2017年 12月 11日
RICHEBOURG邸の豊かな時間 |
RICHEBOURGさんといえば、やはりワインですね。お名前のRICHEBOURGはブルゴーニュの有名なロマネ・コンティの隣の畑の名前です。最高級ワインです。私は残念ながら味わったことはありませんが、ロマネ・コンティと並ぶほどの値段だし味だそうです。
今日は、音楽ばかりではなくワインやお料理も準備されていました。RICHEBOURGさん特製のコース料理です。まず、ワインは白が飲みやすいテーブルワインが05年と15年の二種類、赤はそのヴォーヌ・ロマネの15年ものか、隣接するニュイ・サン・ジョルジュの1999年が用意されていました。白はお任せにして、私はなじみのあるニュイ・サン・ジョルジュの99年を選ばしていただきました。
それが注がれるグラスも第一級品で、リーデルのグラン・クリュのグラスが用意されました。これもカタログでは知っていましたが、使うのは初めての高級グラスです。ワインはグラスによって大きく味が変わります。ワインそのものの価格より、飲まれるグラスの方のグレードを上げた方が、結果が良いようです。逆に良いワインでも、普通のグラスでは、その良さを発揮しません。器の重要性の話ですが、オーディオにも通じるところがありますね。グラスに当たるのは、やはり部屋でしょうか。
初期ステレオLPプレイバックシステム(1957~1963)のラインアップは次のようになります。
Player(GARRARD 301)→
Cartridge(DECCA MK1st)→
Phono eq(QUAD QC2後期)→
OPT(gardner仮)→
Fader(w85)→
Power amplifier(Paramount &仮)→
SP(wharfedale , lockwood)
かかった曲は、59年の録音で、ショルティ指揮のウィーンフィルのベートーヴェン 交響曲第三番英雄から第一楽章でした。これは初めて聴きました。若い時ですが、ショルティ特有の明確で、それでいてしなやかな演奏です。59年といえば、ワーグナーの指輪の録音に携わっていた頃です。このベートーヴェンも大変スケールが大きい演奏です。そして、若さにあふれていました。私はシカゴとの89年の録音を何時も聴いています。明快で力強くそれでいて熟成している演奏です。
次に掛けていただいたのはアンセルメ・スイスロマンドの演奏で、ドビッシーの「映像」から「イベリア」です。スイスロマンド特有の重く、幾分暗い背景から、色とりどりの情熱あふれた音が飛びだしてきます。カスタネットがスペイン風のリズムを取る裏で、情緒あふれた民謡風の旋律が動いていきます。のんびりした二楽章も好きなのですが、どこかあやしい三楽章の旋律も、良く聴くとカルメンで聴いたような旋律です。
次の曲がかかる前に、SPの接続を換えて、前方のワーフデルに結線をつなぎ替えました。調理場では、今日のメインのラムのステーキを焼く匂いがしてきます。前菜ともにワインが進みますね。オードブルは、水牛モッツァレラのカプレーゼ、サラダ(いちご、フロマージュ)、サーモンのミルフィーユ、生ハムのムースなどです。RICHEBOURGさんは、ワインのソムリエばかりではなく、料理のシェフもこなされるのですね。
ワーフデルに換えて掛かったのは、先日の川崎のミューザでの、ラトル・ベルリンフィルの記事の中で、アンコールで掛かったマノンレスコーの記事を見て用意していただいたのは、カラヤン・フィルハーモニアの名盤、オペラ間奏曲集です。これはモノラル録音が1955年頃、ステレオの再録が59年頃の名盤です。今日は、ステレオのSAXのブルーシルバーですから、いい音がして当たり前なのですが、淡々とでも密度濃く演奏していくフィルハーモニアのソリスト達と、カラヤンの名人芸に心を奪われました。ワーフデルも、モニターレッドに負けない音を出しています。RICHEBOURGさんの配慮と、カラヤンの演奏にしびれました。
RICHEBOURGさんが、今までの装置をすべて破棄して、60年代の名演奏を聴くために再構築を始めたのは、三年前になります。自分の信じる方向に舵を取り直し、一から構築し直したのは、勇気がいることですが、他人のためにオーディオをしているわけではないし、特定の機器やアクセサリー、調整の方法を人から強要される必要も全くありません。折から、同じ方向に進んだ先輩もおり、的確なアドバイスをいただける環境にも恵まれて、ここまで来たわけです。
音楽を楽しむ装置なのに音に苦しむ必要は無いし、人にあら探しして貰う必要も全くないのです。趣味の世界は、往々にして自分がやってきたことだけが正しいと信じやすいものです。楽しみのためにしてきたことを人からだめ出しされる必要はありません。私自身、所構わずトントンこつこつやっているわけではないのです(苦笑)。
オーディオは長い期間を掛けて、自らを熟成することでなりたつ趣味だと思います。自分と違うからと他人の音をけなすのではなく、良い点を見つけて、それを自分の音の肥やしにする姿勢が大事ですね。「一神教」的な対応ではなく、神様はやおよろずに存在するという自然信仰的な尊敬の心が大切です。
最後は、1948年~1956年頃のモノラルのシステムから聞かせていただきました。そちらの構成は、
モノラル LPプレイバックシステム(1948~1956)
Player(GARRARD 301)→
Cartridge(DECCA MK1mono)→
Phono eq(QUAD QC2初期)→
OPT(Telefunken)→
Fader(w85)→
Power amplifier(Paramount仮)→
SP(wharfedale仮)
美味しいワインも、お料理もいただいて幸せになった私に、最後に掛けられた曲は、カラヤン指揮フィルハーモニア管弦楽団のブラームスのハイドンの主題による変奏曲です。最初から素晴らしい音です。端正で、品があり音量は小さめですが、余裕があり音が浸透してきます。音はひとなりと言われますが、まさしくこの音は、RICHEBOURGさんの人柄を表しています。
楽しい時間はあっという間に過ぎ去っていきます。二時過ぎにお邪魔したのに、もう九時を回りました。最終のバスを頼みにバス停に向かったのですが、一足違いで逃してしまいました。それできれいな夜景が見れる坂を下り、折良く来たタクシーで、先の元町・中華街の駅に戻ってきました。特急はさすがになく、自由が丘までは各駅停車で帰ってきました。また丸ノ内線の連絡や車庫行きで待たされ、帰りは行きの倍も掛かりましたが、心は充足していました。
RICHEBOURGさん、いろいろごちそうさまでした。今度はご友人をお誘いの上また遊びに来て下さい。美味しいワインは何時も用意してありますから(笑)。
by TANNOY-GRF
| 2017-12-11 00:27
| 行ったり来たり
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Comments(4)
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パグ太郎
at 2017-12-11 08:46
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ワイン、料理、素晴らしい音楽。豊かなひと時を過ごす最高の組み合わせですね。リーデルのグランクリュのグラスをリスリングルームに例えられる所が、オーディオ趣味人の面目躍如と拝察しました。紹介されたレコードを見ているだけで当方も贅沢な気分にさせていただきました。
特上のワイン、特製のお料理、良く考慮された名曲で、とても素敵な時間でした。選ばれた曲は、関連性もあり、いずれも小さな驚きを秘めていました。50年代から60年代の録音が主でしたが、DECCAでかけると魔法も掛かります。録音と再生の時世を合わせることも大切な要素ですね。イベリアが懐かしくもあり、新鮮に聞こえました。
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のびー
at 2017-12-20 02:29
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遅レスですみません。あちこち移動していて見落としていました。でも、あまりに格好いいので思わずコメントしたくなりました。私もいつかこのような装置、友人、ワインで音楽を語りたいものです。
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TANNOY-GRF at 2017-12-21 07:47
のびーさんが今年行かれたのも、ボーヌあたりの地域ですね。私もまた、行きたいです。