2011年 12月 06日
コンサートホールの空気感 |
コンサートホールは、どのホールを訪れても、独特の空気感があります。広く、高く拡がっている音響空間に、演奏前でも音が立ち上がっていきます。外界からは隔絶した静かな空間です。客席側では残響音はあまり聞こえず、音が空間に吸い込まれていく感じがします。ステージ上に楽器が鳴り響くと、その音は、トランペットや打楽器以外は、その場所からは音がせず、その後ろ側の空間を回っておとが豊かに拡がっていくのです。
ヴァイオリンの鋭いアタックも、ホールでは一回りも二回りの大きい楽器になったように、音は後方に拡がるのです。その意味で、無伴奏のヴァイオリンソナタなどは、ステージのどの位置に立つかによって音楽その物がまったく違うニュアンスを見せるのです。残念ながら、ほとんどのソロ奏者はステージの幾分奥に経つようです。ピアノの置く位置も、ステージに対する角度も大変重要です。華麗なる鍵盤上の指さばきを見たいと願う人が多くピアノはステージに平行に置かれることが多いのですが、幾分共鳴板側を前に向けた方が、ホールに響く音は良くなります。足の向きでも音の指向性は変わります。
何回か、演奏会を主催してその度にピアノの調律師と突っ込んだ話し合いをしました。ステージ上の板目(15センチから20センチ)のどこに置くかで演奏会の出来不出来を大きく左右するのです。残念ながら演奏者がもっとも気持ちよく聞こえる点が、必ずしも客席に音を響かせるポイントではないのは、皆さん良く感じられることと思います。
オーケストラの編成により、時としてそのホールのキャパシティーを超える音量が出るときもあります。反対に器が大きすぎて音楽が伝わらない事も多々ありますね。特に弦楽器は使用している楽器のグレードで音が、変わります。アマチュアのオーケストラ特有のよく言えばフレッシュな響きは、楽器のグレードから来ているのは、演奏者が一番解っています。良い楽器とは、音が楽々と鳴り、音量も大きく、ピアニッシモとフォルテシモの間が、倍以上違う事も良くます。
大編成のマーラーなどを聴くと、音が会場に溢れ、分解能が落ちて聞こえるような時もあります。最近よく聴くベルリンフィルのデジタルコンサートホールの響きを聴くと、必ずしも大編成の曲が大迫力で聞こえるとは限らないのです。二管編成の小さなオーケストラでも、大迫力で鳴り響くのは、面白いですね。特にコントラバスの音は、小編成の室内楽団、2本から4本ぐらいの方が、響きが良く聞こえて面白いです。
音の良いホールに出会うのは、なかなか難しいようです。器が同じでも、演奏家・指揮者が違ってもまったく違う響きがするからです。ベルリンの常任指揮者のサイモン・ラトルの分厚い演奏が、時として混濁して聞こえるのは、私の家の装置の分解能力に寄るのか、オーケストラの響きその物が、会場を飽和しているのか、最近のマーラーの演奏を聴くとき何時も考えます。同じマーラーでも、最近のアバドが振ったときの響きは、同じオーケストラとは思えないほど、違って聞こえるからです。特に木管楽器の響きが、違います。
ベルリンフィルは、デジタルコンサートホールを通じてとても身近になりました。あの、ソリストの全力投球を何時も見ていると、在京のオーケストラの演奏技術、ヨーロッパからの普通のレベルのオーケストラとは、違いがありすぎて怖いほどです。最近のウィーンフィルは、随分と変わりました。管楽器の響きが特有なのを除くと、ウィーン特有の響きが変わったと感じるは私だけではないでしょう。
その、ウィーンフィルやベルリンフィルが、本拠地のホール以外で演奏するときどのくらい演奏スタイルが変わるのかが、興味あるところです。同じオーケストラが同じ指揮者の元で演奏しても、まったく帯が響きになるからです。ベルリンフィルの場合は、違う会場の方が、実力の凄さを感じるようです。ウィーンフィルは、あのムジークフェラインやザルツブルグ以外の演奏では、違うオーケストラのように聞こえます。それは、国立歌劇場管弦楽団としてオペラを弾くときと、ウィーンフィルとして管弦楽曲を演奏するときの違いよりも大きいと感じています。
ソロでも、大編成のオーケストラでも、鳴っているのはその会場の空気です。当然、温度や湿度の季節的な変動でも響きは違います。しかし、卓越した技量を持っている一流のオーケストラのメンバーは演奏しながら、響きを模索して、ハーモニーを作り上げていきます。オーケストラから、木管楽器のハーモニーが沸き立ち、ソロの演奏の音が空間に吸い込まれていく様は、真に一流の技量を持ったヴィルトーゾのオーケストラならではの、至福の時です。
その響きの一端を、何とか自分の部屋で再現できないかと、欲深く、また息長くやってきました。"GRF"や"ESL57","Consequence", "Unicorn"そして、最近の"Hartley Concertmaster VI"でも、私が追い求めているのは、そのSPの音ではなく、そこから放射されるコンサート会場の空気感なのです。ようやく、その発端にたどり着いたような気もします。これからその音をどの様に、深化させ、収束させていくかが、問われているようです。
期待に胸をすくらませ、ゆっくりと上る演奏会場への階段。二重の扉の向こうに高い天井を見せて音が上っていく、コンサートホールの響き。それを体現するために、これからも少しづつ、登っていきたいと願っています。
ヴァイオリンの鋭いアタックも、ホールでは一回りも二回りの大きい楽器になったように、音は後方に拡がるのです。その意味で、無伴奏のヴァイオリンソナタなどは、ステージのどの位置に立つかによって音楽その物がまったく違うニュアンスを見せるのです。残念ながら、ほとんどのソロ奏者はステージの幾分奥に経つようです。ピアノの置く位置も、ステージに対する角度も大変重要です。華麗なる鍵盤上の指さばきを見たいと願う人が多くピアノはステージに平行に置かれることが多いのですが、幾分共鳴板側を前に向けた方が、ホールに響く音は良くなります。足の向きでも音の指向性は変わります。
何回か、演奏会を主催してその度にピアノの調律師と突っ込んだ話し合いをしました。ステージ上の板目(15センチから20センチ)のどこに置くかで演奏会の出来不出来を大きく左右するのです。残念ながら演奏者がもっとも気持ちよく聞こえる点が、必ずしも客席に音を響かせるポイントではないのは、皆さん良く感じられることと思います。
オーケストラの編成により、時としてそのホールのキャパシティーを超える音量が出るときもあります。反対に器が大きすぎて音楽が伝わらない事も多々ありますね。特に弦楽器は使用している楽器のグレードで音が、変わります。アマチュアのオーケストラ特有のよく言えばフレッシュな響きは、楽器のグレードから来ているのは、演奏者が一番解っています。良い楽器とは、音が楽々と鳴り、音量も大きく、ピアニッシモとフォルテシモの間が、倍以上違う事も良くます。
大編成のマーラーなどを聴くと、音が会場に溢れ、分解能が落ちて聞こえるような時もあります。最近よく聴くベルリンフィルのデジタルコンサートホールの響きを聴くと、必ずしも大編成の曲が大迫力で聞こえるとは限らないのです。二管編成の小さなオーケストラでも、大迫力で鳴り響くのは、面白いですね。特にコントラバスの音は、小編成の室内楽団、2本から4本ぐらいの方が、響きが良く聞こえて面白いです。
音の良いホールに出会うのは、なかなか難しいようです。器が同じでも、演奏家・指揮者が違ってもまったく違う響きがするからです。ベルリンの常任指揮者のサイモン・ラトルの分厚い演奏が、時として混濁して聞こえるのは、私の家の装置の分解能力に寄るのか、オーケストラの響きその物が、会場を飽和しているのか、最近のマーラーの演奏を聴くとき何時も考えます。同じマーラーでも、最近のアバドが振ったときの響きは、同じオーケストラとは思えないほど、違って聞こえるからです。特に木管楽器の響きが、違います。
ベルリンフィルは、デジタルコンサートホールを通じてとても身近になりました。あの、ソリストの全力投球を何時も見ていると、在京のオーケストラの演奏技術、ヨーロッパからの普通のレベルのオーケストラとは、違いがありすぎて怖いほどです。最近のウィーンフィルは、随分と変わりました。管楽器の響きが特有なのを除くと、ウィーン特有の響きが変わったと感じるは私だけではないでしょう。
その、ウィーンフィルやベルリンフィルが、本拠地のホール以外で演奏するときどのくらい演奏スタイルが変わるのかが、興味あるところです。同じオーケストラが同じ指揮者の元で演奏しても、まったく帯が響きになるからです。ベルリンフィルの場合は、違う会場の方が、実力の凄さを感じるようです。ウィーンフィルは、あのムジークフェラインやザルツブルグ以外の演奏では、違うオーケストラのように聞こえます。それは、国立歌劇場管弦楽団としてオペラを弾くときと、ウィーンフィルとして管弦楽曲を演奏するときの違いよりも大きいと感じています。
ソロでも、大編成のオーケストラでも、鳴っているのはその会場の空気です。当然、温度や湿度の季節的な変動でも響きは違います。しかし、卓越した技量を持っている一流のオーケストラのメンバーは演奏しながら、響きを模索して、ハーモニーを作り上げていきます。オーケストラから、木管楽器のハーモニーが沸き立ち、ソロの演奏の音が空間に吸い込まれていく様は、真に一流の技量を持ったヴィルトーゾのオーケストラならではの、至福の時です。
その響きの一端を、何とか自分の部屋で再現できないかと、欲深く、また息長くやってきました。"GRF"や"ESL57","Consequence", "Unicorn"そして、最近の"Hartley Concertmaster VI"でも、私が追い求めているのは、そのSPの音ではなく、そこから放射されるコンサート会場の空気感なのです。ようやく、その発端にたどり着いたような気もします。これからその音をどの様に、深化させ、収束させていくかが、問われているようです。
期待に胸をすくらませ、ゆっくりと上る演奏会場への階段。二重の扉の向こうに高い天井を見せて音が上っていく、コンサートホールの響き。それを体現するために、これからも少しづつ、登っていきたいと願っています。
by TANNOY-GRF
| 2011-12-06 14:21
| 演奏会場にて
|
Comments(3)
Commented
by
リウー
at 2011-12-06 18:42
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一度きりの事なので、微妙ですが、アバド指揮ベルリンフィルのマーラー9番は、実際にベルリンで聴き、それが、録音になっているので、記憶をたどると、ほぼ正面で聴いていた音は、かなり小さめに聴こえました。それで、あっと思った記憶があります。実は、思ったほど大きな音で演奏されていないのではと。
オーケストラなどが違うので、何とも言えませんが、設計のもとになったベルリンは、サントリーホールに比べると、随分残響が抑えられているように思いました。
オーケストラなどが違うので、何とも言えませんが、設計のもとになったベルリンは、サントリーホールに比べると、随分残響が抑えられているように思いました。
ご無沙汰しています。
写真はアムステルダムのコンセルトヘボーでしょうか?ホワイエで白ワインを頂いた記憶があります。素晴らしい響きでした。
製作していたLPなんとか出来上がりました。ライブ会場の響きが今一だったのが残念です。
写真はアムステルダムのコンセルトヘボーでしょうか?ホワイエで白ワインを頂いた記憶があります。素晴らしい響きでした。
製作していたLPなんとか出来上がりました。ライブ会場の響きが今一だったのが残念です。
リウーさん、その通りです。ベルリンフィルハーモニーは、後方の席が多く取られ、全体に音が拡散します。正面の席では、思ったような音量では聞こえませんね。
一方、写真のコンセルトヘボーは、どこにいてもあのPHILIPSの衣ずれのような音が聞こえます。不思議ですね。
一方、写真のコンセルトヘボーは、どこにいてもあのPHILIPSの衣ずれのような音が聞こえます。不思議ですね。