2021年 12月 03日
いつの間に12月に |
11月の末は、いろいろと工作が続き、怒濤のような週を過ごしていました。その顛末記は私の備忘録としても必要なので、追々公開していくつもりですが、おかげさまで、それも無事に乗り越え、ようやく広々とした大海に漕ぎ出したようです。部屋は散らかり放題になり、本気でかたづけないと収拾が付かなくなりましたが。実験中に何か道具が足りないとか、ケーブルの片方が見つからないとか、小さな六角レンチが行方不明とか、何しろ、夕方になると目が途端に見えなくなりますので、普段でも車運転用、テレビ用、コンピューター画面用、そして小さな活字の文庫本用と4種類のメガネを使い分けているのですが、暗くなるとその境界がどちらとも合わずに見えなくなるのです。
11月の最終週にもなると、暗くなるのも早く、細かな作業が本当に出来なくなります。勢い、スタンドや手元の灯りを集合してみようとするのですが、絶対の光量は昼間とは比較になりませんし、作業をしていたのは北向きの窓で、日陰が出来ないのでとても見やすいのですが、電灯を使うと光が当たるところと当たらないところの差が大きく往生しました。
作業していたのは、カートリッジの取り付けだとか、水平の調整だとか左右のバランスだとかで、細かの作業を強いられます。加えて、当初はマニュアルの精読とか行間の理解だとか、久しく行っていない作業の連続でした。最近は手元もしびれたり、リウマチまでは行かないのですが、こわばりもはじまり、寒くなった先週は、夕方からは暖房を入れたり、クリームを塗り込んでマッサージをしたり、普段しない作業がつづきました。
時間はかかりましたが、やり遂げることが出来てとても満足です。この組み立ての難しい作業を人にやってもらうのでは楽でしょうが、一番肝心な所をされないのは、知識を得るチャンスを自ら放棄するので、面白さが半減しますね。その組み立て作業はお昼前からはじめて、一歩づつ進み、また休み休みの作業だったので、ようやく音が出たのは深夜近くになっていました。
その最初の小さな音を聞いた瞬間に安心感と達成感に包まれたので、その日は作業を終わりにしました。翌日の日曜日にじっくりと聞こうと思ったからです。それでも、子供の時のクリスマスプレゼントの様に、少しだけ、触りだけと、二回も聴きに来て、何時もの曲を三種類掛けて納得してから眠りにつきました(笑)。
翌朝は、昨日の疲れが出たのでしょう、朝食を食べてから、横になっていたらそのまま寝てしまい、気がついたら11時近くになっていました。それから、熱いシャワーを浴びて目を覚まし、何時も聴いている曲を聴きまくりました。その一つ一つが、その前とはまったく違っているのを確かめました。もっとも、取り付け用のベースを作ってもらうために、一旦全部ばらしましたので、二週間以上聞いていませんでした。その間の話題は、「ラストダンスは私に」と「German友の会11月例会」の記事で埋めていましたね。
もっとも、CD系統は鳴らしていたので、実質上は困らなかったのですが、やはり、この部屋での滞在時間は短くなっていましたし、気持ちが中途半端でした。
さて、その肝心な音の差ですが、ほんの僅かだと言う人もおられるでしょう。オーディオの面白いところです。鼻の差でも優勝と二位では、金メダルと銀メダルでは価値が違うと言われるでしょうが、少なくとも私の中では、最近の長距離の女子のトラックレースのように、ぶっちぎりで周回遅れを作るほどの差だとも言えます。
これで、Hさんから送られた挑戦状に返事が出来るし、ようやく同じ土俵で戦えるところまで来ました。光カートリッジと専用イコライザー、それにアームと、レコードプレーヤー周りだけで、車が買えるほどの出費ですから、注文してからも随分と悩みました。幸いにも私は個人では車を買わなくても済むので、その分は恵まれています。でも予算は使い切りました。そろそろ使っていない機械の放出かな?
日曜の午後は、何時もの定番のレコードを掛けて違いを検証していました。このアームは動作中は完全に動きは制御されていて、インサイドやアウトサイドのフォースの影響を受けませんから、カートリッジは鏡の海の上に止まっているように微動だもしません。溝の中央から動かず壁に擦れませんから、レコード特有の擦過音がまったくしません。
これが、Hさんのところで最初に聞いた時に驚いた、レコードとは思えない異様な静けさを生んでいます。加えて、光カートリッジの低音へ行くほど、イコライザーカーブが減少すると言う、従来のイコライザーとは正反対の減少カーブの違いもあって、ターンテーブルのゴロなどもまったく聞こえません。左右のクロストークの少なさは、従来の1/300と言うアームの動きの正確さと、第三世代の光カートリッジの構造でしょう。結果、今まで打ち消されていた微小な信号が再生できて、コンサートホールや楽器から出てくる立体音の情報が消えないで再現されます。このことが、従来のレコードでは聞けなかった音場を再現して、ステージの奥行きが現れるのです。
それは従来、SACDや38/2トラでしか再現できなかった、集音された会場の特徴やホールの大きさや形まで再現してきます。中野サンプラザ、厚生年金ホール、産経ホール、東京文化会館、そしてNHKホールなど、歌謡曲のコンサート行ったところでも、PAではなくレコード用に集音された会場の音が再現されるのです。
いつもは聞かない八代亜紀のリサイタル、78年と79年度版を聞いてみました。78年までは、あまりパッとしなかったテイチクの録音が、79年度になって、見違えるように会場の雰囲気を伝えてきます。その奥行きの再現は感動的でもあります。
会場奥の打楽器群、エレキベースの太いでもステージに拡がる低い音、その少し前のモノラルマイクで中央定位する八代亜紀の昔の声、弦楽器や金管楽器群はステージ前方に、そしてその周りを包む拍手のリアルな再生音。定番の森進一のライブの拍手音をiPhoneのビデオで録って、横濱のMさんに送ったら、その拍手のリアリティに反応していただけました。今までのレコードでは聞くことのできなかった立体的な音場が出現して本当に驚いています。
その音場は、カラヤン・ベルリンフィルのシベリウスだとか、シェーラザードだとか、ドンキホーテの様なイエスキリスト教会での収録のレコードの響きを一変させました。特にカラヤンの特有の少し強引な響きも、実際のオーケストラのようにきれいな楽器ごとに群れを作り、又その中でも複層的なハーモニーを醸し出しています。50年間慣れ親しんできたDGG盤もまったく違う音になっていました。それは個人的には大変大きな驚きです。
強引で複雑なひびきと言えば、森山良子のロスアンジェルス録音のゴードン・ジェンキンスのアレンジのオーケストラをバックにした「セ フィニ」のアルバムがあります。ジェンキンス特有のチェロを増やしたオーケストレーションの分厚い響きにコントラバスのボーイングが重なるところが、いままでどうしても複雑な、はっきり言えば濁った音を出していました。そこが、聞かせどころでもあるのですが、その冒頭の部分が、きちんとオーケストレーションが解るように因数分解されて、尚且つハーモニーを醸し出すまったく別の今までに聞いたことのない響きになっていました。そして、その後の森山良子がゆっくりと歌い上げる声には驚きました。
音の差は、書き出したら切りがありません。それを大変な差と唱えるか、大した差ではないというかは、聞かれた人の印象とその方の経験や思いが判断する物です。その差を感じるか、感じないかは極めて個人的な感覚であり、その人の経験、感性、生きてきた環境にも大きく作用します。究極はその人が気に入るか、いないかの差になるのです。
自分の好みと同じ音がしないからといって、それを押しつけることでは無いのです。むしろ、自分との差を楽しめればオーディオも随分とやさしい趣味になるのですが。一神教的に自分の考えや好みだけを押しつけないで、八百万の神い親しめれば良いのではと、今回の自分には大きな差に驚き感心しながら、Hさんに感謝していました。
さて、この差を解ってもらうには、どう説明すれば良いのでしょう。携帯のビデオでもあれほどはっきり差がわかるので、プロモーションビデオでも作りましょうか(爆)。
by TANNOY-GRF
| 2021-12-03 10:46
| オーディオ雑感
|
Comments(2)

GRFさんが「予算を使い切りました」と仰る程ですから、H氏の御宅でその先の結果が見えていたからの投資決断でしょうが、その結果を確かめるまではドキドキですよね。
でも、日記の文章から「やっと手に入れたぞー!」という喜びが溢れています。
小生の予算を使い切った投資は24畳のLDK +4.5畳和室という広いリスニング空間ですが、果たして上手く鳴らせるかどうかドキドキします。
でも、日記の文章から「やっと手に入れたぞー!」という喜びが溢れています。
小生の予算を使い切った投資は24畳のLDK +4.5畳和室という広いリスニング空間ですが、果たして上手く鳴らせるかどうかドキドキします。
椀方さん 決まったのですね!新たな展開がまた拡がりますね。新たな展開もドキドキですが、楽しみですね。
移る前に、ぜひ家にも聴きに来てください。周回遅れの意味がわかると思います。
移る前に、ぜひ家にも聴きに来てください。周回遅れの意味がわかると思います。