2007年 06月 27日
現代の録音について |
デジタル機器や録音機材が大変進歩して、スタジオでの録音は一層の賑わいを魅せていますが、それと同時に、MP3に代表されるような圧縮技術の進歩で、簡単に大量の「音楽」を扱えるようになってきました。イヤーフォーンで聴く音楽が一般的になってきましたが、大型装置で聴く場合は、大切な情報が欠如しているのがやはり解ってきます。圧縮が行われているのはリニアなCDでも行われていて、POPSとクラシックの録音レベルの差はますます極めて大きくなってきています。ダイナミックレンジの取れているクラシックの音楽を聴いていた後、PopsやJazzのCDを掛けるとものすごい大きな音がでて慌てることがあります。ヴォリュームの位置では4時間分ぐらいレベルが違います。その分ダイナミックレンジを狭めた音楽に為ってしまっているのでしょう。音楽の一番大事なところがスポイルされてしまいます。
スタジオ録音では、ホールのような大きさを備えた所は少なく、後から人工的にエコーを付加します。時としてそのエコーが気持ち悪いほど掛かっている例にも出会います。スタジオでは大きな音を出す楽器は衝立で囲まれたりして隣の楽器の音が聞こえず、マイクで拾われて調整卓で音量を決められた音をモニターしながら演奏しなければなりません。自分達でハーモニーを醸し出しながら演奏する大事な部分が出来ないのです。
私は、様々なCDを聴いていてやはりそのような不自然なレコードには、違和感を覚えます。もっと伸び伸びと音楽家の魂が共鳴し合うような演奏を聴きたいと願っていました。ところがクラシックでもマイクを沢山立てて録音されるのが普通になってきたようです。特に5.1チャンネル録音の場合は、最初から仮想の空間を作ります。本来2チャンネルステレオで充分再現できる音楽を、一旦バラバラにして再構成する様な不自然な事が、オーディオの名の下に行われているのです。
私は、昔のシャルランレコードのバイノーラル録音のすばらしさを忘れられません。基本的に二本のマイクだけで録るのが、一番自然です。出来上がった「音楽」という芸術作品に勝手に塩を振りかけて、胡椒をかけて味をスポイルしています。良く漬けられた「お新香」の上から化学調味料を振りかけ、おまけに醤油をかけているような物です。まったく元の音楽を殺しているのです。同じ音源からでた音を複数のマイクで録って、その位相差から位置を聞き分けるのがステレオの原理です。そこへいかに副次的とはいえ複数のマイクを混入した場合、どの様にその距離感の位相差を合成するのでしょうか?静かな池の中に拡がっていく波紋を複数の場所で録音して、再合成が可能でしょうか?
例えばドラムセットに何本ものマイクをセットしてそれを左右に振り分けるような不自然さを普通に行っています。そこには、ステレオ録音の意味を完全に殺したマルチモノ録音しかないのです。演奏会に行くとコンサートホールでもマイクが無数に立てられています。ビッグバンドを想定すると、演奏者の数より多いマイクが立てられています。
トランペットの中にマイクが刺さっている例さえ有ります。これをPAのSPから大音量で再生するのが、どうやら「生」の演奏会のようです。大音量に酔っているのであって、演奏の細かいニュアンスなどどうでも良いようです。
本当のコンサートホールで、演奏者がお互いの演奏を聴きながらハーモニーを作り出していくのが、大編成のオーケストラの醍醐味ではないのでしょうか? ビッグバンドの管楽器の構成は、大編成のクラシックオーケストラの4管編成と同じです。音量的には圧倒的です。リズムセクションとトランペット4管、トロンボーン4管、サックス5管の大編成です。総勢20名近いミュージシャンが、音楽生命を掛けて魂で演奏する醍醐味を聴いてみたいのです。昔の古いホールで聴いた大学対抗のジャズバンド合戦でも、「生」の音で勝負していました。カウントべーシーの強烈なユニゾンは、レニングラードフィルの金楽器群の様に心が震えました。御大が最後に叩くシングルフィンガーの響きも会場中に伝わっていたはずです。
静かな会場に、ソフトでメローな暖かい響きで、JAZZを聴きたいと思い、実力有るミュージシャンのご協力を頂き、いつもの、杉並公会堂で録音の実験を行ってみました。録音は、定評有るMA RECORDINGSのTODDさんにご協力いただきました。演奏者も大変感激した素晴らしい録音が出来てきました。私の夢はビッグバンドを丸ごと、録音したいと願っています。今回はそれに向かっての第一歩を踏み出すことが出来ました。
何も足さない、何も引かないは、愛用しているSD05フルデジタルアンプのうたい文句でもありますが、今回の録音は、まさにその思想を実現した音です。今週末、お茶の水で開かれるレコードコンサートで一部を聴いていただこうと主催者にお願いいたしました。一流のミュージシャンが、一流の録音技師とコラボレーションすると、どれ程の録音が出来るかの確かな証です。久しぶりに、「音楽」をオーディオから聴けたと感激しました。
スタジオ録音では、ホールのような大きさを備えた所は少なく、後から人工的にエコーを付加します。時としてそのエコーが気持ち悪いほど掛かっている例にも出会います。スタジオでは大きな音を出す楽器は衝立で囲まれたりして隣の楽器の音が聞こえず、マイクで拾われて調整卓で音量を決められた音をモニターしながら演奏しなければなりません。自分達でハーモニーを醸し出しながら演奏する大事な部分が出来ないのです。
私は、様々なCDを聴いていてやはりそのような不自然なレコードには、違和感を覚えます。もっと伸び伸びと音楽家の魂が共鳴し合うような演奏を聴きたいと願っていました。ところがクラシックでもマイクを沢山立てて録音されるのが普通になってきたようです。特に5.1チャンネル録音の場合は、最初から仮想の空間を作ります。本来2チャンネルステレオで充分再現できる音楽を、一旦バラバラにして再構成する様な不自然な事が、オーディオの名の下に行われているのです。
私は、昔のシャルランレコードのバイノーラル録音のすばらしさを忘れられません。基本的に二本のマイクだけで録るのが、一番自然です。出来上がった「音楽」という芸術作品に勝手に塩を振りかけて、胡椒をかけて味をスポイルしています。良く漬けられた「お新香」の上から化学調味料を振りかけ、おまけに醤油をかけているような物です。まったく元の音楽を殺しているのです。同じ音源からでた音を複数のマイクで録って、その位相差から位置を聞き分けるのがステレオの原理です。そこへいかに副次的とはいえ複数のマイクを混入した場合、どの様にその距離感の位相差を合成するのでしょうか?静かな池の中に拡がっていく波紋を複数の場所で録音して、再合成が可能でしょうか?
例えばドラムセットに何本ものマイクをセットしてそれを左右に振り分けるような不自然さを普通に行っています。そこには、ステレオ録音の意味を完全に殺したマルチモノ録音しかないのです。演奏会に行くとコンサートホールでもマイクが無数に立てられています。ビッグバンドを想定すると、演奏者の数より多いマイクが立てられています。
トランペットの中にマイクが刺さっている例さえ有ります。これをPAのSPから大音量で再生するのが、どうやら「生」の演奏会のようです。大音量に酔っているのであって、演奏の細かいニュアンスなどどうでも良いようです。
本当のコンサートホールで、演奏者がお互いの演奏を聴きながらハーモニーを作り出していくのが、大編成のオーケストラの醍醐味ではないのでしょうか? ビッグバンドの管楽器の構成は、大編成のクラシックオーケストラの4管編成と同じです。音量的には圧倒的です。リズムセクションとトランペット4管、トロンボーン4管、サックス5管の大編成です。総勢20名近いミュージシャンが、音楽生命を掛けて魂で演奏する醍醐味を聴いてみたいのです。昔の古いホールで聴いた大学対抗のジャズバンド合戦でも、「生」の音で勝負していました。カウントべーシーの強烈なユニゾンは、レニングラードフィルの金楽器群の様に心が震えました。御大が最後に叩くシングルフィンガーの響きも会場中に伝わっていたはずです。
静かな会場に、ソフトでメローな暖かい響きで、JAZZを聴きたいと思い、実力有るミュージシャンのご協力を頂き、いつもの、杉並公会堂で録音の実験を行ってみました。録音は、定評有るMA RECORDINGSのTODDさんにご協力いただきました。演奏者も大変感激した素晴らしい録音が出来てきました。私の夢はビッグバンドを丸ごと、録音したいと願っています。今回はそれに向かっての第一歩を踏み出すことが出来ました。
何も足さない、何も引かないは、愛用しているSD05フルデジタルアンプのうたい文句でもありますが、今回の録音は、まさにその思想を実現した音です。今週末、お茶の水で開かれるレコードコンサートで一部を聴いていただこうと主催者にお願いいたしました。一流のミュージシャンが、一流の録音技師とコラボレーションすると、どれ程の録音が出来るかの確かな証です。久しぶりに、「音楽」をオーディオから聴けたと感激しました。
by TANNOY-GRF
| 2007-06-27 14:25
| オーディオ雑感
|
Comments(6)
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チューバホーン
at 2007-06-27 18:51
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そうですね。CDが出現してからは音源を加工する事が常になってしまったのでしょうか。
合成はあくまでも合成であって本物にはなりませんからね。
Audioの作り手、使い手、そして録音の作り手が密になってこそよいメディアが増えていくのではないでしょうか。
合成はあくまでも合成であって本物にはなりませんからね。
Audioの作り手、使い手、そして録音の作り手が密になってこそよいメディアが増えていくのではないでしょうか。
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yayoishibainu
at 2007-06-27 21:42
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こんばんは。。。
加工臭のする音源が多いのは 本当にそう想います。
聴いていて 辛くなります。
小さな構成員からなる 演奏は素材の持ち味が命。
JAZZ楽器は音量差が大きいので
工夫が必要で 録音に苦労されているのかも?
一方 クラッシックは
その点 バランスが良いのかもしれませんね。
現場を知らないので 想像ですが。。。
加工臭のする音源が多いのは 本当にそう想います。
聴いていて 辛くなります。
小さな構成員からなる 演奏は素材の持ち味が命。
JAZZ楽器は音量差が大きいので
工夫が必要で 録音に苦労されているのかも?
一方 クラッシックは
その点 バランスが良いのかもしれませんね。
現場を知らないので 想像ですが。。。
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GRFの部屋
at 2007-06-27 21:56
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チューバホーンさん、yayoishibainuさん、コメントありがとうございました。久しぶりのブログです。6月は毎年忙しいのですが、今年の忙しさは異常です。やりたいことが山ほど有るのに、、、。そんな中録音できたのは望外の幸せでした。素材の良さを活かす、録音に徹していきたいと思いました。芸術は何でもそうですが録音もセンスです。微妙なバランスの上に見事に安定が生まれます。音量は距離の自乗に反比例するのを実感した録音でした。普段より二時間ほど大きな音量でもまったくうるささを感じません。それだけダイナミックレンジが広いのだと思います。演奏者は怖くなるほどの音を拾っています。次回は弦楽四重奏に挑戦です。
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Shigeki Takeuch
at 2007-07-03 06:06
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竹内です、その節は大変御世話になりました。
現在WestCoastに滞在中です、シャルランRecordは日本でTRIOを通じて販売中は中学生の私にとってはその高価格から本当に高嶺の花
でした、後年中古市場で何枚か購入しましたが、その名声とは逆にその再生に違和感を感じたものですが、再生装置の長年に渡る調整が進む
度に、その良さが認識できました。GRFのある部屋と同様にあの空気感を楽器感再現するには大変な努力と環境が必要なのでは・・・・
現在WestCoastに滞在中です、シャルランRecordは日本でTRIOを通じて販売中は中学生の私にとってはその高価格から本当に高嶺の花
でした、後年中古市場で何枚か購入しましたが、その名声とは逆にその再生に違和感を感じたものですが、再生装置の長年に渡る調整が進む
度に、その良さが認識できました。GRFのある部屋と同様にあの空気感を楽器感再現するには大変な努力と環境が必要なのでは・・・・
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GRFの部屋
at 2007-07-03 11:46
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竹内様、もうWestCoastですか?当方はようやく落ち着きのある季節になってきました。お戻りになられましたらご連絡ください。またお伺いさせていただきます。
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Marble
at 2014-01-14 15:18
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今更なコメントばかりですみません。
常日頃思っていたことをGRF様は的確に書いていただいて嬉しくなります。MA RECORDの思想、素晴らしいですね。SASSOKU、聴いてみます。
常日頃思っていたことをGRF様は的確に書いていただいて嬉しくなります。MA RECORDの思想、素晴らしいですね。SASSOKU、聴いてみます。