2015年 07月 03日
東海道やじきたオーディオ道中(プー博士邸訪問記) |
Bellwoodさんの日記からの転載です。
GRFさんと名古屋まで遠征してのメジューエワの追っかけでした。
その夜は、大変な豪雨に襲われましたが、幸い宿泊先のビジネスホテルの1階になかなかおいしくて値段も手頃なイタリアレストランがあって、そこで感想戦。その後、どうやら私が飲み足りない顔をしていたらしく、どこか近所のバーに行ったような気がしますが憶えていません(爆)。
翌日は、GRFさんの独逸車「大衆号」で東海道をひた走り。
まず立ち寄ったのは、名古屋の名オーディオショップ「サウンド・ピット」さん。おいしい珈琲をいただきながら、しばし、ヴィンテージの銘機で巌本真理の名演に耳を傾けました。
GRFさんは、UNICORNさんのユニコーンを聴いて衝撃を受け、東奔西走してこれを探し求め、ついにこちらで良品のユニコーンで出会ったとのこと。この日も、店頭に805Dやウィーンアコースティックなどと並んでユニコーンが展示してあってマーラーを聴かせていただきました。
なんでも、このユニコーンは新たにTROUBADOUR 80にELACの最新のサブウーファーを組み合わせたシステムを導入された方からの出戻りだそうです。サブウーファーと組み合わせたTROUBADOURというコンセプトは、横浜のMさん宅でも聴いて感銘を受けましたが、ユニコーンにも三行半をつきつけるとは何ともそそられるお話しです。
GRFさんと店主の坂口さんとの何気ない会話のなかにも、オーディオ哲学のようなものが仄聞され興味は尽きません。坂口さんは、修理も受けられていて、いわゆるヴィンテージというのはこうした方の深い経験や知識、レストア技術があってこそ。こういう方が少なくなってしまえば、ネットなどでの右から左への中古取り引きでヴィンテージ市場がどんどん荒れていき銘機の寿命も尽きていくのでしょうか。そんな想いがふと頭をよぎりました。
さて、次の札所は浜松。この道中はいわばユニコーン巡礼のようなもの。お訪ねしたのはユニコーンを導入されたお一人であるプー博士邸です。
先週もGRFさんは博士邸を訪ね、その時もウナギを食べたお二人ですが駄々をこねる私にご配慮いただき、ご近所のウナギ名店へ。私は遠慮無く「上」をいただきました(笑)。昨今の稚魚不足、絶滅危惧騒ぎの値上がりで3年近く食していなかった私ですが、これですっかり満足。もう3年食べなくてもよいくらい(爆)。
さて、博士邸のリスニングルームに参上。
タテ置きのユニコーンが、深い奥行きを伴ってマーラーの第10番を深々と鳴らしていて、そのサウンドにちょっと軽い衝撃というのか動揺のようなものを感じてしまいました。ユニコーン遣いの達人たちのヨコ置きのサウンドこそベストという刷り込みのようなものがあったことに加えて、ユニコーンでは奥行きのある後方定位は苦手なのではないかという思い込みもあったからです。
GRFさんの顔つきがちょっと変わります。プー博士の了解を得ると、真剣な面持ちでセッティングの調整に入ります。動かすのは主に内振りの角度ですが、ミリ単位でちょっと動かしただけで音が変わります。左右のバランスを綿密に合わせていくと、音に深みが増してきます。具体的には、音楽の「内声部」で、3度音程で動いているヴァイオリン二部が焦点が合うと、第二ヴァイオリンの低声部がはっきりと聞こえてきます。内声部が充実すると、音楽の陰影がよく見えてくるのです。マーラーのティンパニが深く沈み込み、一撃、一撃の情感の移ろいが浮き出てくる。プー博士のオリジナルポイントがほぼ正解だったようです。
ところが…
GRFさんが、やおら両スピーカー間の間隔を詰めてしまいました。オリジナルからは板目1枚ぐらいでしょうか。最終的には両ユニット間は138cmだそうで、常識からすればかなり狭めです。ここで大きく変わったのは響きの拡がりで、素晴らしい空間表現力が出現したことに驚きました。カラヤンの「ニューイヤーコンサート」では、キャスリーン・バトルの立ち位置も正確。コロラトゥーラも何の力みも感じさせず、実に軽やかでいかにもカラヤン好みの美声です。最後の拍手は、まさにコンサートホールにワープしたような感覚で思わず自分も拍手してしまいました。
ここまでくると、ユニコーンは、空間の形、コンサートホールの内部構造まで映し出してしまうのです。「ニューイヤー」での響きが左右上下にまわっていき自分が包まれてしまうような感覚は、まさにシューボックスのムジークフェラインの響き。同じウィーン・フィルによるガードナーのシューベルト「グレート」でも見事な奥行きを感じるのですがこの録音はザルツブルクの祝祭大劇場でのもの。むしろ響きの拡がりは左右に大きく水平に展開していきます。これは、横に広い祝祭大劇場の広大なスペースそのもの。両者のタテ型vsヨコ型ともいうべきハコ(=ホール)のカタチをここまで見事に描き分けるサウンド比較は初めての体験。ほんとうに感動しました。
ザルツブルク祝祭大劇場はややドライな響きなので、ガードナーは少し速めのテンポをとっています。残響や余韻がきちんと再現できないシステムで再生すると、これが単に速いだけに聞こえて性急な印象を与えてしまいます。これが、ここでは実に心地よい流麗なシューベルトとなって胸に染み込んでくるのです。再生装置に応分な力量がないと、演奏家の解釈をも真っ当に評価できず、とんでもない的はずれの批評になってしまいかねないと痛感させられました。
この後、ヨコ置きも試しました。やはりここでは断然タテ置きがよいようです。タテとヨコで音の密度と濃度が二律背反的なところがあるようなのですが、博士邸のリスニングルームではタテ置きでも、左右壁との距離が小さいせいか濃度が薄くなりにくいようでタテ置きが圧倒的勝利でした。さらに優位だったのは響きの拡がり感で、加えてヨコ置きはどうも音がぼやけるような気がするのです。このタテ、ヨコは、部屋の形や大きさによって、それぞれのようだと思いました。
もう一度、先ほどのベストポイントに戻して聴いてみて、またまたカラヤンの「ニューイヤー」に大拍手してしまいました。さすがのGRFさんも言葉数が少なめで、ご自宅のユニコーンにもまだまだセッティング追究の余地があると思い至ったかのような様子でした。
帰り道は、新東名(第二東名)をひた走り。浜北ICまではやたら遠いのですが、そこから新東名に入ると、いままでの高速道路とは別次元の風景でした。山側を走るので、いままで見たことのない富士の姿が新鮮に感じます。道路は、カーブがほとんどなく、しかも、決して直線ではなく、ゆるやかな弧を描いているのでストレスもなくスピードが出ます。
いま、新東名での速度制限上限を現行法の100km/hから120km/hへ見直す議論があるそうです。そもそも名神高速開通当時とは車の性能が大きく違っているうえに、新東名では設計基準が違うわけですから、周囲の流れに乗っているとごくふつうに120kmを超えてしまいます。新東名の設計速度は140km/hなのですから無理もありません。それでも警察は事故が増えると最高速度の改正に難色を示し、それに同調する学者も少なくないとか。ばかげた話しです。
夕暮れの空は、梅雨の合間の空気の透明感もあって絶妙の夕暮れ色。
何とも収穫の多い音楽・オーディオ三昧、巡礼の旅でした。
GRFさんと名古屋まで遠征してのメジューエワの追っかけでした。
その夜は、大変な豪雨に襲われましたが、幸い宿泊先のビジネスホテルの1階になかなかおいしくて値段も手頃なイタリアレストランがあって、そこで感想戦。その後、どうやら私が飲み足りない顔をしていたらしく、どこか近所のバーに行ったような気がしますが憶えていません(爆)。
翌日は、GRFさんの独逸車「大衆号」で東海道をひた走り。
まず立ち寄ったのは、名古屋の名オーディオショップ「サウンド・ピット」さん。おいしい珈琲をいただきながら、しばし、ヴィンテージの銘機で巌本真理の名演に耳を傾けました。
GRFさんは、UNICORNさんのユニコーンを聴いて衝撃を受け、東奔西走してこれを探し求め、ついにこちらで良品のユニコーンで出会ったとのこと。この日も、店頭に805Dやウィーンアコースティックなどと並んでユニコーンが展示してあってマーラーを聴かせていただきました。
なんでも、このユニコーンは新たにTROUBADOUR 80にELACの最新のサブウーファーを組み合わせたシステムを導入された方からの出戻りだそうです。サブウーファーと組み合わせたTROUBADOURというコンセプトは、横浜のMさん宅でも聴いて感銘を受けましたが、ユニコーンにも三行半をつきつけるとは何ともそそられるお話しです。
GRFさんと店主の坂口さんとの何気ない会話のなかにも、オーディオ哲学のようなものが仄聞され興味は尽きません。坂口さんは、修理も受けられていて、いわゆるヴィンテージというのはこうした方の深い経験や知識、レストア技術があってこそ。こういう方が少なくなってしまえば、ネットなどでの右から左への中古取り引きでヴィンテージ市場がどんどん荒れていき銘機の寿命も尽きていくのでしょうか。そんな想いがふと頭をよぎりました。
さて、次の札所は浜松。この道中はいわばユニコーン巡礼のようなもの。お訪ねしたのはユニコーンを導入されたお一人であるプー博士邸です。
先週もGRFさんは博士邸を訪ね、その時もウナギを食べたお二人ですが駄々をこねる私にご配慮いただき、ご近所のウナギ名店へ。私は遠慮無く「上」をいただきました(笑)。昨今の稚魚不足、絶滅危惧騒ぎの値上がりで3年近く食していなかった私ですが、これですっかり満足。もう3年食べなくてもよいくらい(爆)。
さて、博士邸のリスニングルームに参上。
タテ置きのユニコーンが、深い奥行きを伴ってマーラーの第10番を深々と鳴らしていて、そのサウンドにちょっと軽い衝撃というのか動揺のようなものを感じてしまいました。ユニコーン遣いの達人たちのヨコ置きのサウンドこそベストという刷り込みのようなものがあったことに加えて、ユニコーンでは奥行きのある後方定位は苦手なのではないかという思い込みもあったからです。
GRFさんの顔つきがちょっと変わります。プー博士の了解を得ると、真剣な面持ちでセッティングの調整に入ります。動かすのは主に内振りの角度ですが、ミリ単位でちょっと動かしただけで音が変わります。左右のバランスを綿密に合わせていくと、音に深みが増してきます。具体的には、音楽の「内声部」で、3度音程で動いているヴァイオリン二部が焦点が合うと、第二ヴァイオリンの低声部がはっきりと聞こえてきます。内声部が充実すると、音楽の陰影がよく見えてくるのです。マーラーのティンパニが深く沈み込み、一撃、一撃の情感の移ろいが浮き出てくる。プー博士のオリジナルポイントがほぼ正解だったようです。
ところが…
GRFさんが、やおら両スピーカー間の間隔を詰めてしまいました。オリジナルからは板目1枚ぐらいでしょうか。最終的には両ユニット間は138cmだそうで、常識からすればかなり狭めです。ここで大きく変わったのは響きの拡がりで、素晴らしい空間表現力が出現したことに驚きました。カラヤンの「ニューイヤーコンサート」では、キャスリーン・バトルの立ち位置も正確。コロラトゥーラも何の力みも感じさせず、実に軽やかでいかにもカラヤン好みの美声です。最後の拍手は、まさにコンサートホールにワープしたような感覚で思わず自分も拍手してしまいました。
ここまでくると、ユニコーンは、空間の形、コンサートホールの内部構造まで映し出してしまうのです。「ニューイヤー」での響きが左右上下にまわっていき自分が包まれてしまうような感覚は、まさにシューボックスのムジークフェラインの響き。同じウィーン・フィルによるガードナーのシューベルト「グレート」でも見事な奥行きを感じるのですがこの録音はザルツブルクの祝祭大劇場でのもの。むしろ響きの拡がりは左右に大きく水平に展開していきます。これは、横に広い祝祭大劇場の広大なスペースそのもの。両者のタテ型vsヨコ型ともいうべきハコ(=ホール)のカタチをここまで見事に描き分けるサウンド比較は初めての体験。ほんとうに感動しました。
ザルツブルク祝祭大劇場はややドライな響きなので、ガードナーは少し速めのテンポをとっています。残響や余韻がきちんと再現できないシステムで再生すると、これが単に速いだけに聞こえて性急な印象を与えてしまいます。これが、ここでは実に心地よい流麗なシューベルトとなって胸に染み込んでくるのです。再生装置に応分な力量がないと、演奏家の解釈をも真っ当に評価できず、とんでもない的はずれの批評になってしまいかねないと痛感させられました。
この後、ヨコ置きも試しました。やはりここでは断然タテ置きがよいようです。タテとヨコで音の密度と濃度が二律背反的なところがあるようなのですが、博士邸のリスニングルームではタテ置きでも、左右壁との距離が小さいせいか濃度が薄くなりにくいようでタテ置きが圧倒的勝利でした。さらに優位だったのは響きの拡がり感で、加えてヨコ置きはどうも音がぼやけるような気がするのです。このタテ、ヨコは、部屋の形や大きさによって、それぞれのようだと思いました。
もう一度、先ほどのベストポイントに戻して聴いてみて、またまたカラヤンの「ニューイヤー」に大拍手してしまいました。さすがのGRFさんも言葉数が少なめで、ご自宅のユニコーンにもまだまだセッティング追究の余地があると思い至ったかのような様子でした。
帰り道は、新東名(第二東名)をひた走り。浜北ICまではやたら遠いのですが、そこから新東名に入ると、いままでの高速道路とは別次元の風景でした。山側を走るので、いままで見たことのない富士の姿が新鮮に感じます。道路は、カーブがほとんどなく、しかも、決して直線ではなく、ゆるやかな弧を描いているのでストレスもなくスピードが出ます。
いま、新東名での速度制限上限を現行法の100km/hから120km/hへ見直す議論があるそうです。そもそも名神高速開通当時とは車の性能が大きく違っているうえに、新東名では設計基準が違うわけですから、周囲の流れに乗っているとごくふつうに120kmを超えてしまいます。新東名の設計速度は140km/hなのですから無理もありません。それでも警察は事故が増えると最高速度の改正に難色を示し、それに同調する学者も少なくないとか。ばかげた話しです。
夕暮れの空は、梅雨の合間の空気の透明感もあって絶妙の夕暮れ色。
何とも収穫の多い音楽・オーディオ三昧、巡礼の旅でした。
by TANNOY-GRF
| 2015-07-03 12:21
| 行ったり
|
Comments(3)
Commented
by
プー博士
at 2015-07-03 13:22
x
恐ろしいほどに的確なベルウッドさんの音に対する感覚表現にはただ感動するのみです。今ある計画を進行中ですのでうまくいったらまたお越しくださいませ。ウナギは3年待たなくてもよいと思います \(^o^)/
Commented
by
椀方
at 2015-07-03 14:00
x
小生も浜松行きたかったのですが、井上道義指揮の大フィルでブルックナー7番(マーラー版)の演奏会と重なり断念しました。
本場浜松の鰻も美味しそうですが、プー博士宅の縦置きunicornの音聴きたかったですねー。
本場浜松の鰻も美味しそうですが、プー博士宅の縦置きunicornの音聴きたかったですねー。
Commented
by
プー博士
at 2015-07-03 14:05
x
椀方さん、初めまして。どうぞいつでもお越しくださいませ。暑いなかウナギはいいですよ〜(悪魔のささやき)