2019年 07月 05日
BS プレミアムシアター 「ワインヤード型とシューボックス型」 |
この間の日曜日の晩のBSのプレミアムシアターで、興味深いドキュメンタリーが放映されました。コンサートホールの違いでオーケストラの音響はどのように変わるかという番組でした。ドイツの放送局が制作した本格的なドキュメントです。そのテーマに合わせて、シューボックス型の代表としてコンセルトヘボウのホールでの演奏と、ワインヤード型は去年モスクワに造られたばかりのザリャジエ・ホールのこけら落としの演奏会をそのドキュメンタリー番組を挟んで放映されました。
ウィーンのムジークフェラインやコンセルトヘボウのような伝統的なシューボックス型とベルリン・フィルハーモニーに代表されるオーケストラを囲むように造られたワインヤード型の音響の比較です。内容は非常にマニアックで、オーディオマニアのために作られたような番組でした。
特に感心したのは、同じチェロ奏者に、ベルリンフィルハーモニーとベルリン・コンツェルトハウス、そしてカラヤンの一連の録音で有名なイエスキリスト教会の三カ所で、演奏して貰いその音の差を録音した事です。会場によって響きは一聴して違います。またその違いを演奏者は瞬時に聞き分け、そのホールに最適な音で演奏を変えるというところでした。
番組では日頃余り取り上げられないホールの音響設計者の仕事の紹介や、実際のホールでの音響の違いを、日本の豊田泰久氏やドイツのマルグリート・ラウテンバッハ氏らの音響設計家が登場して、実際のホールで、どのような音作りをしているかを説明していました。
また、オーケストラのメンバーが演奏中、どのようにほかの音を聴いているか、ヴァイオリン、打楽器、管楽器のいろいろなポジションで聞こえる音を録音して、瞬時に切り替えて各ポジションの奏者がどのようにバランスを取っているかを聞かせて貰えました。これは大変興味がある実験です。下の写真では、指揮者のすぐ上にマイクがセッティングされています。
またコンサートホールの音を改善するときに、無指向性のSPをホールに持ち込み、低い音から高い音までのスイープ音を録音再生して、聞く位置が違うとどのように変化するかも見せてくれました。これはオーディオマニア必見の番組ですね。
ネルソンス指揮のライプツィヒ・ゲヴァントハウスの美しい音楽で始まり、ホールに響く音響をコップの中の水の波紋で象徴的に現しています。10年も掛かり、当初の予算が10倍にもふくれあがったハンブルグのエルプフィルの明るい響き、バレンボイムが携わった室内楽専門ホールのピエール・ブーレーズ・ザール。モスクワに作られてきた豊田氏の設計になる、ザリャジエ・ホールも念入りに取材されていました。
ミヒャエル・ザンデルリンク指揮のドレスデン・フィルの本拠地、ドレスデンの文化の宮殿での音の劇的な改善。最後はミラノのスカラ座の吸音しすぎの内装、それは戦後の復興時に外見だけまねて、音響的な考慮をしていなかった桟敷席を改修している様子などをドキュメントしています。どの場面も大変興味深く、ホールの作り方、材質、表面の堅さ、重さ、反射の方向性等々、クラシックのオーディオマニアは必見ですね。
このドキュメンタリー映画の監督は、アバドを追いかけた「Heraring the silence」やデュダメルを生んだベネゼエラの音楽家育成システム「エル・システマ」のドキュメンタリー映画を作った、パウル・シュマツニー / Paul Smaczny の作品です。
by TANNOY-GRF
| 2019-07-05 20:48
| オーディオ雑感
|
Comments(6)
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TANNOY-GRF at 2019-07-06 10:26
この番組は、オンデマンドで見られるそうです。これだけなら218円、是非見てください!
https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2019099115SC000/?spg=P201000061700000
https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2019099115SC000/?spg=P201000061700000
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S.Y
at 2019-07-08 11:01
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GRF さま
既にお聞き及びのこととは思いますが、銀座四丁目の大手楽器店の音楽CD売り場が7 月25日から約四分の一に縮小されるとのこと。時代とはいえ、まだまだCDの再生に期待している僕などにはガッカリのニュースです。
S.Y
既にお聞き及びのこととは思いますが、銀座四丁目の大手楽器店の音楽CD売り場が7 月25日から約四分の一に縮小されるとのこと。時代とはいえ、まだまだCDの再生に期待している僕などにはガッカリのニュースです。
S.Y
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TANNOY-GRF at 2019-07-08 17:33
あのパン屋さんの隣のレコード店には10年ぐらい行っていません。最後に買ったのは、イネッサ・ガランテの一連のCDでした。あそこしか売っていなかったので。先日、銀座のそこそこで美味しいお店を調べました。また、行きましょう!
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S.Y
at 2019-07-10 11:48
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GRF さま
レコード店は僕にとってアーカイブであり、図書館です。行けば勉強になりますが、予定以外のものを購入してしまうことにもなるのですが・・・。( 爆)
銀座には、またご一緒したいですね。
S.Y
レコード店は僕にとってアーカイブであり、図書館です。行けば勉強になりますが、予定以外のものを購入してしまうことにもなるのですが・・・。( 爆)
銀座には、またご一緒したいですね。
S.Y
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パグ太郎
at 2019-07-13 17:48
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銀座のあのレコード屋さんは、輸入盤に親切に日本語訳の背表紙を貼ってくれているのですが、自分には全てが均質に見えて直感が働かなくなるので、どうも苦手です。
今日たまたま仕事の待ち合わせで隙間時間に久々に立ち寄ったら改装前のワゴンセールしていました。
今日たまたま仕事の待ち合わせで隙間時間に久々に立ち寄ったら改装前のワゴンセールしていました。
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S.Y
at 2019-07-15 12:19
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パグ太郎さま
ー輸入盤に親切に日本語訳の背表紙を貼ってくれているのですがー
僕もあれは苦手というか、余計なお世話と思っていました。唯一の長所はLSO とかRCO とか小さく書き込まれていた点ですね。( 爆) あれを目当てに引っ張りだしていました。
S.Y
ー輸入盤に親切に日本語訳の背表紙を貼ってくれているのですがー
僕もあれは苦手というか、余計なお世話と思っていました。唯一の長所はLSO とかRCO とか小さく書き込まれていた点ですね。( 爆) あれを目当てに引っ張りだしていました。
S.Y