2018年 02月 22日
Orisukeさんの実験 FE126Enの巻 後編のつづき! |
先日の実験の続編を送ります。ようやく、納得出来る音になりました。
「未知との遭遇」という感じで実験としては凄くエキサイティングで面白かったです。ユニット逆付けで音場型にするにはやはり相当特殊なユニットが必要なことも分かりましたし、キャビティの中の音の処理もとても重要なことが体感出来ました。
呼吸球仕様が、音はそこそこ出ているものの振動が大きく、かなりユニットと箱に負荷がかかっている感じだったので、思い切って方針転換します。これまで密閉型として作ってきたエンクロージャーに圧力抜きの小さい穴を開けて、背圧を逃がすことにします。側板の中央2箇所に10φx15mm(板厚)の穴を空けました。箱の動作としてはダンプドバスレフになりますが、単なる息抜き穴で低域増強効果はありません。
ピンクノイズでの50cmでのF特は呼吸球仕様よりも低域のレベルが少し上がって凸凹が大きくなった感じ。背圧によって丸められていたものが開放されたとも取れますし、単に暴れたようにも見えます。増設した穴からの風切り音はF特で見る限りないようです。箱の振動は激減しました。増設した穴にプラグ状に吸音材を差し込んでやると背圧が少し上がり音の暴れが少し減ります。このデベソがないと聴感上少しうるさくなります。
ユニットからの音の出方がスムーズになって、ユニットやエンクロージャーが無理な仕事をしている感じがなくなったのが好印象。このユニットをリバースで使う時は、この方法が正解のようです。シングルリバースでバックロードホーンやダブルバスレフにより低音を持ち上げる方法も可能性は十分ありますが、今回使った実感では40Hzから100kHzまで落ち込みの幅が広いので、80-120Hzあたりを箱で持ち上げて超低域はサブウーファーに頼るかたちになると思います。ならば、スペースファクターを考えて、このトロバドール80型のスタック+ウーファーというのは良い落としどころかも知れません。
ウーファーとは200Hz位で繋がります。速くて強いリアリズム基調の音。色気はあまり無くストレートでパワフル。濁りが無いリアリズム基調でブラスやパーカッションなどの大入力に強いタイプ。フレームとマグネットをダンプするとストレートな音の傾向がより洗練されていく感じです。
外側からフリース素材を使ったネックウォーマーを被せます。作業用品屋をぶらっと見ていて思いつきました。特売品98円ですが、まるでオーダーメードのようにピッタリ。側面の音の乱反射・放射を効果的に減少してくれます。鉛シートやコルクの張り込みも効果的だと思います。
肝心の音場はというと、三次元の自然な音場感がちゃんと出ています。と、いいますか、自然すぎて定位とか音場表現ということ自体を考えなくなる音です。音像もシャープで三次元的に定位。当初狙っていた呼吸球的な特性は、この背圧を抜いたバージョンの方が実現してくれたようです。下向きの音の放射も強烈なので置き台の材質や響きは重要。高い位置に宙づりに近い置き方が出来れば面白くなります。
FE138ESRリバースと比べてしまうとさすがに情報量や高域の質感に差が付きますが、単体で聴いたら片チャンネル13,000円の小さいスピーカーが鳴っているとは思わないでしょう。結構、苦戦しましたが、ようやく「作って良かった」という音に届いたようです。
以下、試聴編です。
「ハーモニカ」ジョン・セバスチャン
ハーモニカのリアルさは抜群。チェンバロの弦が弾かれる様子も生々しい。音場は、部屋のどこで聴いても全くブレない。このCDに関しては、D58ESRと互角、時には上回るパフォーマンスを見せる。これは凄い。
D58ESRによる以前の試聴記はこちら
ハイドン 太陽四重奏曲集 キアロスクーロ四重奏団
FE138ESRリバースで抜群の音場感をみせたソフト。高域の分解能の限界が出てしまったか、1stVnのイヴラギモヴァのヴァイオリンの音色がほぐれ切らず音がキツい。エージングでこれからほぐれそうな予感はある。音場感は138ESRに全く負けていないのでトータルでの充実感は高い。
以前の試聴記はこちら
ロシア歌曲集 ヴィシネフスカヤ
FE138ESRでも非常に良かったが、FE126Enでも素晴らしい。高域はやはり硬いのだが、ヴィシネフスカヤが歌う身振りまで見えるような実物大の音像の安定感が凄い。
以前の試聴記はこちら
ビクトリア レクイエム
個々の音の質はFE138ESRリバースの勝ちだか、不気味なまでに生々しい音場はFE126Enダブルリバースの勝ち。
以前の試聴記はこちら
duoW
「スゲー」の一言。メタ・ワイスのチェロが実物大でブイブイ迫ってくる。「もう、音色や分解能なんてどうでもいい!音場と音像が全てだ!」と思わず暴言を吐きそうになる音。
Orisuke
Orisukeさん
力作の実験記をありがとうございました。豪雪と暴風雪のなかでこの実験を行っておられたのですね。雪に閉ざされた雪国の方が、冬の間、いろいろな工芸品や織物を織られているみたいです。
こけしを集めていた頃、三月に入って、まだ業者の方が来ない前に、一冬掛かって作られたこけしを見せていただき、その中で一番気に入った物を、手に入れることが出来ました。今回のOrisukeさんの雪を物ともしない情熱あふれる実験機を拝見していたら、40年も前のこけし収集の時を思い出しました。
家で、Troubadourをお聞きになったことが、豪雪の中でこのような壮大な実験になったと思うと、感慨もひとしおです。オーディオにもいろいろな出会いがありますが、このような展開はとても嬉しいですね。
by TANNOY-GRF
| 2018-02-22 09:51
| 行ったり来たり
|
Comments(4)
Commented
by
Orisuke
at 2018-02-22 12:19
x
GRFさん
駄文を分かりやすく掲載して頂き、本当に有り難うございました。
今回作った「プチトロ」くんは、先週末から「ピョンチャン・オリンピック・スペシャル」(?)としてテレビ部屋に着任し、羽生君・小平さん・高木さんの金メダル中継を担当、選手並みに大活躍しております( ^^)。
スポーツ中継の臨場感は抜群で、アナウンサーや解説の方のピンマイクの取り付け方の善し悪しが分かるようになりました。音楽番組では「ペトレンコ来日コンサート」とか「鈴木雅明のドイツ・オルガン紀行」が感動的で、「ああ、作って良かった」という感じです。
ユニットがもう一組手に入ったら、FE138ES-Rのスタック型への改造もトライしてみようかな、と思っています。これは成功すれば、オーディオ用の高品位な音場型になると思います。
未知の世界の扉を開けて下さったGRFさんに改めて感謝です。
駄文を分かりやすく掲載して頂き、本当に有り難うございました。
今回作った「プチトロ」くんは、先週末から「ピョンチャン・オリンピック・スペシャル」(?)としてテレビ部屋に着任し、羽生君・小平さん・高木さんの金メダル中継を担当、選手並みに大活躍しております( ^^)。
スポーツ中継の臨場感は抜群で、アナウンサーや解説の方のピンマイクの取り付け方の善し悪しが分かるようになりました。音楽番組では「ペトレンコ来日コンサート」とか「鈴木雅明のドイツ・オルガン紀行」が感動的で、「ああ、作って良かった」という感じです。
ユニットがもう一組手に入ったら、FE138ES-Rのスタック型への改造もトライしてみようかな、と思っています。これは成功すれば、オーディオ用の高品位な音場型になると思います。
未知の世界の扉を開けて下さったGRFさんに改めて感謝です。
Commented
by
パグ太郎
at 2018-02-22 23:14
x
orisukeさんが何をしておられるのか、全く理解の範囲を超えてしまって居るのですが、何やら凄いことになってますね。
>もう、音色や分解能なんてどうでもいい!
>音場と音像が全てだ!
分かっていないのに、興奮が伝染しそうです。
duoWがどうなってしまったのか聴いてみたいですね。
>もう、音色や分解能なんてどうでもいい!
>音場と音像が全てだ!
分かっていないのに、興奮が伝染しそうです。
duoWがどうなってしまったのか聴いてみたいですね。
Commented
by
TANNOY-GRF at 2018-02-23 03:07
>>もう、音色や分解能なんてどうでもいい!
>>音場と音像が全てだ!
>分かっていないのに、興奮が伝染しそうです。
>duoWがどうなってしまったのか聴いてみたいですね。
このコメントを拝見して、家のトラバドールで、逆の実験をしてみたくなりました。すなわち、360度のSPを使った場合と、通常のSPを使った場合の音場(音色も分解能も)の比較です。
さて、どうなるでしょう(笑)?
>>音場と音像が全てだ!
>分かっていないのに、興奮が伝染しそうです。
>duoWがどうなってしまったのか聴いてみたいですね。
このコメントを拝見して、家のトラバドールで、逆の実験をしてみたくなりました。すなわち、360度のSPを使った場合と、通常のSPを使った場合の音場(音色も分解能も)の比較です。
さて、どうなるでしょう(笑)?
Commented
by
Orisuke
at 2018-02-23 15:47
x
「プチトロ」は、音色や分解能は「まあ、こんなものか」というレベルでFレンジも狭いのですが、リアルな音場・音像表現だけは妙な凄みがあるという一芸に秀でたスピーカーになったようです。テレビ部屋で先日まで使っていたFE88ESR密閉箱(これも以前に自作3wayのスコーカーだったもの)と比べると唖然とするくらい違っているのでテレビを見る(聴く?)のが愉しくて仕方ありません。もう、この部屋は普通のスピーカーには戻せません( ^^)。
音楽CDには、音場型に向いているソフトとD58ESのような直接音重視の通常型に向いているソフトの両方があるみたいですね。音場信号のほとんど入っていないオンマイク録音のソフトはたいがいD58ESの方が良く鳴りますし、逆もまた真なりという感じです。私は最近、両方切り替えてみて合っている方で聴くという聴き方になりつつあります。
音楽CDには、音場型に向いているソフトとD58ESのような直接音重視の通常型に向いているソフトの両方があるみたいですね。音場信号のほとんど入っていないオンマイク録音のソフトはたいがいD58ESの方が良く鳴りますし、逆もまた真なりという感じです。私は最近、両方切り替えてみて合っている方で聴くという聴き方になりつつあります。