2021年 03月 14日
Hさん邸の夜会 |
先週の土曜日はGRFさんにお声がけいただき、新兵器を導入したHさんのオーディオルームを訪問させていただいた。
これでもか!というくらいの贅をこらした素晴らしいオーディオルームと、そこに収まる珠玉のオーディオ装置にクラクラしたのは、比較的最近のことと思っていた。しかし、調べてみると2019年の12月のことであった。コロナの一年は時間軸すら歪めてしまう?
あのときにはオーナーが不在という特殊な状況での訪問で、オーナーの演奏を聴かせてもらうことにこそオーディオマニア訪問の真髄があると考える私にとっては、非常に複雑な思いであった。今回はオーナーであるHさんも同席されるということで、ワクワク度はいやがおうにも高まる。
通常、ランチを絡めて始めることの多いオーマニ訪問だが、今回は夕方の17:30にHさんのオーディオルーム集合という、なかなか珍しいタイミングので会となった。とはいえ、思い返せば会社帰りにアレキサンドライト邸には何度もお邪魔したこともあるし、同じくライブハウス横浜ベイにも何度か会社帰りにお邪魔した。とすると特殊会ということでもないか?
この日はGRFさんと、Oさん、そして横浜のMさんも同席されるということで、非常に楽しみであったが、まさかまさかの事態が発生し、横浜のMさんは残念ながらドタキャンとなってしまった。
横浜のMさん、聴かない方が幸せだったかもしれませんよ?(笑)
一年ぶりに訪れるHさんのオーディオルームだが、機器類はさらに増えその様子はハイエンドオーディオショップさながら。今回は新しく導入したDSオーディオの最高級光カートリッジ、グランドマスターを搭載したEMT927Dstによるレコード演奏を拝聴することがメインメニュー。光カートリッジには専用のフォノイコが必要で、HさんはEMM製のDS-EQ1を導入されていた。
とんでもなく美味しいHさんの差し入れのサンドイッチをいただきながら、まずはサラリとファイルオーディオを鳴らしていただく。音量が控えめであるにも関わらず、リアリティのある響きが印象的。雑味を意識させることのない透明で澄んだ音だ。ディディールが鮮明なのは、この頃聴き馴染んでいる平面駆動形のヘッドホンのようであり、とても心地よい。
HさんのオーディオルームのコンセプトはGRFさんのオーディオルームの再現。ゆえにメインの装置はアンプからスピーカまでGRFさんのシステムと近似、あるいはそれすら凌駕する物量を投入した弩級のものである。全体的な質感はGRFさんの音に非常に近い。
しばらくデジタルファイル再生を楽しんだあと、いよいよEMT927Dstの出番である。Hさんの927Dstはもちろんオリジナルでアームは997、フォノイコは155stである。997にはSME型のシェルを装着することはできない。HさんはTSD型のヘッドシェルにDSグランドマスターを組み込み、それを997に装着している。当然、フォノイコは155stを使わずにアームから直接DS-EQ1に接続している。
DSオーディオの光カートリッジは、デビューしてすぐの頃にオーディオフェアの会場で初めて体験し、その素晴らしい音にたいそう驚いた。以来、光カートリッジの存在には注目しており、社長の青柳さんとも何度か宴席をともにして詳しい話を聞かせてもらっている。第一号機からその評価は非常に高く、あっというまに世のハイエンドカートリッジの仲間入りを果たした。さらに青柳さんは凄腕の戦略家でもあり、世界中のハイエンド層にアピールする製品を次々に開発、市場に投入していった。
実際、私も自宅でDS002の試聴をさせてもらったり、DS-W2、マスター1などの音を親しい友人宅で体験している。電磁式のカートリッジと明らかに異なる質の音であり、LPからかつて聴いたことのないような新鮮な音を引き出すことができる。が、ここが曲者で、経験の長いLP愛好家であればあるほど、その音には違和感も感じることがあるようにも思う。早々にLPをすてデジタルに移行した愛好家、さらにはテープサウンドに慣れ親しんだ愛好家のほうが光カートリッジの真価を感じ取ることが多いようだ。
同時にDSオーディオのカートリッジはヒエラルキーが明確で、上位機種になればなるほど音質は確実に向上する。特にDS002とDS-W2の違いは非常に大きく、DSオーディオの光カートリッジを使うならDS-W2以上に限ると私は思っている。
で、今回は最新にして最上級のグランドマスターである。
そのサウンドやいかに?
GRFさんが持参した珠玉のクラシック、もちろん素晴らしい音である。とはいえ、クラシック音痴がああだ、こうだ言っても愛が伝わらないので、私が持参したレコードのインプレを(笑)
歌謡曲も含めて何枚か持参したがその場の雰囲気で、三枚に絞った。
デジタル録音のダイアナ・クラールとアナログ録音のスーパーギタートリオライブ、そしてダイレクトカッティングのデイブ・グルーシンである。
ダイアナクラールはス・ワンダフルを再生してもらった。もちろん存分に良い音である。良い音であるが、これはレコードの音ではなく明らかにCDなりSACDの音だ。この音をLPで聴く意味はどこにあるのか?デジタル録音のLPというのは、かなりの数存在しており、CD登場前夜の時代からPCM録音と称して、デジタル録音LPが多くリリースされた。当時はアナログマスター以上の音質!という触れ込みでリリースされたのだけど、今の時代ではそういうレコードであっても、CDなりSACDなりで聴くのとは一味違う音がLP再生で得ることができるとして存在する意義があるように思う。
しかしである。HさんのLP再生システムからは、曰く言い難しのLPっぽさが皆無であり、もう明らかにデジタル音源の音が聴こえる。これなら絶対的な電気性能の優れたCDやSACDを再生すればいいじゃないかと思えた。さらに、こういうLPからCDやSACDと違う響きを聴きたいなら従来の電磁式カートリッジで脚色すればよい。
変わってアナログマスターのスーパー・ギター・トリオライブである。レコードはペラペラのオリジナル盤。年に一回くらい再生する、ここ一番のお気に入り。
このLPは素晴らしい音であった。 当日、持参したLPはその日の午前中にEMT930Dstをプレーヤとして真波動砲艦隊で、音を聴いた上で選出した。もちろん、我が家でも良い音であったが、残念ながらHさんのシステムで再生されるような透明感のある映像を想起するようなものではなかった。
Hさんの再生は3人の奏者にスポットライトが当たっている様がまざまざと見えるような空間的解像度と透明感が恐ろしく高い。音を聴きながら映像が想起されることは良くあるが、私の場合、その映像がハイビジョンや4Kなどのリアリティのある光の艶というか、60fの時間的情報量というか、そういうものを感じさせてくれると「素晴らしい!」ということになる。良い音というのは星の数ほどあるが、そういう想起される映像がハイビジョン超級からリアルな実像にいたる音はそうそう聴けるものではない。
Hさんが情熱を注いで作り上げたシステムからは、そういう映像的満足度の非常に高い音が再現されている。同席したGRFさんやOさんとも話したが、これは明らかにレコードの音ではなく、テープのサウンドであると感じる。つまり、再生しているのはLPなのだが、グランドマスター+EMT927Dst+DS-EQ1によるソース機器が描き出すのはLPに記録されたテープの音そのものである。
多くのLPはオープンリールテープの音を記録し、それを私達は電磁式カートリッジで聴いているというのがこれまでのLP再生である。もちろん、それはそれで素晴らしい音楽体験をさせてくれるが、その音はテープの音と電磁式カートリッジによる総合的な音である。そこから電磁式カートリッジの固有の音を排除したら残るのは記録されているであろうマスターテープの音という図式がなりたつ。ま、光カートリッジ固有の音もあるのだろうが、案外、それは些末な要素であり、LPに記録された媒体の音を引き出すには光カートリッジしかない、そんな確信めいた思いがした。
さらに驚くのはEMT927Dstでありながら、一切のゴロとかランブルノイズが聴こえないこと。EMTのプレーヤは927と930に極まると思っており、両者には下剋上の起きない鉄壁のヒエラルキーがある。どんなに整備され調整された930stであっても、その音質において927を越えることは絶対にない。SNが違うのである。しかし、それでもわずかな振動はあるわけで、927Dstといえどもランブルやゴロの多少は聴こえてくる。それがこれまでの私の常識であった。が、Hさんの927Dst+グランド・マスターからはそういうノイズが全く聴こえてこない。普段私が聴いているよりは小さな音量であることも要因かもしれないが、全く聴こえないとはどういうことか?
Hさんは超音波式の全自動LPクリーナーを導入されており、これを使うことでノイズレスなLP再生が可能になったと嬉しそうに話してくれた。だから、今回のスーパー・ギター・トリオライブもクリーニングしてから再生していただいた。でも、それだけじゃないと思うのだ、この静寂感は。。。
デジタル録音からはデジタルマスターの音が、そしてアナログ録音からはアナログマスターの音が聴こえる。では、マスターの存在しないダイレクトカット盤ならどんな音が聴こえるのだろうか?
それを検証するためシェフィールドのデイブ・グルーシン「ディスカバード・アゲイン」を選んだ。
この音をなんと表現すれば良いのだろうか?
カッティングレースの前に存在するのはマイクとマイクアンプとコンソールのみ。そして、マイクの前には演奏者しかいないというシチュエーションである。Hさんの装置から紡ぎ出されるこのディスクの再生にテープのような音だ!というのは明らかに間違いであり、事実、一層ベースを剥がした鮮明な映像が想起される。スーパーギタートリオライブの音が4Kだとすれば、このダイレクトカット盤から得られる音はまさに実像である。目の前に奏者がいるようだとは良く言われる言葉であるが、この音の前ではこれまで聴いていた「目の前に奏者がいるような音」は、よくできた電子映像どまりで、今ここで再生されているのは録音の場でライブを観ているような、そういう生々しいリアリティがある。
その後、Hさんが秘蔵のNAGRAで4トラックのテープサウンドを聴かせてくれた。
どんなに素晴らしいLP再生であっても、こういう比較をするとLPはやはりテープに及ばず!と感じることが常なのだが、今回は違った。むしろ、光カートリッジを得たHさんのLP再生システムは、NAGRAで再生するテープと寸分たがわぬ音をLPから引き出していることを立証したに過ぎなかった。
Hさんはこのカートリッジを得て、GRFさんをギャフンと言わせることができると確信し、手ぐすね引いてGRFさんの来訪を待っていたとのこと。DSオーディオの光カートリッジの素晴らしさを知っており、その音に免疫のある私でさえ、よもやEMT927Dstから、このような音が得られるとは心底驚いた。それが光カートリッジ免疫のないGRFさんが聴いたわけだけだから、その驚きは想像に難くない。
「何の変哲もない国内盤のクラシックだけど」と言ってHさんは最後にLPを演奏してくれた。
何の変哲も無い国内盤のクラシックから、素晴らしい音がする。これほどの音が得られるなら、数々のオリジナル盤であふれるHさんのオーディオルームは宝の山だとおもった。
DSグランド・マスターを導入後、LPばかり聴いているとHさんはおっしゃる。LP再生はCDやSACDに比べればちょっと面倒なところもあるけど、オープンテープに比べればはるかに演奏は簡単。Hさんは大のテープファンで、オーディオルームにはオープン、カセット、DATなどなど多くのテープ機器がある。そんなHさんであるから、LP再生からもテープの音が再現されるなら、コンテンツの豊富なLPの価値は俄然あがったことであろう。
EMTと光カートリッジかあ、、、すげーなあー、930でもきっといい音するよな~でも、つい先日、新しいTSDオーダーしちまったしなあ~それに光フォノイコないしなあ~
Hさんの演奏に触れて以降、こんな妄想がぐるぐるしている。
夜香
by TANNOY-GRF
| 2021-03-14 21:04
| 行ったり
|
Comments(2)
光カートリッジの話よりモノクロ写真に興味が行きました。最近は遠のいてしまいましたが大判・中判カメラで撮影/現像/引き伸ばしをしていました。デジタルでこのモノクロ階調を滑らかに出せるカメラがあるといいなと思っていたところです。ライカから(今もあるかどうか知りませんが)モノクロ専用機が出たという話題がありましたが調べていません。また、、、ってこれ以上趣味に足を突っ込まないようにしよう(大汗)
プー博士
やはり私たちの世代の人たちは、写真と言えば白黒でした。現像室の酢酸の匂いとともに、懐かしい青春時代の想い出も蘇ってきます。
モノラル再生が、ステレオとは厳密な意味で共用出来ないのと同じように、白黒写真もカラー用とは、レンズから違うようです。
ライカのカメラでも、通常のカメラからカラーフィルターを外した分だけ解像力と階調がましています。新しいM10モノクロームでは、4000万画素をモノクロ専用で使うわけですから、豊かな階調が表れるでしょうね。
やはり私たちの世代の人たちは、写真と言えば白黒でした。現像室の酢酸の匂いとともに、懐かしい青春時代の想い出も蘇ってきます。
モノラル再生が、ステレオとは厳密な意味で共用出来ないのと同じように、白黒写真もカラー用とは、レンズから違うようです。
ライカのカメラでも、通常のカメラからカラーフィルターを外した分だけ解像力と階調がましています。新しいM10モノクロームでは、4000万画素をモノクロ専用で使うわけですから、豊かな階調が表れるでしょうね。




