2014年 05月 30日
シューベルト5番とマーラー4番 |
急遽、米国転勤になったNEXTNEXTさんから譲っていただいた券で、サントリーホールでのN響定期公演を聞いてきました。指揮者は、京都交響楽団の広上淳一です。個性的な広上の評判はほうぼうで聞きますが、実際に生で聞くのは今回が初めてです。先週末の室内オーケストラの3プルトと違って、8プルトは大きいです。しかし、大オーケストラだから大きな音がするかというと、事はそれほど単純ではありません。大きい編成だと、お互いに遠慮して音が小さくななる傾向があります。ウィーンやゲバントハウスはビックリするほど大きな音がするのですが、日本のオーケストラは、人数によって正比例していくわけではないのです。
それを感じたのは、最初のシューベルトの交響曲第5番です。ご承知の通り、数ある交響曲の中でもとびきりの美しい曲です。シューベルトがミューズに献げたような天国に登るような美しさです。同じ様な美しさを感じられる作曲家はそうはいません。モーツァルトやメンデルスゾーンでしょうか?チャイコフスキーやドヴォルザークの美しさとも違うのです。天上から天使が降りてくるような、フルートの響き、優雅に天使が踊っているようなヴァイオリンの響きが、私のイメージと少し違いました。
N響としては、端正で丁寧な演奏です。悪いところは全くありません。評判を聞いていた、期待していた?広上の個性もそれほど感じない優雅な演奏です。しかし、可もなければ不可もないというのでしょうか、面白くないのです。時々、レガート風に演奏しているのですが、ときどき、ほんの短い時間ですが、音楽の流れが切れる感じがします。指揮者が解りやすく、念を入れて、強調しているような気もします。それでも、シューベルトの5番は、美しくまとまり、丁寧な演奏でした。この規模の音量なら、三分の一のおおきさで充分ではと思ったのです。弦楽器が18人体制でいる理由が、余り見つからなかったからです。
ところが、休憩後のマーラーの第4番は、全く正反対な、極めて個性的な演奏でした。オーケストラを統一して、音を出させる技術は大した物です。問題は、旋律をわかりやすくするための、溜めです。各パートをしっかりと区切り、太字で強調するような感覚です。音楽が、大袈裟で流れないのです。第一楽章は、流れるような楽章なのですが、その平坦な風景が、荒々しい、バギーレースをするような障害物に埋まっているのです。違和感を通り越して、指揮者の意図は何なんだろうと考え始めました。
ワルターは、この曲を「天上の愛を夢見る牧歌である」といったそうです。その意味では、前のシューベルトと共通した曲想の筈でした。だから同じ様な曲を二つ並べたプログラムに、少し疑問を持ったぐらいです。それはこの演奏を聴いて思いました。広上は意識的にマーラーの牧歌的と言われる曲想では無い演奏をしているのだと。静かに始まった第一楽章は、マーラーの例に漏れず、突如として嵐のような展開を見せます。第五交響曲冒頭のトランペットの旋律も出て来て、荒れ狂うのです。そして、まら静かな牧歌的な感じで終わるのですが、一楽章の中で、田園交響曲の五楽章分を押し込めたような曲想が無理があるのか、その嵐の部分を強調しすぎたのか、私が知っている、愛聴している、ハイティンクとは、正反対の演奏だったのです。
それはパロディ風な二楽章でも、突如してまた展開がかわる第三楽章でも、その変化が強調され、ダイナミクスを全面に押し出す、解釈でした。広上の指揮は、大きなジェスチャーの下野をより大きくした天に大キャンバスを描くようです。下野、広上ともそれほど上背がないので、上半身だけが巨大化したアンバランスが感じられました。下野は、横にも広いタイプですが、広上は、下半身は細く、顔だけが福助さんのような感じで、そのアンバランスな感じと夢や野望の大きさを感じるかとも思ったぐらいです。
そう、音楽のバランスが、過度の強調により崩れているという感じを受けたのです。ところが、第三楽章のおわりに静かに能役者の歩みのように登場してきた、ソプラノのローザ・フェオラが加わったとたん、全く音楽が変わったのです。テンポは遅めですが、今までの三楽章で、暴れに暴れていたオーケストラが、静かな入り江に入ってきたような演奏で、歌手をアシストしたのです。これには驚きましたが、全楽章このような演奏だったら良かったのにと、指揮者のエゴに驚き入ったのです。
この演奏を、いいという聴衆もいるでしょう。しかし、日本でもっとも高齢化が進んでいる、N響の定期会員のおじいさま方々がどの様な反応を示されるたかは、帰りの聴衆の表情からも読み取りました。音楽にはやはり規矩というのも必要だと思うからです。それでも、一度京都に聴きに行きたいと言われる人もいましたが、高齢者の仲間入りをした私は、限りあるチャンスに敢えて、入れることは無いと思いました。
それを感じたのは、最初のシューベルトの交響曲第5番です。ご承知の通り、数ある交響曲の中でもとびきりの美しい曲です。シューベルトがミューズに献げたような天国に登るような美しさです。同じ様な美しさを感じられる作曲家はそうはいません。モーツァルトやメンデルスゾーンでしょうか?チャイコフスキーやドヴォルザークの美しさとも違うのです。天上から天使が降りてくるような、フルートの響き、優雅に天使が踊っているようなヴァイオリンの響きが、私のイメージと少し違いました。
N響としては、端正で丁寧な演奏です。悪いところは全くありません。評判を聞いていた、期待していた?広上の個性もそれほど感じない優雅な演奏です。しかし、可もなければ不可もないというのでしょうか、面白くないのです。時々、レガート風に演奏しているのですが、ときどき、ほんの短い時間ですが、音楽の流れが切れる感じがします。指揮者が解りやすく、念を入れて、強調しているような気もします。それでも、シューベルトの5番は、美しくまとまり、丁寧な演奏でした。この規模の音量なら、三分の一のおおきさで充分ではと思ったのです。弦楽器が18人体制でいる理由が、余り見つからなかったからです。
ところが、休憩後のマーラーの第4番は、全く正反対な、極めて個性的な演奏でした。オーケストラを統一して、音を出させる技術は大した物です。問題は、旋律をわかりやすくするための、溜めです。各パートをしっかりと区切り、太字で強調するような感覚です。音楽が、大袈裟で流れないのです。第一楽章は、流れるような楽章なのですが、その平坦な風景が、荒々しい、バギーレースをするような障害物に埋まっているのです。違和感を通り越して、指揮者の意図は何なんだろうと考え始めました。
ワルターは、この曲を「天上の愛を夢見る牧歌である」といったそうです。その意味では、前のシューベルトと共通した曲想の筈でした。だから同じ様な曲を二つ並べたプログラムに、少し疑問を持ったぐらいです。それはこの演奏を聴いて思いました。広上は意識的にマーラーの牧歌的と言われる曲想では無い演奏をしているのだと。静かに始まった第一楽章は、マーラーの例に漏れず、突如として嵐のような展開を見せます。第五交響曲冒頭のトランペットの旋律も出て来て、荒れ狂うのです。そして、まら静かな牧歌的な感じで終わるのですが、一楽章の中で、田園交響曲の五楽章分を押し込めたような曲想が無理があるのか、その嵐の部分を強調しすぎたのか、私が知っている、愛聴している、ハイティンクとは、正反対の演奏だったのです。
それはパロディ風な二楽章でも、突如してまた展開がかわる第三楽章でも、その変化が強調され、ダイナミクスを全面に押し出す、解釈でした。広上の指揮は、大きなジェスチャーの下野をより大きくした天に大キャンバスを描くようです。下野、広上ともそれほど上背がないので、上半身だけが巨大化したアンバランスが感じられました。下野は、横にも広いタイプですが、広上は、下半身は細く、顔だけが福助さんのような感じで、そのアンバランスな感じと夢や野望の大きさを感じるかとも思ったぐらいです。
そう、音楽のバランスが、過度の強調により崩れているという感じを受けたのです。ところが、第三楽章のおわりに静かに能役者の歩みのように登場してきた、ソプラノのローザ・フェオラが加わったとたん、全く音楽が変わったのです。テンポは遅めですが、今までの三楽章で、暴れに暴れていたオーケストラが、静かな入り江に入ってきたような演奏で、歌手をアシストしたのです。これには驚きましたが、全楽章このような演奏だったら良かったのにと、指揮者のエゴに驚き入ったのです。
この演奏を、いいという聴衆もいるでしょう。しかし、日本でもっとも高齢化が進んでいる、N響の定期会員のおじいさま方々がどの様な反応を示されるたかは、帰りの聴衆の表情からも読み取りました。音楽にはやはり規矩というのも必要だと思うからです。それでも、一度京都に聴きに行きたいと言われる人もいましたが、高齢者の仲間入りをした私は、限りあるチャンスに敢えて、入れることは無いと思いました。
by TANNOY-GRF
| 2014-05-30 07:53
| 演奏会場にて
|
Comments(1)
Commented
by
Bellwood
at 2014-06-02 14:26
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同席した私にとっては、すべて同感なのですが、日本の批評諸子、ファンの類は身びいきというのか、なんだか隠蔽体質の言辞ばかりでつくづくイヤになってしまいます。
でも、こんなブログを発見しました。
↓
http://ameblo.jp/takemitsu189/entry-11865422464.html
でも、こんなブログを発見しました。
↓
http://ameblo.jp/takemitsu189/entry-11865422464.html