2017年 06月 15日
夜香さんのご感想 『新次元のアナログサウンド』 |
昨日はGRFさんのお宅でアナログを楽しませてもらった。
きっかけは有機ELの話だったのだが、横浜のMさんとcatbossさんがいらっしゃると聞いて、半ば強引に同席をお願いした。 当日は午後の仕事が予定よりも長引き、GRF邸に到着したのはやや遅れて18時。みなさんすでにニコニコ顔でアナログサウンドを楽しんでいた。
横浜のMさんとcatbossさん、そしてお二人のご友人のTさんの三人。私を含めて4人のゲストとなり、「人が多くて音が変わってしまった」とやや不機嫌なGRFさんを尻目にみなさんとても楽しそう。
この日のスピーカはトロバドールシステム。一聴して、いよいよ完成の域に入ったと思われる見事な音を聴かせてくれるが、それをこの日は徹頭徹尾アナログを楽しむという趣向である。
GRFさんはもちろんアナログLPにも精通されており、ハードの知識や経験、さらに膨大な数の貴重な音源を所有されている、アナログの大家と言ってもいい方。しかし、一方で、CDが冷遇されている現実を嘆いている側面もあり、CDの素晴らしさを事あるごとに熱く語っているし、実際に、見事な音を楽しんでいらっしゃる。ある意味、CDの良さを蔑ろにして、みんな安易にアナログに走りすぎているというアンチテーゼを提示されていると私は感じていた。
そのGRFさんがMolaMolaというフォノイコラザーを導入されたあたりから、少し様子が変わった感じを受けた。そこに来ての今回のアナログパーティということで、これは是が非でも参戦せねばと思った次第。
到着してすぐに越路吹雪のゴージャスな歌が朗々と響き渡る。こちらは臨戦態勢に入っていないため、しばらくは内容ではなく、純粋に音を聴くことに集中して、戦闘状態にまずはもっていく。
フランク永井、前川清などのライブ盤を中心に、どんどんテンションがあがっていく。この日のアナログサウンドは、さすが、GRFさんがぜひ聴いてほしいとおっしゃるだけのことがあり、圧倒的に安定した低域再生をベースに、ちょっと尋常ではない広大な音場感がまずは印象的。
音色そのものはこれまでのGRFサウンド同様、エキセントリックであることを、あえて廃したような徹底した客観を印象づける一方で、我が家を含めて、幾多の方のところで聴かせてもらったアナログサウンドと、なにか決定的に違う雰囲気を感じた。
それはやはり前後左右に広がる音場感なのだとおもう。360度音場と最近はGRFさんがおっしゃっているが、たしかに前後左右だけではなく、上下にすら音が漂う。ガッチリとした定位感を聴かせるのではない、それはあくまでも漂うのである。生音を思い浮かべてみればいい。現実世界の音は決してオーディオのようにガシッと決まった定位などしない。そういうリアルな音場感を360度に展開しているのである。
ライブの最中に、本来の用事であったX910のセッティングを見せていただくために、一度、GRFの部屋を離れた。
このX910のセッティングで、私はまた大きな課題をいただき、こちらの意味でも、今回、無理を押してお邪魔させていただいたよかった。
で、再び部屋に戻ると、そこからはクラシックが始まる。
貴重なオリジナル盤とそれに近しい盤との比較は、やはりここに来ないと聴けるものではない。クラシックになると360度音場が全開となり、アナログでもこれほど見事に音が広がり漂うかと驚くばかり。
オリジナルとそうではない盤の比較でも、決して優劣とはいえないものや、明らかに優劣であるものなど、盤によって千差万別であることも音として表現して聴かせてくれる。音場の出来方の違いが面白いようにハッキリとわかるのである。
ここで、GRFさんから衝撃のお話があったが、これはあえて語らない。
デッカのデモレコードも演奏してもらった。時代の最先端であり、WEが国家事業として取り組んでいた時代のオーディオの凄みをまざまざと見せつけられた。
ここでカートリッジをベンツのLPエボニーからDENONのDL-103に変えて聴かせていただいた。
音場感の違いはいかんともしがたく、クラシックの再生においては断然エボニーが楽しく演奏会場にトリップさせてくれる。
しかし、その後の歌謡曲再生でDL-103恐るべしを思い知る。
私もDL-103はもう40年近く常に手元においてあり、使い続けてきた。だから、良いところも悪いところを知り尽くしているつもりなのだが、この日のDL-103は、私の知っているDL-103の限界を超えた音を聴かせてくれた。もう、圧倒的に歌謡曲なのである。こういう歌謡曲を聴かされると、私はかなり焦る。あまりにも素晴らしくて、非常に不愉快になった。
愛が溢れてきた。
テレサ・テンへのGRFさんの愛を感じる見事な音であった。このシングル盤は私の愛聴盤でもあるのだが、こういう風に鳴るとは思ってもみなかった。ふわっと漂う音声の中でテレサがしっかりと存在している。この空間的なDレンジの広さは脱帽であった。
そして、太田裕美の「こころが風邪を引いた日」のラストの「わかれ道」。これも私の愛聴盤であったが、なんていい曲なんだと心底感動した。歌詞がしっかりと伝わってくる。そして曲に仕込まれた様々な仕掛けが、めくるめくように展開してくるのである。聞けば、最近NHKのBSプレミアムに触発されて購入されたそうであるが、私はこの曲を全然きちんと再生できていなかったことを思い知り、再び不愉快になった。
その後、場所を変えて65X910で、そのNHK BSプレミアムの太田裕美を楽しませてもらった。この番組みたら、「こころが風邪を引いた日」のレコード欲しくなるわな〜と実感。 とても良い番組であった。
この日、聴かせていただいたアナログLPの数々。これほどの音が入っていのかと驚くものばかりであったし、おそらく、これらを作った人たちの誰一人として、これほどの情報を入っていたとは知らなかったのではないかと思った。
それは、65X910ではじめて、カメラの限界をしり、同時にこれまでの受像機で表現できない情報をすでにカメラは取り込んでいたことを知った、それと同じことを思った。
今じゃなければ聴くことのできなかったLPサウンド、これまでGRFさんが取り組んできたアナログLP再生の結論がこの日のサウンドであったと思う。
お見事でありました。
夜香
夜香さん
素晴らしいご感想をありがとうございました。
一昨日の音が今までのオーディオ人生の中で一番いい音がした晩でしたね。
オーディオは装置が出すのでは無く、それを育ててきた歴史と、一緒に聴いていただいている方々の熱い想いが昇華してあのような音を作るのでしょう。
夜香さんを不愉快に出来て、本当に愉快な晩でした(爆)。
アナログのネジをしっかり巻いてくれた横浜のMさんのおかげでもあります。また、生の音の現場で何十年も活動されているPAのプロでもあるcatbossさんの嬉しそうなお顔を見ているのも嬉しく、楽しくなりました。
X910の自然だけど、深く本当の黒も出ている画面を見て、デジタルでもアナログでも究極のポイントでは融合するのですね。新しい時代に入ったと確信しました。時代の転換点の製品ですね。
by TANNOY-GRF
| 2017-06-15 08:54
| 来たり
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