり、そのせいか私にとっての印象はあまりよくなかったのです。。
体調を崩されたようですが、どうぞお大事にして下さい。
体調を崩されたようですが、どうぞお大事にして下さい。
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プー博士(Dr.Pooh)
at 2012-05-13 20:38
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昨年、カミさんが憧れていたプラハ旅行をプレゼントしました(あまり旅行は好きでないのですが) ブダペスト、ウイーンと周りましたがザルツブルグへ寄る時間はありませんでした。ウイーンで室内楽をちょっと聴いただけでしたが、やはり本場で聴くのは雰囲気あって楽しめました。ニューイヤーコンサートへ死ぬまでにいちど行きたいなどとカミさんはプレッシャーかけてきます(涙)
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TANNOY-GRF at 2012-05-13 20:43
felizさん はじめまして。コメントありがとうございます。ブログも拝見致しました。ロンドン在住でうらやましいです。
同じ演奏をバービカンで金曜日に聴かれたのですね。ご質問のメタルモルフォーゼンは、ヤンソンス渾身の指揮でした。あんなに複雑な曲を指揮者無しで弾くには、相当の練習が必要でしょう。
今週のアムステルダムは、とても寒暖の差があって、雨も降り寒かったです。また、コンセルトヘボウの狭い会場にあれだけの人が集まると、風邪が蔓延しますね。私も、翌日発熱して、困りました。ヤンソンスも風邪引いたのではないでしょうか?木曜日のヤンソンスは、時折疲れた顔も見せていましたが、私の印象では、前よりも元気そうでした。
アムスからロンドンまではほんのひとっ飛びですが、実際には、ロンドンの入国も考えると4時間は掛かります。それからの本番ですから、結構大変なのではないでしょうか?
来週のハイティンクのブルックナーは楽しみですね。私も聴きたいですね。バービカンとコンセルトヘボウの音の差はありますが、ハイティンクの時はまったく違う音がしますよ。昨年のベルリンフィルとの差も楽しみですね。
同じ演奏をバービカンで金曜日に聴かれたのですね。ご質問のメタルモルフォーゼンは、ヤンソンス渾身の指揮でした。あんなに複雑な曲を指揮者無しで弾くには、相当の練習が必要でしょう。
今週のアムステルダムは、とても寒暖の差があって、雨も降り寒かったです。また、コンセルトヘボウの狭い会場にあれだけの人が集まると、風邪が蔓延しますね。私も、翌日発熱して、困りました。ヤンソンスも風邪引いたのではないでしょうか?木曜日のヤンソンスは、時折疲れた顔も見せていましたが、私の印象では、前よりも元気そうでした。
アムスからロンドンまではほんのひとっ飛びですが、実際には、ロンドンの入国も考えると4時間は掛かります。それからの本番ですから、結構大変なのではないでしょうか?
来週のハイティンクのブルックナーは楽しみですね。私も聴きたいですね。バービカンとコンセルトヘボウの音の差はありますが、ハイティンクの時はまったく違う音がしますよ。昨年のベルリンフィルとの差も楽しみですね。
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TANNOY-GRF at 2012-05-13 20:45
Dr.Poohさん そうですか、プラハ・ブダペスト・ウイーンには行かれたのですね。私も、仕事のついでではなく、この辺はじっくりと回りたいです。
お返事ありがとうございます。そうでしたか。やっぱりヤンソンスは体調が悪かったのでしょうね。そのためか休憩時間も長かったです。(あ、ロンドン公演は土曜でした。)来週のハイティンクも楽しみです。今後もブログ楽しみに読ませていただきます。今年の欧州の春はとても変な天気です。それではくれぐれもご自愛下さい。
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TANNOY-GRF at 2012-05-13 22:42
felizさん 土曜日でしたか。そうだろうな、如何に近いといっても、三連ちゃんはきついでしょうから。そういえば、ずーっと寒かったですね。日本も今年の気候はおかしく大きな竜巻もあったようです。
ロンドンには、二十年ほど前には頻繁に行っていました。フェスティバルホール、バービカンホール、アルバートホール、そして、コヴェントガーデンと回っていました。
これからもよろしくお願いします。
ロンドンには、二十年ほど前には頻繁に行っていました。フェスティバルホール、バービカンホール、アルバートホール、そして、コヴェントガーデンと回っていました。
これからもよろしくお願いします。
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O
at 2012-05-14 17:30
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蕎麦で日本酒!良いですね。次を楽しみにしてます。
酒飲みですみません(笑)
酒飲みですみません(笑)
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TANNOY-GRF at 2012-05-15 23:13
Oさんも忙しいですからね。やはりゆっくり、日本酒を飲める場所も探しましょう!