2012年 06月 15日
ユニコーンについて(1) |
和室を訪れてはじめてユニコーンをご覧になったお客さんは、皆、不思議そうな顔をされます。ユニコーンとはよく言ったもので、文字通り一角獣のように輝く角を生やしているからです。どこから音が出るのだろうと、いぶかしげに眺められるのです。でも、はじめて見る方は、その奇妙な角よりも、美しいキャビネットの仕上げに驚かれます。ヨーロッパの高級家具にしか見られない、美しい木目の模様に魅せられ、そのニスの仕上げにも感心して頂きます。私の前に二回ほど持ち主が変わっても、傷一つ無いキャビネットには前の持ち主も相当気を使われた様です。ただ、チタンのコーン紙にはお子さんが触ったという後があり、少しだけ凹んでいるところもあります。
名古屋からわざわざ運んできたサウンドピットの坂口さんは、GRFの部屋の中央に置かれたSPを愛おしそうになで、繋いで音を鳴らして見てくださいと言われました。GRFの結線をそのまま繋ぐと、UNICORNさんのお宅で聴いて驚いたときと同じ様な音がしました。不思議です。チタンのコーンが音を360度放射しながら、下向きに付けられたコーンがバックロードホーンを通じて下から出てくるのです。実際は、音はキャビネットの真ん中あたりから出てくる感じです。
音出しすると、坂口さんは安心したように、ほら、こんなに楽に音が出るでしょう。残念ながら前のオーナー達のお宅では鳴らなかったのと言われました。入力の差なのか、アンプの差なのか、多く部屋の問題なのか、お店では大変良く鳴っていたのにと、言われたのです。でも、そのおかげで、この夢の様に美しい想像上の生き物が、私の部屋にやってきたのです。
それから、私の実験が始まりました。いろいろな位置に置いたり、角度を変えたり、間隔を調整したり、楽しい日々が始まりました。その一つ一つで、微妙に表情を変え、音場を換え、空間を変えていくのです。微妙な向きの違いにより、音も鮮やかに変わるのですが、その美しいキャビネットも光の加減で表情を変えていくのです。休日の午後、長くなった夏の日が普段は差し込まない北側の障子を照らすときの表情など、刻一刻と姿を変えていく様は、まるで、ゴヤの裸のマヤを見るような驚きでした。
こんなに芸術性の高いスピーカーに巡り会えて、絶世の美女を侍らしているのは、日本中に何人いるのだと思うと、前のオーナーには申し訳ないのですが、嬉しさがこみ上げてきます。そして何よりもその醸し出す音の不思議に魅了されていったのです。
同じDDDのユニットを使って、低音部だけ別のウーハーを加えた、トールポール状のSPのシリーズも同じメーカーから出ています。また、このユニットを4本上下に並べ、ウーハーは8本も巨大なキャビネットに入れた、文字通り超弩級のシステムも出ています。どなたが買われたのか、雑誌のグランプリを取っているので、少なくとも日本には来たのでしょう。しかし、私は、それらのウーハーを加えたタイプの音には感心しないし、文字通り、木に竹を繋いだような音、そのつなぎ目と音のスピード差が気になるのです。
その点、一本のユニットだけで構成されている、このバックロードホーン形式のユニコーンは、とても自然な音がするのです。何よりも特徴的なのは、部屋の大きさにあまり左右されない360度放射の形式にあります。その後、GRFの部屋が、その他のSPの実験場になり、大型SPが何セットもあったとき、部屋の片隅で小さくなっていたユニコーンを隣の和室の実質7畳の部屋で鳴らしたときも、部屋の大きさを感じさせない、文字通り後ろの壁が消える音に驚かされたものです。いや、大きな部屋よりも、このぐらいの大きさの部屋の方が合っているのかもしれません。
私にユニコーンの素晴らしさを聴かせてくれたUNICORNさんのお部屋も、いろいろと音響的な工夫はされていますが、私の和室と同じぐらいの大きさで、あの大迫力でJAZZもクラシックも両方聴かれています。UNICORNさんのお宅を訪れたことのある人は、皆あの音の素晴らしさに魅了されるのです。
しかし、この魅力的なユニコーンは、UNICORNさんのお宅の装置を最後に生産されなくなったのです。当時輸入されていた会社の人に訊ねると、この複雑な形状と仕上げ工程の大変さ、そして特殊形状のキャビネットを収納する箱とその大きさ、片方に開いている斜めのホーンの開口部が、本体より20センチも外にはみ出している構造のため、収納する箱もその大きさに合わせて40センチも大きくなり、箱が巨大になりすぎ、輸送費は、重量だけではなく積載体積によるので、二倍以上の運賃が掛かり、それが製品価格に上乗せされる等の問題があり、生産を止めたそうです。
その後、出てきたMk2は、形状も異なり、バックロードの出口も前面だけになり、高さも高くなり、日本の家では聴きにくくなりました。何よりも音が違うのと、このキャビネットの美しさが無くなり、多くの潜在需要者をガッカリとさせたのです。
つづきます・・・
名古屋からわざわざ運んできたサウンドピットの坂口さんは、GRFの部屋の中央に置かれたSPを愛おしそうになで、繋いで音を鳴らして見てくださいと言われました。GRFの結線をそのまま繋ぐと、UNICORNさんのお宅で聴いて驚いたときと同じ様な音がしました。不思議です。チタンのコーンが音を360度放射しながら、下向きに付けられたコーンがバックロードホーンを通じて下から出てくるのです。実際は、音はキャビネットの真ん中あたりから出てくる感じです。
音出しすると、坂口さんは安心したように、ほら、こんなに楽に音が出るでしょう。残念ながら前のオーナー達のお宅では鳴らなかったのと言われました。入力の差なのか、アンプの差なのか、多く部屋の問題なのか、お店では大変良く鳴っていたのにと、言われたのです。でも、そのおかげで、この夢の様に美しい想像上の生き物が、私の部屋にやってきたのです。
それから、私の実験が始まりました。いろいろな位置に置いたり、角度を変えたり、間隔を調整したり、楽しい日々が始まりました。その一つ一つで、微妙に表情を変え、音場を換え、空間を変えていくのです。微妙な向きの違いにより、音も鮮やかに変わるのですが、その美しいキャビネットも光の加減で表情を変えていくのです。休日の午後、長くなった夏の日が普段は差し込まない北側の障子を照らすときの表情など、刻一刻と姿を変えていく様は、まるで、ゴヤの裸のマヤを見るような驚きでした。
こんなに芸術性の高いスピーカーに巡り会えて、絶世の美女を侍らしているのは、日本中に何人いるのだと思うと、前のオーナーには申し訳ないのですが、嬉しさがこみ上げてきます。そして何よりもその醸し出す音の不思議に魅了されていったのです。
同じDDDのユニットを使って、低音部だけ別のウーハーを加えた、トールポール状のSPのシリーズも同じメーカーから出ています。また、このユニットを4本上下に並べ、ウーハーは8本も巨大なキャビネットに入れた、文字通り超弩級のシステムも出ています。どなたが買われたのか、雑誌のグランプリを取っているので、少なくとも日本には来たのでしょう。しかし、私は、それらのウーハーを加えたタイプの音には感心しないし、文字通り、木に竹を繋いだような音、そのつなぎ目と音のスピード差が気になるのです。
その点、一本のユニットだけで構成されている、このバックロードホーン形式のユニコーンは、とても自然な音がするのです。何よりも特徴的なのは、部屋の大きさにあまり左右されない360度放射の形式にあります。その後、GRFの部屋が、その他のSPの実験場になり、大型SPが何セットもあったとき、部屋の片隅で小さくなっていたユニコーンを隣の和室の実質7畳の部屋で鳴らしたときも、部屋の大きさを感じさせない、文字通り後ろの壁が消える音に驚かされたものです。いや、大きな部屋よりも、このぐらいの大きさの部屋の方が合っているのかもしれません。
私にユニコーンの素晴らしさを聴かせてくれたUNICORNさんのお部屋も、いろいろと音響的な工夫はされていますが、私の和室と同じぐらいの大きさで、あの大迫力でJAZZもクラシックも両方聴かれています。UNICORNさんのお宅を訪れたことのある人は、皆あの音の素晴らしさに魅了されるのです。
しかし、この魅力的なユニコーンは、UNICORNさんのお宅の装置を最後に生産されなくなったのです。当時輸入されていた会社の人に訊ねると、この複雑な形状と仕上げ工程の大変さ、そして特殊形状のキャビネットを収納する箱とその大きさ、片方に開いている斜めのホーンの開口部が、本体より20センチも外にはみ出している構造のため、収納する箱もその大きさに合わせて40センチも大きくなり、箱が巨大になりすぎ、輸送費は、重量だけではなく積載体積によるので、二倍以上の運賃が掛かり、それが製品価格に上乗せされる等の問題があり、生産を止めたそうです。
その後、出てきたMk2は、形状も異なり、バックロードの出口も前面だけになり、高さも高くなり、日本の家では聴きにくくなりました。何よりも音が違うのと、このキャビネットの美しさが無くなり、多くの潜在需要者をガッカリとさせたのです。
つづきます・・・
by TANNOY-GRF
| 2012-06-15 07:56
| ユニコーン
|
Comments(3)
Commented
by
je5cxr at 2012-06-15 12:17
ユニコーンの音は、ある意味究極だと思います。ここで大絶賛をしたところで、あの音はわからないです。私の陳腐な語彙力では表現できまでせん。
シングル一発のつながりの素晴らしさ、バックロードホーンの違和感のなさ、正直、私も人一倍色々なスピーカーを聞いていますが、あの衝撃は忘れられません。
シングル一発のつながりの素晴らしさ、バックロードホーンの違和感のなさ、正直、私も人一倍色々なスピーカーを聞いていますが、あの衝撃は忘れられません。
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プー博士(Dr.Pooh)
at 2012-06-15 21:09
x
見れば見るほど美しい、、、(ため息)
ところでこのスピーカー本体の一番上が磁気ユニットですよね。
するとチタンのコーンがスピーカーの紙に当たる部分?これが
振動するのでしょうか?するとこれは「フロントローディッドホーン」
ということになるのかしら?頓珍漢なコメントですみません(汗)
ところでこのスピーカー本体の一番上が磁気ユニットですよね。
するとチタンのコーンがスピーカーの紙に当たる部分?これが
振動するのでしょうか?するとこれは「フロントローディッドホーン」
ということになるのかしら?頓珍漢なコメントですみません(汗)
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TANNOY-GRF at 2012-06-16 09:51
>これは「フロントローディッドホーン」ということに、、
このDDDドライバーは、通常のコーン型とは違って、360度に放射しています。低音部はピストン運動していますので、バックロードホーンに空気を排気しているのです。ですから、やはりバックロードホーンですね(笑)。
このDDDドライバーは、通常のコーン型とは違って、360度に放射しています。低音部はピストン運動していますので、バックロードホーンに空気を排気しているのです。ですから、やはりバックロードホーンですね(笑)。