2019年 12月 27日
H氏別邸訪問記 のびーさんのご感想 「音の実験室での体験」 |
今回のH氏別邸訪問は、2019年最後の日本訪問のハイライトでした。GRFさんのアレンジで関東近郊にあるオーディオ・ファイル別邸を伺う機会に恵まれました。そこは多くの機器、複数のシステムがセットされている50畳程度の大空間。今回聴かせて頂いたのは、詳細は省略しますが、ジャーマンフィジックス・トロバドール80を4基、ウーファー・ユニット4基で構成されたある種の変則ステレオ・システムです。
この部屋には確かな既視感があります。メインの装置が設置されている部分は、何度もおじゃましているGRF邸と酷似しています。というか、全く同一のようです。ただし、後方には大型の18インチ・ウーファーをタンデムに積んだ大きなウーファーの上にもトロバドール80のセットがあります。ただし、この部屋は後方部分が遥かに大きく前方の壁がランダムに石を埋め込んだ構造で、その辺りが音に影響しそうです。
これまで何度か優れたオーディオ再生で、オーケストラの楽器の配置が見える、ホール空間を感じるという経験を重ねてきましたが、ここはもう一段次元が異なりました。
強固な構造と配慮された吸音処理で、部屋そのもののダイナミック・レンジが格段に大きい環境で、綿密にチューニングされた機器が紡ぐ音楽再生は、ホールの床の響きや教会の壁の質感も感じられます。音場の広さ、深さ、高低まで見通せる空間表現は、無指向性ユニットならではですが、2セットを十分な間隔で配置したことでホール空間の再現性が一段と上がっています。
ブーレーズ指揮クリーブランド管弦楽団の「マーラー7番」、ペーター・シュライアー=リヒテルの「冬の旅」、定番の「カンターテ・ドミノ」、ハイティンク指揮コンセルトヘボウ管弦楽団の「ショスタコーヴィチ15番」等、どれも素晴らしい演奏、再現性です。
これまでの音と何が違うのか?この音を聴いて初めて奏者の全身が見えた気がしました。ステージの床に足を下ろして楽器を抱きかかえる様子が感じられます。この再生と比較すると、これまでの音は楽器だけが空中に浮いているようです。
ジャズではどう鳴るか?ということで、サラ・ヴォーンの晩年の名盤Crazy and Mixed Upiをリクエストしました。一時随分と聴き込んだ音源です。スタジオ録音ですが、音像、音場表現ともに素晴らしいプレイバックです。
しかし、一部のスタジオ録音ではバランスを失した音となります。低域が明らかに過多で大きく膨らんでしまいます。多分、録音時のモニター・スピーカーが相当低域不足だったのではと推測します。多くのオーディオ・ファイルのお宅で聴かせて頂くバランスを基準にすれば(私の感覚ではクラシック再生には低域不足ですが)この装置が低域過多と判断されるかもしれません。
また800D3のような現代的モニターと比較すると低域再生のキレは乏しいとも言えます。アコースティックな楽器では、打ち込み音源のような人工的なソリッドな低音は存在しないはずなので、クラシックの楽曲を聴いている分には問題は無いと思いますが、ポピュラー系の音楽を多く聴く方には、低域表現に不満が残るかもしれません。低域の印象ばかりですが、音楽表現において低域は本当に重要で、部屋の容積・構造は殆どが理想の低域再生のためのものだと考えているからです。
あと、ステレオ再生なのにスピーカーを2組使用することは、原理主義者には受け入れ難いかもしれません。私も少なからず抵抗がありましたが、音楽空間の再現という点に関しては明らかにメリットがあると何度も認識しました。
自室(17畳程度で3分の1の大きさ)とは部屋の構造も大きさも全く異なるにもかかわらず、困ったことにこの音を是非迎え入れたいという気持ちを一段と強くしました。さて、どうしましょうか?
のびーさんは11月の来日時には一緒に新潟旅行から、German Physiks友の会へのご参加のあと、12月中旬に今一度、来日されました。Germanの会でご説明したHさんの別邸の装置も音が落ち着いてきましたので、その時にご参加いただいた、のびーさん、夜香さん、Harubaruさんにどのような音が鳴っているのか聴いていただきました。
by TANNOY-GRF
| 2019-12-27 21:54
| H氏の隠れ家
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