2017年 11月 10日
ピアノの演奏会 松田華音 |
若い頃、ムラヴィンスキーの日本公演に通っていた私は、その後の海外のオーケストラの来日公演では、なかなか満足がいかず、演奏会通いはよほどのオーケストラの来日しか行かなくなりました。80年代に入ると、海外の出張が多くなり、その機会を捉えて、ヨーロッパの演奏会場を訪れていました。ロンドン、パリ、アムステルダム、ベルリン、ウィーンと著名なコンサートホールは行くことが出来ました。中でも、PHILIPSのレコードを通じて慣れ親しんでいたオランダのコンセルトヘボウの会場の音が、一番好みに合い、毎年機会を見つけて出かけるようになっていました。
東京での演奏会巡りを再開したのは、本ブログを書き始めた後の2009年のハイティンク・シカゴのマーラー六番以降でした。久し振りにムラヴィンスキーの演奏を彷彿させるハイティンクの迫真の演奏に感心した私は、それ以降東京での演奏会の予定に目を通し始めたのです。
それでも演奏会通いが本格派し始めたのは、2012年頃からでした。2010年の暮れに田部京子さんのシューマンの演奏会を聴いて、震災の年は慌ただしく過ぎ、翌12年同じ田部京子さんのモーツァルトの協奏曲を上野の石橋ホールに聴きに行き、整った演奏と響きに魅入られたからです。13年からは紀尾井の会員になりました。
震災以降二年間にわたり改修工事をしてきたミューザ川崎での演奏会が再開され、11月には一週間の間に、世界三大オーケストラ、ウィーン、ベルリン、コンセルトヘボウを聴くことが出来て、その素晴らしい音に感激して、演奏会巡りが恒例になったのです。それから百回以上の演奏会に出かけてきました。今月の末にもまたベルリンフィルとコンセルトヘボウを聴きに行きます。11月の第三週は私の誕生日でもあります。何時もそのお祝いだと言い聞かせて川崎詣をするようになりました。
その百回以上の演奏会通いの三分の一近くが、ピアノの演奏会なのです。年々ピアノの演奏を聴くことが多くなりました。拾い上げてみますと若手では、
コジュヒン オペラシティ
トリフォノフ オペラシティ
ミンナール 武蔵野市民文化会館小ホール
クリッヒェル 武蔵野市民文化会館小ホール
ベテランでは、
メルニコフ 石橋メモリアルホール・東京文化会館小ホール
アンスネス オペラシティ
メジュエーワ 名古屋電気会館・ヤマハホール・東京文化会館小ホール
グリモー オペラシティ
プレトニョフ 東京文化会館大ホール
ポゴレリッチ 水戸芸術劇場
ツィメルマン 武蔵野市民文化会館大ホール・水戸芸術劇場・ミューザ川崎
レーゼル 紀尾井ホール
レオンスカヤ 東京文化会館小ホール
トムシッチ 武蔵野市民文化会館小ホール
とそうそうたるメンバーが並び、日本人の演奏家も、
田部京子 浜離宮朝日ホール・石橋メモリアルホール・王子ホール
河村尚子 フィリアホール・川口リリアホール・ヤマハホール・水戸芸術劇場
小菅優 紀尾井ホール・東京文化会館小ホール
松田華音 オペラシティ
と聴いてきました。で、問題は、最後の松田華音さんです。一緒に聴いたエビネンコさんや陽虎さんは会場でも絶賛されていましたが、上手いのはもちろんうまいのですが、技術的に巧く弾くことと、音楽に感動することは違うので、自分の中の違和感をどう表現すれば良いのか二週間ほど迷っていました。
ロシアンピアニストの系統で、音は正確で、大きな音が楽々と出てきます。問題はピアニシモに変わるときの変化とピアニシモの音の立ち上がりです。プロコフィエフはその音の変化と対比が重要だと思います。まだ21歳の若手ですが、コジュヒンやトリフォノフのレベルと比べると、切れ味と凄みが少し柔らかいと思いました。それが、ロメオとジュリエットの表現の幅が小さくなっているのではないでしょうか。展覧会の絵は、スケールは大きいのですが、怖さには狂気を含んではいません。その点が、河村尚子との差でもあります。
音楽への取り組みが、メジューエワほどではないし、メルニコフのような深さはまだありません。アンスネスの半分ほどの真剣さが出てくれば、音楽の幅が一気に広がるでしょう。展覧会の絵のプロムナードが繰り返されるたびに音は大きくなるのですが印象は散漫になってきました。
万雷の拍手に迎えられてアンコールは、テーマソングでもあるパッヘルベルグのカノンでした。ファンサービスですね。終了した後のサイン会の長蛇の列が人気を物語っていました。
松田華音|ピアノ・リサイタル
日時:2017年10月30日(月)19時
場所:東京オペラシティ・コンサートホール
チャイコフスキー(リスト編):ポロネーズ〜「エフゲニー・オネーギン」
プロコフィエフ:「ロメオとジュリエット」より10の小品Op.75
【休憩】
ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」
【アンコール】
ムソルグスキー:古典様式による間奏曲
パッヘルベル/藤満健:カノン
by TANNOY-GRF
| 2017-11-10 22:00
| 演奏会場にて
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