German Physiksの友の会が今年は開催できなかったので、その為に準備をしてきた「TW5」の音を皆さんに聞いていただけなくなりました。当日は従来からのTW3の代わりにならすつもりでしたが、家でもその音を楽しみました。横浜で鳴らしたら、新たな伝説を生んだと思います。ただ、家では両方を鳴らすわけにはいきませんので、大山さんと打ち合わせていた通り「TW3」の最低域を伸ばすために、20Hzから50Hzを鳴らす実験を始めました。
いろいろと実験を進めると、今までと違った次元の世界に入った様です。従来から無指向性SPしかでない三次元の音が変わってきました。音に実在感がでて、ダイナミックレンジがさらに拡大したのです。40を足したときに生まれた奥行きのある音にリアリティが足されたのです。その音に驚き、一人だけで聞いているには、余りにももったいないので、ご近所で何時も行き来しているパグ太郎さんやOさんに聴いていただき、私一人が感じているだけではない事を確かめていただきました。
そして今の音を聞いていただき、パグ太郎さんには、真実を映す鏡という意味の「法鏡の様なシステムが顕現しました」とまで言っていただきました。そして、低域がどうとか、定位がこうとか、オーディオ的な観点の話では捉えきれないレベルに行ってしまっていると思うのです。この音楽の表現力の違いが、何に因るものなのか判らずに戸惑ってしまうという感じです。」とまで言われます。
嬉しいですね。今の音を構成している全ての機器の集大成でもあるからです。そして、何よりシンプルです。
一連の実験を通じて、最終的には従来のTW3/80+40に今回のTW5だけが加わったシンプルな形になりました。アンプも従来のセットには今まで通り是枝さんの6336Bで、最低域のTW5には低域に強いSD05です。専用のアンプを使うなら、ネットワークではなくチャンネルフィルターを使ったらと言われますが、実はそこに秘密があるのです。それも含めて、今の音が出ているので、単純に最低域だけ足しているわけではないのです。
友の会の皆さんには、この音を聞いてもらいたいのですが、この状況で来ていただくのも大変ですが、従来の家の音を知っている方に違いを知ってもらいたく、遠慮して連絡を差し上げました。すると、去年の五月にTW3/80+40を聴いていただいているK&Kさんからすぐに聞きたいとご返事が来ました。土曜日ならとご返事すると、善は急げ?で一番早い土曜日の12日に早くも来ていただきました。
GRFさん、本日はありがとうございました。
ビックリしました。まさに異次元ともいうべき音だったと思います。今まで経験したことのない音。
ウチに帰ってから同じソフト、RCOのオーケストラなどを少し聴いてみましたが…ウチでも低音は十分出ているし、奥行き感もあるし各楽器の空間の定位はきっちり出ているのですが、あの空間表現、雰囲気感はやはりあり得ない…(笑)
生のコンサートホールの雰囲気感…貴重な体験でしたが、同時に恐ろしいものを聴かせていただいたような気がします。別途、改めて試聴記をお送りするようにいたします。まずは御礼まで。
K&K
土曜日は、穏やかな日でした。暖かい日差しの中、時間通り午前11時にK&Kさんが来られました。この時間にバス電車で来られるには、朝九時前には出られているはずです。ありがたいです。いつもは、和室の音も聞いていただくのですが、今日はダイレクトにTW5の実験室へ。相変わらず、ケーブル等が散らかっていますが、実験中とのことでご容赦ください。11時からはじめて、昼食はお弁当で外には行かず、3時過ぎまで、4時間集中して聴いていただきました。
最初は、パグ太郎さんに何時も聴いていただくジャネット・リンドシュトロムからです。ピアノの実体感が聞き所ですが、声の密やかな定位感も大事です。普段聞いている音量より、ヴォリュームの位置で一時間ほど大きかったので、出だしとしたら少し大きいかなと思いました。しかしピアノは実物大で、フォルテの音もしっかり出ました。
続く、カンターテドミノは、6曲目から、8曲目、有名な9曲目のオルガンが出てくるところまで聞きました。2コーラス目から声の定位が前に出てきて声が浮かび上がります。その声が違ってきました。先日、パグ太郎さんに驚いていただいたエリー・アメリングも声が楽器になって前に出てきます。従来は静かに後方に広がっていた音場が、前に飛び出してきてダイナミクスが変わってきました。音が地について力が増しています。そして、リート曲のピアノの音が違って来ましたね。
ハイティンクのマーラーの第4番は、レコードの時代から家での定番です。GRFがSD05で見違えるようになり始めたときによく基準にしていました。GRFからQUADのESL57的な音が出てきた盤です。そして、今までは1983年の録音の旧盤の方が音のバランスが取れて良かったのですが、今回、はじめて2006年のRCOのSACD盤の真価が出てきて驚きました。音に立体感が出て、冒頭の鈴の音から違います。弦楽器群の音の厚み、重なりがはっきりと出てきました。これには私も驚いていますが、はじめて聞かれているK&Kさんのお顔にも驚きが表れていました。
最低域がどのように伸びたかは、やはりオルガン曲を掛けるのが一番です。定番のドリアンレーベルのダラス交響楽団のサン・サーンスの第三番の第二楽章のピアニシモです。オーケストラの最弱音の下で、オルガンのパイプからやはりピアニシモのしかし、はっきりとしたパイプの振動が聞こえます。その音はどんどんと下降していき、従来は聞こえなかった最低域の旋律が浮かび上がってきます。
低音と言えば、ドビュッシーやラベルです。特にラベルのラ・ヴァルスの第一楽章冒頭の低域の動きは、ほとんどのSPは再現できません。トレモロからワルツに変わる頃ようやく音が聞こえてくる感じですが、そのあたりの再現は音場の空間が構成されないと一番聞こえにくいかもしれません。
そして、ハーディングのデビュー作のマーラーの第10番。これは気合いの入った名演です。ウィーンフィルも緊張感あふれる演奏をしています。何時も聞く第五楽章の大太鼓と金管の息つまるやりとりを聞きました。スケールがまったく今までとは違いますね。どんどん盛り上がって、大太鼓が渾身の力を振り絞っても、装置のダイナミクスさは余裕で鳴るのです。オーディオ装置では、音量がクレッシェンドしていくと、より音を大きくするか、または歪みを恐れてボリュームを絞りますが、今回は、そのままでまったく破綻がありません。楽にクレッシェンドをクリアするのです。この部分だけ聞かれても、違いが解ると思います。
そして、1954年のステレオ最初期のボストン・ミンシュとモントーの世界にタイムスリップします。ライナー・シカゴのツァラストラやストコフスキー・シンフォニー・ジ・エアーの悠揚迫らざる田園の景色が、70年の時空を越えて聞こえてきます。柔らかいマスターテープの音その物ですね。
後半は、プレスナーのドビュッシーから、特有の太い柔らかな音がします。ゆったりとした響きは、とても癒やされます。その低域の太さが増してきました。何時も聞いている白井光子さんは、やはり声が積極的に前に出てきます。反対にピアノはしっかりと後ろに回り、実物大で白井さんの声を支えます。これも随分と変わりました。
ヤンソンス・コンセルトヘボウのストラヴィンスキーの火の鳥と春の祭典です。ラトルに比べれば、ヤンソンスは音がやさしいのですが、さすがにストラヴィンスキーになれば、迫力が違います。切れ味の良い打楽器がコンセルトヘボウのホール一杯に広がります。迫力が変わりましたね。
何時も使っていたショスタコーヴィッチの第15番は、装置が進化してから掛けたことはありませんでした。冒頭のグロッケンシュピール(鉄琴)の音がより実体的です。弱音のピチカートが浮かび上がります。チェロやコントラバスの旋律がリアルですね。
ここで、定番のジョージ川口、世良譲などのジャズメンをバックにした八代亜紀のライブです。ステージの動きがしっかりと聞ける自然な録音でピアノやベースの音が素晴らしいです。臨場感あふれる音は楽しめます。日本録音ではめずらしい自然な盤ですね。
カプラン・ウィーンフィルは、DGのSACD盤です。今ではDGのSACDは入手が難しくなってきました。DGのSACDは96/24で録音されていますので、DSD録音と比べると、幾分柔らかいPCMの音がします。その柔らかさが音の安定をもたらしています。数字の多さではなく音のまとまりを重視すべきですね。しかし音はともかく、カプランの演奏聴いているとだんだん欲求不満になってきて本物のマーラーを聴きたくなります。
そういうときは、クレンペラーのマーラーの第七番です。好きな二楽章のさまざまな音が飛び交う二楽章が好きですね。この演奏、録音ともに特別な盤です。最後は、アルゲリッチ・クレーメルの定番です。二年前に来られたときも聴いていただきました。その時との違いも確認されたようです。
四時間に渡り、新しい音を確認していただきました。一緒に聞いている私も、驚いたり、感心した音を聞くことができました。低域を加える前から予想していた音ではありますが、ここまで実在感と定位がしっかりと再現できるとは思っていませんでした。K&Kさんの驚きは、私自身の驚きでもありました。
K&Kさん 本日は遠いところから来ていただきありがとうございました。次回は、映画の方も楽しんでいただきたいと思います。今週は寒くなります。丹沢からの風も寒くなります。また春にご友人をお誘いされてお越しください。その頃にはコロナも収まっていれば良いのですが、、、。
春を楽しみにお待ちしています。