2018年 12月 12日
プレトニョフ編曲プロコフィエフの組曲シンデレラから |
最近はクラシック好きのお客さんが見えたとき、必ずお聞かせするのが、アルゲリッチ・プレトニョフが演奏した、プロコフィエフの組曲シンデレラの9曲目のフィナーレです。アルゲリッチの音楽祭に招待されたプレトニョフが、編曲した二台のピアノのための連弾曲ですね。パグ太郎さんがおいでになったときは、音の進歩を聴いていただくために何時も掛けています。
パグ太郎さんは、ご自分のGerman PhysiksのSPの調整用にも使われていて、最低域のチェックには欠かせません。このフィナーレの部分は、十二時を回って魔法が溶けてすべての物が伽藍が崩れるように崩壊して行く様が見事に表現されています。二重奏をされる方の目標の一つですね。
何時も聴いていると、最後の怖い鐘の部分はどう弾いているのだろうと、疑問に思っていました。時計の鐘が11回まで鳴って12回目は魔法が解ける瞬間です。装置の限界を試されるような曲ともいえましょう。ピアノの最低限の27Hz付近の音がどんどん鳴ります。
家では、和室のユニコーンはバックロードホーン形式ですから、ホーンのカットオフと後ろの壁の延長で形成される周波数帯、40〜45Hz以下は出ていないはずなのですが、倍音成分がよく出ているので、音の差はよくわかります。
一方、大きな部屋のTW3の専用ウーファーは、30Hz以下から再現していますので、ピアノや大太鼓の帯域もカバーしています。パグ太郎さんのHER-130も30Hzまでは楽に出てきます。一体に私たちが、低音だと思っている帯域は、50〜60Hzです。低音が強調されたジャズの名録音も、このあたりがしっかりと出ているのでしょう。JBLだと38センチでも30Hzあたりは出ていません。CDの特徴を十分発揮するには、サブウーファーを使ってその帯域を足さなければ、満足感が得られないからです。
ホールに全体に漂うコントラバスの響きが、それが弱音であっても我々の身体に響いてきます。生の演奏を聴いたときの感銘はその帯域を再生できるかに掛かっているともいえましょう。私自身、ミューザで、三大オーケストラの競演を聴いたのが、今の装置を再構成した切っ掛けです。その装置で聴くと、和室では埋もれていた様々な音が明瞭に聞こえてきます。しかし、不思議な音です。最初は、ペダルを踏みっぱなしにして、最低音域を強打したときにペダルを戻している音かと思いました。
そこで、実際に演奏している動画はないかと探したのです。すると有りました。ピアノ連弾曲の中でも最難関ですから、いろいろなコンテストで弾かれているようです。
4分20秒ぐらいからその部分は始まります。最低限の付近を右側(第二奏者)が丁寧に弾いていきます。しかし、これは、何時も聴いているプレトニョフの演奏とは違うようです。
こちらは、5分10秒ぐらいから始まります。手のひら全体で最低域の鍵盤を叩いているようです。和音では無く、低弦が全体が鳴っているような・・
探していくと、外国の演奏も有りました。これを見ると!
何と、立ち上がって、鍵盤では無くピアノの弦そのものを叩いているではありませんか。これは、背が高い人で無くては出来ませんね。驚きました。響きとしては、プレトニョフの演奏に近いと思いました。直に弦を叩いているから、鍵盤だけでは無い他の響きがするのだと思いました。さらに、
こちらでは、右側は女性ですが、背が高く鍵盤越しに手が届いています。楽々と叩いていますが、さきほどの男性より迫力は薄れるようです。これらを発見した私は、揚々とパグ太郎さんにご注進したのです。ところが彼からの返事には、何とこのような演奏スタイルが送られてきました。
全曲演奏なので、17分頃です。やにわに立ち上がった右側の奏者が、ピアノの上に置いてあったマレットで叩き始めたではありませんか!これは強烈です。音の大きさが、まったく違います。
わからなくなってきました。おそらくどれもが正解なのでしょうが、プレトニョフはどのようにスコアに書いているのでしょうか?楽譜は1万円近くしますので、おいそれとは買えません。楽譜屋さんで、そこだけ見るのも、フェアで無いし・・・
昨日は、この部分だけで、随分と盛り上がりました。みなさんはどう思われますか?
追加分
後から探すとまだありました。主流は、やはり手の平で叩くようですね。それも、右手と左手があります。
by TANNOY-GRF
| 2018-12-12 07:48
| 好きなレコード
|
Comments(10)
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パグ太郎
at 2018-12-12 12:47
x
GRFさん
徹底した調査有り難う御座います。根がいい加減なもので「なんだがドロドロいっていて、ピアノの弦の響きではあるが、尋常じゃない」くらいの感想だったのですが、色々な流儀があることが良くわかりました。これが奏者に任されたものなのかとか、楽譜はどうなっているのか、実際に編曲者プレトニョフはどう弾いたのか、謎は深まるばかりです。
徹底した調査有り難う御座います。根がいい加減なもので「なんだがドロドロいっていて、ピアノの弦の響きではあるが、尋常じゃない」くらいの感想だったのですが、色々な流儀があることが良くわかりました。これが奏者に任されたものなのかとか、楽譜はどうなっているのか、実際に編曲者プレトニョフはどう弾いたのか、謎は深まるばかりです。
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TANNOY-GRF at 2018-12-12 13:00
パグ太郎さん
まだ見つけました。これは本当に有名な曲になったのですね。右側の奏者が男の人の方が、やはり迫力が出ます。
まだ見つけました。これは本当に有名な曲になったのですね。右側の奏者が男の人の方が、やはり迫力が出ます。
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X1
at 2018-12-12 13:21
x
いろいろと 楽しいですね。 まさか 手もしくは ハンマーで 叩いているとは 思いませんでした。
でも あの 一瞬つまったような音 そして それが開放されて 低弦の 質感が 出てくるのは どんな奏法なんでしょうね。 あの変は 再生装置の 真価が 問われるかもですね。
でも あの 一瞬つまったような音 そして それが開放されて 低弦の 質感が 出てくるのは どんな奏法なんでしょうね。 あの変は 再生装置の 真価が 問われるかもですね。
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TANNOY-GRF at 2018-12-12 14:12
X1さん ありがとうございます。いずれにしてもビデオならすぐ解る事が、音だけ聴いていると判断が難しいようです。しかし、ほとんどの装置が、ピアノや大太鼓の再提起を再現できないというのも問題かもしれません。
X1さんのお宅のスピーカーは問題ないでしょうが、CDで満足いく再生を試みるのなら、その最低域をしっかりと再生できる、DACとパワーアンプ、そして40Hz以下を再現できるスピーカーが必要ですね。
X1さんのお宅のスピーカーは問題ないでしょうが、CDで満足いく再生を試みるのなら、その最低域をしっかりと再生できる、DACとパワーアンプ、そして40Hz以下を再現できるスピーカーが必要ですね。
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K&K
at 2018-12-12 21:46
x
これは面白いですね。
楽譜はどうなっているのか興味深いです。
ウチはシステムの隣にピアノがあるのでカミさんに協力してもらってあの低音がどのキーをたたいているのか試してみました。
これは弦を手でたたいている演奏があると知る前のことなのですが…。
最低音のラと隣の黒鍵シのフラットの2つのキーを同時にたたくとプレトニョフの演奏に近い音になります。
ウチはサブウーファを使っていて20Hzまではほぼフラットに出るのでこの判断はたぶん間違っていないと思います。
ただ、現物ピアノの方がCDの音よりもよりクリヤーに聴こえます。CDの録音現場では床の振動やペダルの踏込音が重畳してもっと濁りのある音になるのかとその時は思いました。
ウチはピアノの下にピアノウェルフロートを使っているので床鳴りは少ないのかと…。
でもこれはキーをたたいて出た音と手で上記の2つの弦を叩いたときの音の差なのかもしれませんね。
楽譜はどうなっているのか興味深いです。
ウチはシステムの隣にピアノがあるのでカミさんに協力してもらってあの低音がどのキーをたたいているのか試してみました。
これは弦を手でたたいている演奏があると知る前のことなのですが…。
最低音のラと隣の黒鍵シのフラットの2つのキーを同時にたたくとプレトニョフの演奏に近い音になります。
ウチはサブウーファを使っていて20Hzまではほぼフラットに出るのでこの判断はたぶん間違っていないと思います。
ただ、現物ピアノの方がCDの音よりもよりクリヤーに聴こえます。CDの録音現場では床の振動やペダルの踏込音が重畳してもっと濁りのある音になるのかとその時は思いました。
ウチはピアノの下にピアノウェルフロートを使っているので床鳴りは少ないのかと…。
でもこれはキーをたたいて出た音と手で上記の2つの弦を叩いたときの音の差なのかもしれませんね。
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椀方
at 2018-12-12 22:39
x
CDだけをきいていると、どうやったらあのおどろおどろしい音が出るのか考えていました。
映像だと少しはヒントになりますね。
ジョン・ケージのように鍵盤を弾かない演奏法ではと検討付けてましたが、ハンマーを使う奏者までいるとは驚きですね。
映像だと少しはヒントになりますね。
ジョン・ケージのように鍵盤を弾かない演奏法ではと検討付けてましたが、ハンマーを使う奏者までいるとは驚きですね。
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TANNOY-GRF at 2018-12-12 23:00
K&Kさん 面白いでしょう!私もこれを見たときは、驚くと同時に納得しました。あの部分のおとはピアノより大太鼓の効果を狙っているように聞こえていたからです。手のひらで叩くと、4〜5本の弦をいっぺんに叩きますし、マレットでもほとんど同じように、不協和音と大太鼓の雰囲気を出すためだと思います。
最初の頃の鍵盤を二つぐらい叩いているときと、ピアノ線を叩いているときでは、響きが違いますね。また、弦を叩くことで、複雑な音が発生すると思います。この編曲はその効果を狙っているのでしょう。
次回訪問するときに、一切のピアノの音も是非、お聴かせ下さい。
最初の頃の鍵盤を二つぐらい叩いているときと、ピアノ線を叩いているときでは、響きが違いますね。また、弦を叩くことで、複雑な音が発生すると思います。この編曲はその効果を狙っているのでしょう。
次回訪問するときに、一切のピアノの音も是非、お聴かせ下さい。
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TANNOY-GRF at 2018-12-12 23:05
椀方さん マレットを使った音はさすがに大きいですね。しかし、プレトニョフの演奏はやはり手のひらだと思いますね。しかし、今回九種類の演奏を聴きましたが、アルゲリッチのような迫力では、なかなか弾けないのですね。
この圧縮画像も、96/24でDACと繋いで見ると、なかなかどうして凄い音でなります。今回DACを外に出して良かったと感じました。
この圧縮画像も、96/24でDACと繋いで見ると、なかなかどうして凄い音でなります。今回DACを外に出して良かったと感じました。
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K&K
at 2018-12-13 00:32
x
GRFさん、
やはり楽譜は手で弦をたたくということになっているのではないでしょうか?
ホールによってはピアノの弦に汗ばんだ手で触れることによって弦が錆びることを理由に演奏者が弦に触れることを禁止していると聞いたことがあります。
最初の2つの例は国内のようですが、イメージ的には国内のホールの方がそういうことに関しては厳しそうです。
禁止されて仕方なく鍵盤をたたいたのかも…
やはり楽譜は手で弦をたたくということになっているのではないでしょうか?
ホールによってはピアノの弦に汗ばんだ手で触れることによって弦が錆びることを理由に演奏者が弦に触れることを禁止していると聞いたことがあります。
最初の2つの例は国内のようですが、イメージ的には国内のホールの方がそういうことに関しては厳しそうです。
禁止されて仕方なく鍵盤をたたいたのかも…
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TANNOY-GRF at 2018-12-13 07:36
K&Kさん
そうですね!私もそのように感じました。またある程度背が高くないとペダルを踏みながら、げんまで手が届かない場合もあるので、その場合のマレットかもしれません。マレットの方が音が強く叩くことが出来ますね。
「次回訪問するときに、「一切」のピアノの音も是非、お聴かせ下さい。」
前のコメントでの「一切」は「実際」の間違いです。寒くて指の動きがぎこちなくなってきました(汗)
そうですね!私もそのように感じました。またある程度背が高くないとペダルを踏みながら、げんまで手が届かない場合もあるので、その場合のマレットかもしれません。マレットの方が音が強く叩くことが出来ますね。
「次回訪問するときに、「一切」のピアノの音も是非、お聴かせ下さい。」
前のコメントでの「一切」は「実際」の間違いです。寒くて指の動きがぎこちなくなってきました(汗)