2018年 12月 04日
ズービン・メータとバイエルン放送交響楽団 キーシンのピアノ |
ミューザからの帰りの電車の中でも、うねりのようなチャイコフスキーの低弦は鳴り響いていました。新橋で乗り換えて銀座線に乗り、赤坂見附のホームで丸ノ内線を待っていても、地下鉄の駅から暗い道を歩いているときも、あのうねりは消えませんでした。今日の聞いた位置が、あのように聞こえさせるのでしょうか?メータの演奏に乗ったオーケストラが、力を発揮したののでしょうか?チャイコフスキー自体の音楽がそうさせるのでしょうか。おそらくそのすべてが融合してあの演奏になったのでしょう。
ミューザでの素晴らしい演奏は、何時も録音されません。頭上にマイクがないのです。そのことも、楽団員の自発性を発揮させるのかもしれないと、何時も思います。この響きは一期一会の出会いなのだと思い至りました。
今日は月曜日ですが、今晩は待望のキーシンです。何回かキーシンを聴く機会はあったのですが、急な出張になって家人に譲ったり、気がついたときは遅く、券が手に入らなかったりで悔しい思いをしてきました。ようやく聴けます。今回はリストの協奏曲です。最近はどのオーケストラとも、この曲で共演しているようです。
17歳の時にカラヤンと共演を果たしてから、キーシンは世界中の巨匠と共演してきました。最初のアメリカ公演の時は、ショパンのピアノ協奏曲二曲をNYフィルと共演しています。その時の指揮者がメータだったのです。それも30年近く前になります。日本には有名になる前から天才少年としてきており、その時の録音も残っています。しかし、私の耳には、やはりカラヤンとの共演の力強いチャイコフスキーの鍵盤をたたく音が耳に残っているのです。カラヤンにとっては最晩年の録音ですね。
サントリーホールへは、丸ノ内線で四谷まで行き、半蔵門線で六本木一丁目まで行くのが一番楽です。以前は、大江戸線で行っていたので、地下深くから這い上がってくるだけで疲れていました。サントリーホールも今少しホワイエが大きいと人の行き来が楽なのですが、何時も人が交差しますね。意を決して1000円のスパークリングワインを頼んだら、周りの人たちとグラスの格好が違います。皆さんは1,500円のシャンパンをお飲みなのです。よく見るとシャンパングラスばっかりです。この辺が、ミューザとの違いでしょうか(笑)。
今日の席は、右側のステージ横です。ここもS席なのは少し不満です。サントリーホールはほとんどが、S席のような気がします。今日は、42,000円もするので、少しそのへんがナーバスです。皆さんは余裕で来られている方が多いのですね。斜めになったピアノの蓋の隙間からキーシンの顔は見れるようですが。
前日と同じようにメータが、介添えのお兄さんとゆっくりステージに入ってきました。キーシンは先に歩いてピアノまで来て待っています。サントリーホールは、ミューザより奥行きが2mぐらい浅いですから、第一、第二ヴァイオリンの人がステージの際まで来ています。そこを杖を突いた指揮者と介添えのひとが通るので、通るそばのヴァイオリン奏者は、椅子をさげて通路を作っています。ミューザより緩いスロープを少しずつ登り切ると昨日と違う足の踏み台をもって来て姿勢を安定させました。
演奏が始まると力強い音が鍵盤から押し寄せます。私の席は、ピアノの反射板でおとが右左に分断しているように聞こえます。あと数席分左だったら良かったのにと思うほど、強烈なタッチでピアノがうなりを上げているように感じました。どういう感じだったかは下の練習風景を見てください。
キーシン特有のピアノタッチですね。力強いピアノを支えるスケールの大きな安心で身を任せられるオーケストラ。30年間培ってきたメータへの信頼感があり、ピアノは走ることが出来るのです。タッチの鋭さにピアノが悲鳴を上げているようにも感じる普通とは全く違う響きです。
熱烈な拍手に、キーシンはアンコールにチャイコフスキーの瞑想曲を弾きました。私は始めて聴く曲です。
柔らかな落ち着いた良い曲です。リストの興奮を冷ますためにも、Meditationは良い選択だと思いました。ところがアンコールはこれだけでは終わらなかったのです。メータは椅子に座ったままキーシンのアンコールを楽しんでいます。二曲目もありました。ドビュッシーの子供の領分から、ゴリヴォークのケークウォークです。極めてリズミカルな演奏です。楽しめました。
会場から一杯の拍手を貰ってキーシンが引き上げていくと、バラホフスキーさんに手助けして貰ってメータがゆっくりと戻っていきます。
休憩です。
(写真・ビデオはBRSOサイトから)
by TANNOY-GRF
| 2018-12-04 08:29
| 演奏会場にて
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