2015年 04月 26日
紀尾井ホールとフィリアホール |
紀尾井ホールのシューベルトの交響曲「ザ・グレート」の和音が鳴り終わり、最初のカーテンコールで、席を立ち、まだ、扉を開け切れていない玄関を急ぎ足で飛び出すと、目の前のタクシーがいました。たった700mの距離なのですが、飛び乗り永田町の地下鉄の入り口へ。時計をみると、4時25分になろうとしています。次の急行に飛び乗れれば、ひょっとしたら、開演に間に合うかも?複雑な地下道をおりて半蔵門線のホームへのエスカレーターからは、沢山の人達が上がってきます。私としては、めずらしく小走りに走ったのですが、ホームに着いたら、急行は行ったばかりでした。次は、37分です。これならば、タクシーに乗らなくても良かったのにと、反省しました。その10分の長かったこと。
半蔵門線の中は各駅ですが、澁谷からは急行田園都市線の中央林間行きになります。前の急行に乗れたら、青葉台駅は17時6分です。ひょっとしたら、演奏がはじまる前に滑り込めるかも、何て思っていましたが、次の電車は、到着は15分ですから、これは間に合いません。第一曲目が終わったら、第二曲目の間に入るしか有りませんね。諦めてホールにゆっくり入ると、会場のテレビが中の様子を映し出しており、SPからは、演奏の音が聞こえてきます。その音を聴いても、江口さんのピアノがさえきっているのが解ります。ヴァイオリンの音は、旋律しか追えませんから、演奏の判断は、中に入らなければなりません。しかし、素晴らしい熱演であることは、外にいても解りました。
紀尾井ホールに行くお堀の横の道です。左側は上智大学です。
最初のプログラム第六番のヴァイオリンソナタが終わったところで、席に着くことが出来ました。続く曲は、第八番ト長調です。ベートーヴェンのヴァイオリンソナタは、ヴァイオリンの為の曲ではなく、ピアノソナタ・ヴァイオリン付きという感じですから、ピアニストが良くなければ面白くありません。CDやレコードでは、シェリング・へブラーの名盤やクレーメル・アルゲリッチの力演、先日聴いたメルニコフがピアノを弾くイザベル・ファウストなどを良く聴いています。川久保さんの音は、どの様に聞こえるのか楽しみでした。SPから聴いていた六番もすごい演奏でしたが、八番も冒頭から、攻めています。今日のピアノは、1887年製のNYスタインウェイで、1779年製のジョバンニ・グァダニーニのヴァイオリンとどの様な響きを醸し出すのかが、今日の演奏会の今一つの楽しみで、私としては初めての演奏会の梯子までして青葉台まで来ました。
ストラディバリウスとは違って、高音は甘い音色です。川久保さんの弾き方も、柔らかで素敵です。反対に、優しくなるピアノも、強打のところは、あえて、ピアノフォルテのような響きを出して江口さんが弾いています。第二楽章のメヌエットの柔らかい響きが、とても心地よいです。二人の息はとても良くあっていて、掛け合いの妙を楽しむことが出来ました。ピアノとヴァイオリンのハーモニーがリズムの交換から浮かび上がってきます。最後のクレッシェンドからピアノの軽やかな響きが、鳴り響き、グリサンド気味になって柔らかく終わるところは秀逸でした。
第三楽章は,軽やかな展開で、この銘器のヴァイオリンの切れ込みの良さが良くわかります。ピアノとの掛け合いを感心して聴いている内に,あっという間に終わりました。こうなってくると、聞き逃した第六番の第一楽章を聴いてみたいと思いました。
第二部の七番は、好きな曲です。この曲も八番と同じで、冒頭のピアノが印象的です。この曲は、前の七番とはまったく違うピアノの音色がしました。まろやかな感じで、ピアノの製造が20世紀に入ったような音色で演奏されたのには驚きました。逆に現代ピアノを使っている演奏、例えばアルゲリッチなどは、この強奏の部分をピアノフォルテ的な響きを出して弾いているからです。ベートーヴェンのハ短調らしい響きです。
第二楽章は、ベートーヴェンの曲だとすぐ解る旋律で、ピアノとヴァイオリンの交互の旋律の受け渡しが見事ですね。お互いが主旋律を弾いているときの、伴奏が華麗に装飾されます。こういうときの川久保さんの音色のコントロールの見事なこと。江口さんのしっかりとした技術に裏付けされた、自信が急速なグリザンドでも力がみなぎります。このあたりは、アルゲリッチが本当に見事な演奏ですが、今日の江口さんも全く負けていませんし、男性ピアニストの優位性も感じられました。
三楽章のスケルッオも、ピアノの三連符が見事です。そのピアノの迫力有る音に、互してヴァイオリンの力強い響きも見事です。本当に音色のコントロールと多様性に優れたヴァイオリニストだと感心しました。力強さと柔らかさ、それに情熱を傾ける演奏、時々見せるユーモア、どれを取っても余裕のあるプロフェッショナルな演奏でした。ともすれば、よい子ちゃんになってしまう、我が国の演奏家の中では、河村尚子、小菅優、などと同じ、世界に飛び出しているいわば、外人演奏家のような厳しさと、安心感のある演奏会でした。
そして、素晴らしかったのは、アンコールの曲です。サラサーテの『アンダルシアのロマンス』、モンティの『チャルダーシュ』、最後はクライスラーの『美しいロスマリン』でした。余りの巧さに、それらの収録されたCDを購入して、ついでにサイン会まで並びました。先頭から五人目だったので、すぐにサインをして貰い、川久保さんには演奏と楽器の素晴らしさを伝え、江口さんには、ピアノの音色の違いを聞いたところ、即座に曲によって音色を考えて演奏していると答えてくれました。
案内板を見ると、急行が来るまで10分間有ります。駅構内の蕎麦屋さんによって、きつね蕎麦をかき込み、急行に揺られて帰って来ました。やはり狭軌の軌道を100キロ以上で飛ばす電車は、不安定で、横揺れが激しく不安定です。演奏家と同じ様に、電車も海外と同じ土俵に上がらないと、安定感が出ないかと感じました。
せっかく買ってきた川久保さんと江口さんのCDでしたが、録音がクラシックの取り方ではなく、オンマイクで、肝心の響きがきこえず、少しガッカリしました。これは録音スタッフのセンスの問題です。昨日の川久保さんの生演奏は、あれほど柔らかい響きがしたのですから。
川久保さんのベートーヴェンは来年も行きたいと思いました。
半蔵門線の中は各駅ですが、澁谷からは急行田園都市線の中央林間行きになります。前の急行に乗れたら、青葉台駅は17時6分です。ひょっとしたら、演奏がはじまる前に滑り込めるかも、何て思っていましたが、次の電車は、到着は15分ですから、これは間に合いません。第一曲目が終わったら、第二曲目の間に入るしか有りませんね。諦めてホールにゆっくり入ると、会場のテレビが中の様子を映し出しており、SPからは、演奏の音が聞こえてきます。その音を聴いても、江口さんのピアノがさえきっているのが解ります。ヴァイオリンの音は、旋律しか追えませんから、演奏の判断は、中に入らなければなりません。しかし、素晴らしい熱演であることは、外にいても解りました。
最初のプログラム第六番のヴァイオリンソナタが終わったところで、席に着くことが出来ました。続く曲は、第八番ト長調です。ベートーヴェンのヴァイオリンソナタは、ヴァイオリンの為の曲ではなく、ピアノソナタ・ヴァイオリン付きという感じですから、ピアニストが良くなければ面白くありません。CDやレコードでは、シェリング・へブラーの名盤やクレーメル・アルゲリッチの力演、先日聴いたメルニコフがピアノを弾くイザベル・ファウストなどを良く聴いています。川久保さんの音は、どの様に聞こえるのか楽しみでした。SPから聴いていた六番もすごい演奏でしたが、八番も冒頭から、攻めています。今日のピアノは、1887年製のNYスタインウェイで、1779年製のジョバンニ・グァダニーニのヴァイオリンとどの様な響きを醸し出すのかが、今日の演奏会の今一つの楽しみで、私としては初めての演奏会の梯子までして青葉台まで来ました。
ストラディバリウスとは違って、高音は甘い音色です。川久保さんの弾き方も、柔らかで素敵です。反対に、優しくなるピアノも、強打のところは、あえて、ピアノフォルテのような響きを出して江口さんが弾いています。第二楽章のメヌエットの柔らかい響きが、とても心地よいです。二人の息はとても良くあっていて、掛け合いの妙を楽しむことが出来ました。ピアノとヴァイオリンのハーモニーがリズムの交換から浮かび上がってきます。最後のクレッシェンドからピアノの軽やかな響きが、鳴り響き、グリサンド気味になって柔らかく終わるところは秀逸でした。
第三楽章は,軽やかな展開で、この銘器のヴァイオリンの切れ込みの良さが良くわかります。ピアノとの掛け合いを感心して聴いている内に,あっという間に終わりました。こうなってくると、聞き逃した第六番の第一楽章を聴いてみたいと思いました。
第二部の七番は、好きな曲です。この曲も八番と同じで、冒頭のピアノが印象的です。この曲は、前の七番とはまったく違うピアノの音色がしました。まろやかな感じで、ピアノの製造が20世紀に入ったような音色で演奏されたのには驚きました。逆に現代ピアノを使っている演奏、例えばアルゲリッチなどは、この強奏の部分をピアノフォルテ的な響きを出して弾いているからです。ベートーヴェンのハ短調らしい響きです。
第二楽章は、ベートーヴェンの曲だとすぐ解る旋律で、ピアノとヴァイオリンの交互の旋律の受け渡しが見事ですね。お互いが主旋律を弾いているときの、伴奏が華麗に装飾されます。こういうときの川久保さんの音色のコントロールの見事なこと。江口さんのしっかりとした技術に裏付けされた、自信が急速なグリザンドでも力がみなぎります。このあたりは、アルゲリッチが本当に見事な演奏ですが、今日の江口さんも全く負けていませんし、男性ピアニストの優位性も感じられました。
三楽章のスケルッオも、ピアノの三連符が見事です。そのピアノの迫力有る音に、互してヴァイオリンの力強い響きも見事です。本当に音色のコントロールと多様性に優れたヴァイオリニストだと感心しました。力強さと柔らかさ、それに情熱を傾ける演奏、時々見せるユーモア、どれを取っても余裕のあるプロフェッショナルな演奏でした。ともすれば、よい子ちゃんになってしまう、我が国の演奏家の中では、河村尚子、小菅優、などと同じ、世界に飛び出しているいわば、外人演奏家のような厳しさと、安心感のある演奏会でした。
そして、素晴らしかったのは、アンコールの曲です。サラサーテの『アンダルシアのロマンス』、モンティの『チャルダーシュ』、最後はクライスラーの『美しいロスマリン』でした。余りの巧さに、それらの収録されたCDを購入して、ついでにサイン会まで並びました。先頭から五人目だったので、すぐにサインをして貰い、川久保さんには演奏と楽器の素晴らしさを伝え、江口さんには、ピアノの音色の違いを聞いたところ、即座に曲によって音色を考えて演奏していると答えてくれました。
案内板を見ると、急行が来るまで10分間有ります。駅構内の蕎麦屋さんによって、きつね蕎麦をかき込み、急行に揺られて帰って来ました。やはり狭軌の軌道を100キロ以上で飛ばす電車は、不安定で、横揺れが激しく不安定です。演奏家と同じ様に、電車も海外と同じ土俵に上がらないと、安定感が出ないかと感じました。
せっかく買ってきた川久保さんと江口さんのCDでしたが、録音がクラシックの取り方ではなく、オンマイクで、肝心の響きがきこえず、少しガッカリしました。これは録音スタッフのセンスの問題です。昨日の川久保さんの生演奏は、あれほど柔らかい響きがしたのですから。
川久保さんのベートーヴェンは来年も行きたいと思いました。
by TANNOY-GRF
| 2015-04-26 22:27
| 演奏会場にて
|
Comments(7)
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(Y)
at 2015-04-27 02:54
x
本来の話題とはまったく関係ないので申し訳ないですが、
関西の人間、特に大阪・神戸は「きつね蕎麦」と言われると、
なんのことやら混乱を起こしてしまいます(笑)。
京都はどうも違うようですが、大阪はきつね=うどん、たぬき=そば、
と考えています。
細かく言いだすと、たぬきも「たねぬき」=天かすと、うす揚げの短冊切りだったりします。
いずれにせよ、夜中にこういう話題はお腹がすいて来てダメですね(笑)。
関西の人間、特に大阪・神戸は「きつね蕎麦」と言われると、
なんのことやら混乱を起こしてしまいます(笑)。
京都はどうも違うようですが、大阪はきつね=うどん、たぬき=そば、
と考えています。
細かく言いだすと、たぬきも「たねぬき」=天かすと、うす揚げの短冊切りだったりします。
いずれにせよ、夜中にこういう話題はお腹がすいて来てダメですね(笑)。
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TANNOY-GRF at 2015-04-27 08:17
(Y)さん ですからあえてきつね蕎麦と書いたわけです(笑い)関東の人に狸と言えば、天かすが乗っている蕎麦だと思います。それだと、熱くて次の電車が来るまでに食べきれません。何と、思慮遠望?な判断でしょう(爆)。
初めて、関西に行った頃の、カルチャーショックは、忘れませんね。そして、大阪のお蕎麦の汁が薄いこと!あれも、関東の人間には、驚きでした。反対に大阪の人が、東京に来ると、醤油で煮染めたようなと表現されます。面白いですね〜。
初めて、関西に行った頃の、カルチャーショックは、忘れませんね。そして、大阪のお蕎麦の汁が薄いこと!あれも、関東の人間には、驚きでした。反対に大阪の人が、東京に来ると、醤油で煮染めたようなと表現されます。面白いですね〜。
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Bellwood
at 2015-04-27 08:46
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いい演奏会でしたね。このベートーヴェン・ソナタ全曲シリーズは今回が2年目。昨年、感動して今年もぜひにということで、紀尾井シンフォニエッタ東京とやりくりしてかけつけましたが、昨年をさらに上回る出来でした。紀尾井では、ドイツ的なアウフタクトやウィンナワルツのアクセントなどなかなか日本人の身につかない音楽のエッセンスについて考えさせられましたが、このお二人はそういう感覚が身についてますね。川久保さんはロスの生まれ、ジュリアード音楽院からドイツ留学、現在ベルリン在住。江口さんは、芸大作曲科からやはりジュリアード音楽院ピアノ科に進み、現在、ニューヨークに拠点を構えます。ふたりは音楽という対話を楽しみ、しかも、その話し言葉が完璧にネイティブなんですね。それがあらゆるところに出ていました。久々に興奮しました(笑)。
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TANNOY-GRF at 2015-04-27 10:21
>その話し言葉が完璧にネイティブなんですね。それがあらゆるところに出ていました。久々に興奮しました(笑)。
Bellwoodさん
そうですね。音楽の会話がネイティブで行われている!そうですね。紀尾井の演奏が、極めて日本的だったので、その響きの差が大きかったのでしょう。CDのおとはガッカリでしたが、ドイツ録音の演奏もあるので、その音も聞いて確かめてみます。帰って来てから、聞いたクレーメル・アルゲリッチの音の良さには感心しましたが、、。
Bellwoodさん
そうですね。音楽の会話がネイティブで行われている!そうですね。紀尾井の演奏が、極めて日本的だったので、その響きの差が大きかったのでしょう。CDのおとはガッカリでしたが、ドイツ録音の演奏もあるので、その音も聞いて確かめてみます。帰って来てから、聞いたクレーメル・アルゲリッチの音の良さには感心しましたが、、。
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Bellwood
at 2015-04-27 13:18
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川久保さんは、いまひとつ録音の良さということでは恵まれていませんね。紀尾井シンフォニエッタ東京と録れたヴィヴァルディの「四季」も、ホール常駐のEXTONによるライブ録音なので録音としては可もなく不可もなく。やはり小品集の「リサイタル」がベルリンのテルデックスタジオでの録音で、相方もイタマール・ゴランと豪華、ノリの良さもあってオススメです。
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椀方
at 2015-04-27 17:06
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紀尾井シンフォニエッタの演奏素晴らしかったようですね。
その上、フィリアホール迄演奏会をハシゴするなんて!此れは禁じ手ですよ(笑)
その上、フィリアホール迄演奏会をハシゴするなんて!此れは禁じ手ですよ(笑)
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TANNOY-GRF at 2015-04-28 09:11
椀方さん 演奏会のハシゴは初めてでした。物覚えが悪くなってきたので、一度に二つのことは入りません。今回は後の方を覚えているうちに書いておこうと思いました。このレベルの演奏会をハシゴ出来るのは東京ならではだと思いました。