2020年 10月 20日
Hさん別邸訪問記 新たな水平線が |
Hさんの別邸リスリングルームへお伺いするのは今度で3度目です。先日オーディオとは別の用件でHさんにお電話した時、ちょうどプリもパワーも新しく入れ替えた直後で、「音の変わりようが凄まじい」と興奮気味に仰っていました。そのすぐ後でGRFさんにお電話をしたところ、「Hさんの別邸では持っていった私が驚くほど凄い音になった。うちの音を超えるレベル。兎に角凄いアンプです」との手短なご説明の後アンプの写真を何点か送って下さいました。お二人の異口同音の驚きの言葉をお聞きし、ましてやGRFさんのお宅を超える音とお聞きすると「一刻も早く聴かせて頂きたい」とHさんにお願いし、この度の訪問が実現した次第です。
着いた早々にお聴かせ頂いたのはティーレマン指揮ウイーンフィルのニューイヤーズコンサートですが、これはHさんが実際にムジークフェラインで聴かれていますから、いわば先生のベンチマークとも言えるソースです。1曲目のシェーンフェルト行進曲、3曲目の妖精の踊り、14曲目のエジプト行進曲、そして最後のラデツキー行進曲を聴かせて頂きました。ティーレマンの演奏スタイルは大袈裟にいえば私が聴いた2010年のジョルジュ・プレートルの対極にある演奏スタイルの様に感じますが、両方とも好きな演奏で、とりわけ「妖精の踊り」は本当に感動しました。
前半のピアニシモの部分ではティーレマンの緻密な、それでいてソフトに広がりながらも包み込むような音作りが見事に再現されていました。私はムジークフェラインでティーレマンを聴いたことがなく、サントリーホール(しかもオーケストラはドレスデンですが)の経験しか無いのですが、2015年2月23日の公演では奇跡のような名演奏を聴きました。(曲目はリストのオルフェウスで、ティーレマンはベルリンフィルでもこの演奏をしていますが、全く違う曲に聞こえます)その演奏を聴いた方が「オルフェウスという、ごく普通の曲がティーレマンによって稀有な名曲に化けた」とインターネットに書き込んでいましたが全く同感で、それ以来ティーレマンの名前を聞くとその演奏が真っ先に浮かんできます。
その様な事から、妖精の踊りを聴いた時にウィーンフィルでのティーレマンの名演奏を想像し、それが良く再現されていると感じたのです。そのほか、クラウディオ・アバド-ベルリンフィルのマーラーの交響曲第3番、小澤征爾-トロント交響楽団の武満徹ノーヴェンバー・ステップス、そしてカンターテドミノからは定番の数曲を聴かせて頂きました。
今回の変化で最大の驚きは、極限まで静かさを感じる聴感上のS/N比の良さ、何処までも見渡せる空間の広がり、有り体に言えば物凄く解像度が良く、それ故に全ての音が自然に聴こえるし、どの様な小さい音も楽器の実在感を強く感じさせることで、結果としてピアニシモの時の描写の改善が、私には強く感じられました。
そもそも、こちらのシステムは出発点の段階からGRFさんのノウハウの全てが投入されている音ですから、私にとりましては、クラッシック音楽をコンサートホールで聴くような音の描写ができるオーディオシステムの頂点と認識しており、更なる改善の余地など考えられないシステムでした。今回の改善の原因は一重にアンプの性能に尽きるとは思いますが、もとより文才の乏しい私にはこの驚きの全てを表現する事は不可能と言わざるを得ません。
S
是枝アンプの感想
構想をお聞きしてから約1年、是枝さん製作のプリとメインが到着しました。GRFさんのお陰ですね。ありがとうございました。
当初、置く場所がなかったため是枝アンプを左に置きました。その時は、音像がやや左にシフトしているように思えました。整理して真ん中に移動させました。それで、音像が中心に安定しました。
まずは、ポールデズモンドのライブCD、最初に、バックグラウンドに聞こえるワインの瓶を片付ける音が聞こえて来るけれども、今までは、瓶であることは確認できていましたが、銘柄が見えるほどにシャープには、聞こえませんでした。私にとっての一つのチェックポイントです。曲が進むにつれて、今までは、聞こえていなかった、バックグラウンドの会話が邪魔なくらい聞こえてきます。私も、このポールデズモンドサウンドを出したくて、サックスを習い始めましたが、なかなか、上達しません。しかし、この乾いた、カルフォルニアサウンドは、たまりません。
次に聞いたのは、私のお気に入りのMaurizio Polini のベートーヴェンビアのソナタNo.32。彼のswingは、誰よりもジャズっぽいです。今までも、十分ビアノの存在感はありましたが、彼のダイナミックさと、swing する様は、今までよりも存在感があります。目の前で、弾いています。これ以上の何が必要なのでしょうか。わたしには、これ以上の音楽は、考えられません。
次は、武満徹のノヴェンバーステップス1967年12月トロントでの小沢征爾、トロント交響楽団。尺八の息遣い、音の消え行くさま、琵琶のバチが弦を叩く音、まるで音の幽玄な映像の中にVRで迷い込んだかのような錯覚を覚えさせます。音が消えゆく世界の美しさを感じさせてくれます。
まだまだ、これから、新たな発見をしていくものと楽しみにしております。また、これから、レコード、オープンテープなどを聞く楽しみが、沢山まっています。
一人でも多く、この音楽の世界を知っていだきたいものです。
H
Sさん
早速、あの音をお聞きに行かれたのですね!驚かれたでしょう。私もコーディネートしてても、ビックリですから、Sさんの驚きも良く理解できます。先月のKT-150にも驚きましたが、今回はラックマウントの電源回路にも本来の6336Bを入れて一段と余裕がある音になったところに、是枝さん特製のプリが入りました。その音を聞いて一番驚いたのは私かもしれません。以前聞いていたプリと次元の違う音になっています。ピントとフォーカス、ダイナミクスがぴったりと合い、何時もの双眼鏡のたとえで言うと両方のピントが合い、左右の間隔も合い、立体像が中央に鮮やかに浮かび上がった状態が音で現れたからです。
是枝さんのプリは、左右独立型になっています。あたかも高精度な双眼鏡のピント調整と同じで、合わせる方も技術と経験を要求されます。左の音に、音場の球面体がピッタリと重なったとき、今までの二次元の像では無く、三次元でピントが合い、同時に元の音場の空間が出現します。
お二人ともその光景をご覧になってしまったのです。音の大きさの音量だけでは無く、球面体の音場を合わせるには、左右のボリュームの特性を揃えて、同じカーブで、同じ音色で音が増減しなければ鳴りません。その立ち上がり、立ち下がりのカーブで左右で異なると、音のダイナミクスと背景のS/N比が変わります。
私が驚いてのは、その精度と音色の統一感でした。Hさんのお宅を出ると、車を止めて是枝さんに連絡しました。何が一体、違うのかと!?
夜ご返事が来ました。
今回のLLAAは、ラックマウントのパワーアンプと組み合わせられるので、お送りする前に利得を微細にトリミングしました。18dBに正確に合わせています。左右は0.1dB差で計測器並です。内部のシールに最終値が記載しています。GRFさまのと全く同じなのですがここの抵抗値と種類だけことなっています。左右偏差の少なさを御指摘とは感服しました。β回路を構成する2本の抵抗はここ1年ほど使っているものです。あまり手持ちがありませんがひと月お預かりすればトリミングできます。
やはり、入念に調整されていました。納期が掛かったの理由もわかりました。「β回路を構成する2本の抵抗は」はこの一年ですから、以前と違っているようです。これは、一度岡山に送り返さなければ行けませんね。部品上はわずかな違いですが、調整に掛けている手間や、どんどん深化していく回路は、わずかな違いが大きな差を生むようです。私も驚きました。
Hさん
どんどん音が進化して、装置の真価が出てきました。先日の第一声が出たときの驚きは、私が一番大きかったかもしれません。スケール、深度とも、家を越えていたからです。
私の中では、「青は藍より出でて藍より青し」と言う言葉が浮かんでいました・・・・
でも、新たな水平線も見えました。一緒にどんどん進んでいきましょう!
by TANNOY-GRF
| 2020-10-20 22:28
| H氏の隠れ家
|
Comments(2)
Commented
by
O
at 2020-10-21 13:28
x
とうとう揃いましたね^_^
是非聴かせて頂きたいものです。
素晴らしい音であることは間違い無いでしょう!
楽しみにしております。
是非聴かせて頂きたいものです。
素晴らしい音であることは間違い無いでしょう!
楽しみにしております。
Commented
by
GRF
at 2020-10-23 03:26
x
Oさん 思えば長い道のりでした。是枝さんのアンプが、4台も揃っている光景もあまり見られないでしょう。Hさんの熱い情熱がなせる技ですね。
昨日は、岡山で是枝さんと昔話をしました。ほぼ、同世代で同じ時代のラジオ技術誌をみて育ちましたので、話は尽きませんでした。懐かしいお名前も出てきて、遠い日の思い出も蘇ってきました。おかげで、翌日も昔の事を良く思い出しました。
聴かせていただいたのは、三種類のAXIOM80と戦前と戦後の新旧二種類のPX-25と定番のカンノトランスを積んだWE-300Bで、とてもシングルとは思えない柔らかく、深い低音を聞くことが出来ました。
昨日は、岡山で是枝さんと昔話をしました。ほぼ、同世代で同じ時代のラジオ技術誌をみて育ちましたので、話は尽きませんでした。懐かしいお名前も出てきて、遠い日の思い出も蘇ってきました。おかげで、翌日も昔の事を良く思い出しました。
聴かせていただいたのは、三種類のAXIOM80と戦前と戦後の新旧二種類のPX-25と定番のカンノトランスを積んだWE-300Bで、とてもシングルとは思えない柔らかく、深い低音を聞くことが出来ました。