2018年 02月 21日
Orisukeさんの実験 FE126Enの巻 後編 |
3. ダブルリバース呼吸球仕様
気を取り直して、未知の、禁断のダブルリバース呼吸球仕様にしてみました。
裏盤を外して下側にもユニットを装着。月面着陸船のような独特の風貌が、いかにも自作っぽくて良い感じ( ^^)。今まで、ウーファーの対向使用は何度かやりましたし、フルレンジ2発パラドライブのスピーカーも作ってきましたが、フルレンジで、しかも上下方向の音場型リバースというのは全くの初体験。
ボックス(トンネル状のフロントキャビティです)を共有した対向配置なので、一応、「呼吸球」とは呼んでみたものの、どういう動作をするのか一切予測不能。上手くいけば、前向き二本パラドライブと同様にシングル使用の歪み感を打ち消しスケール感が豊かになるだろうし、失敗すれば高域同士が干渉してただでさえ低いレベルが更に低下して二目と見られぬ悲惨なF特と音になるはず。
恐る恐る測定してみると、実際のF特は、FE126EnシングルリバースとFE138ESRシングルリバースの中間のような形。低域急降下の傾向はより明瞭になって下降点は300Hzと若干高めにずれています。並列使用で4Ωになっていることに加えて高域側のレベルも若干上がって凸凹が減少した感じ。うん、これは思ったより悲惨ではないかも。何とかものになるかも知れない、と少し元気が出てきました。
試聴してみると、中高域の歪み感がシングル比で改善して聴きやすくなり、ユニット2発の干渉による高域低下は生じていない模様。通常は増強されるはずの低域は逆に減る結果になっています。音場感は1発よりさらに自然な感じで、バーチャルリアリティというよりも、普通に目の前にいる感じ。上下スタックが効いて、高さ方向のサービスエリアが拡大していますのでその成果でしょう。
しかし、このスタック型は、1発のリバースよりも吸音材や箱の形状に対する反応が実にシビアなのです。少ない吸音材では、箱の中を飛び交う中高音が表の世界にも悪さをして、側板もバンバン鳴るので非常にやかましい音になり、そのままでは長い時間は聴いていられません。恐らく、このスピーカーの動作は、ユニットだけでなく箱も含めて「変な呼吸球」になってしまっているのです。本物の呼吸球なら球面の全てが同相で振動するわけですが、このスピーカーでは振動板が正相で動くと箱の側板は箱内の負圧によって逆相で動くはずです。低音のレベル低下はこれが原因でしょう。
箱の内部に吸音材(今回は粗毛フェルトとシンサレートの2種類同時使用)をパンパンに充填すると中高音のやかましさは無くなってきますが、まだ、どこか引っかかりのある音です。そこで、今度は箱の外側にも吸音処理、今回はシンサレートを巻き付け、上からフリースのネックウォーマー(98円!)を被せました。コルク・鉛などの貼り付けも効きそう、を施すと劇的に改善され、気持ちの良いサウンドに一変。
実験の最初に聴いたFE126Enの本来の音調に近づいてきました。多分、箱の周辺で位相の違う中高音が激しく入り乱れているので、それを吸音材で整理してやるのがこのスピーカーを上手く鳴らすコツになるのだと思います。
単体では低音は全く出ていないので300Hz位から下でウーファーを使うと普通のバランスになりオケが聴けるようになります。これはシングル使用より説得力があり大音量でも破綻しない音です。もう少し聞き込んでみないと断定は出来ませんが、138ESRシングルリバースとはまた違った個性の面白い音がする物が出来たような気がしています。
と、いうわけで、かなりスリルとサスペンス(?)に溢れたスピーカー実験でした。
後編ですけど、まだ続きます(笑)
by TANNOY-GRF
| 2018-02-21 01:21
| 行ったり来たり
|
Comments(9)
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プー博士
at 2018-02-21 07:34
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ううむ、絶句!こんなことまでやっていたとはっ!
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TANNOY-GRF at 2018-02-21 12:14
なんだかトラバドールの80みたいな形ですが、四角いフォルムが下町の工場で作られた人工衛星みたいな形で面白いです。
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Orisuke
at 2018-02-21 13:59
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トロバドール80のスタックした時の音の説得力が自作で出るのか、確認してみたかったんですよ(^^)。一応、シングルとは大分違うことは分かりましたよ。我が家では、勝手に「プチトロ」(プチ・トロバドールの略)と呼んで可愛がっています( 笑)。
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京都人
at 2018-02-21 17:40
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Orisukeさん
フルレンジスピーカーの前面の音を消して裏側の音だけを外に出すようにすると、打ち消し合いが起こらないので素直で驚くような低域が出てきます。
前面の音を低域まで十分に消すためにはグラスウールなどの通常の吸音材では限界があります。
柔らかい段ボールのロールを縦にしてボックス内を埋め尽くすようにするとほぼ全帯域が強く吸音されます。値段は安いので一度試して見られたら面白いかも知れません。以前友人がその段ボールのロールを柱のように立てて、上に小型フルレンジユニットを下向きに伏せるように置いて鳴らすのを聴きましたが、信じがたいような低域が出ていました。
フルレンジスピーカーの前面の音を消して裏側の音だけを外に出すようにすると、打ち消し合いが起こらないので素直で驚くような低域が出てきます。
前面の音を低域まで十分に消すためにはグラスウールなどの通常の吸音材では限界があります。
柔らかい段ボールのロールを縦にしてボックス内を埋め尽くすようにするとほぼ全帯域が強く吸音されます。値段は安いので一度試して見られたら面白いかも知れません。以前友人がその段ボールのロールを柱のように立てて、上に小型フルレンジユニットを下向きに伏せるように置いて鳴らすのを聴きましたが、信じがたいような低域が出ていました。
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プー博士
at 2018-02-21 17:54
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向き合ったスピーカーが取り付けられている箱(トラバドール80では円筒形)にバスレフダクトをつけたら低音出てこないでしょうか?ふと思ったのですけど(大汗) 段ボール仕様でやってみようかな?可愛いのが出来るのがいいですね〜
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Orisuke
at 2018-02-21 19:43
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京都人さん
こんばんは
段ボールや戸澤式レゾネーターは、まだ試したことがないのでやってみたいと思います。ただ、仰られるユニット前後の音を遮断して低音を持ち上げる方法はQが大きいバスレフ用ユニットでは大型の平面バッフルなどでも再現出来る一方、FE126EnのようなQ<0.3の超オーバーダンピングユニットでは背圧をかけないと低音が空振りになってしまうと思います。今回の実験では、密閉箱に吸音材をパンパンに充填してアコースティックサスペンション(空気バネ)にしてみたわけですが振動だけが増大して低域の持ち上がりは見られませんでした。やはり、このユニットで低音を伸ばすのであればホーンロードをかけるのが基本なのだと思います。
こんばんは
段ボールや戸澤式レゾネーターは、まだ試したことがないのでやってみたいと思います。ただ、仰られるユニット前後の音を遮断して低音を持ち上げる方法はQが大きいバスレフ用ユニットでは大型の平面バッフルなどでも再現出来る一方、FE126EnのようなQ<0.3の超オーバーダンピングユニットでは背圧をかけないと低音が空振りになってしまうと思います。今回の実験では、密閉箱に吸音材をパンパンに充填してアコースティックサスペンション(空気バネ)にしてみたわけですが振動だけが増大して低域の持ち上がりは見られませんでした。やはり、このユニットで低音を伸ばすのであればホーンロードをかけるのが基本なのだと思います。
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Orisuke
at 2018-02-21 19:52
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プー博士さん
こんばんは
中間に入るボックスの中の低音が「もったいない」ですよね。これを生かすには、単純バスレフでは箱の容積が小さすぎるので、ユニットを取り付ける箱を第1キャビティとして、もう一つの大きめの第2キャビティとダクトで接続するダブルバスレフ型が良いのではないかと思っています。ダブルバスレフは計算式のパラメーターの種類が多いので、計算にちょっと手間がいるのですが、多分、落としどころは作れると思います。共鳴管も面白いと思いますが、かなり縦長になりますね。
こんばんは
中間に入るボックスの中の低音が「もったいない」ですよね。これを生かすには、単純バスレフでは箱の容積が小さすぎるので、ユニットを取り付ける箱を第1キャビティとして、もう一つの大きめの第2キャビティとダクトで接続するダブルバスレフ型が良いのではないかと思っています。ダブルバスレフは計算式のパラメーターの種類が多いので、計算にちょっと手間がいるのですが、多分、落としどころは作れると思います。共鳴管も面白いと思いますが、かなり縦長になりますね。
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京都人
at 2018-02-22 02:33
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Orisukeさん
アコースティックサスペンションはユニット自身の支持をふらふらにして主に箱の中の空気ばねだけで振動板を制御する方式ですね。確かにオーバーダンピングでエッジが強いユニット向きではありませんね。
Orisukeさんの実験を読ませていただいて、うちに眠っているFE-138ESRを下向きに伏せたシステムを作ってみようかという気になりました。
そのうちに結果をご報告できればと思っております。
アコースティックサスペンションはユニット自身の支持をふらふらにして主に箱の中の空気ばねだけで振動板を制御する方式ですね。確かにオーバーダンピングでエッジが強いユニット向きではありませんね。
Orisukeさんの実験を読ませていただいて、うちに眠っているFE-138ESRを下向きに伏せたシステムを作ってみようかという気になりました。
そのうちに結果をご報告できればと思っております。
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Orisuke
at 2018-02-22 11:47
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京都人さん
はい、仰るとおりアコサスは本来ダンパーがフラフラのユニットでやるのが常識ですが、今回はユニット逆付けということ自体がまず非常識なのでアコサスの効果も誰も聴いたことがないはず。で、138ESRでやってみたら、意外にしっかりした音が出てきたので、しばらくその路線で走っていたというのが実際のところです。ただ、結局、完全密閉よりは背圧コントロールをした方が良かったです(汗)。
138ESR、お持ちなんですね。しかも、皆さん眠っているという( ^^)。これだけ休眠率の高いハイエンドユニットは珍しいですね。「大成功した!」という報告をどこからも聞かないですからね。実験のお仲間が出来るのはとても嬉しいです。一緒に遊びましょう!
はい、仰るとおりアコサスは本来ダンパーがフラフラのユニットでやるのが常識ですが、今回はユニット逆付けということ自体がまず非常識なのでアコサスの効果も誰も聴いたことがないはず。で、138ESRでやってみたら、意外にしっかりした音が出てきたので、しばらくその路線で走っていたというのが実際のところです。ただ、結局、完全密閉よりは背圧コントロールをした方が良かったです(汗)。
138ESR、お持ちなんですね。しかも、皆さん眠っているという( ^^)。これだけ休眠率の高いハイエンドユニットは珍しいですね。「大成功した!」という報告をどこからも聞かないですからね。実験のお仲間が出来るのはとても嬉しいです。一緒に遊びましょう!