2015年 09月 27日
音のバランス |
何時も、SPの位置を1mm単位で調整しているとお話しをすると、二通りの反応があります。その変化は大変大きいと賛同される方と、大きく動かせば違いはでるが、1mm程度では大した違いはないと言われる方です。
賛同される方は、ご自分でも実験をされていて、スイートスポットの音を経験された幸せな方々です。そのポイントに入った瞬間に、音楽のエネルギーが溢れ出し、音場が出現して、音のダイナミクスが一気に拡がるのです。その差が、1mmで現れたり消えたりするのですね。狭い部屋でも、音場がでると狭さを気にならなくなります。ほとんどの装置の後ろ側は壁から30センチ以内に置かれています。部屋の空間に1メートルも飛び出している装置を、一体どのくらいの方が聞いているのでしょうか?
壁から離れると低音が薄くなりますし、問題は、部屋が狭くなることです。専用のオーディオ部屋を持たないと、ほとんどの場合は無理でしょう。リヴィングルームとの兼用では、装置ばかりか、聴いている人さえ邪魔者扱いされるでしょうね(苦笑)。でも何時か家族がいないときなどに、ぜひ、SPを引き出して実験されることをお薦めします。
そうして、自由空間の音の差を聞かれると、微妙な位置の差で、会場の空間が現れたり、消えたりする不思議に遭遇するのです。まるで異次元へのドアが開いたようなかんじに驚き、感動します。ヘッドフォンで大空間の中に連れて行かれた経験はどなたもあると思われますが、あの空間が、スピーカーでも現れ、どこで聴いても、その音場が崩れず、聴く位置の差は、実際の会場での座る席の差のようにステージは変わらないのです。
昔、セパレートステレオを初めて聴いた時の驚きと感動が今でも体験できるのです。こんなに楽しいことはありません。ジャズでは、かぶり付きで録音してそれを実物大か、より大きな音で再現されておられますが、さすがにオーケストラを実物大の大きさでは再現できません。コンサートホールの、後ろの席で聴いている感じまではでてきました。
再生音と生の音の差は、やはり、低域の差が大きいと思います。オーケストラの安定したピラミッド型のバランスが再現されれば、オーケストラが出現します。大きさにかかわらず、相似形で現れるのです。音の大きさは、距離の自乗に反比例しますから、50メートルも離れれば音圧は相当下がるのです。実際のホールは、反響で響かせていますから、自由空間のようには減衰せず、ステージから音のエネルギーとなって、客席に放射されてきます。しかし、30〜50メートル離れた後方の席では、ご自分の家で聞かれる音圧と同じぐらいになってきます。
それなのに、実際の音と再生音が異なって聞こえるのは、ダイナミックレンジの大きさと、やはり低音の量、低域の再現性に限界があるからです。最低域を延ばすというのは、実は大変難しく、オーディオを研究されてきた諸先輩も苦労を重ねておられます。私の場合は、最低域まで伸び、かつラウドネス効果がでるように、幾分低域を持ち上げる位置を探すことにより、自然なバランスを取るように心がけてきました。
切っ掛けは、演奏会場で開演前に練習しているコントラバスの音色を聞いたことからはじまりました。その音の深さを再現出来無いか、ユニコーンを駆動するアンプの低域を充実する為に、6336Bアンプを作っていただいたのです。これにより、バックロードホーンとはいえ、ユニットは単発のDDDユニットだけのシングルコーンから45Hz付近の最低域を再現することが出来るようになったのです。
45Hzの音は相当な低音です。QuadのESL-57も同じです。 GRFもバックロードホーンの長さから言っても、ほぼ同じです。家にあるSPで、45Hz以下の最低域まで再現するのは、HartleyとConsequenceでしょう。両者とも人の可聴範囲以下の最低域かなっている様です。音に成る前の振動から感じます。しかし、いくらでていても、問題はバランスです。
バランスさえ整っていれば、人の耳は、実際には聞こえていない音も、聞こえていると補正をするのです。富士山の裾野の一合目は見えなくとも、前に海があれば、連続した姿が見えてくるのと同じです。人間の脳は、経験した事で見えない部分を補正することが出来るからです。そのカーブが、実際のオーケストラの周波数分布に近づいていれば、そのように聞こえてくるわけです。その意味で、演奏会場での経験が大切になってくるのです。本物を知らなければ、比較のしようがないからです。それが、私がいまだに世界中のコンサートホールの音を聞きに行く理由です。
そのコンサートホールで聞く、オーケストラの音のバランスを再現出来れば、満足する音が得られると思ったのは、最近の事です。生のオーケストラを聴きに言っても、先日のサルツブルグの祝祭劇場の様に常に満足するわけではありません。
幸いに、日本には川崎のミューザや札幌のキタラのような、世界中の指揮者が絶賛するホールがあります。でもあのアプローチは最低ですね。何時も川崎駅のあの雑踏からミューザに向かうとき、このホールが、例えば紀尾井ホールのような場所とか、神宮の森に隣接してあったらどんなに素敵だったろうと思わざるを得ません。ミューザのアプローチやホワイエは、余りにも情緒がないからです。複合施設でも、まだ他の作り方があったのではと、思うのです。コンサートホールは内部の音だけが良くても成り立ちません。
新国立競技場に訳の解らない費用と場所を費やすのなら千駄ヶ谷か信濃町の林の中に、落ち着いた劇場を作って貰いたいといつも願っています。
賛同される方は、ご自分でも実験をされていて、スイートスポットの音を経験された幸せな方々です。そのポイントに入った瞬間に、音楽のエネルギーが溢れ出し、音場が出現して、音のダイナミクスが一気に拡がるのです。その差が、1mmで現れたり消えたりするのですね。狭い部屋でも、音場がでると狭さを気にならなくなります。ほとんどの装置の後ろ側は壁から30センチ以内に置かれています。部屋の空間に1メートルも飛び出している装置を、一体どのくらいの方が聞いているのでしょうか?
壁から離れると低音が薄くなりますし、問題は、部屋が狭くなることです。専用のオーディオ部屋を持たないと、ほとんどの場合は無理でしょう。リヴィングルームとの兼用では、装置ばかりか、聴いている人さえ邪魔者扱いされるでしょうね(苦笑)。でも何時か家族がいないときなどに、ぜひ、SPを引き出して実験されることをお薦めします。
そうして、自由空間の音の差を聞かれると、微妙な位置の差で、会場の空間が現れたり、消えたりする不思議に遭遇するのです。まるで異次元へのドアが開いたようなかんじに驚き、感動します。ヘッドフォンで大空間の中に連れて行かれた経験はどなたもあると思われますが、あの空間が、スピーカーでも現れ、どこで聴いても、その音場が崩れず、聴く位置の差は、実際の会場での座る席の差のようにステージは変わらないのです。
昔、セパレートステレオを初めて聴いた時の驚きと感動が今でも体験できるのです。こんなに楽しいことはありません。ジャズでは、かぶり付きで録音してそれを実物大か、より大きな音で再現されておられますが、さすがにオーケストラを実物大の大きさでは再現できません。コンサートホールの、後ろの席で聴いている感じまではでてきました。
再生音と生の音の差は、やはり、低域の差が大きいと思います。オーケストラの安定したピラミッド型のバランスが再現されれば、オーケストラが出現します。大きさにかかわらず、相似形で現れるのです。音の大きさは、距離の自乗に反比例しますから、50メートルも離れれば音圧は相当下がるのです。実際のホールは、反響で響かせていますから、自由空間のようには減衰せず、ステージから音のエネルギーとなって、客席に放射されてきます。しかし、30〜50メートル離れた後方の席では、ご自分の家で聞かれる音圧と同じぐらいになってきます。
それなのに、実際の音と再生音が異なって聞こえるのは、ダイナミックレンジの大きさと、やはり低音の量、低域の再現性に限界があるからです。最低域を延ばすというのは、実は大変難しく、オーディオを研究されてきた諸先輩も苦労を重ねておられます。私の場合は、最低域まで伸び、かつラウドネス効果がでるように、幾分低域を持ち上げる位置を探すことにより、自然なバランスを取るように心がけてきました。
切っ掛けは、演奏会場で開演前に練習しているコントラバスの音色を聞いたことからはじまりました。その音の深さを再現出来無いか、ユニコーンを駆動するアンプの低域を充実する為に、6336Bアンプを作っていただいたのです。これにより、バックロードホーンとはいえ、ユニットは単発のDDDユニットだけのシングルコーンから45Hz付近の最低域を再現することが出来るようになったのです。
45Hzの音は相当な低音です。QuadのESL-57も同じです。 GRFもバックロードホーンの長さから言っても、ほぼ同じです。家にあるSPで、45Hz以下の最低域まで再現するのは、HartleyとConsequenceでしょう。両者とも人の可聴範囲以下の最低域かなっている様です。音に成る前の振動から感じます。しかし、いくらでていても、問題はバランスです。
バランスさえ整っていれば、人の耳は、実際には聞こえていない音も、聞こえていると補正をするのです。富士山の裾野の一合目は見えなくとも、前に海があれば、連続した姿が見えてくるのと同じです。人間の脳は、経験した事で見えない部分を補正することが出来るからです。そのカーブが、実際のオーケストラの周波数分布に近づいていれば、そのように聞こえてくるわけです。その意味で、演奏会場での経験が大切になってくるのです。本物を知らなければ、比較のしようがないからです。それが、私がいまだに世界中のコンサートホールの音を聞きに行く理由です。
そのコンサートホールで聞く、オーケストラの音のバランスを再現出来れば、満足する音が得られると思ったのは、最近の事です。生のオーケストラを聴きに言っても、先日のサルツブルグの祝祭劇場の様に常に満足するわけではありません。
幸いに、日本には川崎のミューザや札幌のキタラのような、世界中の指揮者が絶賛するホールがあります。でもあのアプローチは最低ですね。何時も川崎駅のあの雑踏からミューザに向かうとき、このホールが、例えば紀尾井ホールのような場所とか、神宮の森に隣接してあったらどんなに素敵だったろうと思わざるを得ません。ミューザのアプローチやホワイエは、余りにも情緒がないからです。複合施設でも、まだ他の作り方があったのではと、思うのです。コンサートホールは内部の音だけが良くても成り立ちません。
新国立競技場に訳の解らない費用と場所を費やすのなら千駄ヶ谷か信濃町の林の中に、落ち着いた劇場を作って貰いたいといつも願っています。
by TANNOY-GRF
| 2015-09-27 18:01
| オーディオ雑感
|
Comments(4)
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S.Y.
at 2015-09-28 12:30
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GRF さま
リフォームが終わった五畳半ほどの寝室で、B&W805を使用して交差法の実験をはじめました。
1 ミリの違いが分かるようになるといいのですが・・・。
S.Y
リフォームが終わった五畳半ほどの寝室で、B&W805を使用して交差法の実験をはじめました。
1 ミリの違いが分かるようになるといいのですが・・・。
S.Y
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Bellwood
at 2015-09-28 13:25
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部屋のなかほどに置く、床置き平行法で一番驚いたことは、マイクロフォンと音源との距離がそのままに再現されてしまうことです。広大な立体音場が出現するソフトがある一方で、近接マイクで拾った音像を重ねただけのソフトはそのままスピーカーに音が貼り付いてしまう。これにはほんとうにびっくりしました。
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TANNOY-GRF at 2015-09-28 13:40
S.Yさん 交差法では、1ミリの差はわかりません。角度の問題だけです。狭い部屋では、交差法の方が、三角形の中に入れますから、音は安定しますね。
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TANNOY-GRF at 2015-09-28 13:52
近接マイクのSPに張り付くのは、仕方がありませんね。正しく距離感を再現しているのですから、クラシックでも距離感を正しく再現する録音が少なくなっています。それぐらい、いい加減な再生状態を目標に制作されているともいえます。
反対にHartleyのように、視聴者がSPの真ん中に頭を動かさないで聞く方法とどちらが自然かということです。言い換えると、内向き配置のモニタースピーカーで制作された音源は、センターの一点からみた平面図なのです。その位置を少しでもずれると、見えないものが見え、見ては行けない隠れている部分が見えてしまう、二次元の板に書かれた書き割りをつなげて立体感を出しているからです。
昔のクレンペラーの録音見たく、オーケストラの上には、左右と真ん中の三本のマイクだけで収録されている演奏を平行法で聴くとその迫力に圧倒されます。
反対にHartleyのように、視聴者がSPの真ん中に頭を動かさないで聞く方法とどちらが自然かということです。言い換えると、内向き配置のモニタースピーカーで制作された音源は、センターの一点からみた平面図なのです。その位置を少しでもずれると、見えないものが見え、見ては行けない隠れている部分が見えてしまう、二次元の板に書かれた書き割りをつなげて立体感を出しているからです。
昔のクレンペラーの録音見たく、オーケストラの上には、左右と真ん中の三本のマイクだけで収録されている演奏を平行法で聴くとその迫力に圧倒されます。