2018年 11月 25日
友の会 第三回例会 ⑬ kanataさんのご感想 |
第3回German Physiks友の会のとても私的な感想
有難くもGRFさんよりお誘いをいただき、German physiks友の会に参加することになりました。
とはいえ、「参加します」と返事をしたのはいいものの、私のようなGPのユーザーでもなくGRFさんとの交流も未だ片道の人間が参加してもいいものか?何よりもGRFさんのブログを拝読する限り、参加される方々はオーディオと音楽の双方の感性と経験を多く積まれた百戦錬磨の方ばかりであるのに自分の様なペーペーが同席してもいいものか?等と悶々としてしまいました。それでもお誘いをいただいたのだからこれも経験と開き直って当日を迎えました。
さて、当日、一人で行くのは心細かったので(笑)KYLYNさんにお願いしてご一緒いただくことに。道中の電車の中ではお互いの近況やPhilewebコミュニティの共通の知人の話等をしてリラックス。しかし会場に着いてそのハイソさに唖然。場違い感が再度沸き上がります。入口には素敵な女性の受付の方までいらっしゃっいました(汗)
受付を終えて部屋に入るとそこはハイセンスな調度品で設えられた素敵な空間が広がります。(アカン・・・これはアカンやつや。来る世界を間違えたもうた(滝汗))間違えて入った振りをして帰ろうかと思いました(爆)
しかしよくよく見ると見知ったコミュの方々のお顔が見えて若干のホーム感を感じちょっと安心。GRFさんにご挨拶とお礼を言って着席します。
私が座った席はスピーカーに向かって扇状2列に配された席の後列右側。野球のポジションで言うとレフトの位置です。因みにパグ太郎さん・Vafanさんがセカンド・ショートを固めておられて流石だと思いました(笑)普通のオーディオショウですと音像がうまく定位せずステージが上手く出ないところですが、そこはGRFさんのセッティングですので安心して座ることが出来ました。ショウだと後列中央が空いていたのでそこに座っていたことでしょう(笑)
会が始まるまでの間に流れている曲に耳を傾けると知った曲がかかっていました。
・Diana Krall: Turn up the Quiet
先日の訪問時にもGRFさんがこれを少し再生されましたが、この録音はなかなかの曲者です。曲によってオンマイクで各楽器がクローズアップされたものもあれば、楽器全てをステージ上に配置するものもあり、なかなか楽しめます。それはそれで良いのですが、肝心のダイアナクラールさんの声の録音が個人的に引っ掛かります。例えばこの盤をリファレンスにして声の質感にこだわって調整してしまうとドツボに嵌る予感がします。
この日の再生はどうだったのかと言うと、私が思う通りのこの盤のボーカルの質感が出ていました。そうそう、このボーカルはやはりこういう録音ですよね、と納得です。
それにしてもちょっと聞いただけですが、さすがGRFさんです。
・この会場は自宅とは異なるアウェーである
・セッテングに掛ける時間は限られている
・スピーカーの左右の空間に大きな差がある
・中央にはグランドピアノが置かれている
・スピーカーの位置とリスナーの位置では天井に段差がある
ざっとさらっただけでも上記の様な悪条件の中で見事に調整されており、目を瞑ればそこには音源に入っているステージのみが現れます。中央のグランドピアノは「そんなものはステージの構築には然したる影響を与えないのですよ」と諭すために、あえて残されている様にさえ感じてしまいます。勘繰りすぎでしょうか?・・・
定刻となり会が開始されます。
最初は参加者の皆さんの自己紹介から。意外にもGPのオーナー様は少なかった印象ですが、皆さん言葉には出されませんが様々な経験を積まれているのだということがヒシヒシと伝わって来ました。案の定私は参加者の中で最年少でした(^^;
そういうこともあり、この日は出しゃばらず大人しくせねばという思いが先行し、初めて顔を合わせる方々との交流があまり出来なかったことを帰ってから悔やむ結果となりました。機会があれば今後交流させていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
最初はこの会の前に度々GRFさんがブログで書かれていたCharles Aznavourさんの音源の再生が続きます。これはお持ちのLPからDSD128で収録したものであるとのことです。実は恥ずかしながら初めてこの方の音源を聞きましたが、心にじわっと染み込む様な歌声に感じました。技術的にも完成されているけれどその技術を人の心に届けることに使っておられる感じがしました。
続いて、先日和室でもお聞かせいただいた Karajan, BPO - Beethoven: Symphony No.9の抜粋です。こちらは4トラックのテープからDSD128で収録したものだそうです。貴重な音源が惜しみなく繰り出されます。感謝。この日も鮮烈で力感溢れるコントラバスの低域が再生されます。会場の影響か和室よりもやや華やかさを感じました。スケールも2まわり程大きく雄大な演奏です。
再びアズナブールさんに戻って数曲再生となりました。
GRFさんにとってはこの会はアズナブールさんの鎮魂の会でもあるかの様に・・・
GRFさんの中でアズナブールさんへの思いが一区切り付いたのでしょう。CDの再生に入ります。
・Giulini, Philharmonia, Battle - Faure: Requiem 1986年デジタル録音
こちらも先日和室と大きい部屋の双方でお聞かせいただいたものです。その後私も早速西独初期版を購入しました。GRF邸では果てしなく遠い奥の位置でバトルさんが歌ってくれましたが、この日はそれに比較して近くに定位します。繊細なガラス細工を思わせる様な歌唱には、やはりやや華やかさが乗って煌びやかなイメージです。
続いて「この中のどなたかの大好きな音楽ですよ」というGRFさんの茶目っ気のあるコメントと共にワーグナーの女声が再生されます。(・・・この声は確かに聴いたことがある。けれど誰だか思い出せない・・・)てことで、ここはShazam先生にご登場願いました。先生、お願いします!
Shazam先生「 Regine Crespin - Wagner: Lohengrin "Elsa's Dream...."1958年アナログステレオ録音 だぞよ」
先生、ありがとうございます。おお、クレスパンさんか。なるほど。なぜ出てこなかったのか・・・情けない。このコミュのパグ太郎さんお気に入りの歌手ですね。度々日記にも登場しています。私もその日記を拝読し、どんなものかとDECCAのLP初期版を購入し、大当たりで一時期かなり聞きました。しかしフランス人である彼女に敢えてワーグナーを持ってくるところが心憎いですね。
この日再生された音源は初めて聞きましたが、相変わらず素晴らしい歌唱力。私にとってこの人の歌唱は「陽」のイメージで、とても前向きな気持ちにさせてくれます。やはりこちらも私の感覚よりやや華やかに振れます。
ここに来て聞きなれたクレスパンさんの歌声を聞いて、ここまでうっすらと頭にあった疑問が確信に変わりました。その考えを後押しするGRFさんのつぶやきが聞こえます
「実は最後のセッテングの微調整をやっていないんだよね」
(ああ、やっぱり。)
奥行きがGRFさんにしては控え目なのも、全体的に華やかな方向に表現がやや振れているのも、これで納得がいきました。経験上セッティングがピッタリ合う直前は音楽が全体的に華やかになる傾向を感じており、この日もその状態なのかなと勝手に納得してしまいました。
とはいえ、この方向性の音はこの場にとても相応しく、GRFさんはこの音楽を聞かれてあえてこのままで良しとされているのだろうとも同時に感じました。ハレの日に薄化粧をする、そんな感じでしょうか。
(しかしこんな事を呟かれるということは・・・後でピント合わせの実演が来るのか? オラわっくわくして来たゾ!)
更にCD音源のクラシックが続きます。
・Abbado, The Chamber Orchestra of Europe, Sting - Prokofiev: Peter and the Wolf 1988年デジタル録音
こちらも先日和室でお聞かせいただきました。こちらも西独初期版を入手済です。ナレーターが各国で異なり、この盤はSTINGですが、日本盤は坂東玉三郎さんの様です。因みに余談ですが、この曲はTIDALでのアーティストが何とSTINGに紐づけられています(笑)TIDALさんさぁ・・・
この音源、各楽器の質感が本当に丁寧に録られていて、まるでおもちゃ箱の様です。何度聴いても飽きませんね。しかし飽きないとは書きましたが、まさか最初から最後まで通しで再生されるとは思いもよりませんでした(爆)私は楽しめましたが、クラシック聞かない方は大丈夫だったのかしら?と要らぬ心配をしてしまいます(汗)
至福のクラシックCDタイムでどっぷりとGRFさんの世界観に浸かってしまい、完全に音楽鑑賞モードです。続いてはJAZZ。GRFさんオリジナル録音音源のDSDが再生されます。
いやはや、鮮烈!トランペット・サックス等の金管楽器の質感がもう本物としか思えません。録音・再生ともに素晴らしい。スケール感もあり、これは先日のGRF邸よりもこの音源に合っている再生に個人的には聞こえました。
途中で急に低音が聞こえなくなり、焦ってしまいましたが、GRFさんと大山さんが冷静に対処され事なきを得ました。どうやら過大入力でパワーアンプとして使用していたSD05のプロテクションが作動した様です。そこまでの大音量とは感じませんでしたが、市販とは違う録ったままの音源であることが原因であったようです。
お次はどなたかのリクエストに応えられてJazzの女声ボーカルとピアノ
Patricia Barber: Night Club "Bye Bye Blackbird" 2000年デジタル録音
知的な女性のジャズという印象。このサロンにとても合ったいい雰囲気です。ここでは話の流れでCD盤とSACD盤の聞き比べとなりました。結論から言いますと、個人的にはCDの方が断然好みでした。ボーカルとピアノ演奏の骨格がしっかりとして、奏者の想いがこちらに伝わってくる演奏となります。SACDではピアノの高音や低音のキレのある表現に生っぽさを感じる所もありますが、全体的に線が細く頼りない。こちらに伝わるものも少なくなっている様に感じます。
とはいえ別に私にはSACDを貶す意図などありません。この音源で、この日の再生で、私が感じたものが、そうだったというだけの事です。音源と再生と聴く人間の感性、この3つによって様々に変化するものなので、軽々しく方式の差に議論を持っていくのは早計というものです。
次はなんと私の愛聴盤が再生されました。
・Eva Cassidy: Night Bird "Blue Skys"
ある意味この再生がこの日一番の衝撃だったかも知れません。音場空間の広がりや臨場感が素晴らしかったのはそうなのですが、なぜか私の耳にはボーカルの歌声・バックの演奏ともにどこか落ち着きのない神経質な薄っぺらいものに聞こえたのです。これには正直狼狽えました。
もちろん愛聴盤としつつも私もこの音源が良い録音だとは思っていません。ボーカルや楽器の質感がやや悪く、場合によってはうるさく聞こえてしまいますし、録音のステージが見える系統でもありません。しかしその瑕疵を補って余りあるEvaさんの歌声の力がこの録音にはあると思って来ました。
しかし、この日は聞いていて心にグッと来るものがありませんでした。
私は別にGRFさんの信者ではありませんが、先日聞かせていただいたGRF邸の音楽は私にとって何も違和感なく、僭越ながら同じ方向を向いておられると感じました。そんな方のシステムでこの音源がこんな魂の抜けた聞こえ方をしてしまった。これはちょっとショックでした。
ただ、私にとって若干の救いであったのが、この日再生された盤は原盤である"Live at Blues Alley"ではなく"NightBird" の方であったことです。何度かPhilewebの日記やコメントでも書いていますが、私は前者の方が好ましいと感じています。前者がGRFさんのシステムでどう鳴るのか?興味があるところです。場合によってはこの盤に対する認識を改めなければならないと感じています。
その後クラシックを再生されて(曲名わからず)、おもむろにGRFさんが立ち上がります。「ここでセッティングの微調整をしてみましょうか」(キタ――(゚∀゚)――!!)
やはり来ましたこの展開。まさかここまで引っ張ってからとは思いませんでしたが(爆)皆さんが固唾をのんで見守る中、モノラル音源を再生し、右スピーカーのGP部のみをちょいちょいと動かされます。そして、それまで再生していた音源を再度かけると・・・
ステージが奥へズォーっと広がって後退し、それまで感じていた華やかさが落ち着き、音像が真に収束して厚みが出てきます。
(おおおおお!スゲー!)(そうそうこれですよ、これが先日お聞かせいただいたGRFさんの音楽ですよ。)と内心興奮してしまいました。
その後しばらく聞いていて、少しアレっと思う所があるなと感じていると・・・
すかさず会場から「サックスに色気が無くなった!」との声が!さすが皆さん良い耳と感性をお持ちです。おっしゃる通り。その声に応えてGRFさんがまたスピーカーを元に戻します。するとまたまたサックスに色気が漂って来ました。
これには会場内で皆さん喧々諤々。
個人的には微調整後の音楽の方が断然好ましいと思っています。1曲のみの比較となりましたが、多分こちらの方が幅広い音楽を安心して楽しめるはず。ニュートラルの状態として設定するのに相応しいと感じます。元々のセッティングの華やかな音は確かにサックスはエロいですが、クレスパンでも若干感じた様に高域が耳につく帯域が出てきます。
セッテング由来のピークが出ていて、曲によってそれが良い方にも悪い方にも作用してしまうのではないでしょうか。上記は音色についての感想(予想)ですが、ステージの出方、音像の厚みなどの他の要素も考えると、私には迷うことなく微調整後が魅力的と感じます。
そもそも、セッテングによるピークを音作りに利用するのは危険で、色々な曲で調整をしていくと何がニュートラルなのか分からなくなる恐れが高いです。GRFさんの様なニュートラルをしっかりと持っていて何時でも簡単に戻せる達人にこそ使いこなせる高等技術であると思います。音作りの必要性があるのならば、セッティングでなくその他で最後に少し隠し味を利かせる程度が理想的だと考えます。
ついつい熱くなって脱線してしまいました。
とまぁ前述の様に、最後にセッティング変更による音楽の大きな変化という爆弾をぶち込まれ(笑)、会場が大いに盛り上がったところで第一部の終了となりました。長丁場でしたが、色々な趣向があり、色々なジャンルの素晴らしい音源があり、オーディオ的にも音楽的にも多くの示唆をいただきました。感謝としか言いようがありません。
GRFさん、ありがとうございました。
いつもながら思いを書き連ねると文章がかなり長くなってしまいました。その後についてはポイントのみを書きます。
・ワインと料理がとても美味しかった。
サラッと書きましたがめっちゃ美味しかったです!こんな美味しいワインを飲んだことがありませんでした。流石ワイン教室の先生のチョイスです。料理との相性も抜群です。一体どうやって見つけるのでしょうか?私もサラッと美味しいワインを選べるようになりたいものです。
・歌謡曲万歳
オフ会では良くあることですが、興が乗って来るとなぜか先輩方は歌謡曲を再生されることが多い様に感じます。御多分に漏れず、この日の第二部も途中は歌謡曲大会になりました。やはり自分の青春時代に共にあった音楽は格別なのでしょうね。私は歌謡曲を聞いても沸き上がるものがないのでいつも寂しく思います。それと共に、同年代のオーディオファイルが少ないことも感じてしまいます。日本で一番CDが売れた時代に青春を過ごした年代のはずなのですが。いつか同年代の方々と90年代のJPopを聞き倒す会を開きたいものです。オファー待ってます。
・これがマッキン!!
第二部での主役は横浜のMさんのMcintosh XRT26です。存在は以前から知っていたものの、この巨大なシステムを聞く機会などなかなかあるはずもなく、この日が初でした。
で、これもGRFさんのシステムに負けず劣らず凄かった!
あれだけのユニットがあるのになぜこんなに纏まりのある音楽が出せるのか?Mさんの腕に脱帽です。音楽を構成する音の一つ一つに生命力が溢れて、まさに等身大の音楽を放出。熱い音楽の洪水の中に巻き込まれ、溺れながらも天国へと逝ってしまう様な快感があります。
これはこのシステムでなければ出ないオンリーワンの音楽でしょう。音楽の持つ根源的なパワー、楽しさをそのまま聞かせてくれる、そんなシステムでした。この音楽は確実に私の記憶の中に長く残るだろう、そんな強烈な体験でした。
貴重な体験をさせていただき、こちらも感謝としか言いようがありません。Mさん、ありがとうございました。
そんなこんなであっという間に第二部も時間は経過し、お開きの時間となりました。この日も私の日常では得ることの出来ない貴重な経験を色々とさせていただき、とても有意義な日となりました。
やはりオーディオは経験あるのみです。自宅で自分の音楽をコツコツと作り上げるのも必要ですが、非日常の経験もまた同様に必要であると何時も感じます。
最後に、この日ご一緒させていただいた皆様に感謝の気持ちをお伝えし、この文章を締めようと思います。皆さん、ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
kanata
大変な力作ありがとうございます。当日の参加者の中でkanataさんが一番お若かったのですね。そういえば、お食事の時も、普段より無口で緊張されていましたね(笑)。しかし、このご感想をお聞きすると、すべてを吸収されています。ぎゃくに若さというのは、良い物だとうらやましくも思いました。
Mさんと私の共通点がアズナヴールの事もあり、最初はそのアズナヴールの音源を使って、アナログレコードがどのくらいの水準で、5,6MHzのワンビットに変換されるかを聞いていただきました。夜香さんご推奨の洗顔ブラシを使ったレコード洗浄のおかげも有って、ほとんどの傷も気にならないほどに洗われていました。スクラッチノイズが無く、最新のカートリッジで三次元的な音場と、20Hzまで正確に再現するMolaMolaのイコライザーの威力もアリ、ほぼ完璧なレコード演奏でした。とても50年間聞き続けてきたばんとは思えない程のできばえでした。
当日は、あの豪華な会場に見合ったリッチな音のまま会を薦めましたが、最後の最後に、自分の興味もあり、正確なSP調整を行ってみました。その場合は、後ろのSPやピアノの影響も受けましたが、たった、2ミリ動かしただけで、あれだけ音が変わることを体験していただきました。
一番がっかりしたのは、Eva Cassidyのアルバムでした。私自身もビックリしたぐらいです。家を出発するときに選んだ最後のCDでした。本当は、アメリカ盤を持ってくるはずでしたが、見つからなく身近にあったイギリス盤の廉価版をもって来たことが敗因です。両方ならして盤の違いだと検証すべきでしたね。音が薄く、奥行きも一番大事な情緒がでていませんでした。盤を選び損なうとたちまち奈落の底です・・・それでも、皆さんに喜んでいただいたし、そういう危険性も常にあると言うことがわかって良かったと思っています。
後は、美味しいワインとお料理、そして豪華なマッキントッシュサウンドと、楽しい晩でした。また、来年もやりましょう!
by TANNOY-GRF
| 2018-11-25 15:05
| 友の会
|
Comments(0)