2019年 11月 13日
音場の再生について 2 |
はじめてSD05で鳴らした時のGRFの音には驚きました。自分の部屋にオーケストラが現れたからです。二階席の一番前からオーケストラを見下ろすように聴いているように、目の前にオーケストラが出現したたのです。なにより驚いたのは、オーディオ装置では、難しいとされたヴィオラやチェロの音が浮かび上がってきたことです。内声部の音や、センター部分の弦楽器、木管楽器がはっきりと聞こえます。音が立体的になり、弦楽器群が確かに複数の楽器の「群」として厚みを持って聞こえます。
その厚みと、中声部の充実がオーケストラ再生に、実在感を与えていたのです。そのような音は今まで聴いたことがありませんでした。そして、弦楽器の弓を動かす、擦過音が細かく再生され、音にリアリティが表れます。弦楽器のユニゾンがこんなに綺麗だったとは、本当に驚きました。そして、オーケストラの奥から響いてくるティンパニーや大太鼓の深い響きが、実在感を増したのです。
どうして、急にこのような音になったのか、私なりに考えてみました。先のNFBがないので、音に特有の音が乗らず、CDやレコード本来の音が、そのまま再生されてきたのです。すると、GRFから発生した逆起電力が、アンプに戻らず、信号が一方通行で流れて、本来持っている音がそのまま素直に出たのですね。石田さんが提唱されていた、FOB =Feeling of Beingの通り素直な音が出たおかげでしょう。
しかし、周波数特性が素直になっただけで、このような音場が出現するとは思えません。石田さんにもいろいろ尋ねて、出てきた答えが、ステレオでは一番大事なクロストークの特性が、全く違うと言うことでした。昔から、本格的にステレオを再生するには、電源的に左右が繋がってしまう、ステレオアンプでは、筐体内部でのクロストークが増えて、お互いの音を打ち消されるので、正確なステレオ再生が難しいと言われてきました。その為、私自身も、パワーアンプはモノラルアンプを二台使っていました。マッキントッシュの2500もサウンドパーツの6550ppもモノラル仕様でした。ステレオアンプですと、雄大な音の広がりが欠けるからです。
最初にSD05を繋いだとき、左右のセパレーションが悪く、やはりステレオアンプでは、雄大なスケールが出ないと思っていました。その旨を石田さんに伝えると、そうでは無い、左右のクロストークがほとんど無いから、今まで打ち消されていたセンター部分の音が聞こえて、一見セパレーションが悪く聞こえているだと言われました。
ん?
セパレーションがよく聴けるステレオの音の方が、クロストークが発生している?
SD05の中では、左右の信号は、出力用パワートランジスターの直前まで、デジタル信号なので、アンプ内で通常起こっている左右の音が混同が無い、との説明でした。だから、中央部分の音が消されないので、真ん中からも、センター寄りの右も左も音が聞こえてくるのだと。オープンリールテープの様に、しっかりと左右のセパレーションが確保されているから、中央部分からも音が薄くならず、しっかりと定位して聞こえてくるのだと言われました。
しばらく、聞き込んで行くと、その意味がだんだん解ってもくると。スタジオでのモノラル録音を左右に振り分けたタイプの、ステレオでは、その効果が解らないとも、昔の自然な2チャンネルで録音されたコンサートホール音が入っている、初期の録音(1967年頃まで)であれば、充実したオーケストラ音が聞こえるはずだと言われました。
何よりも大事なのは、Jazzやポピュラーとは違って、コンサートホールの音は、そのホール特有の音が、音楽を構成しているという当たり前の事実だったのです。よく、昔からのオーディオマニアの人達が、言われるツイーター自身から音がきこえるのではなく、SP位置が消えて、その背後から音楽だけが鳴るという状況が本当だと気がついたのです。
幸いだったのは、GRFの特異なキャビネット構造にもありました。部屋のコーナーに置いて、45度内向きに置かれ、両方のSPで前方に音軸を揃えて聞くという方式が発見を容易にしたのです。左右の内向き角度や、壁から距離を左右対称の部屋で追求していくと、ヴォーカルのこえが中央から聞こえてきます。CDで、左右バランスをしっかり合わせて、レコードに調整すると、たとえば森進一や越路吹雪の声が、中央に浮かび上がります。その時、アームのインサイドフォースキャンセラーを0.1gも動かすと、その声の位置が10センチほど動くのです。
その実験は、訪れていただける方々に何度もお聴かせして、針の形状やアームセッティングの微妙さを聞いていただいています。その微妙な音の変化も、モノラルアンプにして、左右を分けないとその差が解りませんでした。
私は、昔からPHILIPSレーベルのアムステルダム・コンセルヘボウのレコードが好きでした。ハイティンクが余り人気の無い80年代の頃から、今思うと信じられないぐらいの安価で、買い求めていました。そのレコードが、コンセルトヘボウの会場で鳴っているように、私の部屋でなり始めたのです。
by TANNOY-GRF
| 2019-11-13 09:18
| オーディオ雑感
|
Comments(0)