2021年 04月 20日
長岡外盤A級を聴く ① |
光カートリッジが導入されて、今まではCDのダイナミックレンジやS/N比で、負けていたレコードが盛り返してきました。何回も恐縮ですが、このカートリッジは本当に静かなのです。また、最低域の再現も、今までのレコードからは想像も付かない音が楽々となっています。そこで、久しぶりにレコード棚から出してきたのは、長岡鉄男の外盤A級セレクション盤でした。
私が学生の時、FM東海のオーディオ番組「HiFiクラブ」の会員で、例会では東海大学望星高校のホールで開かれていました。その時、隣に座っていた坊主頭の青年が長岡さんでした。真剣にステージをにらんでいたお顔を覚えています。50年以上前の事です。今考えれば夢のような番組でした。ステレオの黎明期、いよいよオーディオが世に知られてきた頃でした。この番組には本当に感謝ですね。
その長岡さんが選んだA級外盤とは、マイナーレーベルで、シンプルな録音を目指しているレコードを片っ端から聴いて、音の良いレコードを選んでいます。シンプルな録音なので、メジャーレーベルの規格にはまった音ではなく、遙かにフレッシュな演奏と録音が出現して居ます。長岡さんは、音が良ければ、演奏がユニークであればと、分野を問わず聴かれていますが、古典の分野に馴染みがない私には、以前は音だけが良いレコードとしか感じませんでした。ところが、今回は録音会場の主に教会の中にいきなりトランスポートします。そして、レコードとは思えない立体感にあふれる音場が出現しました。
長岡さんだけあって、A級の外盤を選んだ理由もユニークです。この本が出たのはCDが出現してから2年後の1984年です。CDの黎明期で、新盤はCDにシフトしていた頃です。まだCDの音の評価は決まっていませんでしたし、マイナーレーベルからはまだレコードが出ていました。そんな中で、音が本当に良いのは外盤だとにらみ、将来消えて行くであろうレコードの行き先も予見してこの本を書かれたのです。
氏はこの本でも述べられていますが、外盤を選ぶ理由は、①安いから、②音が良いから、③国内盤では絶対入手不可能なめずらしい盤があるから、と書かれています。安く買うコツは、バーゲンで出されているキズ物の処分品も購入していたそうです。キズ物と言ってもほとんど音には出ないか、ジャケットが少し傷ついた程度で、中身の質には関係ないのが、半値以下で買えると喜んでいます。そう、我々の世代のレコードは本当に高かったのです。給料が3万円ぐらいの時にレコードは、給料の1/10の一枚3千円していました。10倍にして今の物価に換算してみると、あの時代、如何にレコードが高価だった解ります。
そして,音が良いレコードとは、音が新鮮である。生々しいこと、生そっくりな音、音像、音場、気配、空気感、スピーカーを無視する三次元的に、宇宙的に広がる音場!これを実現するにはfレンジ、Dレンジだけではなく、電気的な距離、マイクからレコードを作るカッティングまでの物理的、電気的な距離を短くすることだと言われます。同感ですね!その意味でも、規模の小さい会社の方が製造する課程が短く、本質的にいい音がします。
しばらく、触っていなかった長岡A級盤だけをしまっているレコード棚の中を整理して、まずレコード会社別に分類してみました。すると、量の多いのは、フランスのASTREEとフランスHarumonia mundiのレコードでした。それではと、ユニークなレコードを沢山出していて有名なフランスHarumonia mundiのレーベルから順番にレコードを洗浄して聞いてみました。長岡さんはこのフランスのHarumonia Mundiはドイツとはまったく違い、マイナーな曲を暖かく、豊かな音場で再現して、オフマイクでありながら、切れ込み、エネルギー感が凄い超A級の優秀録音盤が目白押しだと推薦しています。
最初に選んだのは有名なパニアグアの指揮によるギリシャの古典音楽です。長岡さんの紹介で一世を風靡した盤ですね。小編成ですが。教会の中で録られたのでしょう残響がとても豊かです。曲ごとに様々な編成でギリシャ時代の音楽を聴けます。聞いている内に、曲の雰囲気や、残響の使い方から、Toddさんの有名なLa Segundaによる「Sera una Noche」を思い出しました。このアルバムからインスパイアーされたのでしょう。
続いては、Emer Buckleyのチェンバロです。ドイツ系のシャープな音のするチェンバロではなく、柔らかな響きです。構造は違いますが、低音の柔らかな響きは、ピアノフォルテに随分と近づいています。彼女自身はイギリス人ですが、巴里に移住したそうです。フランスのレコードの音は、堅い音だと言うオメージもありましたが、このレーベルの音は柔らかく暖かいです。
STABAT MATERとは、the sorrowful mother was standing 悲しみの聖母は立ち尽くしていたという、聖母マリアを歌ったカソリックの聖歌です。モーツァルトやロッシーニに影響を与えた、ジョヴァンニ・バッティスタ・ペルゴレージの作曲ですね。私のもっとも聞かないジャンルです(苦笑)。これは教会の中と言うよりも、歌手の位置が近いと思いました。
音は軽快で、教会の中としては明るい音だと思います。これは何も考える必要はなく聞けますね。ではこの様な教会音楽が好きかと言われると、やはりロマン派を中心に聞いている自分にもこれぐらいなら範疇に入っていると思いました。
ようやくハイドンまで来ました。これは明るく聴いていて楽しい曲です。教会の中に響き音も明るく反射してきます。フランス盤のハイドンという感じですね。ただ、こうして、フランスのHarumonia Mundiの音を続けて聞いていくと柔らかい響きですが、音は奥には引っ込んでいなくて、手前に定位します。時には逆相で音が強調されているのもフランス録音の伝統ですね。
ただ、今回フランス Harumonia Mundi からA級外盤を聞き始めましたが、長い間、何故これらの長岡A級外盤を聴かなかったか解りました。私のレコード選別の基準は音ではなく、やはり曲と演奏にあります。クラシックは、バッハを除き、ハイドン以降になります。モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルトからドイツロマン派を通じ、ブラームス、ブルックナー、マーラー、チャイコフスキー、ストラヴィンスキーと続きます。リヒャルト・シュトラウスは、実はそれほど聞きません。オーケストレーションは面白いのですが、曲その物はそれほど迫って来ないからです。4つの最後の歌より、マーラーの泣き子を偲ぶ歌や大地の歌の「告別」の方を聞いています。
その意味で、これら17世紀の音楽を聴いても、それほど感心しないのです。今回、その個人的な趣向を再認識しました。だからといって、一気にシュトックハウゼンに飛んでも、音響的には面白いでしょうが、音楽的にはどうでしょう。個人的には、ドビュッシー、ラベル、サティなどがフランス物で、ロシアではストラヴィンスキー以降では、やはりプロコフィエフ、ショスタコービッチです。東欧ではバルトーク、ルトワフスキーなどでしょうか。残り時間が限られてきた昨今、長岡A級盤は、駆け足の試聴になるような気もします。もっともPHILPSやEMIのメジャーレーベルになれば、私の知っている曲も相当あります。引き続きレコードを洗っていきましょう(笑)。
by TANNOY-GRF
| 2021-04-20 12:02
| 好きなレコード
|
Comments(3)
GRF さま
「GRF の部屋」にお邪魔するようになって随分経ちますが、いつも聴かせていただく音楽が僕の知らないものなので不思議に思っていましたが、この記事で納得がいきました。同時に僕自身の音楽史も再認識しました。小学校の高学年になり、父がステレオを購入。自宅にあったのはジャック・ルーシェの「プレイ・バッハ」、グールドの「シックス・パルテイタ」とマイルス・デイビスの所謂マラソン・セッション。そして母の愛聴盤だったエルビスのゴスペル集。僕が買ってもらったウエスタン。
結局、放課後、自宅でボーとしているのは僕だけなので、このLPを毎日、聴いていました。そして、この曲を作曲した人はどんな音楽を聴いてきたのだろう、と歴史を遡ったのです。それで古楽、、ブルーズ、クレズマー、、アラブ・アンダルシア音楽と遡り、幅を世界の各民俗音楽へと広げたのでした。その辿り着いた先に、ToddさんのLa Segundaによる「Sera una Noche」があり、ここでGRF さんと結びついたのでした。
S.Y
「GRF の部屋」にお邪魔するようになって随分経ちますが、いつも聴かせていただく音楽が僕の知らないものなので不思議に思っていましたが、この記事で納得がいきました。同時に僕自身の音楽史も再認識しました。小学校の高学年になり、父がステレオを購入。自宅にあったのはジャック・ルーシェの「プレイ・バッハ」、グールドの「シックス・パルテイタ」とマイルス・デイビスの所謂マラソン・セッション。そして母の愛聴盤だったエルビスのゴスペル集。僕が買ってもらったウエスタン。
結局、放課後、自宅でボーとしているのは僕だけなので、このLPを毎日、聴いていました。そして、この曲を作曲した人はどんな音楽を聴いてきたのだろう、と歴史を遡ったのです。それで古楽、、ブルーズ、クレズマー、、アラブ・アンダルシア音楽と遡り、幅を世界の各民俗音楽へと広げたのでした。その辿り着いた先に、ToddさんのLa Segundaによる「Sera una Noche」があり、ここでGRF さんと結びついたのでした。
S.Y
S.Yさん 私も出発点はほぼ同じです。
>ジャック・ルーシェの「プレイ・バッハ」、グールドの「シックス・パルテイタ」とマイルス・デイビスの所謂マラソン・セッション。そして母の愛聴盤だったエルビスのゴスペル集。僕が買ってもらったウエスタン。
そこから歴史を遡った民族音楽の方に行かれたのが違いですね(爆)。私は、プレスリー、ナット・キング・コール、アズナブールでした。
>ジャック・ルーシェの「プレイ・バッハ」、グールドの「シックス・パルテイタ」とマイルス・デイビスの所謂マラソン・セッション。そして母の愛聴盤だったエルビスのゴスペル集。僕が買ってもらったウエスタン。
そこから歴史を遡った民族音楽の方に行かれたのが違いですね(爆)。私は、プレスリー、ナット・キング・コール、アズナブールでした。
GRF さま
長くブログを拝読しておりますが、かねてより長岡鉄男さんの名前が出てこないのを不思議に思っていましたが、納得いたしました。( 爆)
長岡さんに関しては、父が「あのひとはいいひとだ」と言っていたのが記憶に残っています。根拠は不明ですが・・。( 笑)
好きな演奏家がいたら、その人が何を聴いてきたか遡りなさい、というのはたぶん細野晴臣さんの影響です。ロックの場合は有効な勉強方法でしょう。
この数年はGRF さんのブログを読みながら、バッハからモーツアルト、ショパン、ベートーヴェンと歴史にそって聴き始めていますが、どうもベートーヴェン辺りで頓挫しております。
S.Y
長くブログを拝読しておりますが、かねてより長岡鉄男さんの名前が出てこないのを不思議に思っていましたが、納得いたしました。( 爆)
長岡さんに関しては、父が「あのひとはいいひとだ」と言っていたのが記憶に残っています。根拠は不明ですが・・。( 笑)
好きな演奏家がいたら、その人が何を聴いてきたか遡りなさい、というのはたぶん細野晴臣さんの影響です。ロックの場合は有効な勉強方法でしょう。
この数年はGRF さんのブログを読みながら、バッハからモーツアルト、ショパン、ベートーヴェンと歴史にそって聴き始めていますが、どうもベートーヴェン辺りで頓挫しております。
S.Y






