2015年 10月 28日
ホログラフの音を求めて-5 |
一つのスピーカーでモノラル盤を再生すると、奥行き方向の二次元サウンドが聞こえます。その再生方法をモノフォニックと言います、ステレオフォニックとの違いは、一つのスピーカーからモノ録音の音を出すことです。そのモノフォニックサウンドは、ステレオフォニックサウンドが当たり前になった時代、なかなか経験することが出来ません。モノラル音源を再生するとき、どちらかのSPの結線を外し、音圧が半分になるので、音を大きくして片方だけで聴いても、モノフォニックサウンドとして感動することは難しいからです。
モノの再生では、ステレオによる音の拡がりや、帯域の拡大効果が無いので、スピーカーそのものを広帯域にする必要があります。帯域を拡げると、全音域用スピーカーや2ウェイのスピーカーの再生音では、帯域が物足りなくなりマルチスピーカーの方向に進みます。ホーンスピーカーが全盛だった頃は、歪みの少ない再生を目指すと、各スピーカーが、2オクターブぐらいしか受け持てないので、88鍵もあるピアノの11オクターブの音を正確に再現する場合は、5スピーカー以上に分ける必要がありました。4ウェイ、5ウェイのシステムが当たり前だったのです。
昔のマニアは、オールホーン型に拘り、ピアノの最低音27Hz、またはパイプオルガンの最低音の16Hzを出そうとすると,ホーンの長さは、半波長でも6m〜10mにもなります。その巨大なコンクリートホーンを地下室に作った先輩の家にも行ったことがあります。次ぎに行った時は、巨大な水槽になっていましたが(笑)。最低域だけは、38センチウーファーを4発並べて面積を稼ぎ、ホーン長を2メートルぐらいに縮めた?コンクリートホーンは、何軒も見たことがあります。そのウーファーに150Hz以下の三オクターブを持たせて、それ以上を理想的な2オクターブづつにすると、中低音、中音、高音、最高音の5ウェイになります。
それを、振動板の信号を負帰還で戻し、歪みを軽減して帯域を拡げ、3ウェイでモノを鳴らしていたのが、加藤秀夫さんでした。18畳ほどの洋間の右側のコーナーに木製の低音ホーンと高音ホーンを、左側の上から、マルチセルラホーンの中音が配置され、その音が、部屋の中で混ざり合い、コンサートホールのアンビアンスを再現されていました。音は立体的で、壁が消えてコンサートホールが出現していたのです。お邪魔したのは、まだ学生の頃ですから、四十数年前の事ですね。そのとき、モノフォニックの音には、奥行きが入っているし、擬似的にでも左右に分けるとその音が繋がるときに,見事なホログラムが現れるという経験をさせていただきました。
現在のステレオ装置で、モノラル録音を再生すると、音が痩せたり、奥行きが無かったりすることが多いようです。それは、ステレオ用の二つのスピーカーで、モノラル音を再生するからです。その再生は方法は、モノフォニックとは言わず、ダイオティックという呼び方をしていますが、それは左右の耳に全く同じ信号を与えることだそうです。実際の部屋では、これは無理ですね。その場合は、左右のSPが一枚の大きなスピーカーになって、立体感が無くなった音がするそうです。

茅野の家で聴くQUADのESL57がそうです。左右のスピーカーの位置を厳密に揃え、間隔も適正な位置にすると、大きな平面型のスピーカーが出現します。左右の位置が合っていますから、お互いの音を打ち消さず、同相で動いているのです。その位置を探すのは、大変神経を使います。0.1 ミリ以下の薄い振動膜を揃えるのですから。ピッタリ合うと、コンデンサースピーカーの音とは、到底思え無い広帯域の音がします。低域も高域もオクターブづつ拡張したような音です。
その音が出現したときに、コンサートホールで正しいステレオ録音された演奏を聴くと、そこにオーケストラが出現するのです。但し、上から俯瞰したような奥行き方向の定位はありません。振動板が音源となってオーケストラの雄大な響きを生み出しているのです。T4 をならすときのようなスピーカー自体が無くなり、音場が出現するような感動ではなく、平面スピーカー自体がステージになり、前後の両方向に音を出しているのです。平面スピーカーのところに、どこでもドアーが開き、その窓から音が出てくるのです。窓と言っても小さな窓ではなく部屋一杯に拡がっています。コンサートホールの内側にいるのでは無いのですが、でも音が波の様に次から次へと押し寄せてきます。コンサートホールのドアを開けて聞いているような感じです。
巷間ESL57では、低音が出ないとか,高域だけがチリチリした音がするとか、入力過多にするとユニットから音がするとか言われていますが、そのほとんどが、正しい位置に置いていないからだと思います。お互いがずれた音で打ち消し合わなければ、モノラル録音ではSPユニット全体がなり、ステレオ録音では、そこがステージになるのです。この音を聴いていると、別に立体感がある音場が出なくても構わないとさえ思います。平面のホログラムですね。充分音楽が楽しめます。
でもそこに、三次元のホログラムを出現させる大きなヒントがあったのです。
モノの再生では、ステレオによる音の拡がりや、帯域の拡大効果が無いので、スピーカーそのものを広帯域にする必要があります。帯域を拡げると、全音域用スピーカーや2ウェイのスピーカーの再生音では、帯域が物足りなくなりマルチスピーカーの方向に進みます。ホーンスピーカーが全盛だった頃は、歪みの少ない再生を目指すと、各スピーカーが、2オクターブぐらいしか受け持てないので、88鍵もあるピアノの11オクターブの音を正確に再現する場合は、5スピーカー以上に分ける必要がありました。4ウェイ、5ウェイのシステムが当たり前だったのです。
昔のマニアは、オールホーン型に拘り、ピアノの最低音27Hz、またはパイプオルガンの最低音の16Hzを出そうとすると,ホーンの長さは、半波長でも6m〜10mにもなります。その巨大なコンクリートホーンを地下室に作った先輩の家にも行ったことがあります。次ぎに行った時は、巨大な水槽になっていましたが(笑)。最低域だけは、38センチウーファーを4発並べて面積を稼ぎ、ホーン長を2メートルぐらいに縮めた?コンクリートホーンは、何軒も見たことがあります。そのウーファーに150Hz以下の三オクターブを持たせて、それ以上を理想的な2オクターブづつにすると、中低音、中音、高音、最高音の5ウェイになります。
それを、振動板の信号を負帰還で戻し、歪みを軽減して帯域を拡げ、3ウェイでモノを鳴らしていたのが、加藤秀夫さんでした。18畳ほどの洋間の右側のコーナーに木製の低音ホーンと高音ホーンを、左側の上から、マルチセルラホーンの中音が配置され、その音が、部屋の中で混ざり合い、コンサートホールのアンビアンスを再現されていました。音は立体的で、壁が消えてコンサートホールが出現していたのです。お邪魔したのは、まだ学生の頃ですから、四十数年前の事ですね。そのとき、モノフォニックの音には、奥行きが入っているし、擬似的にでも左右に分けるとその音が繋がるときに,見事なホログラムが現れるという経験をさせていただきました。
現在のステレオ装置で、モノラル録音を再生すると、音が痩せたり、奥行きが無かったりすることが多いようです。それは、ステレオ用の二つのスピーカーで、モノラル音を再生するからです。その再生は方法は、モノフォニックとは言わず、ダイオティックという呼び方をしていますが、それは左右の耳に全く同じ信号を与えることだそうです。実際の部屋では、これは無理ですね。その場合は、左右のSPが一枚の大きなスピーカーになって、立体感が無くなった音がするそうです。

茅野の家で聴くQUADのESL57がそうです。左右のスピーカーの位置を厳密に揃え、間隔も適正な位置にすると、大きな平面型のスピーカーが出現します。左右の位置が合っていますから、お互いの音を打ち消さず、同相で動いているのです。その位置を探すのは、大変神経を使います。0.1 ミリ以下の薄い振動膜を揃えるのですから。ピッタリ合うと、コンデンサースピーカーの音とは、到底思え無い広帯域の音がします。低域も高域もオクターブづつ拡張したような音です。
その音が出現したときに、コンサートホールで正しいステレオ録音された演奏を聴くと、そこにオーケストラが出現するのです。但し、上から俯瞰したような奥行き方向の定位はありません。振動板が音源となってオーケストラの雄大な響きを生み出しているのです。T4 をならすときのようなスピーカー自体が無くなり、音場が出現するような感動ではなく、平面スピーカー自体がステージになり、前後の両方向に音を出しているのです。平面スピーカーのところに、どこでもドアーが開き、その窓から音が出てくるのです。窓と言っても小さな窓ではなく部屋一杯に拡がっています。コンサートホールの内側にいるのでは無いのですが、でも音が波の様に次から次へと押し寄せてきます。コンサートホールのドアを開けて聞いているような感じです。
巷間ESL57では、低音が出ないとか,高域だけがチリチリした音がするとか、入力過多にするとユニットから音がするとか言われていますが、そのほとんどが、正しい位置に置いていないからだと思います。お互いがずれた音で打ち消し合わなければ、モノラル録音ではSPユニット全体がなり、ステレオ録音では、そこがステージになるのです。この音を聴いていると、別に立体感がある音場が出なくても構わないとさえ思います。平面のホログラムですね。充分音楽が楽しめます。
でもそこに、三次元のホログラムを出現させる大きなヒントがあったのです。
by TANNOY-GRF
| 2015-10-28 22:47
| オーディオ雑感
|
Comments(6)

リンク先の文章は、まるで10年後の未来を予知していたかのような内容ですね。
今年いらして頂いた拙宅の訪問・感想記が、箱物行政への嘆きで始まりオーディオ業界への警笛で締められているので、何か不思議な感じです(^_^;)
今年いらして頂いた拙宅の訪問・感想記が、箱物行政への嘆きで始まりオーディオ業界への警笛で締められているので、何か不思議な感じです(^_^;)
niraさん 私も読み返して、良いことを言っているな〜と感心しました(爆)。
この無責任な傾向は、最近とみに増してきて、オーディオ販売店が、安易にCDは20KHz以上が出ないから音が悪いとか、レコードは出ているから音が良いのだとか、SPが安い所為だとか、SACDにしなければダメだとか、マルチチャンネルにしないと本当の立体音響は出ないとか、オーディオ店とは思えないことを暴言している店もあり驚いています。
オーディオは、心を込めて調整すればどんな装置も良い音がします。このESL57は、QUADの44+405IIの35年前の組み合わせで鳴らしています。そこからどれほどの音がするか、何時も驚き、反省しているのです。
この無責任な傾向は、最近とみに増してきて、オーディオ販売店が、安易にCDは20KHz以上が出ないから音が悪いとか、レコードは出ているから音が良いのだとか、SPが安い所為だとか、SACDにしなければダメだとか、マルチチャンネルにしないと本当の立体音響は出ないとか、オーディオ店とは思えないことを暴言している店もあり驚いています。
オーディオは、心を込めて調整すればどんな装置も良い音がします。このESL57は、QUADの44+405IIの35年前の組み合わせで鳴らしています。そこからどれほどの音がするか、何時も驚き、反省しているのです。

ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。

GRFさま
いつもながら、目からうろこの新知識(僕にとって)をありがとうございます。
今後もよろしくお願いいたします。
S.Y
いつもながら、目からうろこの新知識(僕にとって)をありがとうございます。
今後もよろしくお願いいたします。
S.Y
はじめまして。最近、自分自身が使っている装置で、ステレオ音声以前のモノラル録音、SP盤時代の演奏をCD化した物が、ここ最近のCDや、FMラジオの「NHK交響楽団定期公演」の生中継と同じように、快く聴けるようになり、その理由を探っていたところ、こちらの記事に出会いました。
QUADのESL57で聴く演奏には、とても興味があります。
コメントで仰っている「オーディオは、心を込めて調整すればどんな装置も良い音がします。」という言葉、本当にそうだと思います。若輩者ですが、使う装置に愛情を持つことの大切さを、あらためて感じます。
これからも、掲載されている記事を深く読み込みたいです。
QUADのESL57で聴く演奏には、とても興味があります。
コメントで仰っている「オーディオは、心を込めて調整すればどんな装置も良い音がします。」という言葉、本当にそうだと思います。若輩者ですが、使う装置に愛情を持つことの大切さを、あらためて感じます。
これからも、掲載されている記事を深く読み込みたいです。
yoshiharu takuiさん コメントありがとうございます。オーディオは、息の長い趣味です。一歩一歩、ご自分の足で登っていってください。近道はありません。だから、楽しいのでしょうね。