2014年 03月 22日
五嶋みどりの演奏会 |
切っ掛けは昨年の六月末の深夜の演奏会の放送でした。五嶋みどりとメータ・ミュンヘンフィルのブラームスのヴァイオリン協奏曲です。その真摯な演奏態度、メータの献身的な演奏ぶり、ミュンヘンフィルのメンバーの真剣度が、胸を打ちました。やはり生の演奏を聴いてみたと思い探しましたが、みどりさんは、米国在住です。日本に帰って来て演奏会も開くのですが、全国の教会・神社・お寺でバッハの無伴奏曲の演奏会を開いているのを、知っていましたが、普通の演奏会があまりないのです。それでも、来年の3月にシャーイの指揮でライプチッヒ・ゲバントハウスとメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲を演奏するのを見いだしました。
一緒にテレビを見て感激していた家人分も一緒に購入したのです。この6月は、11月の川崎の三大オーケストラのチケットを購入していた時ですし、その前の10月のアバド・ルツェルンも購入していました。この際とことんやってみようという気になっていたからです。チケットを購入したのは、7月のはじめですから、演奏会まだ8ヶ月もありました。演奏会のチケットも、飛行機の切符見たく早く買ったら、その分安くならないとおかしいのですね。
11月の三大オーケストラの狂騒曲はお伝えしたとおりです。アバドは、来日中止で永遠に聞けなくなりました。しかし、例年三月は、忙しい時期なので、仕事との兼ね合いもあり、直前までいけるのか解りませんでした。万が一を考えて親しい友人達に打診したののですが、三万近くするチケットを押しつけるわけにもいけません。予定を前倒しにして、出張のスケジュールの一部をこなし、逆に演奏会当日の予定をずらしました。そして、川崎の演奏会終了後は、羽田近くのホテルに泊まり、朝一番の飛行機を捕まえて目的地に飛びました。六時の飛行機なら、日本中どこでも、普通に朝九時から現場にいられるからです。それには4時台に起きて、五時のホテルから空港のシャトルバスに飛び乗り、空席を見付けて、ようやく朝陽が昇ってきた空港を飛び上がりました。
さて、それほどまでして、スケジュールを合わしたゲヴァントハウスの演奏会ですが、ライプツッヒ・ゲヴァントハウスの演奏会は初めてです。メンデルスゾーンも振った世界最古のオーケストラです。東ドイツではドレスデンと並んで、伝統的な音を醸し出すオーケストラだと思っています。以前からクルト・マズアの演奏で沢山の演奏が、レコード化されています。ウィーン・フィルは、国立歌劇場の管弦楽団ですから、日本で演奏している日でも、ウィーンのオペラの演奏をしていますが、ゲヴァントハウス管弦楽団もライプツッヒの歌劇場のオーケストラでもあり、また日曜日には、聖トーマス教会の演奏団体でもあるので、総員は250名以上いる大団体です。名人ばかりが揃った団体で楽しみにしていきました。
当日は、東海道線が強風のため運休していた影響もあり、東京駅に浮いたら、軒並み出発に遅れが出ていました。その為、ミューザについてのは開演5分前!危ないところでした。入り口でいただいたパンフレットは、プログラムではなく、8ヶ月前に五嶋みどりだけで購入したので、メンデルスゾーンの序曲と言うことは解りましたが、一曲目の曲目が解りません。しかし、非常に力強い演奏で、第一ヴァイオリンがあれほど大きな音を出しているのに驚きました。曲の所為か、洗練より迫力の方に主眼を置いた演奏だと思いました。またピッチが合わずに、音があれている気がしました。これで、ヴァイオリン協奏曲の演奏は大丈夫なのかと少し心配した程です。
みどりさんは、ますます神々しくなってきました。美しい仏像の彫像のようなお顔をして、ニコニコと登場されました。無駄のない姿ですっと立った姿勢の素晴らしさに驚きました。入念にチューニングを重ね、有名な旋律がなり始めた瞬間から、五嶋みどりだけの世界です。1734年製グァルネリ・デル・ジェスの「エクス・フーベルマン」が出す音は、繊細で柔らかく、小さい音なのに、とても浸透力があります。姿勢をかがめて、入魂の様子は、巫女が音楽の神に祈りを捧げているかのようです。隅々まで知っているはずの曲が、新たな道筋で聞こえてきます。伴奏をするシャーイの表情も、演奏しているオーケストラの面々も、先程までの表情と一変して、極めて繊細な音を出しています。
カデンツァでは、オーケストラ全員が聞き惚れているかのようです。ヴァイオリンのピッチは、幾分高めですが、それがソロヴァイオリンとオーケストラとの差を生んでいるのです。何しろ音が柔らかい。音の柔らかさでは、ルーピンもそうですが、ルーピンは音に抑揚が少なく、柔らかだという印象ですが、みどりさんは、深く、強く浸透してきます。あっという間に三楽章を聞き終えました。
盛大な拍手に何度も、呼び出されて、五度目ぐらいにアンコールが演奏されました。バッハの無伴奏からパルティータ第三番のプレリュードです。昨年聴いたイザベラ・ファウストとは全く違った、柔らな心に浸みる演奏です。これには参りました。力が入るところはなく、優しい音楽が心の中から湧き出てきます。これを聞きて本当に幸せだと感じました。
休憩に入り、一曲目の曲名を探しましたが、見える範囲には無く、1000円のプログラムも売り切れていました。曲名ぐらいは、どこかに表示して欲しかったです。
第二部は、やはり目一杯オーケストラが拡がっています。本当に、みどりさんの協奏曲を目当てにきたので、ゲヴァントハウスのメインの曲が何だか解っていない始末です。購入したときは勿論見たはずですが、八ヶ月も前なので、完全に忘れています。老人力のなせる技ですね(苦笑)。オーケストラの構成を見て、打楽器がいろいろあり、ハープが二台に、ピアノまであったので、レスピーギのローマの三部作か、ひょっとしたら、ショスタコビッチの5番かなと想像していました。プログラムもないから解らないというような、どきどきしながら待つなんて、こんな演奏会は初めてです。
音が出た瞬間に勿論解りました。ショスタコビッチの第5番です。しかし、この演奏は、第一音から気合いが入っています。第一曲目の曲名が解らない演奏からは想像も付かないほど、まとまっています。ゆったりとしたテンポで、音を積み重ねていきます。弦楽器もまとまり、音の厚みが出ています。特筆すべきは、フルートとオーボエを中心にした木管楽器の安定性と、トランペットの切れ味とやホルンやトロンボーンの音の厚みです。打楽器が安定していて、安心して聴けます。
それは、二楽章、三楽章と進んで行くに連れ、確信に変わりました。二楽章の終わり、ソロヴァイオリンのシンコペーションが少し、有りすぎたぐらいで、全く破綻がない演奏です。音量が大きいのは、私の経験では、ムラヴィンスキー・レニングラード以来初めて聴きました。最近は、コンセルトヘボウもベルリンも洗練さを全面出していますが、音のダイナミックさではすこしさびしかったのですが、シャーイの演奏は、本当にスケールの大きな演奏で、驚き喜びました。
出張の合間に、今回の演奏会のサイトをみて、第一曲目が何だったか確認しました。メンデルゾーンの序曲で、Ruy Bras op.95という曲でした。メンデルゾーンの序曲集には入っているのですが、あまり集中して聞いたことがなかった曲です。知っているのと、知らないのでは音楽のきくぶぶんが違うようで。オーケストラの響きが違って聞こえたのかもしれません。
23日の日曜日が最終日で、オーケストラの一行は、新宿・川崎・大阪・溜池・京都・溜池と、関西を二往復する変則スケジュールですが、日本の演奏旅行の最終日は、サントリーホールでのマーラーの第7番なので、残りの席を押さえました。ウィーンやベルリンの時に比べると空席があるようです。私はとても良かったのですが、、。
一緒にテレビを見て感激していた家人分も一緒に購入したのです。この6月は、11月の川崎の三大オーケストラのチケットを購入していた時ですし、その前の10月のアバド・ルツェルンも購入していました。この際とことんやってみようという気になっていたからです。チケットを購入したのは、7月のはじめですから、演奏会まだ8ヶ月もありました。演奏会のチケットも、飛行機の切符見たく早く買ったら、その分安くならないとおかしいのですね。
11月の三大オーケストラの狂騒曲はお伝えしたとおりです。アバドは、来日中止で永遠に聞けなくなりました。しかし、例年三月は、忙しい時期なので、仕事との兼ね合いもあり、直前までいけるのか解りませんでした。万が一を考えて親しい友人達に打診したののですが、三万近くするチケットを押しつけるわけにもいけません。予定を前倒しにして、出張のスケジュールの一部をこなし、逆に演奏会当日の予定をずらしました。そして、川崎の演奏会終了後は、羽田近くのホテルに泊まり、朝一番の飛行機を捕まえて目的地に飛びました。六時の飛行機なら、日本中どこでも、普通に朝九時から現場にいられるからです。それには4時台に起きて、五時のホテルから空港のシャトルバスに飛び乗り、空席を見付けて、ようやく朝陽が昇ってきた空港を飛び上がりました。
さて、それほどまでして、スケジュールを合わしたゲヴァントハウスの演奏会ですが、ライプツッヒ・ゲヴァントハウスの演奏会は初めてです。メンデルスゾーンも振った世界最古のオーケストラです。東ドイツではドレスデンと並んで、伝統的な音を醸し出すオーケストラだと思っています。以前からクルト・マズアの演奏で沢山の演奏が、レコード化されています。ウィーン・フィルは、国立歌劇場の管弦楽団ですから、日本で演奏している日でも、ウィーンのオペラの演奏をしていますが、ゲヴァントハウス管弦楽団もライプツッヒの歌劇場のオーケストラでもあり、また日曜日には、聖トーマス教会の演奏団体でもあるので、総員は250名以上いる大団体です。名人ばかりが揃った団体で楽しみにしていきました。
当日は、東海道線が強風のため運休していた影響もあり、東京駅に浮いたら、軒並み出発に遅れが出ていました。その為、ミューザについてのは開演5分前!危ないところでした。入り口でいただいたパンフレットは、プログラムではなく、8ヶ月前に五嶋みどりだけで購入したので、メンデルスゾーンの序曲と言うことは解りましたが、一曲目の曲目が解りません。しかし、非常に力強い演奏で、第一ヴァイオリンがあれほど大きな音を出しているのに驚きました。曲の所為か、洗練より迫力の方に主眼を置いた演奏だと思いました。またピッチが合わずに、音があれている気がしました。これで、ヴァイオリン協奏曲の演奏は大丈夫なのかと少し心配した程です。
みどりさんは、ますます神々しくなってきました。美しい仏像の彫像のようなお顔をして、ニコニコと登場されました。無駄のない姿ですっと立った姿勢の素晴らしさに驚きました。入念にチューニングを重ね、有名な旋律がなり始めた瞬間から、五嶋みどりだけの世界です。1734年製グァルネリ・デル・ジェスの「エクス・フーベルマン」が出す音は、繊細で柔らかく、小さい音なのに、とても浸透力があります。姿勢をかがめて、入魂の様子は、巫女が音楽の神に祈りを捧げているかのようです。隅々まで知っているはずの曲が、新たな道筋で聞こえてきます。伴奏をするシャーイの表情も、演奏しているオーケストラの面々も、先程までの表情と一変して、極めて繊細な音を出しています。
カデンツァでは、オーケストラ全員が聞き惚れているかのようです。ヴァイオリンのピッチは、幾分高めですが、それがソロヴァイオリンとオーケストラとの差を生んでいるのです。何しろ音が柔らかい。音の柔らかさでは、ルーピンもそうですが、ルーピンは音に抑揚が少なく、柔らかだという印象ですが、みどりさんは、深く、強く浸透してきます。あっという間に三楽章を聞き終えました。
盛大な拍手に何度も、呼び出されて、五度目ぐらいにアンコールが演奏されました。バッハの無伴奏からパルティータ第三番のプレリュードです。昨年聴いたイザベラ・ファウストとは全く違った、柔らな心に浸みる演奏です。これには参りました。力が入るところはなく、優しい音楽が心の中から湧き出てきます。これを聞きて本当に幸せだと感じました。
休憩に入り、一曲目の曲名を探しましたが、見える範囲には無く、1000円のプログラムも売り切れていました。曲名ぐらいは、どこかに表示して欲しかったです。
第二部は、やはり目一杯オーケストラが拡がっています。本当に、みどりさんの協奏曲を目当てにきたので、ゲヴァントハウスのメインの曲が何だか解っていない始末です。購入したときは勿論見たはずですが、八ヶ月も前なので、完全に忘れています。老人力のなせる技ですね(苦笑)。オーケストラの構成を見て、打楽器がいろいろあり、ハープが二台に、ピアノまであったので、レスピーギのローマの三部作か、ひょっとしたら、ショスタコビッチの5番かなと想像していました。プログラムもないから解らないというような、どきどきしながら待つなんて、こんな演奏会は初めてです。
音が出た瞬間に勿論解りました。ショスタコビッチの第5番です。しかし、この演奏は、第一音から気合いが入っています。第一曲目の曲名が解らない演奏からは想像も付かないほど、まとまっています。ゆったりとしたテンポで、音を積み重ねていきます。弦楽器もまとまり、音の厚みが出ています。特筆すべきは、フルートとオーボエを中心にした木管楽器の安定性と、トランペットの切れ味とやホルンやトロンボーンの音の厚みです。打楽器が安定していて、安心して聴けます。
それは、二楽章、三楽章と進んで行くに連れ、確信に変わりました。二楽章の終わり、ソロヴァイオリンのシンコペーションが少し、有りすぎたぐらいで、全く破綻がない演奏です。音量が大きいのは、私の経験では、ムラヴィンスキー・レニングラード以来初めて聴きました。最近は、コンセルトヘボウもベルリンも洗練さを全面出していますが、音のダイナミックさではすこしさびしかったのですが、シャーイの演奏は、本当にスケールの大きな演奏で、驚き喜びました。
出張の合間に、今回の演奏会のサイトをみて、第一曲目が何だったか確認しました。メンデルゾーンの序曲で、Ruy Bras op.95という曲でした。メンデルゾーンの序曲集には入っているのですが、あまり集中して聞いたことがなかった曲です。知っているのと、知らないのでは音楽のきくぶぶんが違うようで。オーケストラの響きが違って聞こえたのかもしれません。
23日の日曜日が最終日で、オーケストラの一行は、新宿・川崎・大阪・溜池・京都・溜池と、関西を二往復する変則スケジュールですが、日本の演奏旅行の最終日は、サントリーホールでのマーラーの第7番なので、残りの席を押さえました。ウィーンやベルリンの時に比べると空席があるようです。私はとても良かったのですが、、。
by TANNOY-GRF
| 2014-03-22 13:31
| 演奏会場にて
|
Comments(4)
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椀方
at 2014-03-22 14:19
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やはりミューザでしたか(笑)
京都コンサートホールがもう少し近ければ・・・
京都コンサートホールがもう少し近ければ・・・
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リウー
at 2014-03-22 15:37
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五嶋さんは、パガニーニのCDで知りました。もう随分経ちます。
NHKの番組かなにかで、インタビューを受けていて、淋しくないことと、孤独であることは違うと思います。というような話をされていました。
その言葉と、彼女のヴァイオリンの音は、私の中に、強く響きました。
バッハの無伴奏、聴いてみたいです。
NHKの番組かなにかで、インタビューを受けていて、淋しくないことと、孤独であることは違うと思います。というような話をされていました。
その言葉と、彼女のヴァイオリンの音は、私の中に、強く響きました。
バッハの無伴奏、聴いてみたいです。
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GRF
at 2014-03-22 17:26
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家から川崎と、梅田から北山駅はほぼ同じ一時間ですね。頑張れば行けたかも!みどりさんもそうですが、シャーイのショスタビッチも凄かったです。ほぼ完璧でした。それでも、あまり人気がないのか、明日のサントリーホールのマーラー7番も手に入れられました。
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GRF
at 2014-03-22 17:28
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リウーさん 彼女のバッハ演奏は、これからも機会があると思います。ぜひ、聴いてください。祈りの音楽です。