2020年 09月 20日
今日はアレキサンドライト邸に |
最近は、「行ったり来たり」の「行ったり」の記事を書くことがほとんど無くなりました。この半年、Hさん邸以外には、i さん邸にしかお邪魔していません。電話では皆さんと交流させていただいていますが、実際にお伺いすることがほとんど無くなってしまったのです。そんな中、Germanの会の御常連のアレキサンドライト邸が大変な事になっているとの、Aionさんや夜香さんの情報を聴き、今回も横浜のMさんとご一緒にお伺いすることになりました。
横浜のMさんは、現在のパラゴンのある部屋を大幅に模様替えをして大型のスクリーンを導入した映画館化を図っています。そのメインスピーカーにXRT-26より大型の、XR-290を導入されました。中央のパラゴンを移動させてそこに大型スクリーンを埋め込みます。現在、特注のスクリーンとプロジェクターの到着待ちで、10月中には完成予定です。

そこに入れられたXR-290も大変大きなSPですが、持ち運ぶときは分割できるそうです。今日、Mさんと一緒に伯爵邸にお邪魔するのは、マーク・レヴィンソンがチェロ時代に開発したストラディバリウス・グランドマスターを聴かせていただくためです。チェロのグランドマスターはユニット数は、XR-290より少ないのですが、キャビネットは一体で230キロもあるそうです。高さは、2,200mmでXR-290と同じです。とても普通の部屋では入りません。その音を聞けるのは大変楽しみで残暑厳しい中をバスを乗り継いできたのです(笑)。
グランドマスターは四半世紀も前、新潟のオーディオ店のオーナーのご自宅で聞いたことがあります。その時は圧倒的な重低音で本当に驚きました。EMTの927とDecolaもその時はじめて聞きました。その時の驚きが広がり、927は友人達に拡まりましたし、Decolaはその時の驚きが切っ掛けで、後年手に入れたのは周知の通りです。その時、聴いたオールチェロのシステムにも驚きました。そのオーナーのレヴィンソンとの交友が実を結んだのでしょう。その時聴いたのが、オールチェロのアンプと、今日のストラッド・グランドマスターだったのです。

挨拶もそこそこに、何時もの部屋とは違った一階の部屋のとおされました。八畳と十畳が繋がった大きな部屋の向こうにグランドマスターがその偉容を見せています。スイスのアルプスで眼前にマッターホルンを見たときのような感動です。よく見ると2メートル以上もあるスピーカーが左右に開いたように置かれています。今までに感じたことの無い、アルプスの山がこちらに向かって迫ってくるような感覚を覚えたのです。

スピーカーの専用台をよく見ると、後ろから前に、外側から内側へと傾斜しているのです。この台の上で正面を向けるとスピーカー自体が内側に、また前側に、あたかもピサの斜塔のように傾斜して立っているのです。聴いている聴取位置に向かってスピーカーが倒れ込んでくるような怖さも感じます。アレキサンドライトさんは、ほぼ二ヶ月間掛かって追い込んだ結果、現在では下の板目を見ると解るのですが、少しだけスピーカーを外側に向けて設置されていました。
NYでは問題ないでしょうが、地震の多い日本では後ろ側で転倒防止の柔らかなロープでも張るか、これだけ高いスピーカーは何らかの地震対策を取らないと怖いかもしれません。その特異な配置方法を理解するまでに数分間かかりました。しかし、見れば見るほどの偉容です。Mさんが今回の映画館用に導入されたマッキントッシュのXR290も超弩級のスピーカーですが、大きさや重量はグランドマスターと変わりませんが、決定的に違うのは価格です。290は450万円でしたが、チェロのグランドマスターは1400万もしたのです。理由は使っているユニットです。
マッキンは専用のユニットを低音4本、中音12本、高音24本!も使用していますが、自社開発の専用ユニットです。グランドマスターは、Dynaudio製の "Consequence"に使用されている最高級ユニットを、低音2本、中音と高音に8本づつも使っています。コンシーケンスをダブルスタックしたような贅沢さです。その思いっきりぶりに感心しました。

それを鳴らす機器類も、もちろんオールチェロです。待ちきれませんね!説明をお聞きして、早速音出しをして貰いました。
一聴してすぐ解りました。これは美音ですね〜。
Mさんも聞いてすぐに言われました。これはGRFさん好みの音だと! 控えめで、でも美しい音がひたひたと浸透してきます。何よりの驚きは音がユニットからは聞こえてこない事です。上部に一直線で、8本づつの中、高音ユニットが並んでいますが、そこから音が全くしません。音が聞こえるのは下から二本目までのユニットです。ですからSPは、半分ぐらいの大きさのスピーカーに感じるのです。
西武池袋線の最寄りの駅で、横浜のMさんと待ち合わせです。Mさんは、ご自宅そばの元町中華街駅から、一本なので所要時間は杉並から向かう私とほとんど時間がかかりません。昨日は、真夏日がぶり返した日で、直通電車一本で来られるMさんは、バスを乗り継いで西武池袋線にたどり着いた私と二時丁度に待ち合わせ、出向かいに来ていたアレキサンドライトさんの車で、ご自宅に向かいました。前回も横浜のMさんとご一緒に真夏に来たことを思い出しました。




ここにあるのは、グランドマスターという最上級の機種で、その下にグランドがつかないマスターと呼ばれる機種があるそうです。それは8本ずつのユニットが半分の4本ずつだそうですが、想像するそのスピーカーがなっているのかと思うような上にユニットがない様な音がします。しかし、そのユニットの有る無しの違いは、音の鳴る前の気配の再生能力なのでは無いでしょうか?
このぐらいの大きな背の高い装置になると、音が出る前から威圧感が感じられるのですが、調整があってくると、音は下からなっているように聞こえます。家の和室でもおなじように床の下から聞こえてきます。ホーン型のツイーターと違い、ドーム型の歪みの少ないユニットは、音がスピーカー自身からは聞こえてこず、音場の空間が出現するのです。8本もストレートに並んだ配列は、床と天井の反射を押さえ、ステレオで大事な左右の広がりと奥行きを良く再現します。アレキサンドライトさんが、二ヶ月以上掛けて調整をされてきた装置は、第1音から他のSPでは出せない世界を出現しているのです。
音質の傾向としては、DGの録音方向では無く、EMIやPHILIPSの音を良く再生すると言えばわかっていただけるでしょうか?このような音になる装置は稀です。私の経験でも、よそのお宅できいたのは数えるほどしかありませんし、その中でも今日のこの音が一番驚きました。もっと言えば、クラシックの演奏会場で響く美しい音を再現している装置はほとんど無いと言うことです。嬉しくなりました。家で実験している演奏会場の音の再現は別な方向でもアプローチしても同じ結果になることを証明してくれたからでもあります。
富士山には、登山ルートは何本もありますが、たどり着く頂上は一つ、最後は同じ風景が見えてくるのです。雲海を突き抜けて、他の山々を遙か下に見下ろす霊山の趣があるのです。ザビーネマイヤーのクラリネットの暗いでも透明な音、クリュイタンスのラベルの時代を全く感じない音、何時も聴いているヤンソンスのマーラーの六番の大スケールとコンセルトヘボウの響き。家とHさん邸以外にはじめて聴きました。
イザベル・ファウストのスリーピングビューティがまだ目覚めきれないときのまだ堅い音までしっかりと再現します。また、内田光子のピアノには驚きました。DGでは無くPHILIPSの録音だとすぐわかります。彼女自身の所有するスタインウェイの芯が硬質だけど、響きが柔らかい音ははっきりとわかります。
去年、横浜のGermanの会にお呼びしてライブを聴いたグレース・マーヤのバックのギターの音と彼女の声。そして、定番のチックコリアの硬質な音は、スケールの大きなクラシックを同じ装置で聴いているとは思えない程です。録音、レーベルの違いをはっきりと描き分ける能力は、本当に高いと思いました。真のハイファイ装置ですね。
一般のチェロに対するイメージは硬質な透明感でもありますが、このECMの録音はそのイメージを裏切りません。しかし同じ装置が、透明感は高いが幾分硬質すぎる響きになりがちなEMIの90年代の録音や、時として時代を感じる帯域の狭い音になりがちなクリュイタンスの名盤をここまで再現する装置にお目に掛かったのははじめてです。アレキサンドライトさんが、二ヶ月以上掛けて調整をされてきた装置は、他のSPでは出せない世界を見事に出現していました。
分析的な聴き方を必要としないほど、楽しい音楽が鳴っているのは、歌謡曲を聴かせていただいてわかりました。歌謡曲特有の、平面を埋めるほどの音の充実感がそれを証明しています。お見事です。
一緒に来られたMさんも大満足のお顔をしています。そして、私好みの音だと看破されました。そうですね、今まで自宅で構築してきた風景が、違った登山路、違ったアプローチをしていても、3000メートルを超えた景色は同じように聞こえるという当たり前の事に感動している自分がいました。
後半は、何時もの部屋でJBLによる本格的なサラウンドを聴かせていただきました。そちらも素晴らしかったのですが、聴かせていただ行ったムジークフェラインザールでのジョン・ウイリアムスとウィーンフィルの演奏が、別テークの音と映像を合わせてあるのが、すぐわかるほどの音の解像度だと言えばお解りになるでしょうか?
終わってから、駅の南口にあるアレキサンドライトさん行きつけのフレンチレストランで、地元産の野菜をあしらった美味しいコーズ料理を食べながら、いろいろとグランドマスターの思い出と感動を話していました。こういうレストランでの食事は本当に久しぶりです。Mさんとの感想戦は、石神井公園駅で彼が特急に乗り換えるまで続きました。
帰りも、中村橋から阿佐ヶ谷駅のバスに乗りました。考えてみたら、二車線のバス道路では追い越される車もないのですから、タクシーとほぼ同じ時間でバスも飛ばしています。阿佐ヶ谷駅で渋谷駅のバスに乗り換え、最寄りのバス停で降りて、すっかり秋めいた心地よい空気の中を星を見ながら帰ってきたときもまだ、アレキサンドライトさん邸の素晴らしい音が鳴っていました。
by TANNOY-GRF
| 2020-09-20 15:58
| 行ったり
|
Comments(2)

GRF様
大変な力作をブログに掲載いただきありがとうございました。高い評価をいただきました。
お伝えしたとおり、そもそもの入手した経過は偶然としか言いようのないものでした。山中敬三さんがお使いで、ステレオサウンドにアンプ選びをお書きになったことくらいしか情報もなく、調べても詳しい記載がありませんでした。
手持ちにあったチェロのシステムとゴールドムンドのシステムを充て、そのサウンドを確かめていきました。メインのJBLは聴き疲れするようなメリハリをたっぷり載せたサウンドにしていますが、ストラドグランドマスターはその手法が通じないというのがしばらくしてわかりました。
女王様なのです(笑)彼女の気に入るようにアンプやプレーヤーをセレクトしました。そしてそのイメージをトレースしていったのです。結局チェロのシスコンにEMMのプレーヤーとなってしまいましたが、山中さんはそれを「抜き差しならない世界」と記述され、それに嵌まり込まないようにアンプを考えた、としています。よくわかります。私は嵌ってしまいました(笑)
しかし、微調整を繰り返して最後の1ピースがはまったときは本当に感動しました。それが内田光子のピアノだったのです。
色々なお話を聞いて次回のGRF邸訪問が楽しみになりました。
大変な力作をブログに掲載いただきありがとうございました。高い評価をいただきました。
お伝えしたとおり、そもそもの入手した経過は偶然としか言いようのないものでした。山中敬三さんがお使いで、ステレオサウンドにアンプ選びをお書きになったことくらいしか情報もなく、調べても詳しい記載がありませんでした。
手持ちにあったチェロのシステムとゴールドムンドのシステムを充て、そのサウンドを確かめていきました。メインのJBLは聴き疲れするようなメリハリをたっぷり載せたサウンドにしていますが、ストラドグランドマスターはその手法が通じないというのがしばらくしてわかりました。
女王様なのです(笑)彼女の気に入るようにアンプやプレーヤーをセレクトしました。そしてそのイメージをトレースしていったのです。結局チェロのシスコンにEMMのプレーヤーとなってしまいましたが、山中さんはそれを「抜き差しならない世界」と記述され、それに嵌まり込まないようにアンプを考えた、としています。よくわかります。私は嵌ってしまいました(笑)
しかし、微調整を繰り返して最後の1ピースがはまったときは本当に感動しました。それが内田光子のピアノだったのです。
色々なお話を聞いて次回のGRF邸訪問が楽しみになりました。
アレキサンドライトさん 先日はありがとうございました。山中さんが言われたように、私のその「抜き差しならない世界」を垣間見せていただきました。次の日の朝、横浜のMさんからもご連絡いただき、二階のJBLとは全く違う世界に驚かれたと言われました。
そこで気がつきました。お名前の「アレキサンドライト」とは昼と夜に違う色で輝く極めて特殊な宝石だと!昼と夜の別なお顔と2つのシステム、それぞれ別な色で輝く極めてめずらしい宝石です。今回はその二面性を充分楽しましていただきました。
ぜひ、拙宅にもお越しください。家もおなじDDDのユニットを別なアプローチで違う色にならしています。お楽しみに!
そこで気がつきました。お名前の「アレキサンドライト」とは昼と夜に違う色で輝く極めて特殊な宝石だと!昼と夜の別なお顔と2つのシステム、それぞれ別な色で輝く極めてめずらしい宝石です。今回はその二面性を充分楽しましていただきました。
ぜひ、拙宅にもお越しください。家もおなじDDDのユニットを別なアプローチで違う色にならしています。お楽しみに!