2021年 09月 12日
オリンピックの時の プレミアムコンサートを見ました |
七月のオリンピックのさなかに、収録してあったNHKのプレミアム シアターをようやく見てみました。プレミアムシアターは世界で行われた著名な演奏会を知らせてくれる貴重な番組です。冒頭のメインテーマは冨田勲さんの作曲で、コントラバスの深い音がクラシックの演奏会に誘ってくれます。名曲だと思います。
今回のプレミアムシアターは五時間にも及ぶ構成で、最初が、メシアンのピアノ、クラリネット、チェロ、ヴァイオリンのための四重奏曲で、捕虜収容所にいた音楽家が、この組み合わせだったので、作られためずらしい曲です。各楽器ともソロでも演奏される、メシアンらしいとも言える構成で、フランスの前衛音楽らしい高域に緊張がある曲です。
二番目は、古巣のライプチッヒ・ゲバントハウスをブロムシュテットが、彼より二代前の指揮者のノイマンを記念したコンサートで、チェコにちなんだ曲が演奏された去年の9月のライプチッヒでの演奏会です。一昨年来日したときより、眉毛が短く、すこしふっくらとしたおじいちゃんのお顔になっていました。でも、94歳で現役で、世界を飛び回っているのですから驚きです。
一曲目はチェコのヴォジーシェクというベートーヴェンの時代の作曲家の交響曲です。初めて聞きましたが、モーツァルトとハイドンと、ベートーヴェンとシューベルトの良いところを併せ持ったような素晴らしい曲です。有名で無いのが不思議なぐらいです。第二楽章の急に嵐が来るような変化は、歌曲的でもあります。三楽章から終楽章と聴き進めるにつけ、堂々とした構成とオーケストレーションに感心しました。最後はジュピターの終楽章にも匹敵するぐらい堂々とした終わり方でした。ゲヴァントハウスの演奏で聴けて良かったです。このオーケストラやバンベルグは、ボヘミア的な香りがしますね。ノイマンを記念したコンサートにふさわしい曲です。
盛大な拍手に送られた二曲目は、モーツァルトの第38番「プラハ」です。この記念コンサートで聴くにはふさわしい曲です。「ハフナー」を大きくしたような構成は堂々としていて、展開するところは、ジュピターをも感じさせます。モーツァルトとプラハと言えば、「ドン・ジョバンニ」の暗い響きを思い起こしますが、「プラハ」は明るく、堂々として「フィガロの結婚」を聴いてるようです。ホルンの使い方のお手本みたいですが、このゲヴァントハウスのコンサートマスターはリズム感がとても良いです。また、ホルンはスケールが大きく上手いですね。
ブロムシュテットは、ますます若々しくなっていきます。N響をいわきで聴いたのが、19年の11月でした。若々しい「英雄」に感心しました。今年の6月のベルリン・フィルを振ったシベリウスの第四番とブラームスの第三番は凄かったです。ブラームスの演奏を音を消して見ると、どれほどベルリンフィルが全力で弾いているかが見えます。
第三部は、ハンガリーのイヴァン・フィッシャー指揮のブタペスト祝祭管弦楽団の演奏で、エネスコのルーマニアンラプソディーと、ストラヴィンスキーのヴァイオリン協奏曲、そしてプロコフィエフの交響曲第5番です。イヴァン・フィッシャーは、28年前にこの祝祭管弦楽団を設立した一人です。それ以来、このオーケストラを率いて、世界的なオーケストラに育ててきました。彼は、ベルリンフィルやコンセルトヘボウにも客演できますが、その時は、何だか客演するオーケストラとは向かっている方向が違うのではと、若干の違和感を何時も感じていましたが、今回、彼の本拠地での演奏を聴いて、長年の疑問が解消しました。
このオーケストラは、独特の配置で演奏しているのです。ウィーンのニューイヤーコンサートのように、最後列のひな壇に、コントラバスが8本並ぶのです。中央には大太鼓、ティンパニーは右側のひな壇に並び、ハープも中央に寄っています。そのコントラバスの前に金管楽器が並ぶという、特殊な配置です。これは低音重視の配列と言えましょう。事実聞こえてくる響きは、実に重厚で、シカゴとフィラデルフィアを合わせたような感じで、このまま、アルバートホールのプロミスにもでられる響き重視の配列ですね。これはこれで、面白いですが、コンセルトヘボウなどでの違和感が納得できました。
祝祭管弦楽団だからでしょうか?今時、この様なオーケストレーションで聴かせるオーケストラは無いなと感心しました。では自分は、どうなのかと問われると、驚きが先でしたが、次のロイヤル・コンセルトヘボウの演奏ではっきりと解りました。求めている音楽の方向が違いますね。
ここまで、順番に全曲を聴いてきましたから、もう4時間近くがたっています。
でも、驚きは、この後やってきました。
最近、評判のクラウス・マケラという指揮者が、コンセルトヘボウのステージに登壇してきました。フィンランド出身で、無観客の演奏会で、広いコンセルトヘボウのステージを目一杯使って、演奏者の間隔を開けています。その為でしょうか、何時ものコンセルトヘボウよりすこし大きめな音で響きます。テンポは、普通なのですが、オーケストレーションが隅々まで聞こえます。木管のならし方が、はっきりしています。とくにファゴットの音量が今まで聞いた事の無い大きなバランスで響いて驚きました。
コンセルトヘボウの会場で、何時ものロイヤルコンセルトヘボウがなっているのですが、テンポの中庸なクレンペラーとも言うのでしょうか、各楽器の音がはっきりと聞こえてくるのです。コントラバスの響きがとても美しいです。ベートーヴェンの田園は、オーケストレーションの見本みたいな曲ですから、管楽器と弦楽器がおりなすハーモニーがどこまで再現できるかが鍵です。
この若干、25歳のフィンランド人の指揮者が、スウェーデン放送響と、オスロ交響楽団の常任になり、今シーズンからパリ管弦楽団の監督にも就任する意味がよくわかりました。まず、全体の構成力が大きく、はっきりしています。各楽器の鳴らし方、特にハーモニーの付け方が違います。演奏しているのはコンセルトヘボウですが、全盛時のフィルハーモニアの様に、各パートが安心して身を委ねられるのです。リズムがしっかりと立ち、それでいて性急なところはまったくありません。新時代が始まったようですね。
このコロナ禍で、オーケストラの海外公演はほとんどありませんが、二年間の眠りが開けたら、世界がガラリと変わっていたのかもしれません。フィルハーモニアの常任になったロウヴァリなども含めて、ポストコロナの音楽会も楽しそうです。
プレミアムコンサートの名前にはじない5時間の充実した番組でした。
by TANNOY-GRF
| 2021-09-12 11:31
| 演奏会場にて
|
Comments(8)
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椀方
at 2021-09-12 15:24
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このところの断捨離でHDDレコーダーを売却してからBSプレミアムやクラシッククラブの録画を観る手段が無くなってしまいました。
ブロムシュテットさんは現役指揮者の中では今一番ご高齢ではないでしようか?
指揮台に立つブロムシュテットさんは砕けたスタイルの服装はほとんど着られてませんが、襟元の刺繍がエーデルワイスだったりとオシャレにも気を使っているのか素敵です。
ブロムシュテットさんは現役指揮者の中では今一番ご高齢ではないでしようか?
指揮台に立つブロムシュテットさんは砕けたスタイルの服装はほとんど着られてませんが、襟元の刺繍がエーデルワイスだったりとオシャレにも気を使っているのか素敵です。
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TANNOY-GRF at 2021-09-12 15:50
椀方さん そうすると現状では、DVDやBlurayは見れないのですか?PCでも再生できないのでしょうか?
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TANNOY-GRF at 2021-09-12 16:03
椀方さん
そういえば、ブロムシュテットさんのタキシードは何時も刺繍付きですね。あれはエーデルワイスなのですね?
そういえば、ブロムシュテットさんのタキシードは何時も刺繍付きですね。あれはエーデルワイスなのですね?
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椀方
at 2021-09-12 19:11
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余っている3.5インチの3TBハードディスクが何枚か有るのでTV録画用に再利用しようと考えいるのですが、手持ちのHDDケースでは認識してくれないので、ネットで情報を集めているところです。
AppleTV4Kを入れてからストリーミングのコンテンツが充実しているので、BS録画環境さえ整えればDVDやBlu-rayの再生機器は不要だと感じます。
PCにはCDリッピング用のUSBドライブが有ります。
ブロムシュテットさんの刺繍は何種類か違うのがあるようです。
エーデルワイスの刺繍は襟が青みがかっていて花弁のが白っぽいのでそれと判ります。
AppleTV4Kを入れてからストリーミングのコンテンツが充実しているので、BS録画環境さえ整えればDVDやBlu-rayの再生機器は不要だと感じます。
PCにはCDリッピング用のUSBドライブが有ります。
ブロムシュテットさんの刺繍は何種類か違うのがあるようです。
エーデルワイスの刺繍は襟が青みがかっていて花弁のが白っぽいのでそれと判ります。
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TANNOY-GRF at 2021-09-13 00:24
椀方さん NHKの番組は、オンデマンドで見れるそうです。ぜひ、この番組を見てください。
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椀方
at 2021-09-15 16:11
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テレビの録画用外付けHDDケースですが、現用のBRAVIAで認識するのが手持ちに有りました。
16TBまで対応しているケースですが拙宅の古いBRAVIAでは2TBまでしか使えない仕様でしたが、取り敢えず繋いで、BSプレミアムシアターとグレートトラバースの録画予約してみました。
余ってるHDDが活かせるので助かります。
16TBまで対応しているケースですが拙宅の古いBRAVIAでは2TBまでしか使えない仕様でしたが、取り敢えず繋いで、BSプレミアムシアターとグレートトラバースの録画予約してみました。
余ってるHDDが活かせるので助かります。
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TANNOY-GRF at 2021-09-15 22:17
椀方さん HDDでは録画は出来ますが、ディスクの再生は出来ませんね。と言うことはディスクをお持ちしただけでは見れないのでしょうか?
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椀方
at 2021-09-16 09:16
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GRFさん、PCにはリッピングに使っているパイオニア製のUSB接続ブルーレイドライブが繋げるのですが、Windows10のPCからApple AirPlayが使える方法が有れば飛ばせるのですがね?