2006年 09月 24日
静寂へのダイナミックレンジ |
若い日に、ムラヴィンスキーの演奏を生で聴けたのは、僥倖でした。以降、未だにあの経験を越える感動を実演では聴いたことが有りません。その時、ムラヴィンスキーを聴きながら思ったことがあります。この希有な体験を通して、トスカニーニやフルトヴェングラーの音を想像することができるのでは!ということでした。
昨日久しぶりに、トスカニーニの演奏で、ブラームスの一番を聴きました。NBCではなく、ウォルター・レッゲが、亡くなってから出てきたフィルハーモニアのテープです。大戦を挟んで、イギリスでの演奏を中断していた、トスカニーニが高齢を押してロイヤルフェスティバルホールに戻ってきた、歴史的な演奏です。フルトヴェングラーやカラヤン、カンテネリと協演してきた、フィルハーモニアの面々が、文字通り畏敬と尊敬の念で、全力を挙げて演奏しています。手兵のNBCの研ぎ澄まされた演奏と違い、両者に一期一会の高揚感があります。
トスカニーニにとって、ブラームスは特別な作曲家です。ワーグナーと同じ意味で、彼のロマンチシズムが顕れる演奏をします。一番の第4楽章の第二主題が始まるところや、第三番の三楽章の情感を込めて演奏するところは、全ブラームス録音の中でも白眉でしょう。私は、トスカニーニのブラームスの三番よりロマンチックな演奏を聴いたことはありません。
盛大な拍手で、迎えられたマエストロは、イギリス表敬として、国家を演奏します。これがすばらしい演奏です。続いて、一転して悲劇的序曲の緊張が、会場を包みます。オーケストラも緊張感がありありと感じられます。まだ、オケがテンポについていくのが精一杯というかんじです。しかし続く、第一番の演奏は冒頭から素晴らしい高揚を見せます。最初のティンパニーの連打のとどめの部分の深さは、数あるフィルハーモニアの演奏でも白眉でしょう。ブラームス特有の深みのある木管・金管がホールに響き、日頃のフィルハーモニアとは、違う響きがしています。弦楽器の思いも深く、曲が進むにつけて、どんどん深化していきます。魂を掴み取られる様な、ティンパニーに心が痺れます。ブラームスは二十年も掛けて作った意味が判ってきます。
SD05とGRFの奏でる、テスタメント録音のモノーラル盤は、聞き始めるとステレオと何の遜色の無い音質でなりますし、音楽という意味では、むしろモノーラルの方が響きが深い表現をします。レコード的な作られた音ではなく、アナログテープの懐の深さが、そのまま、CDに入っています。私には、暖かいテープ独特のアナログサウンドが聴けてCDの器の大きさを感じます。音楽で一番大事な、静寂へのダイナミックレンジの広さが聴けるからです。
昨日久しぶりに、トスカニーニの演奏で、ブラームスの一番を聴きました。NBCではなく、ウォルター・レッゲが、亡くなってから出てきたフィルハーモニアのテープです。大戦を挟んで、イギリスでの演奏を中断していた、トスカニーニが高齢を押してロイヤルフェスティバルホールに戻ってきた、歴史的な演奏です。フルトヴェングラーやカラヤン、カンテネリと協演してきた、フィルハーモニアの面々が、文字通り畏敬と尊敬の念で、全力を挙げて演奏しています。手兵のNBCの研ぎ澄まされた演奏と違い、両者に一期一会の高揚感があります。
トスカニーニにとって、ブラームスは特別な作曲家です。ワーグナーと同じ意味で、彼のロマンチシズムが顕れる演奏をします。一番の第4楽章の第二主題が始まるところや、第三番の三楽章の情感を込めて演奏するところは、全ブラームス録音の中でも白眉でしょう。私は、トスカニーニのブラームスの三番よりロマンチックな演奏を聴いたことはありません。
盛大な拍手で、迎えられたマエストロは、イギリス表敬として、国家を演奏します。これがすばらしい演奏です。続いて、一転して悲劇的序曲の緊張が、会場を包みます。オーケストラも緊張感がありありと感じられます。まだ、オケがテンポについていくのが精一杯というかんじです。しかし続く、第一番の演奏は冒頭から素晴らしい高揚を見せます。最初のティンパニーの連打のとどめの部分の深さは、数あるフィルハーモニアの演奏でも白眉でしょう。ブラームス特有の深みのある木管・金管がホールに響き、日頃のフィルハーモニアとは、違う響きがしています。弦楽器の思いも深く、曲が進むにつけて、どんどん深化していきます。魂を掴み取られる様な、ティンパニーに心が痺れます。ブラームスは二十年も掛けて作った意味が判ってきます。
SD05とGRFの奏でる、テスタメント録音のモノーラル盤は、聞き始めるとステレオと何の遜色の無い音質でなりますし、音楽という意味では、むしろモノーラルの方が響きが深い表現をします。レコード的な作られた音ではなく、アナログテープの懐の深さが、そのまま、CDに入っています。私には、暖かいテープ独特のアナログサウンドが聴けてCDの器の大きさを感じます。音楽で一番大事な、静寂へのダイナミックレンジの広さが聴けるからです。
by TANNOY-GRF
| 2006-09-24 07:54
| 演奏会場にて
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