2021年 03月 04日
光カートリッジの楽しみ |
私のプレーヤーは、もう二十年の回しっぱなしのAcoustic Signatureと言う糸ドライブに改造したターンテーブルに、SMEのシリーズ5を2本使っています。両方ともBenz MicroのLPシリーズです。Benzマイクロのカートリッジは、Rubyが初めて日本に紹介されたときから30年近く使っています。それまで使っていたOrtofon SPUシリーズからの大変換でした。理由は静けさと立体感、広帯域、低歪みです。そして、SMEシリーズ5との組み合わせでは、針圧とインサイドフォースキャンセラーが0.01gの単位で調整出来るのです。その差を出すのと出きないでは決定的な違いが生まれます。調整をしないのは、SPの位置の1ミリの差の大きさを理解していないのと同じだからです。
そのチューニングへのこだわりこそが、オーディオの醍醐味ですね。勿論人によってこだわる点が違うでしょうが、こだわりのポイントは間違えると、無限の隙間に落ちていきます。オーディオでは何をしても音が変わります。良い方向に行きたいからいろいろ改善を図るのです。何かを変えると良い音になると信じているので、積極的に音が良くなる方法を探します。そして、決断をして「改善」を行います。何を変えても音は変わりますが、良くなると信じて行うわけですから、変われば良くなったと思いたいし、思うのです。音は必ず変わりますが、それが良い方向になったかどうかは、五分五分なのですが。
情報を集め、他の人の意見を聞いて、でも実際には音は聴けず情報だけで決断するのです。何か変わったモノが出ると、すぐに飛びつき競って導入をはかります。そして、それにより変わった音は良い音だと思い込むのです。費用を払って行った自分の決断を、自分で疑うのはつらいことですから、どんどん、もとの道から離れていくのです。
何か変化を試みたら、必ず元との冷静な比較が必要です。道を間違えたら引き返すのが大切です。間違った方向から、また違う方向に舵を取ると、もとの道には戻れなくなります。AをBにしたら、一旦、BをAに戻して違いを再確認してみなければなりません。費用を払ったのに、また元に戻すのはつらい決断です。そして、元に戻したときすぐには結論出さず、2、3日は様子を見るのが大切です。ブラインドテストをすると、ほとんどの場合五分五分になると言われています。
何かをすれば必ず音は「変わり」ます。よく変わったのか、ただ違っただけなのか?やはり失敗を重ねないとなかなか判断をつきませんが、基本は、元に戻して再確認をすることが大事です。そして、変化のための変化ではなく、何年か費用を貯めてどこかで決断をして、一段も二段も上の機器を導入することです。何時もお伝えしてるトントンコツコツを繰り返し、現状の組み合わせで、お金を掛けずに一番よく鳴る音を探すことです。
機器類は、やはり掛ける費用に見合って音は変わります。何年経っても、何十年経っても良い物は良いのです。それらは長く使える物によく見られます。熱が発生して経年変化があるアンプ類や、部品が消耗する可動部分が多い機器は定期的なメンテナンスは必要ですが、スピーカーだとかプレーヤーなどは、数十年経っても使えている例が多いのです。家の機器でも10年物は当たり前で、CDプレーヤーも、レコードプレーヤーも皆、20年以上経っています。スピーカーは二十年、三十年は当たり前です。中には40年50年と使い込んできた機器が沢山あります。
現在も毎日使っているケーブルは、香港返還前に行って購入してきた物だし、毎日回し放しのターンテーブルも二十年選手です。ついこの間買ったばかりと思っていても、四、五年経っているのはざらです。そうすると10年に一度ぐらい、革命と思えるような製品に巡り会えます。私の場合は、Germanのユニットだったり、SD05だったり、30年前には工藤さんのCD34改だったりします。それらに共通しているのは、中途半端で妥協するのではなく、とことん詰めている製品です。
大量生産をして徹底したコストダウンがはかれるような商品の対極にいる高価だけど本当に価値のある物を選んでいくことが大事です。私の経験では、どの場合もそのメーカーの最上級品は、妥協無く作られているのです。売れ筋は、その技術を使った2番目、3番目の商品でしょうが、それはそのメーカーでもオリジナルではなく自社の製品のコピーなのです。勿論、常に一番高い物がコストパフォーマンスが良いとは限りません。適材適所という言葉もありますが、手に入れるならやはりそのメーカーの命運をかけたフラッグシップに挑戦した物です。
今回のDSカートリッジも、出来ればグランドマスターに挑戦してみたいのですが、そこに至る前に開発の段階も踏んでいろいろ聴いてみたと思いました。試聴機の貸し出しは人気なので、時間がかかるようですが、実際に自分の家で試してみたと思います。先週聴いたH氏邸はフラグシップ機でした。技術を積み重ねて、どんどんと性能を上げているそうです。その差も聴いてみたいですね。その音を聴きに、今週末もお伺いして聴いてこようと思っています。
by TANNOY-GRF
| 2021-03-04 09:30
| オーディオ雑感 レコード篇
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