2018年 01月 05日
「GRFさん邸を訪れました」 KM1Vさんのご感想 |
GRFさんとは、10年程前、懇意にしているオーディオショップにSD05の設計者である故・石田氏が訪れた際に食事をご一緒させていただきました。昨年9月末に有楽町のオフ会で再会し、続いて拙宅にお越しいただきました。是非ともGRFさんのお宅へと熱望し、お忙しいところご調整いただいたものです。
まずは、和室の音を聴かせていただきました。バーズアイメープルの模様が圧倒的な存在感のユニコーン、石田さん改造のソニーのCDP-MS1改、O氏のDAC、工藤氏のプリとCD-34改、是枝氏のモノラルパワーアンプのシステムです。
まずはクラシックから。ジャーマンフィジックスを聴くのは初めてでした。とても不思議な鳴り方で、スピーカーの存在を感じさせずにどこで聴いても定位します。また、音場型でありながらもフワッとして心許ない低域ではなく、バシッと気持ちいい低音が出ています。抜群のリニアリティは、是枝氏に特注したパワーアンプが貢献しているとのことでした。
スピーカーのすぐ後ろは壁なのに、奥行き感も忠実に再現されていて、さながらコンサートホールにいるようです。ところが、ジャズのライブ盤を掛けていただくと、直ちにその空間がライブハウスに変わりました。
ジャンルによる得意不得意がなく、どのようなソースにも適応できる素晴らしいシステムです。オーディオを聴くというより、音楽を心から楽しめます。
続いて、洋室のメインシステムを聴かせていただきました。
トロバドール80とPSDのウーハーの組み合わせです。
こちらの送り出しはEMMのトランスポートとMOLA MOLAのプリ(DAC機能あり)、和室と同じ是枝氏のパワーアンプです。
MOLA MOLAのDAC部は優秀ですね。EMMのDACも聴かせていただきましたが、世代が違うせいか、MOLA MOLAの方がより自然な音です。
こちらのシステムは、スケール感が際立っていて奥行きの制約がなく、重低域も凄いです。演奏が始まる前の暗騒音とか、重低音が体に伝わる震動とか、とにかくその場にいるのと変わりません。低域は音楽の骨格となる重要なものですが、この部屋の床も相当強化されているとお聞きしました。
もちろん低域だけではありません。トライアングルが鳴る場面では、チーンと音が飛んで来ます。刺激的な音を排除して聞きやすくごまかすようなことは一切なく、全ての情報をあからさまにするよう調整されています。また、全帯域の位相が揃っているのが驚異的で、300Hz以下でウーハーを使っているとは信じられません。
文章がやや説明的になってしまいましたが、ひとたび音楽を掛けていただくと、演奏にすっと入っていけます。オーディオ的にどうだというのが馬鹿らしくなる位、音楽を堪能できます。
以前拙宅にお越しいただいた時に、ソフトの問題を提議されていました。
今回も、アナログディスクの初版盤と再発盤を聴かせていただき、あまりの違いにびっくりしました。こうも情報量が違うとは、全くの別物といっても差支えありません。
それにしてもここまでフォーカスの合ったアナログの音を聴いたのは初めてです。私はアナログをやっていないのでわかりませんが、初心者が安易に手を出すべきではないそうです(笑)
GRFさんの音はオーディオの理想形でした。まさに王道。小手先じみたことは一切やらずに、本質を究めていらっしゃると感じました。
私がKM1Vを導入したのは今から23年前のことです。レイオーディオ試聴室のような音がなかなか出なくて、どのようなCDプレーヤーを使ったらよいかと木下さんに質問したことがあります。(CDプレーヤー以外は全てレイオーディオ製だったため)
その時の回答は「じっくりやられてはいかがですか?」でした。あれから20年以上経過し、昨年はアンプも更新して、ようやく目標となる音に近づいて来ました。実におこがましいですが、GRFさんもコツコツとやるべきことを実践し、時には遠回りしてここまで来られたんだと想像しました。
私も精進しなければ。この度はどうもありがとうございました。
KM1V
<聴かせていただいた音源>
ジャン・ギユー(オルガン)、エドゥアルド・マータ指揮 ダラス交響楽団
ショスタコーヴィチ交響曲第15番、ベルナルト・ハイティンク指揮 ロイヤルコンセルトヘボウ
パトリシア・バーバー「ナイト・クラブ」
ベートーベン ピアノ協奏曲第5番 クラウディオ・アラウ(ピアノ) サー・コリン・デイヴィス指揮ドレスデン歌劇場
プロコフィエフ「ロミオとジュリエット」チョン・ミュンフン指揮 ロイヤルコンセルトヘボウ
マーラー交響曲第2番 ギルバート・キャプラン指揮 ウィーン・フィルハーモニー
イネッサ・ガランテ「Debut」 ラトヴィア歌劇場管弦楽団
トニー・ベネット「Bennett Sings the Blues」
ラヴェル「ラ・ヴァルス」マリス・ヤンソンス指揮 ロイヤルコンセルトヘボウ
越路吹雪、森進一、クールファイブ、金子由香利
KM1Vさん 実に簡潔で本質をとらえた感想をありがとうございました。先日お会いしたときは、以前、お茶の水で会ったときのことは思い出せなかったのですが、この文章をいただいてその夜のことを思い出しました。あれから10年経っているのですね。石田さんとの楽しい時間は私のオーディオ人生の中でも忘れられない出来事です。
先日、KM1Vさんのお宅にお伺いしたときも、外連味のない音に感心しました。長年、努力されてきた事がそのまま音に現れていました。それは良いソースを再現したときに現れます。つまらないソースをそれなりに聴かせる装置は、実は何を掛けても同じ音がしています。HiFiとはソースに対して高忠実であると言うことです。オーケストラを鳴らせば、コンサートホールにワープし、ジャズを鳴らせば、スタジオやライブハウスのかぶりつきにならなくてはいけません。
レコードでお聴かせしたのは、森山良子のセ・フィニの初版盤と再販盤です。ゴードン・ジェンキンスのアレンジで作られています。ゴードン・ジェンキンスはナット・キング・コールやフランク・シナトラのアルバムのアレンジャーとオーケストラで有名ですね。そのアレンジでアルバムを作るためロスアンジェルスまで行って録音した盤です。その初版盤はゴードン・ジェンキンス特有の濃い音で録られています。ところが、二版目になると、お茶漬けにしたように音が薄くなります。クラシックのヨーロッパ盤と日本盤と同じパターンです。制作者が盤作りに関与していないし、機械的に作っているからですね。
その傾向は、アナログレコードだけではなく、CDでも同じ事がいえます。CDを製造するときに、必然的に変化する分を見越してマスターをどう作るかもとても重要な事です。最近、話題に上がっているBlu-ray Audioでも、マスターテープからどのようにデジタルに変換するかが問われるのです。私が50年前の4トラックテープにこだわるのは、テープが一番製作するときに気を遣い、ロスが少ないからです。音楽では大切なエネルギーを再現できるからですね。そういう違いを聴いていただきました。
オーディオを追求するのには、良いソースを手に入れることが最優先事項ですね!オリジナルの音が持っているエネルギーと繊細な情報が再販盤ではなくなることが多いからです。コンサートホールを再現するのは、残響成分などの微小信号の再現が大事ですから。
KM1Vさんと一緒に来られたやはりレイオーディオのオーナーのUさんのご感想もお聞きしたいですね。また遊びに来て下さい。
by TANNOY-GRF
| 2018-01-05 00:53
| 来たり
|
Comments(3)
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TANNOY-GRF at 2018-01-05 09:26
責任あるCD制作者は、最終商品である販売される商品での音作りを目指します。お客さんに感動を伝えたいと願っている関係者ならそうするでしょう。しかし、再販ものだと思ったり、制作時の情熱がないものを作る会社の姿勢が問われます。
EMIが買収されるとき、沢山の全集が出ました。まるでアーカイブを作るように。赤や黒の全集は、とても品質の良いものでした。鳴り物入りで出ていた新しい技術を宣伝していた盤より、まともだったからです。
青いマークに変わったとき、現役盤だったラトルの春の祭典をかってやはりため息が出ました。当分、オリジナル盤の収集は続くでしょう。
EMIが買収されるとき、沢山の全集が出ました。まるでアーカイブを作るように。赤や黒の全集は、とても品質の良いものでした。鳴り物入りで出ていた新しい技術を宣伝していた盤より、まともだったからです。
青いマークに変わったとき、現役盤だったラトルの春の祭典をかってやはりため息が出ました。当分、オリジナル盤の収集は続くでしょう。
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KM1V
at 2018-01-05 19:27
x
LPの詳しい説明ありがとうございます。
再販盤は、単に複製の回数が増えるから劣化しているわけではないのが厄介ですね。
今回GRFさんの音を聴かせていただいて、拙宅の音が物足りなく感じます。昔はメーカーのデモでいい音を聴くと、帰宅して自宅のシステムにがっかりしていました。最近はメーカーのデモでもオフ会でも、そういうことはなくなりました。むしろ気持ち悪くなって、自宅で口直しというか聴き直しをする機会が増えたように思います。
ところが…
久しぶりに感動しました。
どうもありがとうございました。
再販盤は、単に複製の回数が増えるから劣化しているわけではないのが厄介ですね。
今回GRFさんの音を聴かせていただいて、拙宅の音が物足りなく感じます。昔はメーカーのデモでいい音を聴くと、帰宅して自宅のシステムにがっかりしていました。最近はメーカーのデモでもオフ会でも、そういうことはなくなりました。むしろ気持ち悪くなって、自宅で口直しというか聴き直しをする機会が増えたように思います。
ところが…
久しぶりに感動しました。
どうもありがとうございました。
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TANNOY-GRF at 2018-01-05 22:39
KM1Vさん 「久しぶりに感動しました」こう言われるのは嬉しいですね。KM1Vさんと私の目指している方向が同じだからでしょうね。今日はOrisukeさんが来られました。同じようなポイントで喜んでいただきました。嬉しいです!