2018年 02月 08日
Richebourgさんの「GRF邸訪問記」後編 『EPILOGUE』 |
昼間とは違う景色の夜道を抜け、程よい寒さの中で、酔いが醒める頃には駅へ着いていました。先ほどまでの静けさとは違う、賑やかな土曜の夜の電車内ですが、私の頭の中では、先程のクレンペラーのマーラー7番が聴こえてきました。
GRFさんは、線引きをせず、また、新旧問わず、幅広く演奏を聴かれ、また常に模索されています。それは、今回のソフトからは勿論、ブログからもひしひしと伝わってきます。また、その幅広いライブラリをプレイバックする為に沢山の機器、部屋をお持ちです。
例えば、アナログ時代のGRFに始まり、デジタル初期では同時代のCD34が。そして、より新しい時代のEMMやユニコーン。
今回は、古い録音から新しい録音までプレイバックするべく、ダブルスタックのトラバドール80とウーファーを組み合わせたSPまで開発されました。新しいデジタル時代はmolamolaのDAC付きプリと組み合わせて、アナログ時代のレコードは別系統でフォノイコを組んだmolamolaを使い別けられています。和室ではユニコーンがありますし、もう少し前は、もっと沢山の機器をお持ちでした。
それでも、聴かせて頂くと、どの機器もお部屋もスケールは違えど、同じ音楽の形なのです。きっと、時間を作って音楽を聴いて、ご自身と向き合っていらっしゃるのだと思います。ただでさえご多忙なGRFさんの、何処にそんな時間があるのだろうと、何時も驚かされてしまいます。そして、音楽を朗々と歌う様は、GRFさんの懐の広さ以外の何物でもありません。
かれこれ4年近く胸をお借りさせて頂いていますが、その間『俺の好きな音』なんて一言たりとも口にされませんでした。音楽は、感動は、ソフトの中にしかありません。ソフトの中で完結している事で、聴き手はただ、ただ、それを受取るのみだからです。
逆に音楽に耳を傾けなければ…
4年前、私は、GRF邸で聴いたソフトを沢山買い込みました。自宅でも再現出来ないかと思ったからです。でも、家で聴いてもそんな音楽体験出来るわけありません。そして、演奏ではなく、音にフォーカスをしはじめ、更には、音から機器へと傾倒しました。そして、そんな賤しい思いから手を出したソフトは、最後には手放していましたね。作曲家、演奏家が丹精込めて創り上げた芸術に『好み』や『音質』といった、自身のちっぽけなモノサシではかった仕打だと自戒しています。
この機器は音が…録音が良くないから…使いこなしが…デジタルは…アナログは…などなど…そんな固定概念や観念的な方向に進んでしまうと、音楽を聴く(芸術家からの感動を享受する)という本質から別の方向へ進んでしまい、果てはオーディオも辞めてしまうでしょう。
聴く音楽(ソフト)は自分自身で探し、機器に責任転換するのではなく、自分自身を磨く事からが始まり。とのご指導を言葉ではなく、音楽で頂いた以前の記憶を思い出していました。
その人の御宅では、その人以上の音は出てこない。だから、機器や使いこなしではなく音楽に耳を傾け、自分自身と真摯に向き合い磨かなければ、感動には辿り着けない。
そんな事を思い始めた頃、大編のマーラー7番は終わり、私は自宅へと辿り着いていました。
明日からは、また自分自身の音楽を探し、聴いていこうと思いを新たにした次第です。
GRFさん、お忙しいところ、ありがとうございました。今後とも宜しくお願い申し上げます。
RICHEBOURG
by TANNOY-GRF
| 2018-02-08 07:13
| 来たり
|
Comments(4)
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TANNOY-GRF at 2018-02-08 21:49
RICHEBOURGさん 長編のご感想ありがとうございました。昨日から出張に出ていますので、お送りいただいた感想文をそのまま掲載させていただきました。
美味しいワイン、美しい音楽、楽しい会話。とても充実した時間でした。次回は、よりレコードを聞きましょう。そして、GRFもならしますよ。
美味しいワイン、美しい音楽、楽しい会話。とても充実した時間でした。次回は、よりレコードを聞きましょう。そして、GRFもならしますよ。
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パグ太郎
at 2018-02-08 23:17
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Richebourgさん
音楽へ向き合う真摯な姿勢に共感出来る所、そして自らを振り返って反省する所、大でした。自分も全てはソースの中にあり、それを受け止められるかどうかは自分自身にあるとは判っていながら、時には機器に、時には録音の良し悪しに、気をとられてしまいます。この煩悩それ自体も、やはり自分自身であることには違いなく、その右往左往を楽しむしかないのかもしれません。と、安きにに流れるのは駄目ですね。
音楽へ向き合う真摯な姿勢に共感出来る所、そして自らを振り返って反省する所、大でした。自分も全てはソースの中にあり、それを受け止められるかどうかは自分自身にあるとは判っていながら、時には機器に、時には録音の良し悪しに、気をとられてしまいます。この煩悩それ自体も、やはり自分自身であることには違いなく、その右往左往を楽しむしかないのかもしれません。と、安きにに流れるのは駄目ですね。
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RICHEBOURG
at 2018-02-10 09:43
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GRFさん
こちらこそありがとうございました。
ご記載頂いたとおり、美味しいワイン、美しい音楽、そして、その時を共感出来ることでの楽しい会話。あっという間の6時間でした。
そして、何時もながら美味しいパン(めちゃくちゃ美味しい恵方巻きまで!)ご馳走さまでした。奥様にも宜しくお伝えください。
オートグラフ、楽しみにしております。
こちらこそありがとうございました。
ご記載頂いたとおり、美味しいワイン、美しい音楽、そして、その時を共感出来ることでの楽しい会話。あっという間の6時間でした。
そして、何時もながら美味しいパン(めちゃくちゃ美味しい恵方巻きまで!)ご馳走さまでした。奥様にも宜しくお伝えください。
オートグラフ、楽しみにしております。
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RICHEBOURG
at 2018-02-10 10:02
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パグ太郎さん
私は、芸術家からの感動を得る事を目的としてから、その目標として、オーディオは好みでは無く、規格に沿い、あるべき通り使う事としました。
ですが、私自身、気が付いたら、目的と目標が入れ替わってた。なんて事も…従って、大それた事をかける様な身分では無いのですが、ゴール(目的)がブレない様に意識を心掛けたいと思い、自戒も込めて書かせて頂きました。
一方で、趣味なので、何処にプライオリティをおくかはオーナー次第ですよね。別の視点から見れば、私が偏っているともとれますし、ご記載頂きました、『右往左往を楽しむ』は、真っ直ぐ進むよりも、見方に幅が出て、良いのかとも感じた次第で、1つの立派な形だと思いました。
私は、芸術家からの感動を得る事を目的としてから、その目標として、オーディオは好みでは無く、規格に沿い、あるべき通り使う事としました。
ですが、私自身、気が付いたら、目的と目標が入れ替わってた。なんて事も…従って、大それた事をかける様な身分では無いのですが、ゴール(目的)がブレない様に意識を心掛けたいと思い、自戒も込めて書かせて頂きました。
一方で、趣味なので、何処にプライオリティをおくかはオーナー次第ですよね。別の視点から見れば、私が偏っているともとれますし、ご記載頂きました、『右往左往を楽しむ』は、真っ直ぐ進むよりも、見方に幅が出て、良いのかとも感じた次第で、1つの立派な形だと思いました。