2011年 12月 08日
コンサートホールの音量 |
コンサートホールに始めて行ったとき、オーケストラの音量について、驚き方が二通りあります。やはり凄い迫力だと驚かれる方と、思ったよりも小さい音量に驚いた、という二通りです。もちろん演奏された曲目によってその印象は変わりますし、編成によっても大きく変わります。マーラーの交響曲の様に、大太鼓やティンパニー、シンバルが大活躍する曲では、やはり、その迫力有る音に驚かれることでしょう。しかし、ほとんどの曲は、何時も金管楽器や打楽器が活躍するわけではありません。静かな曲や楽章によってはその小さな音に驚かれるのです。聞こえるか聞こえないかぐらいの持続音が静まりかえった会場に浸透していくのは、再生装置ではなかなか再現できません。
その異なった印象を与える一番大きな違いは、会場のどこに座ったかによって音量は大幅に変わるのです。大迫力を望まれる方や、声楽曲を聴かれる場合は、一番前の席を確保される方も多いのです。その方達は前から10列も離れると、迫力ががた落ちして、細かい音の変化が聞こえないと言われます。また、前に座ると聞こえすぎる音や、あたまの上を通り過ぎて、聞こえない音も多く、オーケストラ全体のバランスを崩すと、反対に一階でも後ろの方や、二階の一番前ぐらいで聴かれる方も多いのです。
この座る位置による変化は、大変大きく、同じ演奏を聴かれてもまったく異なった印象を持たれるのも、案外このことが原因かも知れません。また、音楽に何を求めているかによっても異なります。ウィーンもムジークフェラインザールに出かけても、前の方に座るか、後ろかによって印象は天と地ほど違うのです。それと、驚くべきは、同じホールで、ウィーンフィルが演奏するときと、客演オーケストラが演奏するときでは、まったく異なる響きになるのです。
音は、残響が無ければ、距離の二乗に反比例して小さくなります。その効果は、同じ演奏会で、空席があれば移動して聞き比べればすぐ解ることです。二三列後ろに下がっただけで、まったく違う音量に驚かされると思います。そして、直接音と反射音との比率が、音の鮮度に大きな影響を与えることも、この経験から理解できるようになります。最初に述べた、音量の違いは、どこに座ったかによって相当な違いが生じるという事です。
そして、大きい違いは、ホールその物の構造によると、先に述べました。シューズボックス型とヴィンヤード型の違いによるものです。ヴィンヤードは音が比較的均等に拡散していきます。その反面、音の減衰も大きくなります。シューボックス型は指向性はあるのですが、減衰によるロスは小さく音が密度高く聞こえます。その違いも大変大きいのです。最近の東京の標準は、サントリーホールの音が多いのですが、同じオーケストラで、文化会館の音を聴くチャンスがあれば、その違いに驚かれるでしょう。反対にNHKホールとサントリーホールとの差よりも大きいのです。
ステージ近くの音を再現したく頑張るオーディオファンは多いのですが、絶対的な音量の差に何時かは気がつきあきらめます。反対に二階席中央ぐらいの音量は、再現可能だとこの頃感じてきました。うぬぼれもいい加減にしろという内なる声も聞こえるのですが。ようやく、引き算のオーディオが解ってきたようにも思えるのです。
オーケストラから始めずに、リートだとか、ヴァイオリンソナタとか最小限の響きから、ホールで鳴る音の本質を聴き始めるのが、肝心です。目で聴くのではなく、耳で聞く訓練が大事なのです。ステレオ再生ではスピーカーから音が鳴るのではなく、醸し出す響きを聴くのが、調整のコツだと思います。その為の平行法だと理解していただければ、嬉しいのですが。
その異なった印象を与える一番大きな違いは、会場のどこに座ったかによって音量は大幅に変わるのです。大迫力を望まれる方や、声楽曲を聴かれる場合は、一番前の席を確保される方も多いのです。その方達は前から10列も離れると、迫力ががた落ちして、細かい音の変化が聞こえないと言われます。また、前に座ると聞こえすぎる音や、あたまの上を通り過ぎて、聞こえない音も多く、オーケストラ全体のバランスを崩すと、反対に一階でも後ろの方や、二階の一番前ぐらいで聴かれる方も多いのです。
この座る位置による変化は、大変大きく、同じ演奏を聴かれてもまったく異なった印象を持たれるのも、案外このことが原因かも知れません。また、音楽に何を求めているかによっても異なります。ウィーンもムジークフェラインザールに出かけても、前の方に座るか、後ろかによって印象は天と地ほど違うのです。それと、驚くべきは、同じホールで、ウィーンフィルが演奏するときと、客演オーケストラが演奏するときでは、まったく異なる響きになるのです。
音は、残響が無ければ、距離の二乗に反比例して小さくなります。その効果は、同じ演奏会で、空席があれば移動して聞き比べればすぐ解ることです。二三列後ろに下がっただけで、まったく違う音量に驚かされると思います。そして、直接音と反射音との比率が、音の鮮度に大きな影響を与えることも、この経験から理解できるようになります。最初に述べた、音量の違いは、どこに座ったかによって相当な違いが生じるという事です。
そして、大きい違いは、ホールその物の構造によると、先に述べました。シューズボックス型とヴィンヤード型の違いによるものです。ヴィンヤードは音が比較的均等に拡散していきます。その反面、音の減衰も大きくなります。シューボックス型は指向性はあるのですが、減衰によるロスは小さく音が密度高く聞こえます。その違いも大変大きいのです。最近の東京の標準は、サントリーホールの音が多いのですが、同じオーケストラで、文化会館の音を聴くチャンスがあれば、その違いに驚かれるでしょう。反対にNHKホールとサントリーホールとの差よりも大きいのです。
ステージ近くの音を再現したく頑張るオーディオファンは多いのですが、絶対的な音量の差に何時かは気がつきあきらめます。反対に二階席中央ぐらいの音量は、再現可能だとこの頃感じてきました。うぬぼれもいい加減にしろという内なる声も聞こえるのですが。ようやく、引き算のオーディオが解ってきたようにも思えるのです。
オーケストラから始めずに、リートだとか、ヴァイオリンソナタとか最小限の響きから、ホールで鳴る音の本質を聴き始めるのが、肝心です。目で聴くのではなく、耳で聞く訓練が大事なのです。ステレオ再生ではスピーカーから音が鳴るのではなく、醸し出す響きを聴くのが、調整のコツだと思います。その為の平行法だと理解していただければ、嬉しいのですが。
by TANNOY-GRF
| 2011-12-08 11:47
| オーディオ雑感
|
Comments(8)
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by
Sugar
at 2011-12-08 19:01
x
今回も鳥肌を立てながら読ませていただきました。<m(__)m>
> ステレオ再生ではスピーカーから音が鳴るのではなく、醸し出す響きを聴くのが、調整のコツだと思います。その為の平行法だと理解していただければ、嬉しいのですが。
只々、恐れ入るばかりです。
私がクラシック・コンサートに行くようになったのも、ホールで聴く音を自宅で聴きたかったからです。SD05に感謝。
> ステレオ再生ではスピーカーから音が鳴るのではなく、醸し出す響きを聴くのが、調整のコツだと思います。その為の平行法だと理解していただければ、嬉しいのですが。
只々、恐れ入るばかりです。
私がクラシック・コンサートに行くようになったのも、ホールで聴く音を自宅で聴きたかったからです。SD05に感謝。
ホールの着座位置によって聞こえ方が違うのはその通りですね。
小生がアマチュアオケを聴く場合、今年はミューザが震災で駄目になったため、すみだトリフォニーか横浜みなとみらいがほとんどになり、自由席の場合大抵は前列5~6列目真ん中が定位置になっています。
(流石にサントリーHだとアマチュアは学生オケでも指定席になるのですが)
プロオケとアマチュアの大きな違いは音量の違いです。
楽器を豊かに響かせる技術がアマチュアには不足しており、いきおい前に座った方が響きを感じ取り易いのです。
拙宅の音量もマンション故に大音量での再生には限界がありますが、その分消え入るような極小さい音量の再生において、聴感上のダイナミックレンジを感じられるので、そう不満はありません。
小生がアマチュアオケを聴く場合、今年はミューザが震災で駄目になったため、すみだトリフォニーか横浜みなとみらいがほとんどになり、自由席の場合大抵は前列5~6列目真ん中が定位置になっています。
(流石にサントリーHだとアマチュアは学生オケでも指定席になるのですが)
プロオケとアマチュアの大きな違いは音量の違いです。
楽器を豊かに響かせる技術がアマチュアには不足しており、いきおい前に座った方が響きを感じ取り易いのです。
拙宅の音量もマンション故に大音量での再生には限界がありますが、その分消え入るような極小さい音量の再生において、聴感上のダイナミックレンジを感じられるので、そう不満はありません。
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TANNOY-GRF at 2011-12-09 02:32
Sugarさん、コメントありがとうございます。Sugarさんに紹介していただいたToddさんとの交流がここまで広がるとは思っていませんでした。CDの製造工程を製作者側から見ることが出来たことが、再生に大変役立っています。効率の悪い現代のSPを使う限り、大音量の方向では、限界があります。と言って、小音量の方向でも、感度の問題が細かい音の再現性、ここが一番音場構成には重要なのですが、が悪くなります。感度の良いSPを無理なく鳴らす方向に、解決策があるように思えるのですが、、、。
この年末には、SD05のファンの集まりをしたいですね。
この年末には、SD05のファンの集まりをしたいですね。
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TANNOY-GRF at 2011-12-09 02:37
>楽器を豊かに響かせる技術がアマチュアには不足しており、いきおい前に座った方が響きを感じ取り易いのです。
確かにうまく響かせる技術が無いのは仕方がありませんが、逆に思いっきりの良さが発揮できる場合もありますね。自発性がやはり足りないからでは思います。それは、在京のプロのオーケストラにも見られます。
一度、大阪のお宅にもお伺いしたいですね。お会いできる日を楽しみにしています。
確かにうまく響かせる技術が無いのは仕方がありませんが、逆に思いっきりの良さが発揮できる場合もありますね。自発性がやはり足りないからでは思います。それは、在京のプロのオーケストラにも見られます。
一度、大阪のお宅にもお伺いしたいですね。お会いできる日を楽しみにしています。
GRFさん、今夜は東京文化会館で学生オケの第九演奏会でした。
例によって自由席でしたので、10列目真ん中に陣取りました。
>逆に思いっきりの良さが発揮できる場合もありますね。
今日の指揮者井崎正浩氏の指揮がマサシクその「思いっきりの良さ」を引き出した好演奏でした。
技術的には稚拙な面もありますが、燃え立つような情熱を胸に真剣に演奏に向き合う姿に小生の心もシンクロしてしまい、演奏が終わった瞬間は虚脱状態でした(笑)
歳末は毎晩毎晩第九ばかり演奏しているプロオケのやっつけ仕事を聞くよりもずっと面白い演奏会でした。
例によって自由席でしたので、10列目真ん中に陣取りました。
>逆に思いっきりの良さが発揮できる場合もありますね。
今日の指揮者井崎正浩氏の指揮がマサシクその「思いっきりの良さ」を引き出した好演奏でした。
技術的には稚拙な面もありますが、燃え立つような情熱を胸に真剣に演奏に向き合う姿に小生の心もシンクロしてしまい、演奏が終わった瞬間は虚脱状態でした(笑)
歳末は毎晩毎晩第九ばかり演奏しているプロオケのやっつけ仕事を聞くよりもずっと面白い演奏会でした。
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TANNOY-GRF at 2011-12-10 21:20
椀方さん、私はコンセルへボーですと書いたとこで、疲れが出てきて寝てしまいました。
アマチュアのオーケストラの「思い切りの良さ」は若さの特権でもあります。アマチュアでも、経験を積んでくると段々無難な演奏になってくるのは、残念です。
>燃え立つような情熱を胸に真剣に演奏に向き合う姿に小生の心もシンクロしてしまい、演奏が終わった瞬間は虚脱状態でした
良いですね。昨日のコンセルへボーはその意味では正反対の無難な演奏でした。何か真剣勝負という感じが薄く、睡魔と戦うのが困難でしたね(笑)。
アマチュアのオーケストラの「思い切りの良さ」は若さの特権でもあります。アマチュアでも、経験を積んでくると段々無難な演奏になってくるのは、残念です。
>燃え立つような情熱を胸に真剣に演奏に向き合う姿に小生の心もシンクロしてしまい、演奏が終わった瞬間は虚脱状態でした
良いですね。昨日のコンセルへボーはその意味では正反対の無難な演奏でした。何か真剣勝負という感じが薄く、睡魔と戦うのが困難でしたね(笑)。
GRFさん、もう成田経由で帰宅された頃でしょうか?
>アマチュアでも、経験を積んでくると段々無難な演奏になってくるのは、残念です。
アマオケの真摯な姿、音楽を演奏する素直な喜びを表現する姿に感動を覚えるのが好きです。
でも時々小生は本当に音楽そのものを楽しんでいるんだろうか?と自問する時があります。
本気になったプロオケの演奏に敵うものはないですが、アマオケが本気になる回数に比べ、プロは海外オケの来日公演も含めてどれだけ本気の演奏を聴かせてくれているのでしょうか。
無難な演奏ならオーディオ再生の方が楽しめるといったら言い過ぎでしょうが。
>アマチュアでも、経験を積んでくると段々無難な演奏になってくるのは、残念です。
アマオケの真摯な姿、音楽を演奏する素直な喜びを表現する姿に感動を覚えるのが好きです。
でも時々小生は本当に音楽そのものを楽しんでいるんだろうか?と自問する時があります。
本気になったプロオケの演奏に敵うものはないですが、アマオケが本気になる回数に比べ、プロは海外オケの来日公演も含めてどれだけ本気の演奏を聴かせてくれているのでしょうか。
無難な演奏ならオーディオ再生の方が楽しめるといったら言い過ぎでしょうが。
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TANNOY-GRF at 2011-12-12 23:54
土曜日の午後の便で、日曜の朝には成田に着いていました。家に戻ってからは、「夕寝するまで、昼寝して、時々起きて居眠りをする」状況で、疲労回復と時差ボケ解消に取り組んでいます。寝ているだけですが(笑)
あれだけ、演奏会に通っておられる碗方さんが、
>無難な演奏ならオーディオ再生の方が楽しめるといったら言い過ぎでしょうが。
と言われるのには、やはり、本気の演奏を求めて、通っておられるのだなと、納得しました。本当に気合いが入った演奏会に出会えるのは、稀ですね。
東京では、ヨーロッパでは少しマイナーなオーケストラが、真剣勝負で演奏してくれるときがあります。そのような演奏会に巡り会えると、本当に嬉しいですね。
あれだけ、演奏会に通っておられる碗方さんが、
>無難な演奏ならオーディオ再生の方が楽しめるといったら言い過ぎでしょうが。
と言われるのには、やはり、本気の演奏を求めて、通っておられるのだなと、納得しました。本当に気合いが入った演奏会に出会えるのは、稀ですね。
東京では、ヨーロッパでは少しマイナーなオーケストラが、真剣勝負で演奏してくれるときがあります。そのような演奏会に巡り会えると、本当に嬉しいですね。