2009年 02月 01日
寒い日曜日の午後に ハイティンク・シカゴ |
ハイティンク・シカゴ交響楽団の開演は四時からですが、当日交換の切符の窓口は3時からでした。10分ぐらい前にいくと当日券引き換えと書かれた窓口に10人ぐらい並んでいました。低気圧が発達して東の海上に抜け、大陸から寒波が降りてきた午後は風が強まり、ビルの間を吹き抜ける風に身も凍るほどです。 サントリーホールのある溜池のビル街は日曜はひっそりとしています。隣のホテルがいやにはっきりと見えるほど空気が透き通っていました。結局、インターネットで売れ残りの券を購入してそれを受け取るために窓口に来たのです。私の前に並んでいた10人ぐらいの人は当日券を求める人でした。二十枚ほどあると書かれていました。私の後に並んだ人は、事前に申し込んだ人でしたから、窓口を変えるか、一言書いてあれば並ばなくても済んだはずです。 15分も並んだので、芯まで冷え込んできました。前のバーで赤ワインをとり少し落ち着きました。以前も同じように寒くて冷え込んだとき、二杯ワインを飲んだら眠くて困った思いがあります。今回は、30分一万円相当の演奏会です。一分間300円と思うと寝てられませんね!
開場されてようやく中に入ると、オーケストラのメンバーが難しいパッセージを練習していました。ホルンが通常の倍の9人です。トランペットもトロンボーンも金管は増強されているようです。マーラー特有の打楽器群も種類が多く楽しめそうです。席は端ですが、前から15列目で、トロンボーンの真正面です。練習中でもコントラバスとトロンボーンの音が迫力ありますね。開始前だと思って安心して写真をとっていると早速係のお姉さんにおこられました! オーケストラのメンバーも入場し終わり、いよいよハイティンクの入場です。ゆったりと歩いてきますが、とても80歳になるとは思えません。音楽が始まると指揮の仕方もしっかり振って的確に指示を出します。早めのテンポから第一楽章が始まりました。突き進んでいく感じはブラームスの一番の演奏の感じですね。さすがにシカゴ響です。低音弦の鳴らし方が堂々としています。極めて安定感のある演奏です。金管群が咆哮すると凄まじい迫力ですが、柔らかく洗練されていて、ショルティの時とは違うようです。
第六番は、いきなりクライマックスから始まりますが、スタート同時にいきなり全力走行の感じはF1レースの感じに似て、凄まじいパワーと余力を感じさせます。弦楽器群は通常のメンバーですから、金管楽器群に比べて相対的に甘く聞こえてきます。昔のレニングラードに比べると、全体に音は柔らかで女性的な感じさえしますが、全体のボリュームは通常のオーケストラに比べると遥かにパワフルです。逆にムラヴィンスキーの演奏がいかに鉄の統制が取れていたのか再認識しました。ベルリン/ウィーンに匹敵するレベルの演奏は間違いありません。サントリーホールではなく、東京文化会館で聴いてみたかったです。ホルンの響きや大太鼓がまるで違って聞こえたように思われます。
あっという間に第一楽章が終わり、第二楽章のスケルツオに入ります。第一楽章の勢いそのままに、いやいっそうの盛り上がりを見せて突き進んでいきます。オケのバランスがいいです。木管も金管に負けずにすばらしいアンサンブルで聴かせます。リズムを刻むコントラバスとティンパニー・大太鼓がぶれません。ピチカートもきれいだし、どんどん調子が上がっていきます。この組み合わせで幻想もいいのでは?
しかし、ハイティンクはすばらしいです。中庸のように思えてリズムを崩さず、燃えていきます。赤い炎ではなく白熱の炎で温度が上がっていきます。指揮が的確で、極めて正確です。バランスが崩れず音楽が大きくなります。決して緩むところはないのに、余裕がある演奏ですね。彼のチャイコフスキーがこのような感じでした。特に第六番悲壮がすばらしかったです。
曲間では、さすがに後ろの背もたれに身体をゆだねていますが、曲が始まるとみじんもそのような感じは見せません。指揮者は高齢にならないとすべてをゆだねて昇華していく演奏は出来ないのでしょうか。ハイティンクは最晩年のグンターヴァンドがブルックナーで到達したような世界に近づいています。それは、まだバレンボイムから出てきていないようです。ハイティンクは自らの道を音楽に捧げているのでしょう。ヨッフムが到達したような領域でしょうか?
終楽章は爆発していました。これだけのダイナミックスは日本のオケでは聴けないでしょう。すばらしい演奏です。怒濤のように押し寄せる波をすべて描ききっています。感銘を受けました。同時にいかに、あのムラヴィンスキー・レニングラードが超絶だったかが今更のように解りました。あのような演奏に出会えたことは幸せでしたが、その後のオーケストラをのどこを聴いてもあのような感激が味えないのはある意味不幸なのかも知れません。
30分に渡る終楽章の演奏が終わり、演奏が終わり音楽が祈りに換わる時間に拍手が出なかったのはとても良かったです。音楽が解っているすごく優秀な聴衆でした。このような聴衆ばかりならいいのですが、、、。
演奏の興奮も覚めやらないうちに表に出てきたら、表は一段と冷え込んでいました。もっとも、冬のシカゴに比べたら寒さのうちには入りませんね。
異常に高い入場券とプロモーターには言いたいことはいくらもありますが、演奏そのものはすばらしかったです。シカゴまで飛んでいく価値はあると思いました。
開場されてようやく中に入ると、オーケストラのメンバーが難しいパッセージを練習していました。ホルンが通常の倍の9人です。トランペットもトロンボーンも金管は増強されているようです。マーラー特有の打楽器群も種類が多く楽しめそうです。席は端ですが、前から15列目で、トロンボーンの真正面です。練習中でもコントラバスとトロンボーンの音が迫力ありますね。開始前だと思って安心して写真をとっていると早速係のお姉さんにおこられました!
第六番は、いきなりクライマックスから始まりますが、スタート同時にいきなり全力走行の感じはF1レースの感じに似て、凄まじいパワーと余力を感じさせます。弦楽器群は通常のメンバーですから、金管楽器群に比べて相対的に甘く聞こえてきます。昔のレニングラードに比べると、全体に音は柔らかで女性的な感じさえしますが、全体のボリュームは通常のオーケストラに比べると遥かにパワフルです。逆にムラヴィンスキーの演奏がいかに鉄の統制が取れていたのか再認識しました。ベルリン/ウィーンに匹敵するレベルの演奏は間違いありません。サントリーホールではなく、東京文化会館で聴いてみたかったです。ホルンの響きや大太鼓がまるで違って聞こえたように思われます。
あっという間に第一楽章が終わり、第二楽章のスケルツオに入ります。第一楽章の勢いそのままに、いやいっそうの盛り上がりを見せて突き進んでいきます。オケのバランスがいいです。木管も金管に負けずにすばらしいアンサンブルで聴かせます。リズムを刻むコントラバスとティンパニー・大太鼓がぶれません。ピチカートもきれいだし、どんどん調子が上がっていきます。この組み合わせで幻想もいいのでは?
しかし、ハイティンクはすばらしいです。中庸のように思えてリズムを崩さず、燃えていきます。赤い炎ではなく白熱の炎で温度が上がっていきます。指揮が的確で、極めて正確です。バランスが崩れず音楽が大きくなります。決して緩むところはないのに、余裕がある演奏ですね。彼のチャイコフスキーがこのような感じでした。特に第六番悲壮がすばらしかったです。
曲間では、さすがに後ろの背もたれに身体をゆだねていますが、曲が始まるとみじんもそのような感じは見せません。指揮者は高齢にならないとすべてをゆだねて昇華していく演奏は出来ないのでしょうか。ハイティンクは最晩年のグンターヴァンドがブルックナーで到達したような世界に近づいています。それは、まだバレンボイムから出てきていないようです。ハイティンクは自らの道を音楽に捧げているのでしょう。ヨッフムが到達したような領域でしょうか?
終楽章は爆発していました。これだけのダイナミックスは日本のオケでは聴けないでしょう。すばらしい演奏です。怒濤のように押し寄せる波をすべて描ききっています。感銘を受けました。同時にいかに、あのムラヴィンスキー・レニングラードが超絶だったかが今更のように解りました。あのような演奏に出会えたことは幸せでしたが、その後のオーケストラをのどこを聴いてもあのような感激が味えないのはある意味不幸なのかも知れません。
30分に渡る終楽章の演奏が終わり、演奏が終わり音楽が祈りに換わる時間に拍手が出なかったのはとても良かったです。音楽が解っているすごく優秀な聴衆でした。このような聴衆ばかりならいいのですが、、、。
異常に高い入場券とプロモーターには言いたいことはいくらもありますが、演奏そのものはすばらしかったです。シカゴまで飛んでいく価値はあると思いました。
by TANNOY-GRF
| 2009-02-01 22:57
| 演奏会場にて
|
Comments(3)
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SEIBO
at 2009-02-02 10:29
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6番をCDで全曲聴き通すのはちょっと飽きてしまいますが、全楽章休みなし、一気の演奏はそれこそ一瞬の瞬きの間のようにあっと言う間の出来事でした。それはまるで一つの生き物や、一つの風景を体験するような演奏でした。
舞台上隙間がないほどの大編成。低弦が腰の据わった低音で引き始めると、それに導かれるてバイオリンが風のように爽やに広がります、そこに雲間から洩れる光のような輝かしいホーンセクションが加わるとまさにうっとりです。一糸乱れぬというのはこういうことを言うのでしょう。
これだけたくさんの人が目の前でたった一つの旋律を紡ぎだして行く様子はまさに一大スペクタクルであり、その奏でを聞いているのはまことに至福の時でした。ドロドロとした情感など微塵も感じない、むしろ爽やかで輝かしさが記憶に残る演奏でした。それこそ演奏中は良く聞かれる咳も、一つとして聞こえず、聴衆が全員固唾をのんで聞いているのが良くわかりました。私も楽章の合間にはおもわず喘ぐように息をしていました。
舞台上隙間がないほどの大編成。低弦が腰の据わった低音で引き始めると、それに導かれるてバイオリンが風のように爽やに広がります、そこに雲間から洩れる光のような輝かしいホーンセクションが加わるとまさにうっとりです。一糸乱れぬというのはこういうことを言うのでしょう。
これだけたくさんの人が目の前でたった一つの旋律を紡ぎだして行く様子はまさに一大スペクタクルであり、その奏でを聞いているのはまことに至福の時でした。ドロドロとした情感など微塵も感じない、むしろ爽やかで輝かしさが記憶に残る演奏でした。それこそ演奏中は良く聞かれる咳も、一つとして聞こえず、聴衆が全員固唾をのんで聞いているのが良くわかりました。私も楽章の合間にはおもわず喘ぐように息をしていました。
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TANNOY-GRF at 2009-02-02 15:43
これだけの編成になると、サントリーホールの舞台は狭いですね。ヴァイオリンの人が落ちないかと心配するほどです。昨日は弦楽器は8人編成ですから通常より少ないぐらいでした。
楽器感のバランスも指揮者の重要な事項なのでしょう。
とにかく、誘って頂き感謝しています。久しぶりに充実いたしました。
楽器感のバランスも指揮者の重要な事項なのでしょう。
とにかく、誘って頂き感謝しています。久しぶりに充実いたしました。
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チューバホーン
at 2009-02-05 15:44
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同じくサントリーホールになりますが、ドボルザークの第8番をベルリンフィルの演奏で聴いたとき、ものすごい衝撃を受けたことを思い出しました。
でも、今回の曲がマーラーということは、きっとそれ以上にすごいことではないのかと、創造してしまいます。
うー、聴いてみたかったです。あっという間に終わるマーラーを!