2018年 03月 20日
点と線 |
始めて松本清張の推理小説を読んだのは、もう思い出せもしないほど昔のことです。新幹線が走る前の時代の話ですから、昭和の三十年代の話なのです。社会派の推理小説で、役人の汚職がよくテーマになっていました。今も昔も変わらない構図ですね。初期の名作、点と線、時間の習俗もその範疇です。
金曜の夜、BSのテレビを見ていたら、たけしの「点と線」の再放送と出会いました。前宣伝が派手だったので、最初から見ることが出来ました。ただ、BSの再放送では、コマーシャルが多くて長く、一旦 CMが始まると3分ぐらいは番組に戻ってきませんから、頻繁に来るその3分間のCMの忍耐が大変でした。民放というのは、CMのために放送していると言うことがよく解ります。
この作品は、制作したテレビ朝日の開局50周年を記念した番組で、映画なみの費用と時間を投入しています。見所は豪華な俳優陣と的確なキャスティング、そして、問題の四分間の東京駅のホームや、殺害現場となった福岡の香椎海岸への香椎駅の昭和三十年代のオープンセットです。オープンセットは大変よく出来ており、昭和三十年代がカラーでよみがえってきます。看板や家並みばかりではなく、歩いている人たちの服装やヘアースタイルも重要です。
この作品で一番重要なシーンは、空白の四分間を再現することでしょう。ロケ場所に、大阪の宮原総合運転所が選ばれ、寝台特急「あさかぜ」のブルートレインの24系車両や、湘南電車の113系の車両も揃えて、あの頃の東京駅を再現していました。
このホームのシーン一つでも、ホームの番線の看板、駅名、各種表示、ホームに立っている人、野菜を運んでくるおばさんの担ぎ屋、女学校の生徒、あの時代の旅行バッグをもった乗客。サラリーマンの服装。ん?服装が原作の時期と違うと気がつきました。この放送が放映されたのは、2007年の11月末でした。ですからロケが行われたのは、まだ暑い頃だったのでしょう。その季節感の違いが違和感として出てきました。
映画なみの力の入れようで、さいぶにわたりよく時代考証がされていると感心しましたが、この番組用に脚色されていて、原作には書いてないエピソードも出てきました。何十年も前に読んだ小説と印象が違うので、確認のために家の本棚を探して見ました。しかし、何十年も前の本なので、一番奥の方にしまわれているのか、どうしても見つかりません。こうなると、探し続けるのが、老人力です。目の前に偶然転がってきた石の事にこだわりすぎるのですね。
仕方がないので、翌日の配達の通信販売をポチろうと思ったのですが、そのページに行くと、kindle版という項目がありました。そうか、kindleなら今すぐ読めると思い、ipadから注文しました。しかし、初めてですからどうしたら発注できるのか、どのように使うのか解りません。それでも、サンプル版を触っていたら、ほぼ本を読むのと変わらない形式で、すぐに読めることが解ってきました。
原作を読んでみると、やはり、ドラマ化するにあたって、相当脚色されているのが解りました。小説が必要充分な情報で出来ているのがよくわかりました。同時代のひとに時代背景や風景を説明する必要は無いからでしょう。気がついたら明け方近くまで、小説を読み進み、同じコンビが出てくる「時間の習俗」もkindleで発注していました。翌日読むと、こちらは説明的で、アリバイの為のアリバイが凝りすぎていると感じました。しかし、松本清張は最初の5年間ぐらいで、砂の器の名作を含む、推理小説の名作を残しております。
偶然見たたけしの10年前の作品がよく出来ていて、出てくる俳優がみな10歳若いのをみると、同時代の人間としては、活気ある昭和30年代と同時に、60歳前の本ブログを立ち上げた頃の自分の年齢も重ねてみていました。
by TANNOY-GRF
| 2018-03-20 09:50
| 昭和三十年代
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Comments(6)

私も途中から観ました。かなり、引っ張られて、その挙句、私たちは、貧乏人だから云々(でんでん、笑)というアリバイ崩しは、がっくりきました。
子供の頃、砂の器の映画を親に釣れられて、観に行って、現在なら重厚な感じと思ったでしょうが、妙に重苦しい感じが残ったのを覚えています。
昭和40年代だったでしょうか。
子供の頃、砂の器の映画を親に釣れられて、観に行って、現在なら重厚な感じと思ったでしょうが、妙に重苦しい感じが残ったのを覚えています。
昭和40年代だったでしょうか。

『点と線』、原作もドラマも題名しか知らないのですが、昭和30年代の香椎の写真に反応してしまいました。実は4歳まで同地に住んでいたことがあります。殆ど当時の記憶は無いのですが、駅前に買物に行って母とはぐれて、泣きながら一人で家に向かったということを覚えています。その時の印象では、あの商店街はもっと大きく賑わっていて、人ごみの中、心細い思いをしたのですが、写真を見ると、街ともいえぬような有様ですね。写真を拝見して、断片的な三つ子の初めての記憶の断片が幾つか、久々に意識に蘇ってきました。
リウーさん あのころはやはり飛行機で移動する人は限られていたようです。鉄道の特急のかかくも高かった時代ですが、飛行機は、二倍以上ですからなかなか庶民の感覚には無かったのでしょうね。新幹線が出来て、旅もだいぶ合理的になりましたが、九州や北海道は、丸一日乗っていましたから、今のヨーロッパより遠く、地球の裏側と同じぐらい遠かったのですね。
パグ太郎さんは、福岡にお住まいだったのですか!それも香椎とは!こちらもビックリですね。パグ太郎さんの居られたのは、昭和30年の後半でしょう。この小説が書かれてから急速に公害住宅化して、賑やかになっていったようです。同じ頃の、西武新宿線や池袋線の駅のさびしい感じを思い出しました。

「点と線」を読んだのは確か中学生のころだったと思います。東京駅の場面以外はほとんど覚えていませんが、松本清張の作品を読了した満足感は記憶しています。良いきっかけを頂いたのでイースター休暇に再読してみます。
のびーさん 何十年も前に読んだ本は、ほとんど覚えていない物ですが、この推理小説の筋書きはディテールまで覚えていましたが、アリバイ以外の描写は始めて読む本のように新鮮でした。kindleで簡単に入手出来ますから、美味しいワインを飲みながら、春の風に吹かれながら読んで下さい。