2015年 06月 14日
Hさんの隠れ家を再訪 |
神楽坂のUNICORN邸をでた私は、江戸川橋から飯田橋に戻り、お茶の水から秋葉原に下りていきました。この道は、何十年通ったことでしょう。二十代から三十代の終わりまで、ほとんど毎週の様に通っていました。今は、もう幻になってしまった、オーディオ専門店やパーツ屋さんを巡っては、一種の精神安定剤にしていたように思います。仕事柄、出張が多い生活でしたので、東京に戻った時、秋葉原巡りをすることで、心のバランスを取っていたのでしょう。人手溢れていた狭い通り、小さな部品屋さんの小宇宙。それは小学生の時父親に連れられてきた思い出とともに、何十年も楽しみを与えてくれていました。
それがいつの間にやら、ゲームセンターやお宅の集まる喫茶店だとかになり、私の知っている旧い秋葉原が消えてからは、自然と足が遠のきました。青果市場跡に駐車場があった頃までです。その空き地に巨大なビルが建ち、秋葉原のイメージが変わってから、その地域に足を踏み入れたのは、Hさんの隠れ家にお伺いしてからです。その変貌に驚きました。こうして、時代が変わっていくのだと実感しました。
今日は、Hさんの4トラックテープを拝見して、私とNagraのお師匠さんが持っているテープのだぶっていない分をファイル化するために選別にきました。秋葉原に置かれているのは、一部だそうですが、それでも、何箱もあります。ファイル化してあるものはお預かりする必要はありませんから、それを見極めなくてはなりません。
最初は、リストを作ったのですが、いちいち番号を照合したり、名前を探すのは大変です。それで、今までファイル化してあるジャケットを印刷して持っていきました。これはさすがに効率的で、選別が楽にはかどりました。それでも、4箱分もお預かりしました。ほとんどのテープは、50年近く前のものです。長い年月を置いても、ほとんど劣化していないのも驚異的ですね。
4トラックテープは、50年代から60年代の最高級の音質のソフトでした。レコード化のように、極端なイコライザーはなく、大振幅の溝もありませんから、最低域の音がそのまま収録されています。ただし、その頃普及していた市販のテープレコーダーでは、テープ特有のヒスが盛大にしていて、レコード派のひんしゅくを買っていました。しかし、そのレコードも、マスターテープから作成されているのですから、ヒスノイズがするはずですが、ほとんど気になりませんね。
Nagraのお師匠のCさんがT-Audioを改装して、プロ用の4トラックヘッドを換装した音は、次元を異にしていました。安定した音と、広い周波数特性。金田アンプによるヘッドから直接入力による、低域の再現性は、ほとんどマスターテープの音を再現しています。昔の4トラックテープの音しか聞かれていない方に、ぜひ聞いていただきたいですね。
その仕分けも終わり、近くの和食屋さんで、食事をとってから、今日の後半のイベントに移りました。それは、ユニコーンとトラバドール80の位置調整です。ここから、先は、Hさんが、いつも一緒に拙宅にこられるSさんに宛てたメールが転送されてきました。それを引用させていただきます。
S様
本日、テープの件で、GRFさんに、秋葉原に来てもらいました。その際、また、UNICORNとトロバトール80のセッティングを見てもらいました。
実は、この日に間に合うように、アンプの入れ替えをしました。トロバトールの方は、今までは、Krell1台でウーファーもトロバトールも全て、バイワイヤーでやっていたものを、トロバトールをMacintoshの3500で、ウーファーをスペクトラル200でならせるように、夜中まで、頑張って用意しました。
GRFさんから、いい音ですねの、一言を引き出したいために頑張ったんですが、GRFさんは、入って来ても、何の反応もないので、まだまだ、GRFさんを振り向かせるには、程遠い音だっただなと後から思い知りました。
一息ついた後、まずは、UNICORNの調整に入ってくれました。少し、動かすだけで、パッと音像が広がります。何度も、同じ経験をしていますかが、まだまだ、GRFさんのあの技は、盗めません。今回は、UNICORNの位置関係を変えるのみならず、何だか、瞬間的に、音像が、縦に伸びて、音像に芯が出来たかのように、なったので、一体今は、何をしましたかと尋ねたところ、プリアンプの位置を少し整えた、とのこと。「何で、そんなことまで、わかるんや」 と関西弁になってしまうほどでした。それでも、GRFさんのUNICORNのような深い音には、まだまだです。先は長い。人生は長くないのに、間に合うか心配です。
そして、いよいよ、トロバトール80です。アポジーのDIVAをウーファーとして、使っています。DIVAの前に、トロバトールをおいてあります。GRFさんはトロバトールの間で、真ん中にたったり、スピーカーを背にして、立って聞いています。
GRFさんが、トロバトールを少し、広げました。瞬間に音が、変わります。縦に伸び、横にひろがります。さらに広げたとこるで、すでに、スピーカーの存在が、消えていました。まるで、オーケストラが、ジャズトリオが、そこで、演奏しているかのような、状態になっておりました。
それをまた、可能にしているのが、先週納入されましたCDプレーヤーのEMMです。以前から、GRFさんの家でも、横浜のMさんのお宅でもきかせてもらっており、あくまで、自然な音です。DSのクライマックスが、人工的に聞こえてしまい、上には上があるんだと、思い知るのです。そのEMMで、音を作り、トロバトールで、音を出す。至福の一時を過ごすことがでしました。
Sさん、出来るだけ早めに来ていただき、音と音楽を聴きに来て下さい。よろしくお願い致します。
H
その晩、ご友人のSさんに送られたメールです。気合いを入れて調整した甲斐がありました。ユニコーンは、左右の間隔とアンプ類の位置調整です。特に微小な信号を扱うプリアンプは、SPからの音のフィードバックに敏感です。これで、メインアンプをかえ、SPコードも微調整すれば、相当なところまでいきます。あとはEMMから信号をもらい両方につなぐといいですね。やはり入力の質の向上が、音が良くなる最短距離です。
トラバドールの調整は、メインアンプをマッキントッシュの3500を使用されて、微妙なボリュームの調整も可能なりました。DIVAの平行度、振動板からの距離、Troubadourの左右の間隔、それらをすこしずつあわせていきました。こちらは、相当な集中度がいりました。一時間以上時間をかけたでしょうか?いろいろなCDをかけ、音のバランスを追い込んでいきます。先週の写真と比べてみると、広がりの差がわかりますね。
先週も鳴らしたパトリシア・バーバーの伴奏のベースの音のリアリティがあがりピアノの低弦の響きも出てきました。もはや先週と同じ曲を聴いている感じがしません。DIVAの平面SPですから、横浜のMさん宅のような大迫力ではないですが、実物大のぞくっとくるような音がたまりません。ここまでくれば、大満足です。後は、アンプを反対にする組み合わせですね。その場合は、SPコードもかわるでしょう。
いい音が出始めると、いろいろなCDを取り替え聞き始めます。自然に収録されたアルバムがいい音で鳴りますが、スタジオで、音を作られたCDはあらがすぐ見えてしまいます。今回もトラバドールのすごさを実感した夜に鳴りました。
気がつくと、もう11時になろうとしています。雨はだいぶ弱くなり、この時間帯だと道も空いていて、秋葉原から30分ぐらいで帰ってくることができました。いい音がすると疲れも心地よい疲れになりますね。まだまだ音は良くなるHさんの音をご友人のSさんはどう聞かれるでしょうか?
それがいつの間にやら、ゲームセンターやお宅の集まる喫茶店だとかになり、私の知っている旧い秋葉原が消えてからは、自然と足が遠のきました。青果市場跡に駐車場があった頃までです。その空き地に巨大なビルが建ち、秋葉原のイメージが変わってから、その地域に足を踏み入れたのは、Hさんの隠れ家にお伺いしてからです。その変貌に驚きました。こうして、時代が変わっていくのだと実感しました。
今日は、Hさんの4トラックテープを拝見して、私とNagraのお師匠さんが持っているテープのだぶっていない分をファイル化するために選別にきました。秋葉原に置かれているのは、一部だそうですが、それでも、何箱もあります。ファイル化してあるものはお預かりする必要はありませんから、それを見極めなくてはなりません。
最初は、リストを作ったのですが、いちいち番号を照合したり、名前を探すのは大変です。それで、今までファイル化してあるジャケットを印刷して持っていきました。これはさすがに効率的で、選別が楽にはかどりました。それでも、4箱分もお預かりしました。ほとんどのテープは、50年近く前のものです。長い年月を置いても、ほとんど劣化していないのも驚異的ですね。
4トラックテープは、50年代から60年代の最高級の音質のソフトでした。レコード化のように、極端なイコライザーはなく、大振幅の溝もありませんから、最低域の音がそのまま収録されています。ただし、その頃普及していた市販のテープレコーダーでは、テープ特有のヒスが盛大にしていて、レコード派のひんしゅくを買っていました。しかし、そのレコードも、マスターテープから作成されているのですから、ヒスノイズがするはずですが、ほとんど気になりませんね。
Nagraのお師匠のCさんがT-Audioを改装して、プロ用の4トラックヘッドを換装した音は、次元を異にしていました。安定した音と、広い周波数特性。金田アンプによるヘッドから直接入力による、低域の再現性は、ほとんどマスターテープの音を再現しています。昔の4トラックテープの音しか聞かれていない方に、ぜひ聞いていただきたいですね。
その仕分けも終わり、近くの和食屋さんで、食事をとってから、今日の後半のイベントに移りました。それは、ユニコーンとトラバドール80の位置調整です。ここから、先は、Hさんが、いつも一緒に拙宅にこられるSさんに宛てたメールが転送されてきました。それを引用させていただきます。
S様
本日、テープの件で、GRFさんに、秋葉原に来てもらいました。その際、また、UNICORNとトロバトール80のセッティングを見てもらいました。
実は、この日に間に合うように、アンプの入れ替えをしました。トロバトールの方は、今までは、Krell1台でウーファーもトロバトールも全て、バイワイヤーでやっていたものを、トロバトールをMacintoshの3500で、ウーファーをスペクトラル200でならせるように、夜中まで、頑張って用意しました。
GRFさんから、いい音ですねの、一言を引き出したいために頑張ったんですが、GRFさんは、入って来ても、何の反応もないので、まだまだ、GRFさんを振り向かせるには、程遠い音だっただなと後から思い知りました。
一息ついた後、まずは、UNICORNの調整に入ってくれました。少し、動かすだけで、パッと音像が広がります。何度も、同じ経験をしていますかが、まだまだ、GRFさんのあの技は、盗めません。今回は、UNICORNの位置関係を変えるのみならず、何だか、瞬間的に、音像が、縦に伸びて、音像に芯が出来たかのように、なったので、一体今は、何をしましたかと尋ねたところ、プリアンプの位置を少し整えた、とのこと。「何で、そんなことまで、わかるんや」 と関西弁になってしまうほどでした。それでも、GRFさんのUNICORNのような深い音には、まだまだです。先は長い。人生は長くないのに、間に合うか心配です。
そして、いよいよ、トロバトール80です。アポジーのDIVAをウーファーとして、使っています。DIVAの前に、トロバトールをおいてあります。GRFさんはトロバトールの間で、真ん中にたったり、スピーカーを背にして、立って聞いています。
GRFさんが、トロバトールを少し、広げました。瞬間に音が、変わります。縦に伸び、横にひろがります。さらに広げたとこるで、すでに、スピーカーの存在が、消えていました。まるで、オーケストラが、ジャズトリオが、そこで、演奏しているかのような、状態になっておりました。
それをまた、可能にしているのが、先週納入されましたCDプレーヤーのEMMです。以前から、GRFさんの家でも、横浜のMさんのお宅でもきかせてもらっており、あくまで、自然な音です。DSのクライマックスが、人工的に聞こえてしまい、上には上があるんだと、思い知るのです。そのEMMで、音を作り、トロバトールで、音を出す。至福の一時を過ごすことがでしました。
Sさん、出来るだけ早めに来ていただき、音と音楽を聴きに来て下さい。よろしくお願い致します。
H
その晩、ご友人のSさんに送られたメールです。気合いを入れて調整した甲斐がありました。ユニコーンは、左右の間隔とアンプ類の位置調整です。特に微小な信号を扱うプリアンプは、SPからの音のフィードバックに敏感です。これで、メインアンプをかえ、SPコードも微調整すれば、相当なところまでいきます。あとはEMMから信号をもらい両方につなぐといいですね。やはり入力の質の向上が、音が良くなる最短距離です。
トラバドールの調整は、メインアンプをマッキントッシュの3500を使用されて、微妙なボリュームの調整も可能なりました。DIVAの平行度、振動板からの距離、Troubadourの左右の間隔、それらをすこしずつあわせていきました。こちらは、相当な集中度がいりました。一時間以上時間をかけたでしょうか?いろいろなCDをかけ、音のバランスを追い込んでいきます。先週の写真と比べてみると、広がりの差がわかりますね。
先週も鳴らしたパトリシア・バーバーの伴奏のベースの音のリアリティがあがりピアノの低弦の響きも出てきました。もはや先週と同じ曲を聴いている感じがしません。DIVAの平面SPですから、横浜のMさん宅のような大迫力ではないですが、実物大のぞくっとくるような音がたまりません。ここまでくれば、大満足です。後は、アンプを反対にする組み合わせですね。その場合は、SPコードもかわるでしょう。
いい音が出始めると、いろいろなCDを取り替え聞き始めます。自然に収録されたアルバムがいい音で鳴りますが、スタジオで、音を作られたCDはあらがすぐ見えてしまいます。今回もトラバドールのすごさを実感した夜に鳴りました。
気がつくと、もう11時になろうとしています。雨はだいぶ弱くなり、この時間帯だと道も空いていて、秋葉原から30分ぐらいで帰ってくることができました。いい音がすると疲れも心地よい疲れになりますね。まだまだ音は良くなるHさんの音をご友人のSさんはどう聞かれるでしょうか?
by TANNOY-GRF
| 2015-06-14 15:50
| H氏邸の隠れ家
|
Comments(4)
Commented
by
s.y
at 2015-06-16 12:11
x
GRF さま
ごぶさたしてます。
横浜のM さんといい、隠れ家のH さんといい、なにやら大変なことになっていますね。
いや、ほかのみなさまも、それぞれに充実した音楽生活で頭がさがります。
わたくしも頑張らねば。
神田明神下にご紹介したい、ふぐ料理あり。シーズン・オフの今は、はも料理です。
S.Y
ごぶさたしてます。
横浜のM さんといい、隠れ家のH さんといい、なにやら大変なことになっていますね。
いや、ほかのみなさまも、それぞれに充実した音楽生活で頭がさがります。
わたくしも頑張らねば。
神田明神下にご紹介したい、ふぐ料理あり。シーズン・オフの今は、はも料理です。
S.Y
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by
TANNOY-GRF at 2015-06-16 12:49
横浜のMさんと隠れ家のHさんは文字通り、Hi-endです。だからといって、むやみに掛けているわけではありません。ポイントに集中しています。この域に達するまでは、そうとう授業料を使ってはいますが。s.yさんもぜひ頑張って音楽生活を送って下さい。季節柄、ふぐでも無いので、とりあえずは、お宅の側で!
Commented
by
s.y
at 2015-06-18 14:19
x
GRF さま
ぜひ、お越しください。
拙宅のオーディオは今のところミリ単位で調節したつもりです。
Lita Streichはすっくと舞台中央に立ち、僕よりも頭ひとつ背が高いでしょうか。
アンドレス・セコビア愛奏曲集Ⅰも豊かに広がっています。
低音が出てきて、細部も繊細です。
いうことないようなのですが、オーケストラの広がりはこれでいいのでしょうか?
RCO の舞台が現物よりは急峻に表現されているではないかと感じます。
実際の現場で聞いていないので、なんとも評価のしようがありません。
もう少し大きく広がっているのではと思うのですが・・・・。
そのあたり、近所の鰻屋ともども、ワタクシも、ウナギ並に首を長くして待っています。
S.Y
ぜひ、お越しください。
拙宅のオーディオは今のところミリ単位で調節したつもりです。
Lita Streichはすっくと舞台中央に立ち、僕よりも頭ひとつ背が高いでしょうか。
アンドレス・セコビア愛奏曲集Ⅰも豊かに広がっています。
低音が出てきて、細部も繊細です。
いうことないようなのですが、オーケストラの広がりはこれでいいのでしょうか?
RCO の舞台が現物よりは急峻に表現されているではないかと感じます。
実際の現場で聞いていないので、なんとも評価のしようがありません。
もう少し大きく広がっているのではと思うのですが・・・・。
そのあたり、近所の鰻屋ともども、ワタクシも、ウナギ並に首を長くして待っています。
S.Y
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by
TANNOY-GRF at 2015-06-18 16:55
S.Y さん ご近所の鰻やさんの匂いにまけて、お伺いしましょう(爆)!最近の写真をまた一枚お送り下さい。お聞きしている限り、言う事がないように思われますが、人間は欲深いモノですね。特に我々のような人種は!今お使いの装置は、やはりハイファイですから、実際より急峻に表現されるのです。自然のように柔らかい音を求めるには、勇気と確信が必要です。ウナギを食べながら、そのあたりもお話し致しましょうか(笑)