2011年 10月 04日
順応性について |
新品のアンプやCDプレーヤ等に通電すると、当初は音が堅く感じたのが、何時間か経過したり、三日ほどすると音が良くなる事が多くあります。中には、到着してからはすぐ聴かず、じっと我慢して通電を行い、三日間ほど音がこなれるのを待たれる方が居られるほどです。聴き込んでいくと、音が変わってきこえます。もちろん機器のエージングや電源部の影響もあるでしょうが、通電テストは済んでいる場合が多いのです。
高級オーディオアンプは、組み立て時に耐久テストも兼ねて、三日間以上通電されています。中には、トランスのように半年ほど時間を掛けて経年変化をさせてから、組み立てることもあります。それでも、音が変わると感じる原因は、聴かれる方の慣れが大きく影響しています。身も蓋もなく言うと、当初違和感を感じていても、72時間すると聴く方の順応性が出てきて、自然に聞こえて来るのです。
インシュレーターの様に、音の振動モードが直接変わるアクセサリーは、音の変化がすぐ解ります。元へ戻せば、その差を確認することが出来ます。しかし、エージングなどによるオーディオの音の差は、厳密なブラインドテストを行うと、ほとんどの場合、音の差は無くなるそうです。昔、東芝の厨川さんが、オーディオ協会で発表されていました。高価な出費をして購入した物が、よく聞こえる心理は解ります。良くなると思いたいからです。第三者による、何回かのブラインドテストを行っても、耐えられる物は本当に少ないのです。
信号系に直接入ってくる線材とか、インシュレーター等は、音の振動モードが変わります。オーディオファンの大多数が、迫力が増す方向の音を選びます。結果として、実際の音よりも遙かに、強調された音で聴かれている方が多いようです。PAの音などがその傾向に拍車を掛けています。
写真でもそうですね。露出を絞り込み、コントラストを上げる方が、迫力を感じさせます。昨日の記事の夕方の写真の最後の二枚は、ほとんど同じ時間帯ですが、露出をどこに合わせるかで、まったく異なったイメージが生まれます。このような差を付けていくことが、オーディオの醍醐味だと思われている方もオーディオファンには多いのです。いや、九割ぐらいはそうかも知れません。
残りの少数派は、前者が足し算のオーディオだとすると、引き算のオーディオをされている方々です。音を浮かして、床の影響や壁の影響から逃れようとする方々です。音の数を減らすオーディオは、永年の間、苦労を重ねて来られたベテランの方に多いようです。オーディオは、音の振動をどのようにコントロールするかの遊びです。俳句や短歌のように音をそぎ落とす事が音を感じるコツと解るには、やはり、紆余曲折を経なければならないのかも知れません。釣りはフナに始まり鮒に終わるのと同じようです。
トーンコントロールやイコライザーのような音を電気的に変化させるのではなく、増幅系はなるべくストレートで通し、変換系を調整するのが、音の自然さを保つのには必要です。私の経験では、レコード用のイコライザーも含めて、それにより変化する内は、まだどこかに共振するところがあるように思えるのです。SP系や部屋の固有の振動モードを外せれば、ほとんどのオーディオアクセサリーは入らなくなります。言い換えれば、部屋の振動モードや、SPの置き位置を追求しないで、アクセサリーに走るのは、単なる割れ鍋綴じ蓋だといえましょう。もっとも、それが解るには散々、お金や時間をつぎ込まなければならないのは諸兄もご存じの通りです。
○○式オーディオルームとか、反射ボードとか、あげくは怪しげな動物の毛まで、オーディオ界には魑魅魍魎が住んでいます。音の変化を楽しむ趣味が、オーディオだと言えば、それはそれで楽しいのかも知れません。しかし、何を聴いても一定の色がつきまとうようなサングラス効果は、どこかで卒業しないと、本当の色は見えてきません。
私は、信号系をすべて同じメーカーで揃えるのは苦手です。揃える方の心理にどこか、頑迷な宗教心みたいな物を感じるせいかもしれません。過酷な砂漠で生まれた一神教のような感じがするのです。入り口から出口まで同じメーカーで揃える心理が、自らの意志を放棄しているようにも感じるからです。同じ意味で、部屋の固有音を電気的に揃える、ヴォイシングイコライザーにも感じます。世の中はそんなに単純に揃えられる物ではないということを知ってくると、イコライザー信仰が再生側ではきわめて難しいと感じてくるのです。イコライザー効果が発揮できる録音系は創造です。どのような音に仕上げるのかは、録音技術者のあたまの中にしかありません。
優れた小説や芸術が見なそうであるように、読者やリスナーが各々の記憶や経験でストーリーを膨らまし、違うものに思えるような、いわば「錯覚」の幅が大きなものが、優れた作品だともいえるのです。その為には、あまり色づけの濃い音作りは常に同じ色に染まる危険があるのです。
フラットな音とは、なんでしょう?吸音と反射を繰り返すことなのでしょうか?狭い空間を閉じ込めて音の流通を妨げることなのでしょうか?防音と称して、密閉空間で、大アンプで無理矢理大振幅を与えることのなのでしょうか?色づけのない音、一定の音の振動を避ける事が、オーディオの原点です。
順応が終わる72時間が経っても、気に入らない音は、その人の順応性を越えているのです。いわば、その人にとって自然では無いのです。クーリングオフの効く販売方法に耐えられる物ほど長持ちします。試行錯誤もオーディオの楽しみの一つですが、高価な機器を揃えるのがオーディオではないと、早く気がついて欲しいですね。言葉悪く言えば、特定のメーカーのシャブ漬けにならないためにも、それでなければならないという、思い込みから逃れることです。
商業雑誌の誘導、評論家の存在意義、それらは、放射能事故をあたかも、無かったように報道しているマスコミと同じ構造だと早く気がつくべきです。真実の機器には、評論家は決して近づきません。それが、命取りだという事を本能的に感じるからでもありましょう。
雑誌の記事を信じたドンキホーテが風車に何遍も向かっていく様は、ご本人には理由もあるし、勇敢な何よりも美談であります。しかし、その結果、アクセサリーや高価な機器に何百万円も払う行為が、如何に奇妙な世界に入り込んでいるのかを、早く気がついて欲しいです。オーディオも、他の趣味と同じように、その人の生き様と、この世の様を映す鏡なのです。
高級オーディオアンプは、組み立て時に耐久テストも兼ねて、三日間以上通電されています。中には、トランスのように半年ほど時間を掛けて経年変化をさせてから、組み立てることもあります。それでも、音が変わると感じる原因は、聴かれる方の慣れが大きく影響しています。身も蓋もなく言うと、当初違和感を感じていても、72時間すると聴く方の順応性が出てきて、自然に聞こえて来るのです。
インシュレーターの様に、音の振動モードが直接変わるアクセサリーは、音の変化がすぐ解ります。元へ戻せば、その差を確認することが出来ます。しかし、エージングなどによるオーディオの音の差は、厳密なブラインドテストを行うと、ほとんどの場合、音の差は無くなるそうです。昔、東芝の厨川さんが、オーディオ協会で発表されていました。高価な出費をして購入した物が、よく聞こえる心理は解ります。良くなると思いたいからです。第三者による、何回かのブラインドテストを行っても、耐えられる物は本当に少ないのです。
信号系に直接入ってくる線材とか、インシュレーター等は、音の振動モードが変わります。オーディオファンの大多数が、迫力が増す方向の音を選びます。結果として、実際の音よりも遙かに、強調された音で聴かれている方が多いようです。PAの音などがその傾向に拍車を掛けています。
写真でもそうですね。露出を絞り込み、コントラストを上げる方が、迫力を感じさせます。昨日の記事の夕方の写真の最後の二枚は、ほとんど同じ時間帯ですが、露出をどこに合わせるかで、まったく異なったイメージが生まれます。このような差を付けていくことが、オーディオの醍醐味だと思われている方もオーディオファンには多いのです。いや、九割ぐらいはそうかも知れません。
残りの少数派は、前者が足し算のオーディオだとすると、引き算のオーディオをされている方々です。音を浮かして、床の影響や壁の影響から逃れようとする方々です。音の数を減らすオーディオは、永年の間、苦労を重ねて来られたベテランの方に多いようです。オーディオは、音の振動をどのようにコントロールするかの遊びです。俳句や短歌のように音をそぎ落とす事が音を感じるコツと解るには、やはり、紆余曲折を経なければならないのかも知れません。釣りはフナに始まり鮒に終わるのと同じようです。
トーンコントロールやイコライザーのような音を電気的に変化させるのではなく、増幅系はなるべくストレートで通し、変換系を調整するのが、音の自然さを保つのには必要です。私の経験では、レコード用のイコライザーも含めて、それにより変化する内は、まだどこかに共振するところがあるように思えるのです。SP系や部屋の固有の振動モードを外せれば、ほとんどのオーディオアクセサリーは入らなくなります。言い換えれば、部屋の振動モードや、SPの置き位置を追求しないで、アクセサリーに走るのは、単なる割れ鍋綴じ蓋だといえましょう。もっとも、それが解るには散々、お金や時間をつぎ込まなければならないのは諸兄もご存じの通りです。
○○式オーディオルームとか、反射ボードとか、あげくは怪しげな動物の毛まで、オーディオ界には魑魅魍魎が住んでいます。音の変化を楽しむ趣味が、オーディオだと言えば、それはそれで楽しいのかも知れません。しかし、何を聴いても一定の色がつきまとうようなサングラス効果は、どこかで卒業しないと、本当の色は見えてきません。
私は、信号系をすべて同じメーカーで揃えるのは苦手です。揃える方の心理にどこか、頑迷な宗教心みたいな物を感じるせいかもしれません。過酷な砂漠で生まれた一神教のような感じがするのです。入り口から出口まで同じメーカーで揃える心理が、自らの意志を放棄しているようにも感じるからです。同じ意味で、部屋の固有音を電気的に揃える、ヴォイシングイコライザーにも感じます。世の中はそんなに単純に揃えられる物ではないということを知ってくると、イコライザー信仰が再生側ではきわめて難しいと感じてくるのです。イコライザー効果が発揮できる録音系は創造です。どのような音に仕上げるのかは、録音技術者のあたまの中にしかありません。
優れた小説や芸術が見なそうであるように、読者やリスナーが各々の記憶や経験でストーリーを膨らまし、違うものに思えるような、いわば「錯覚」の幅が大きなものが、優れた作品だともいえるのです。その為には、あまり色づけの濃い音作りは常に同じ色に染まる危険があるのです。
フラットな音とは、なんでしょう?吸音と反射を繰り返すことなのでしょうか?狭い空間を閉じ込めて音の流通を妨げることなのでしょうか?防音と称して、密閉空間で、大アンプで無理矢理大振幅を与えることのなのでしょうか?色づけのない音、一定の音の振動を避ける事が、オーディオの原点です。
順応が終わる72時間が経っても、気に入らない音は、その人の順応性を越えているのです。いわば、その人にとって自然では無いのです。クーリングオフの効く販売方法に耐えられる物ほど長持ちします。試行錯誤もオーディオの楽しみの一つですが、高価な機器を揃えるのがオーディオではないと、早く気がついて欲しいですね。言葉悪く言えば、特定のメーカーのシャブ漬けにならないためにも、それでなければならないという、思い込みから逃れることです。
商業雑誌の誘導、評論家の存在意義、それらは、放射能事故をあたかも、無かったように報道しているマスコミと同じ構造だと早く気がつくべきです。真実の機器には、評論家は決して近づきません。それが、命取りだという事を本能的に感じるからでもありましょう。
雑誌の記事を信じたドンキホーテが風車に何遍も向かっていく様は、ご本人には理由もあるし、勇敢な何よりも美談であります。しかし、その結果、アクセサリーや高価な機器に何百万円も払う行為が、如何に奇妙な世界に入り込んでいるのかを、早く気がついて欲しいです。オーディオも、他の趣味と同じように、その人の生き様と、この世の様を映す鏡なのです。
by TANNOY-GRF
| 2011-10-04 04:02
| オーディオ雑感
|
Comments(7)
Commented
by
shanshan
at 2011-10-04 22:17
x
同感です。解っていても相変わらず電線を換え、機器を換えています。若い頃は音を体で聞き、年を経るに従い、耳で聞くようになって来たようです。できれば心で聴けるようになりたいものです。
Commented
by
TANNOY-GRF at 2011-10-05 11:35
shanshanさん、ご賛同ありがとうございます。実は、この記事が出て、二人の友人から電話が掛かってきました。一人は、強く賛同していただきました。
今一人は、敵を造るような発言はどうかという物でした。
両方とも、しっかりと意味は通じたようです(笑)。
今一人は、敵を造るような発言はどうかという物でした。
両方とも、しっかりと意味は通じたようです(笑)。
Commented
by
TANNOY-GRF at 2011-10-05 18:12
このブログでは、沢山の方から共感のメールを頂きました。ありがとうございます。その数と同じように反対のご意見もおられることでしょう。言葉が足らず、誤解を与えることもあるかも知れませんが、その場合は、ご笑覧ください。
私のオーディオの目的は、アクセサリーを換えることではなく、気持ちよい音楽を聴くためですので。
私のオーディオの目的は、アクセサリーを換えることではなく、気持ちよい音楽を聴くためですので。
>オーディオファンの大多数が、迫力が増す方向の音を選びます。結果として、実際の音よりも遙かに、強調された音で聴かれている方が多いようです。
生オケの演奏会で聴こえてくる楽器の音やホールの響きで得られる感動を、オーディオ機器で再生しようとすると、ともすればディフォルメされた音の方が快感を覚えてしまうので、と、最近の自分の行動にも反省しきりです。
自宅の音を他の方に聴いていただいたり逆に聴かせていただいたりするのは、ある意味でそのような行動からの軌道修正をするためだと思っているのです。
東京の単身赴任宅では、オーディオよりも生演奏を聴くことが多いので、何故かCDよりもNHK-FMで放送される演奏会のライブ録音が自然な音楽として耳に入ってきます。
生オケの演奏会で聴こえてくる楽器の音やホールの響きで得られる感動を、オーディオ機器で再生しようとすると、ともすればディフォルメされた音の方が快感を覚えてしまうので、と、最近の自分の行動にも反省しきりです。
自宅の音を他の方に聴いていただいたり逆に聴かせていただいたりするのは、ある意味でそのような行動からの軌道修正をするためだと思っているのです。
東京の単身赴任宅では、オーディオよりも生演奏を聴くことが多いので、何故かCDよりもNHK-FMで放送される演奏会のライブ録音が自然な音楽として耳に入ってきます。
Commented
by
TANNOY-GRF at 2011-10-05 22:49
>自宅の音を他の方に聴いていただいたり逆に聴かせていただいたりするのは、ある意味でそのような行動からの軌道修正をするためだと思っているのです。
単身赴任中にタイミングが合えば、お越しください。コンサートホールの二階席最前列を目指しています。私の家は、余分な音を無くす、引き算の真っ最中です。
単身赴任中にタイミングが合えば、お越しください。コンサートホールの二階席最前列を目指しています。私の家は、余分な音を無くす、引き算の真っ最中です。
Commented
by
TANNOY-GRF at 2011-10-05 22:51
shanshan さん、今日はお寄りいただきありがとうございました。食事の後とはいえ、安心して眠れる音が出せたので安心しています(笑)。でも、ますます、引き算をやっていきますよ。
Commented
by
UNICORN
at 2011-10-06 01:14
x
>真実の機器には、評論家は決して近づきません。それが、命取り
だという事を本能的に感じるからでもありましょう
この発言に同意出来る為には自ら、音楽を愛する心を決して失わず、
何度も最新技術と呼ばれるオブラートに包み込まれた苦渋を舐めない
と難しいと思われますが、今回の様な発言をジックリと租借しながら早く
気が付いて欲しいものです・・・・。
だという事を本能的に感じるからでもありましょう
この発言に同意出来る為には自ら、音楽を愛する心を決して失わず、
何度も最新技術と呼ばれるオブラートに包み込まれた苦渋を舐めない
と難しいと思われますが、今回の様な発言をジックリと租借しながら早く
気が付いて欲しいものです・・・・。