2015年 10月 06日
大人の音 ハイティンクのロンドン交響楽団 |
オーケストラを聴きに行く醍醐味は、全楽器が鳴り響いているとき、一糸乱れるボーイングで、淡々と突き進んでいく第一、第二ヴァイオリンの強奏とそれを下支えしている、低弦楽器の響きが浮き上がってくるときです。第一ヴァイオリンの一糸乱れぬ演奏は、昔はウィーンフィルの特徴でした。何時のまにかそれが無くなり、コンセルヘボウのような柔らかな響きが主流になっていったのです。
日本でも、水戸室内楽団やサイトウキネンオーケストラは、その一糸乱れぬボーイングが聴けるオーケストラの一つですが、なかなか聴けるものではありません。今年の春の上野でのN響の演奏では、キュッヘルがコンサートマスターでしたので、その見事な弓さばきが、N響のメンバーを引っ張って行くのを聴くことが出来ました。
海外のオーケストラでも、ピッタリと息が合うのは稀なのです。今回のロンドン交響楽団(LSO)の演奏では、リーダー(コンサートマスター)の統率の下、大変息のあった演奏をしていました。そして、LSOの音が大変渋くて感心しました。大人の音なのですね。ゲルギエフの時とハイティンクの時では、オーケストラの響きが変わります。それは当たり前なのですが、今回の来日で、このコンビでの素晴らしい演奏が聴けたのは、本当に幸運でした。
それから比べると、ベルリンフィルはソリストの集団という気がします。やんちゃ盛りの若手の天才の集まりという感じで、昔の様な伝統に基づいた名門オーケストラと言うよりも、時代の先端を行くモダンで機能的なオーケストラというイメージなのです。ラトルの指揮がそうさせているのかも知れません。もしそうだとすると17年以降ロンドン交響楽団の音楽監督になるのはそのラトルですから、現在のハイティンクの指揮で聞こえるような渋い音はしなくなるのかもしれませんね。
でも、オーケストラを聴きに行く時は、やはり演奏されるコンサートーホールと座る席を吟味しないといけません。私は、よほどのことが無いと、NHKホールには行きません。クラシックのコンサートホールには向いていないからです。そして座る席を選びます。駅から遠いことも理由にはありますね。オーチャードホールは、クラシック用には出来ていませんからやはり行きません。池袋の芸術劇場も、エスカレーターの改良前は行きませんでした。みなとみらい駅のエスカレーターもやはり乗りません。あの長いエスカレーターは誰か一人でも転んだら大変な事になります。音も重い感じがします。
サントリーホールも聴く場所によって音が変わるし、本当に大音量が出るオーケストラ(シカゴとか)では音が飽和してしまいます。音の良いホールでは、川崎のミューザが一番です。でも、この間も書きましたが、環境が劣悪です。上野の文化会館は、開館以来50年上経っていますが、いまだにモダンな雰囲気があります。1999年と2016年に改修工事が行われ、いまだに現役のホールです。開館当時のコンサートホールは、数えるほどしかなかったのを思い出します。
その文化会館で、ロンドン交響楽団の最後のコンサートが行われました。プログラムは、先日のNHKホールと同じ、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番、そしてブラームスの交響曲第一番です。今回は、ペライアの演奏に感銘しました。先日のミューザのピアノの音は、少し重かったのですが、今日のピアノは、いつものペライアの音がしていました。聴き慣れたベートーヴェンの4番がまったく違う姿を見せてくれました。一音一音の音が磨かれていて、また滋味深い音がします。先日のモーツァルトは、余り感心していなかったのですが、今日の演奏会のメインは、この曲でした。
ブラームスも予想以上に好演でした。弦楽器はミューザより重い音がします。ホールの特性から音が拡がらず、固まりで聞こえるからでしょう。しかし、ブラームスはこの方が良いのかもしれません。感心しなかったのは、バストロンボーンの奏者が、出番のない三楽章まで、ステージ上で寝ているようなそぶりを見せていたことです。足を組み頭を下げて寝ているのです、隣の同僚もさすがに三楽章では、気にしてました。マナーが悪く、観客も怒っていましたね。
また、演奏前には横の売店で、ビールを飲んでいた奏者もいました。日本では考えられませんね。今日で、ロンドン交響楽団の演奏会は終わりです。長いロードから解放される番です。弦楽器群と木管グループは、よくやっていました。ブラームスの演奏は、先日のNHKホールよりも気合いが入っていたのではないでしょうか?
バービカンもそうですが、文化会館の音はやはり、昔の音ですね。音に伸びが無く団子に聞こえます。椅子が改装されたのですが、張り直しただけでシートが固くなりお尻と太もも饒辺が圧迫されて痛いです。幅も現在の日本人には少しきついのではないでしょうか?それでも、NHKホールのおとよりは遙かに良いと思いますが。
ホールの形状はサルツブルグの祝祭劇場やバービカンと同じ傾向です。是非、海外の一流オーケストラも、東京や川崎ばかり無く、札幌にも飛んで、キタラで演奏会をして欲しいと思います。新潟のリュートピアなども良い音がします。短い来日日程では、楽器の運搬が大変なのでしょうね。
日本でも、水戸室内楽団やサイトウキネンオーケストラは、その一糸乱れぬボーイングが聴けるオーケストラの一つですが、なかなか聴けるものではありません。今年の春の上野でのN響の演奏では、キュッヘルがコンサートマスターでしたので、その見事な弓さばきが、N響のメンバーを引っ張って行くのを聴くことが出来ました。
海外のオーケストラでも、ピッタリと息が合うのは稀なのです。今回のロンドン交響楽団(LSO)の演奏では、リーダー(コンサートマスター)の統率の下、大変息のあった演奏をしていました。そして、LSOの音が大変渋くて感心しました。大人の音なのですね。ゲルギエフの時とハイティンクの時では、オーケストラの響きが変わります。それは当たり前なのですが、今回の来日で、このコンビでの素晴らしい演奏が聴けたのは、本当に幸運でした。
それから比べると、ベルリンフィルはソリストの集団という気がします。やんちゃ盛りの若手の天才の集まりという感じで、昔の様な伝統に基づいた名門オーケストラと言うよりも、時代の先端を行くモダンで機能的なオーケストラというイメージなのです。ラトルの指揮がそうさせているのかも知れません。もしそうだとすると17年以降ロンドン交響楽団の音楽監督になるのはそのラトルですから、現在のハイティンクの指揮で聞こえるような渋い音はしなくなるのかもしれませんね。
でも、オーケストラを聴きに行く時は、やはり演奏されるコンサートーホールと座る席を吟味しないといけません。私は、よほどのことが無いと、NHKホールには行きません。クラシックのコンサートホールには向いていないからです。そして座る席を選びます。駅から遠いことも理由にはありますね。オーチャードホールは、クラシック用には出来ていませんからやはり行きません。池袋の芸術劇場も、エスカレーターの改良前は行きませんでした。みなとみらい駅のエスカレーターもやはり乗りません。あの長いエスカレーターは誰か一人でも転んだら大変な事になります。音も重い感じがします。
サントリーホールも聴く場所によって音が変わるし、本当に大音量が出るオーケストラ(シカゴとか)では音が飽和してしまいます。音の良いホールでは、川崎のミューザが一番です。でも、この間も書きましたが、環境が劣悪です。上野の文化会館は、開館以来50年上経っていますが、いまだにモダンな雰囲気があります。1999年と2016年に改修工事が行われ、いまだに現役のホールです。開館当時のコンサートホールは、数えるほどしかなかったのを思い出します。
その文化会館で、ロンドン交響楽団の最後のコンサートが行われました。プログラムは、先日のNHKホールと同じ、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番、そしてブラームスの交響曲第一番です。今回は、ペライアの演奏に感銘しました。先日のミューザのピアノの音は、少し重かったのですが、今日のピアノは、いつものペライアの音がしていました。聴き慣れたベートーヴェンの4番がまったく違う姿を見せてくれました。一音一音の音が磨かれていて、また滋味深い音がします。先日のモーツァルトは、余り感心していなかったのですが、今日の演奏会のメインは、この曲でした。
ブラームスも予想以上に好演でした。弦楽器はミューザより重い音がします。ホールの特性から音が拡がらず、固まりで聞こえるからでしょう。しかし、ブラームスはこの方が良いのかもしれません。感心しなかったのは、バストロンボーンの奏者が、出番のない三楽章まで、ステージ上で寝ているようなそぶりを見せていたことです。足を組み頭を下げて寝ているのです、隣の同僚もさすがに三楽章では、気にしてました。マナーが悪く、観客も怒っていましたね。
また、演奏前には横の売店で、ビールを飲んでいた奏者もいました。日本では考えられませんね。今日で、ロンドン交響楽団の演奏会は終わりです。長いロードから解放される番です。弦楽器群と木管グループは、よくやっていました。ブラームスの演奏は、先日のNHKホールよりも気合いが入っていたのではないでしょうか?
バービカンもそうですが、文化会館の音はやはり、昔の音ですね。音に伸びが無く団子に聞こえます。椅子が改装されたのですが、張り直しただけでシートが固くなりお尻と太もも饒辺が圧迫されて痛いです。幅も現在の日本人には少しきついのではないでしょうか?それでも、NHKホールのおとよりは遙かに良いと思いますが。
ホールの形状はサルツブルグの祝祭劇場やバービカンと同じ傾向です。是非、海外の一流オーケストラも、東京や川崎ばかり無く、札幌にも飛んで、キタラで演奏会をして欲しいと思います。新潟のリュートピアなども良い音がします。短い来日日程では、楽器の運搬が大変なのでしょうね。
by TANNOY-GRF
| 2015-10-06 08:24
| 演奏会場にて
|
Comments(5)
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TANNOY-GRF at 2015-10-07 10:36
文化会館のお客さんの質は千差万別です。N響の客層とも違い、池袋の芸術劇場の客と半分半分という感じでしょうか。演奏中も結構うるさいし、演奏後の拍手もフライング気味であるし、幕間の雑談も偏見を持った人が多く呆れました。
極めつけは、携帯の音楽の切り忘れです。恥ずかしいですね〜。コンサートマスターが、ぎくっとしていました。
休憩時にワインを飲んでいると、そこに割り込んできたおじさん達は、自分の持っているレコードに比べて、遅すぎるとか批判している人がいました。三万円近くのお金を払って、楽しまないで文句を言っている人達です。ミューザよりは、確実に年齢層が高いです。自分もその一人ですが(苦笑)・・・。
極めつけは、携帯の音楽の切り忘れです。恥ずかしいですね〜。コンサートマスターが、ぎくっとしていました。
休憩時にワインを飲んでいると、そこに割り込んできたおじさん達は、自分の持っているレコードに比べて、遅すぎるとか批判している人がいました。三万円近くのお金を払って、楽しまないで文句を言っている人達です。ミューザよりは、確実に年齢層が高いです。自分もその一人ですが(苦笑)・・・。
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BO
at 2015-10-08 14:14
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私もしばしばNHKホールに行きますが、いつも1階ほぼ真ん中の席ですので、それほど悪い音ではありません。とはいえ、多目的ホールの限界はありますでしょう。客層は年齢層が高いですねw 他人のこと言えませんが。パーヴォ・ヤルヴィ、楽しみです。
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Bellwood
at 2015-10-08 14:22
x
客層の体質問題-特に“自分の持っているレコードに比べて、遅すぎるとか批判している”おじさん-は、NHKホールと共通しますね。
ロンドンではもともと新ホール構想があって、それをLSO音楽監督に内定したラトルが支持しているということがほんとうのところです。バービカンの音が悪いからラトルが新ホールを要求しているというニュアンスで語られていますがそれは間違いのようです。
バービカンの音はよいですね。ただ、東京文化会館と共通していて響きがクリーンですが残響が短い。やはり戦後のポストモダン全盛期のホールなので音が古いのです。ホワイエや周囲の雰囲気も味気なくてロンドンっ子には評判が悪い。フェスティバルホールはでかすぎる。
大陸の歴史的ホールや日本のミューザ川崎のような残響時間の長いリッチな響きのシンフォニーホールはロンドンには皆無ですから、彼らにとっては悲願なんでしょう。ラトルも、サーカスの座長みたいな地位にはもういい加減うんざりで、そろそろいい歳になって自分の思い通りの理想を追求したいと思っているに違いありません。
ロンドンではもともと新ホール構想があって、それをLSO音楽監督に内定したラトルが支持しているということがほんとうのところです。バービカンの音が悪いからラトルが新ホールを要求しているというニュアンスで語られていますがそれは間違いのようです。
バービカンの音はよいですね。ただ、東京文化会館と共通していて響きがクリーンですが残響が短い。やはり戦後のポストモダン全盛期のホールなので音が古いのです。ホワイエや周囲の雰囲気も味気なくてロンドンっ子には評判が悪い。フェスティバルホールはでかすぎる。
大陸の歴史的ホールや日本のミューザ川崎のような残響時間の長いリッチな響きのシンフォニーホールはロンドンには皆無ですから、彼らにとっては悲願なんでしょう。ラトルも、サーカスの座長みたいな地位にはもういい加減うんざりで、そろそろいい歳になって自分の思い通りの理想を追求したいと思っているに違いありません。
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TANNOY-GRF at 2015-10-09 20:51
BOさん 一階の前の方の左端の辺も音は良いですね。部分的にはあるのですが、ホール全体の静けさやホールトーンがやはり無いようです。その意味では、サントリーホールも座る席を大変選びますし、オーケストラの音量が大きな場合は、音が飽和してしまいます。来週のヤルヴィ・N響のBプログラムはどうでしょうか。
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TANNOY-GRF at 2015-10-09 20:54
そうですか、バービカンの音は、昔、MTTが振っていた頃聴いただけなので、余り印象がありません。ただ、DECCAのレコードで聴いていたロンドン交響楽団とは違い、柔らかな音だったのに驚いてぐらいです。