2018年 10月 21日
想い出のシャルル・アズナヴール 2 |
シャルル・アズナヴールを始めて知ったのは東京オリンピックの頃でした。シルヴィ・バルタンの「アイドルを探せ」という映画で、1964年に封切られていますが、阿佐ヶ谷の二流館のオデオン座にその年の内に来たのは定かではありません。ビートルズがやってくる ”A Hard Day's Night”と同じ頃だったとも思います。その映画の中で最後に出てくる冴えないおじさんが歌った、「エ・プルタン」という曲を聴いたとき、雷に打たれた様に驚きました。
驚いたのは、その冴えないおじさんが、熱烈な恋の歌を朗々と歌ったからです。驚きのまま、エンドタイトルを見たら、Charles Aznavourと書かれていました。「アイドルを探せ」のレコードも買ったのですが、そのおじさんがその頃ラジオで頻繁に流されていた「イザベル」を歌っている人だと始めて知ったのです。
Olympia 1963 - Et Pourtant Henry Byrs (piano)
Et pourtant だけど (想い出の瞳)
Charles Aznavour シャルル・アズナヴール
Un beau matin je sais que je m’éveillerai
Différemment de tous les autres jours
Et mon cœur délivré enfin de notre amour
Et pourtant, et pourtant
Sans un remords, sans un regret je partirai
Droit devant moi sans espoir de retour
Loin des yeux loin du cœur j’oublierai pour toujours
Et ton cœur et tes bras
Et ta voix
Mon amour
ある朝 僕は目が覚めるだろう
ほかの日と違ったふうに
そして僕の心は僕らの恋からついに自由になる
だけど、だけど
後悔もなく、未練もなく僕は出て行く
まっすぐ前を向いて、戻る望みももたずに
日毎に遠くなり 僕は永遠に忘れるだろう
君の心も 君の腕も
君の声も
愛する人よ
Et pourtant, pourtant, je n’aime que toi
Et pourtant, pourtant, je n’aime que toi
Et pourtant, pourtant, je n’aime que toi
Et pourtant
だけど、だけど、僕は君しか愛さない
だけど、だけど、僕は君しか愛さない
だけど、だけど、僕は君しか愛さない
だけど
J’arracherai sans une larme, sans un cri
Les liens secrets qui déchirent ma peau
Me libérant de toi pour trouver le repos
Et pourtant, et pourtant
Je marcherai vers d’autres cieux, d’autres pays
En oubliant ta cruelle froideur
Les mains pleines d’amour j’offrirai au bonheur
Et les jour et les nuits
Et la vie
De mon cœur
皮膚を傷つけながらも 僕は涙も流さず、叫びもせずに
隠れたきずなを引きはがし
休息を見出すために君から自分を自由にする
だけど、だけど
僕は異郷へと、他国へと向かって歩む
君のつれない冷たさを忘れるために
愛でいっぱいの両手を
大事な人の幸福のために
その人の昼と夜と
人生のために差し出すだろう
Et pourtant, pourtant, je n’aime que toi
Et pourtant, pourtant, je n’aime que toi
Et pourtant, pourtant, je n’aime que toi
Et pourtant
だけど、だけど、僕は君しか愛さない
だけど、だけど、僕は君しか愛さない
だけど、だけど、僕は君しか愛さない
だけど
Il faudra bien que je retrouve ma raison
Mon insouciance et mes élans de joie
Que je parte à jamais pour échapper à toi
Et pourtant, et pourtant
Dans d’autres bras quand j’oublierai jusqu’à ton nom
Quand je pourrai repenser l’avenir
Tu deviendras pour moi qu’un lointain souvenir
Quand mon mal et ma peur
Et mes pleurs
Vont finir
僕は自分の理性や
気楽さや歓びの高まりをまた見出さなければならない
永遠に君から逃れるために
だけど、だけど
ほかの人の腕のなかへと その時僕は君の名すら忘れているだろう
その時僕は未来のことをまた考えられるだろう
君は僕にとって遠い思い出に過ぎなくなる
その時僕の苦しみや僕の恐れや
僕の涙は
終わりを告げる
Et pourtant, pourtant, je n’aime que toi
Et pourtant, pourtant, je n’aime que toi
Et pourtant, pourtant, je n’aime que toi
Et pourtant
だけど、だけど、僕は君しか愛さない
だけど、だけど、僕は君しか愛さない
だけど、だけど、僕は君しか愛さない
だけど
この歌詞を聞き込んで行く内に、韻を踏むという詩の約束をしながら、体言止めで想いを伝えるという歌詞の素晴らしさを学んだ気がします。フランス語が得意では無くとも、この部分を韻を踏んで発言すると、アズナヴールの素晴らしさが心に伝わってきます。
Et ton cœur et tes bras
Et ta voix
Mon amour
Et les jour et les nuits
Et la vie
De mon cœur
Quand mon mal et ma peur
Et mes pleurs
Vont finir
それでも、それでも、僕は君しか愛していない!と繰り返すのです。
Et pourtant, pourtant, je n’aime que toi
素晴らしい曲でしょう。高校二年生が始めて出会った本当の愛の歌でした。その衝撃は大きく、数十年経ったいまでも、その映画館に呆然としていた自分を思い出すことが出来ます。私の中のアズナヴールの存在は小林秀雄と同じぐらいです。その頃の衝撃と感動を50年間続けてくれたのです。
by TANNOY-GRF
| 2018-10-21 09:47
| 好きなレコード
|
Comments(2)
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by
GRF
at 2018-10-21 09:59
x
パグ太郎さん おはようございます。アズナヴールが亡くなっても、速報は日本に届きましたが、フランスでの報道が伝わらなく、葬儀の後まで見守っていました。
自分の中で存在が余りにも大きく、彼の死を納得するまで時間が必要だったのでしょう。90歳を過ぎてからは、さすがに昔の勢いは無くなり、その舞台を見るのが少しつらくなってきたのも事実です。
しかし、歴代の大統領を列席してのフランスの国葬で、見送られるとは驚きましたし、そのような彼を50年間追い続けてきた自分も褒めて上げたいと思いました。
次回は、アズナヴールの特集でもしましょうか?テレサ・テンよりレコードは多いですよ(爆)
自分の中で存在が余りにも大きく、彼の死を納得するまで時間が必要だったのでしょう。90歳を過ぎてからは、さすがに昔の勢いは無くなり、その舞台を見るのが少しつらくなってきたのも事実です。
しかし、歴代の大統領を列席してのフランスの国葬で、見送られるとは驚きましたし、そのような彼を50年間追い続けてきた自分も褒めて上げたいと思いました。
次回は、アズナヴールの特集でもしましょうか?テレサ・テンよりレコードは多いですよ(爆)
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by
パグ太郎
at 2018-10-21 14:03
x
彼も移民の息子(ジョージア人とアルメニア人の両親)だったのですね。そちらの国家元首も参列したというニュースを見ました。ここにも東欧とフランスの出会いがあったのかと思いました。是非、次回は偲ぶ会をお願いします。