2008年 09月 30日
我輩の主人の部屋 後編 |
吾輩は主人の部屋の革製の足かけの上でウトウトするのが大好きである。いつも寝ているように見えるのだが、これでも夜は結構忙しい。方々で活躍しておるのだが、勿論この部屋の主人は知らない。
今日もウトウトしていたら、いつのまにやら、主人は嬉しそうにアンプの蓋を外して、くだんの男に写真を撮らしている。内部は、イコライザーと出力部、電源部が別々のシャーシーで組んであるそうな。さすがに球は、MT管に置き換わってはいるが、回路その物は、昔のままだからトランス類が古い!いや、年代物のヴィンテージと言うのだそうである。
電源も、床の上にトランス類が林立していて、吾輩もそちらの方面は危険を感じているから部屋の奥には行かない。第一、タンスより大きなスピーカーが角に直立していて圧迫感があるではないか!オートグラフと呼ばれておるそうな。吾輩は見たことはないが、内部には金色のSPが入っているのだそうだ。赤いのも検討したそうだが、主人は金色を好んでおる。もっとも、例の太った男は、それよりこの音は銀色の方に近いと言っていた。何のことだか良く解らん!
この家の奥さんは、吾輩を可愛がってくれる。無類のきれい好きで、この部屋以外はちり一つ落ちては居ない。吾輩も外から来るとき足跡が付かないか気にするほど切れに磨かれているのに、この部屋の内部だけは治外法権だそうだ!第一、古めかしい、ハッキリ言えばカビ臭いレコードが山ほど積まれているから、古本屋の中に言ったときと同じような匂いがする。吾輩は猫であるから余り気にしないが、犬だったらいたたまれないだろう。しかし、この部屋を訪れる客人達は、みな変人で、わざわざジャケットに鼻を近づけて古めかしい「匂ひ」を嗅いで喜んでおる。
今日も今日とて、主人は立てかけてあった青いレコードを取り出し、これが誰だか解るかと嬉しそうに掛けていた。ベートーベンの3番の交響曲だ。太った男は「セルでは?」と即座に答えたが、主人はにやにやして首を横に振った。男は考えて「トスカニーニの影響があるが、オケはドイツだし、、若い頃のカラヤン的でもあるし、、」そうとう考えておったがわからんようだった。その内、主人はしびれを切らし、ワーグナーを振っている最中に無くなったそうだと助けるが、シノーポリとは時代が違うしとピント外れなことを言っておった。その内、そうか!カイルベルトだ!というと、主人も喜んで、沢山集めた青いレコード群を見せて得意げだった。これらは貴重品で宮崎のE氏も持っておらんと、とても嬉しそうに語っておる。無邪気なモノである。これだけ集めるのには随分の時間が掛かったろうと、その男が感心したのか、呆れたのかよくは解らんが、つぶやいておった。
部屋の中央に風呂敷が掛かっていたものがあり、それを外すと、中からBBC仕様のガラード301が現れた。アームもオルトフォンのRF-297とEMTのプレヤー専用のRMA-297の二本、どちらもオリジナル仕様だそうだ。オリジナルとレプリカは何やら根本が回転するのが違うそうで、自慢げにみせておった。 そういえば EMT 927 の上に置かれた沢山のカートリッジもみな特別な仕様だそうだ。音は一つ一つ違い、レコードによって使い分けているそうだ。以前は、イコライザーを合わせておったのだが、電気的に合わせた音よりも、物理的に合わせた方が音が活き活きしていると言っている。イコライザーカーブで一喜一憂しているレベルはまだまだ初心者だと言って主人ははばからない。友人も頷いていた
最後に、その男がSPの間に立ち、何やらノイズを聴いていたが、やおら右側のSPを少し動かした。その後、箱を叩いて微妙に調整をしていたようだが、これでどうだ!と自慢げに振り返り、主人に聴かせた。すると主人は「いや変わったよ、声が中央に定位して、低音が一回り深くなった。たった数ミリ動かすだけでこんなに変わるのか!」と呆れていたが、吾輩には何が変わったのかはよく解らん!変人のやっていることはまったく妙な事ばかりである。見ているとアホらしくなったので、また目を閉じて寝てしまった。
今日もウトウトしていたら、いつのまにやら、主人は嬉しそうにアンプの蓋を外して、くだんの男に写真を撮らしている。内部は、イコライザーと出力部、電源部が別々のシャーシーで組んであるそうな。さすがに球は、MT管に置き換わってはいるが、回路その物は、昔のままだからトランス類が古い!いや、年代物のヴィンテージと言うのだそうである。
電源も、床の上にトランス類が林立していて、吾輩もそちらの方面は危険を感じているから部屋の奥には行かない。第一、タンスより大きなスピーカーが角に直立していて圧迫感があるではないか!オートグラフと呼ばれておるそうな。吾輩は見たことはないが、内部には金色のSPが入っているのだそうだ。赤いのも検討したそうだが、主人は金色を好んでおる。もっとも、例の太った男は、それよりこの音は銀色の方に近いと言っていた。何のことだか良く解らん!
この家の奥さんは、吾輩を可愛がってくれる。無類のきれい好きで、この部屋以外はちり一つ落ちては居ない。吾輩も外から来るとき足跡が付かないか気にするほど切れに磨かれているのに、この部屋の内部だけは治外法権だそうだ!第一、古めかしい、ハッキリ言えばカビ臭いレコードが山ほど積まれているから、古本屋の中に言ったときと同じような匂いがする。吾輩は猫であるから余り気にしないが、犬だったらいたたまれないだろう。しかし、この部屋を訪れる客人達は、みな変人で、わざわざジャケットに鼻を近づけて古めかしい「匂ひ」を嗅いで喜んでおる。
今日も今日とて、主人は立てかけてあった青いレコードを取り出し、これが誰だか解るかと嬉しそうに掛けていた。ベートーベンの3番の交響曲だ。太った男は「セルでは?」と即座に答えたが、主人はにやにやして首を横に振った。男は考えて「トスカニーニの影響があるが、オケはドイツだし、、若い頃のカラヤン的でもあるし、、」そうとう考えておったがわからんようだった。その内、主人はしびれを切らし、ワーグナーを振っている最中に無くなったそうだと助けるが、シノーポリとは時代が違うしとピント外れなことを言っておった。その内、そうか!カイルベルトだ!というと、主人も喜んで、沢山集めた青いレコード群を見せて得意げだった。これらは貴重品で宮崎のE氏も持っておらんと、とても嬉しそうに語っておる。無邪気なモノである。これだけ集めるのには随分の時間が掛かったろうと、その男が感心したのか、呆れたのかよくは解らんが、つぶやいておった。
部屋の中央に風呂敷が掛かっていたものがあり、それを外すと、中からBBC仕様のガラード301が現れた。アームもオルトフォンのRF-297とEMTのプレヤー専用のRMA-297の二本、どちらもオリジナル仕様だそうだ。オリジナルとレプリカは何やら根本が回転するのが違うそうで、自慢げにみせておった。
最後に、その男がSPの間に立ち、何やらノイズを聴いていたが、やおら右側のSPを少し動かした。その後、箱を叩いて微妙に調整をしていたようだが、これでどうだ!と自慢げに振り返り、主人に聴かせた。すると主人は「いや変わったよ、声が中央に定位して、低音が一回り深くなった。たった数ミリ動かすだけでこんなに変わるのか!」と呆れていたが、吾輩には何が変わったのかはよく解らん!変人のやっていることはまったく妙な事ばかりである。見ているとアホらしくなったので、また目を閉じて寝てしまった。
by TANNOY-GRF
| 2008-09-30 18:48
| 行ったり来たり
|
Comments(3)
Commented
by
UNICORN
at 2008-10-01 01:49
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後編は更にやばい状況で・・・・猫さんに語らせないととても生々しく理解不能に・・・・、ところで猫さんに聞くのも可笑しい話なのですが、EMT用に作られたRF297とRMA297はどう異なるのでしょうか?
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(Y)
at 2008-10-01 02:25
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オートグラフまでは想像の範囲内でしたが、あの無造作に転がっているオルトフォンのカートリッジにそこまでの仕掛けが有ったとは…。イコライザー云々あたりは耳の痛い話です(笑)。続きを楽しみにしていますよ!
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TANNOY-GRF at 2008-10-01 07:19
おはようございます。皆さん楽しんでいただけましたか?
もうすぐ知り合って50年にもなろうとする友人のお宅を訪問しました。改めて写真など撮ったことのない間柄なのですが、デジタルカメラを見せびらかし言ったときの写真です。
まだまだありますが、猫は飽きたのかプイと出ていったきり戻りません。
番外編は、無遠慮で太った変人に語らせましょう。
もうすぐ知り合って50年にもなろうとする友人のお宅を訪問しました。改めて写真など撮ったことのない間柄なのですが、デジタルカメラを見せびらかし言ったときの写真です。
まだまだありますが、猫は飽きたのかプイと出ていったきり戻りません。
番外編は、無遠慮で太った変人に語らせましょう。