2023年 02月 07日
整理整頓 ② 倉庫や蔵の重要性 |
大昔、母方の祖母の実家に連れられて行った事があります。小学生から中学生になった頃です。典型的な田舎の山の中の大きな家で、蔵が何個もありました。代々のもの大事なものを収蔵しておくスペースがあったのです。都会の家はそのような余裕がないので、断捨離などと言う残酷なことを言っているのです。母方の田舎は富山県で、今でも家の大きさは日本一だそうです。砺波の山居村を見ても、大きな家々が、農家の暮らし用に用途を分けて存在しているのがわかります。収蔵する蔵が何個もある、世代を経た作りです。
都会の家の一番の問題は、そのスペースがない事です。都会と田舎の一番の違いはそのスペースの差でしょう。富山の親戚がうちに来る度に、こんな狭いところに住んで「きのどくに〜」といつも言われました。田舎のうちを訪れると一番の違いは、その収容能力でしょうね。現在では、田舎の暮らしも都会と同じような既製の住宅が主流になって来ました。北海道の車窓から見ていつも思うのは、広大な敷地があるのに小さいな住宅が集合して建ててあり、その大きさが一定な事です。農家と違って、一般の住宅では固定資産税の税率が違うからでしょう。
都会に限らず、今日本中で空き家が増えています。壊して空き地にすると、途端に税金が数倍かかる仕組みになっているからです。夜歩くとすぐにわかりますが、空き家が本当に多くなっています。中には、夜は、ぼんやりと灯りだけを付けている家もありますが、ほとんどは真っ暗ですからすぐにわかります。それらを改造して、スペース貸をすればいいのですが、事業にするとすぐ税金の問題がかぶさって来ます。
都会の人の本当の不幸は、その余裕が許されなく、世代を超えて受けつがれていくべき物さえ、場所がないという理由で捨てられてしまう事です。よく田舎の蔵を開けて、美術品などの掘り出し物がないかと探索する番組がありましたが、本来は、どこの家でも倉庫を作るべきだと思うのですが、、
一般の家を倉庫に使うと、部屋の大きさが小さいので、どうしても置き方が制限されてしまいます。また家は使っていないと、湿気がこもり家がダメになっていきます。家は使わないと、どこからか埃が入って来ます。都会の空気がいかに汚れているかがわかりますね。人がたくさん住み、埃の元になる繊維類を着ているのと、車の通行が多く、その煤塵やタイヤが減ってホコリを作っているのでしょう。
茅野の家で一番驚くのは、床にほとんど塵やホコリがない事です。湿気がないきれいな高原地帯の気候も影響しているのでしょう。都会では考えられない空気の差です。普段使わないものは置けるのですが、手元に置いていないと、何かを思いついて調べ物をしようと思っても、行くのに二時間以上かかるのでは本当に保管するだけです。最近は、関西方面にいくのに新東名を使っているので、茅野に寄れる機会も少なくなりました。
近くの空き家を利用した、保管スペースがあればいいのですが、不特定多数の人が出入りする作りではないので、防犯や防火の観点からも実際には難しいのでしょう。また、毎月保管料を払っても、置いておく価値があるかも問われます。最終的にはその人の価値観に行き着きます。レコードの大量処分や古本屋や骨董品屋の存在意義もわかって来ます。長年かかって集めて来た貴重なレコードも、家族には、ただのゴミにしか見えないのかもしれません。ご本人が亡くなるとすぐに処分される書籍やレコード類の段ボールが積み重ねられているの見るのは忍びません。それを目当てに毎朝開店と同時に押し寄せる常連と呼ばれる人たちにも同じことも感じるのです。
常連さんたちも、めぼしいレコードを狙っています。オリジナル版への買い替えもあるでしょうが、置き場所がないので、より価値の高い版への買い替えを勧めているのでしょう。引退された方も増えていきますし、時間がありますから事前の調査も十分なのでしょう。そして、毎朝のようにご出勤されて入れ替え戦に励まれているのです。それも、収納場所が無いからです。
一方、お店にとってみれば、大量にプレスされた有名なレコードの初版盤は、500円で出しても利益確保の換金化ですから、内容や価値ではなく、"遠くの親戚より近くの他人状態"なのでしょう。それらの大量に出回る有名レコードは、それだけ大量に作られたからですね。希少価値という観点から見ると、クレンペラーより高いセルのSAXのレコードとでも言えばお分かりでしょうか。その意味でカラヤンのレコードの価値が上がらないのは、助かりますが。
音楽好き、オーディオ好きの男の子は沢山いました。今でも付き合っている学生時代の友人も何人もいるぐらいですから、どの学校でも、同じ趣味を持っている子は必ずいましたから、確率から言っても50人や100人に一人は、レコードマニアでしょう。これから大きな世代交代が起こっていきますから、700万人いる団塊の世代だけでも、70人に一人なら10万人もいるのです。男の子もまだ同数近く生きていますから30万人からレコードは出てくるのです。それに対して需要する人口は少ないでしょうから、一部のレコードをのぞいて、500円状態は続くでしょうね。
そして、あるときから需要と供給のバランスが崩れて、小林秀雄の全集本のように市場に溢れて、需要も減って最後は100円本状態になるのです。ほとんどの本は、100円の価値もなくなるのです。我々には悲しいのですが。断捨離という言葉の残酷さがわかって来ますね。レコードや本の価値は内容ではなく、需要と供給なのです。
by TANNOY-GRF
| 2023-02-07 21:42
| よしなしごと
|
Comments(4)
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プー博士
at 2023-02-08 09:39
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「小林秀雄」って高校時代によく読みました。受験に出るとかで(汗) 懐かしいです。また読んでみれば当時とは違う感じ方がすると思います。お店で探してみようかな?
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リウー
at 2023-02-08 18:46
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前回の立花さんの話は驚きました。確か本のためにビル?を建てた話を聞いた記憶があるので。また、立花さんは捨てることではなく、如何に保存することが重要かと言っていたと記憶しているので。
そうは言っても、残った家族の負担になってもということでしょうか。
色々と考えさせられますね。
そうは言っても、残った家族の負担になってもということでしょうか。
色々と考えさせられますね。
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S.Y
at 2023-02-09 12:31
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GRFさま
ご存じのように、我が家も立派なゴミ屋敷です。(爆) そもそも前衛建築でして、当初は物置どころか押し入れもなかったのです。いまどきの建築家は何を考えているのでしょうか。といっても築50余年。(爆)
立花隆さんは生前に本を整理したのではありません。「死後、すべてしかるべき古書店に売却して、次世代に渡せ」と言い残したのでした。生前は最後の最後まで、大量な資料を読み続けていらっしゃいました。僕の記憶違いでなければ、彼自身は空っぽの本棚を見ていないはずです。
S.Y
ご存じのように、我が家も立派なゴミ屋敷です。(爆) そもそも前衛建築でして、当初は物置どころか押し入れもなかったのです。いまどきの建築家は何を考えているのでしょうか。といっても築50余年。(爆)
立花隆さんは生前に本を整理したのではありません。「死後、すべてしかるべき古書店に売却して、次世代に渡せ」と言い残したのでした。生前は最後の最後まで、大量な資料を読み続けていらっしゃいました。僕の記憶違いでなければ、彼自身は空っぽの本棚を見ていないはずです。
S.Y
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GRF
at 2023-02-09 20:40
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S.Yさん 立花さんは、死後処分をしろと言われたのですね。よかったです。それにしても古書店お人は商売とは言え、辛いですね。