2016年 04月 01日
三月は実験機三号で 3 |
横浜のMさんが来られた翌日の土曜日は、冷たい雨で出張の疲れを取るのに専念し、日曜日はお墓参りでした。ようやく月曜日になって、フィンランド・バーチの少し堅い音をどうするかを実験しました。KYLYNさんのお宅を訪れたとき、SPの下には、フローティングボードを敷かれていて、その下の石板との間に、フェルトを噛ましてあったのです。家のカリンの床とカリンとの足の間にそのフェルトを敷いてみることにしました。すると、硬い響きが緩和されて、音楽がゆったりと流れはじめました。SPの足だけではなくネットワークボックスの下にも敷いて見ました。これも、微妙に音に影響します。床に直接振動する音のモードが変わるからでしょう。
一日おいても音が変化しないのを確認して、そのまま敷いておくことにしました。良い点もあります。フェルトが介在することによって、微妙な位置調整も楽に動くようになりましたし、音が毎日微妙に変わるのが無くなりました。それが精神的にも良い影響を与えたようです。
その音を、最初に聴いていただいたのが、福井から出張で出てこられた「デーンちゃん」です。お仕事ので忙しいのに、定宿の赤羽に荷物を降ろしてから、わざわざ来ていただきました。この日の音は、先週のMさんの時とも違って、音が落ち着いていました。定位が安定して、演奏会場の音場が現れます。アイデアを頂いたKYLYNさんにも聴いていただきたい音になってきました。
その後は、出張で金曜日の夜まで聴くことは出来ませんでした。土曜日には、Taoさんが来られます。前日の夜、おそるおそる音を出してみましたが、火曜日と変わりません。微妙な位置調整が必要なくなってきました。嬉しいですね。土曜日のTaoさんには、音楽を楽しんで頂き、四時間以上聴いていただきました。翌、日曜日の椀方さんは、6時間半の滞在でした。聴く前に、簡単に位置の確認をするだけに良くなって来たのです。
音の違いは、機器によっても勿論変わります。例えば、プリアンプを変えると、周波数帯域や音色は変わりますが、音場は変わりません。何か特別な装置を使っていて、この音を出しているのだろうと思われますが、機器の違いは、演奏会場のホールが変わったぐらいの差です。大事なのは、やはりSPの音の出し方と、部屋での位置です。この違いは実際に聴いていただかないと分かりません。
世の中のほとんどのSPは、前方だけに音が放射されています。しかし、楽器ばかりではなく実際の音は、水平では360度ですが、実際には、全方向に音は伝わっていきます。集音するマイクも指向性のあるタイプと、無指向性のタイプがありますが、音場情報を捉えるには、全方向からの音の差を捉える、無指向性のマイクが必要です。その無指向性の音を再生するときに、どうして前面だけに音を出しているのでしょう。
ステレオの音場を再現するためには、前方だけでは音場はでてきません。普通はホーン型に代表されるように、音はスピーカーから前に出てきます。そのシステムでは、左右の定位はモニターできますが、音の立体感は制限されています。この様なシステムで音を良くして行くには、帯域の拡大と、歪みの減少に重点が置かれます。いわば、三次元の立体物を、二次元のカメラで切り撮ってその解像力を競ったり、実際の色の表現より濃い色や、実際にはあり得ないけど美しい、画像美を創造する方向に、オーディオも進んできたように思えます。
それは、それで、大切だし美しい方向だと思いますが、演奏会場のアンビエンスを再現出来ているかは難しいと思っていました。アヴァロンやT4の様な音の回折性が良いSPが作る、立体的な音場再現は、音に立体感を与えて気持ち良い音が現れます。もっとも、その音を邪道だと嫌う方も多いのも事実です。私の時代から上の世代の方は、オールホーンシステムで、歪みの少ない帯域を足していった5ウェイのスピーカーをお使いの方も多かったのです。帯域の広大さや歪みの無さは素晴らしいのですが、ステレオを聴く場合、中央に座り、極端の場合は頭も動かせないほど、指向性にシビアになります。
ステレオから5.1チャンネルの方に進まれる方の多くは、一生懸命、実験をされて、大型の装置を築かれた方も多くおられます。その方達にお聞きすると、ステレオでは、例えばオーケストラがステージ上に並んだ場合、右と左に分かれて、オーケストラの中央にいる、ヴィオラとか第二ヴァイオリン、チェロの音が引っ込んで出にくいと言われます。確かに、指向性の強いホーン型のスピーカーをお使いの方の音はその傾向にあります。複数のヴァイオリンが再現するモアレ模様のような響きの美しさは、マルチチャンネルでなければ出ないと言われるのです。
フルートやオーボエの中央にいる木管楽器は、補助用のマイクがモノラルで拾っているので、中央に定位しやすいのですが、弦楽器群が中抜けになるのはステレオの宿命だと言われたことがあります。私は、経験から決してそんな事は無いと思って実験を重ねてきました。
私の使っているSPの中で、その意味の中央で聴かなければならないタイプは、Hartleyです。神戸のI.Kさんのお宅のように、広い部屋の中央で聴くと,素晴らしいステージが表れます。SPの構造により、誰よりも歪みの少ない音の世界は格別です。その音に一番近いのは、GRFの交差する点での音です。違いは、同軸タイプの音の出方と、バックロードホーン特有の音の世界です。厳密に音を追求するかわりに、許容性が広いです。決定的な違いは、45度で交差するコーナー型です。同じGRFでもレキュタングラータイプでは、平行法で聴いた方が良い音がする場合が多いです。
私が使っているスピーカーでも大別すると二種類に分かれます。音色型と音場型です。音色型の代表は、意外かもしれませんが、QUADのESL57です。そしてHartley、RectangularGRFもそうです。UNICORNさんのお宅のユニコーンは音色型で鳴らされています。コーナー型のGRFは中間ですね。
音場型は、今回のTroubadour +ウーファーです。T4もそうです。和室のユニコーンも横向きに置いてあった時も音場型ですが、二階席から見下ろすような型で使っていたのです。そのユニコーンを楽々と拡がった音場型で使いこなしたのが、プー博士でした。T4の慣らし方を踏襲したのです。そしてクロストークの無いデジタルアンプをさらにモノで使い、デジタルから音場感を損なうことなく再現していたのです。それが切っ掛けで、私の実験も加速しました。横浜のMさんのお宅での、リアリティ溢れる80の音も後押ししています。
歪み追求型に方から見れば、音質に違和感を感じる場合もあるでしょう。しかし、コンサートホールの中にいるようなリアリティが、表れるだけではなく、スタジオ録音からも、エコーマシーンの効果さえリアルに出して来る音は、平面的な世界から、立体的な世界へのシフトを可能にして、2チャンネルステレオではなく、二つの耳だけで立体音を感知している、人間の感覚の不思議にも迫ろうとしています。
演奏会場が前にあるだけではなく、演奏会場の中、それも一階席の真ん中にいるような臨場感は、奥行き方向の音が再現されたからだと思います。そして、ミニチュアではなく実物大の音が再現されてきたのも、その臨場感にリアリティをかんじた脳が、音量をコントロールしたのです。無論、まだまだ完璧には遠いのですが、現在の音の問題点を指摘するのは重要ですが、将来的な可能性を育てていきたいと思います。
平行法の時には、左右のバランスをモノの音を中央に定位させるだけではなく、SPに近づき上から俯瞰する様にみて、前後の立体感もあっているかをチェックする必要があります。私が音合わせをしているときに後ろで聴かれている人達は、異口同音に音のピントがピッタリあって、立体的になったと言われます。それが前後のバランスを取った音だからです。重要なのは、左右のスピーカーの前後、左右、上下の平行です。同じ場所でも、上下の向きが少しでも違うとおとはずれてきます。その実験は、SPの下に、要らないコード一本でも挟めば、その僅かな高さの違いでピントがずれるのが分かるでしょう。三次元の音を出すことは、厳密な意味で、左右のSPの条件を合わせていく必要があるのですね。
一日おいても音が変化しないのを確認して、そのまま敷いておくことにしました。良い点もあります。フェルトが介在することによって、微妙な位置調整も楽に動くようになりましたし、音が毎日微妙に変わるのが無くなりました。それが精神的にも良い影響を与えたようです。
その音を、最初に聴いていただいたのが、福井から出張で出てこられた「デーンちゃん」です。お仕事ので忙しいのに、定宿の赤羽に荷物を降ろしてから、わざわざ来ていただきました。この日の音は、先週のMさんの時とも違って、音が落ち着いていました。定位が安定して、演奏会場の音場が現れます。アイデアを頂いたKYLYNさんにも聴いていただきたい音になってきました。
その後は、出張で金曜日の夜まで聴くことは出来ませんでした。土曜日には、Taoさんが来られます。前日の夜、おそるおそる音を出してみましたが、火曜日と変わりません。微妙な位置調整が必要なくなってきました。嬉しいですね。土曜日のTaoさんには、音楽を楽しんで頂き、四時間以上聴いていただきました。翌、日曜日の椀方さんは、6時間半の滞在でした。聴く前に、簡単に位置の確認をするだけに良くなって来たのです。
音の違いは、機器によっても勿論変わります。例えば、プリアンプを変えると、周波数帯域や音色は変わりますが、音場は変わりません。何か特別な装置を使っていて、この音を出しているのだろうと思われますが、機器の違いは、演奏会場のホールが変わったぐらいの差です。大事なのは、やはりSPの音の出し方と、部屋での位置です。この違いは実際に聴いていただかないと分かりません。
世の中のほとんどのSPは、前方だけに音が放射されています。しかし、楽器ばかりではなく実際の音は、水平では360度ですが、実際には、全方向に音は伝わっていきます。集音するマイクも指向性のあるタイプと、無指向性のタイプがありますが、音場情報を捉えるには、全方向からの音の差を捉える、無指向性のマイクが必要です。その無指向性の音を再生するときに、どうして前面だけに音を出しているのでしょう。
ステレオの音場を再現するためには、前方だけでは音場はでてきません。普通はホーン型に代表されるように、音はスピーカーから前に出てきます。そのシステムでは、左右の定位はモニターできますが、音の立体感は制限されています。この様なシステムで音を良くして行くには、帯域の拡大と、歪みの減少に重点が置かれます。いわば、三次元の立体物を、二次元のカメラで切り撮ってその解像力を競ったり、実際の色の表現より濃い色や、実際にはあり得ないけど美しい、画像美を創造する方向に、オーディオも進んできたように思えます。
それは、それで、大切だし美しい方向だと思いますが、演奏会場のアンビエンスを再現出来ているかは難しいと思っていました。アヴァロンやT4の様な音の回折性が良いSPが作る、立体的な音場再現は、音に立体感を与えて気持ち良い音が現れます。もっとも、その音を邪道だと嫌う方も多いのも事実です。私の時代から上の世代の方は、オールホーンシステムで、歪みの少ない帯域を足していった5ウェイのスピーカーをお使いの方も多かったのです。帯域の広大さや歪みの無さは素晴らしいのですが、ステレオを聴く場合、中央に座り、極端の場合は頭も動かせないほど、指向性にシビアになります。
ステレオから5.1チャンネルの方に進まれる方の多くは、一生懸命、実験をされて、大型の装置を築かれた方も多くおられます。その方達にお聞きすると、ステレオでは、例えばオーケストラがステージ上に並んだ場合、右と左に分かれて、オーケストラの中央にいる、ヴィオラとか第二ヴァイオリン、チェロの音が引っ込んで出にくいと言われます。確かに、指向性の強いホーン型のスピーカーをお使いの方の音はその傾向にあります。複数のヴァイオリンが再現するモアレ模様のような響きの美しさは、マルチチャンネルでなければ出ないと言われるのです。
フルートやオーボエの中央にいる木管楽器は、補助用のマイクがモノラルで拾っているので、中央に定位しやすいのですが、弦楽器群が中抜けになるのはステレオの宿命だと言われたことがあります。私は、経験から決してそんな事は無いと思って実験を重ねてきました。
私の使っているSPの中で、その意味の中央で聴かなければならないタイプは、Hartleyです。神戸のI.Kさんのお宅のように、広い部屋の中央で聴くと,素晴らしいステージが表れます。SPの構造により、誰よりも歪みの少ない音の世界は格別です。その音に一番近いのは、GRFの交差する点での音です。違いは、同軸タイプの音の出方と、バックロードホーン特有の音の世界です。厳密に音を追求するかわりに、許容性が広いです。決定的な違いは、45度で交差するコーナー型です。同じGRFでもレキュタングラータイプでは、平行法で聴いた方が良い音がする場合が多いです。
私が使っているスピーカーでも大別すると二種類に分かれます。音色型と音場型です。音色型の代表は、意外かもしれませんが、QUADのESL57です。そしてHartley、RectangularGRFもそうです。UNICORNさんのお宅のユニコーンは音色型で鳴らされています。コーナー型のGRFは中間ですね。
音場型は、今回のTroubadour +ウーファーです。T4もそうです。和室のユニコーンも横向きに置いてあった時も音場型ですが、二階席から見下ろすような型で使っていたのです。そのユニコーンを楽々と拡がった音場型で使いこなしたのが、プー博士でした。T4の慣らし方を踏襲したのです。そしてクロストークの無いデジタルアンプをさらにモノで使い、デジタルから音場感を損なうことなく再現していたのです。それが切っ掛けで、私の実験も加速しました。横浜のMさんのお宅での、リアリティ溢れる80の音も後押ししています。
歪み追求型に方から見れば、音質に違和感を感じる場合もあるでしょう。しかし、コンサートホールの中にいるようなリアリティが、表れるだけではなく、スタジオ録音からも、エコーマシーンの効果さえリアルに出して来る音は、平面的な世界から、立体的な世界へのシフトを可能にして、2チャンネルステレオではなく、二つの耳だけで立体音を感知している、人間の感覚の不思議にも迫ろうとしています。
演奏会場が前にあるだけではなく、演奏会場の中、それも一階席の真ん中にいるような臨場感は、奥行き方向の音が再現されたからだと思います。そして、ミニチュアではなく実物大の音が再現されてきたのも、その臨場感にリアリティをかんじた脳が、音量をコントロールしたのです。無論、まだまだ完璧には遠いのですが、現在の音の問題点を指摘するのは重要ですが、将来的な可能性を育てていきたいと思います。
平行法の時には、左右のバランスをモノの音を中央に定位させるだけではなく、SPに近づき上から俯瞰する様にみて、前後の立体感もあっているかをチェックする必要があります。私が音合わせをしているときに後ろで聴かれている人達は、異口同音に音のピントがピッタリあって、立体的になったと言われます。それが前後のバランスを取った音だからです。重要なのは、左右のスピーカーの前後、左右、上下の平行です。同じ場所でも、上下の向きが少しでも違うとおとはずれてきます。その実験は、SPの下に、要らないコード一本でも挟めば、その僅かな高さの違いでピントがずれるのが分かるでしょう。三次元の音を出すことは、厳密な意味で、左右のSPの条件を合わせていく必要があるのですね。
by TANNOY-GRF
| 2016-04-01 22:41
| オーディオ雑感
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