2025年 08月 11日
アトランティスさんのご感想 ③ GRFのある部屋 編 |
GRF様
少し時間が空いてしまいましたが、夏休みに入り落ち着いたのでメインシステム編の感想をご報告いたします。
まずGRFの部屋に入るといつも感じる事ですが、他の部屋と空気感が違います。外界の音が遮断されていて没入感というか違う世界に来た感覚になります。MA室にいる感覚に近いのですが、S/Nは高いけど圧迫感はなく余計な音は綺麗に天井から消えていく感じです。
この部屋ではGRFとSD05が奏でるホール再現やPSD T4を床に置いて鳴らしてびっくりしたことや、オープンリールデッキのテープの鮮烈さにノックアウトされたこと、光カートリッジによるレコード再生等、いつも驚いてばかりでした。GRFさんという音の魔術師が新作の音をここで披露してきた舞台なので、訪問する度に何かシステムが変わっていた印象があります。
今回部屋に入って目にしたシステムは4年前に聞かせていただいたシステムと同じであり、配置も特段変わっているように見えません。先程お聞きした微調整だけという言葉は本当なのかもしれないと少し緊張しました。
かけていただいたCDは和室で聞いたものや過去に聞かせていただいたCDが中心で初めて聞くCDはほとんどなく、過去のメインシステムや和室の違いが明確にわかるような選曲でした。GRFさんの自信というより今のこの音を聞いてくれ!という思いが伝わってきました。口でも言ってましたが(笑)
MolaMolaのプリの位置は不動の12時。この音量で部屋が音で満たされます。以前との違いは兎にも角にも『楽器が等身大で鳴っている!』ということです。もう結論から言ってしまうと、ホール感が出ているとか、それぞれのホールの特徴がよく出ているというレベルではなく、そこでオケの連中が演奏しているようにしか聞こえない音が出ています。
1st、2ndヴァイオリン、チェロ達が手前で場所が見えるよう、フルートやファゴット、オーボエがその後ろで鳴り、金管がその後ろで炸裂、センター一番奥からティンパニーの怒涛の音が出て部屋の底から低音が噴き上がる、こんな感じです。みんながそこにいます(笑)
しばらくして僕の確認音源にもなっているバーンスタインの東京文化会館でのショスタコ5番がかかります。この音源は各楽器の距離感がとてもわかるし、文化会館の響きもあり、何より演奏が最高ですね。驚いたのがその楽器演者間の細かな音がこれでもかと聞こえてきたことです。最初は距離感や楽器の音色、分離感に注目していたのですが、それ以上に会場の上から吊るしているマイクになったかのように舞台のあらゆる音が聞こえてきたことに本当に驚きました。『このCDにはこんな音が入っていたのか…俺の聞いているCDと出ている量が全く違う…』オーディオをやってきてこのセリフを何回か言いましたが、今回も打ちひしがれながら呟いてしまいました…
レコードやCDは作品であり、マスタリングエンジニアのイメージした音が原音だと思いますが、クラシック演奏においてはライブ録音だろうとセッション録音だろうとイメージするゴールはそれほど違いはないはず。このショスタコ5番は当時文化会館でこういう音だったんだろうと納得する音でした。
同様にコンセルトヘボウも同じようにそこに現れます!
オーディオ再現を誤解を込めて言うと、演奏→製品化(CD)→オーディオファイル再生の過程で、やはり最後の我々再生側の思いで大きな演出がかけられます。ロック、ジャズ好き、歌謡曲好き、クラシック好き、こう鳴ってほしいという己のイメージで再生するわけで、これは個人個人の経験からくる人生観と価値観が直結していると思うのです。なので再生する人によって音が大きく違うし、違うけど感動や納得感がある、それがまた己の糧になる、そんな世界がオーディオの楽しみだし、オーディオ仲間へのリスペクトになり感謝となると思うんです。僕個人も自分では『完全ニュートラル志向、己の好みは排除、CDのありのままに!』がモットーだったのですが、還暦前に気付いたことは『癖ありまくりやん!』ということです(爆)
そんな中、聞かせていただいたメインシステムでの音、CDをかける度に演奏しているオーケストラと会場がGRFの部屋に現れます。個人的に本当に癖がないと思います。旭化成のDAC開発におけるサウンドマイスターの言葉に『音像が前に出るのが、デジタルノイズの影響です。それを減らすと、音像が奥に引っ込んでいく。本来は、奥まで音場が存在するのに、デジタルノイズの悪影響で、音像が本来ある位置から、前方にせり出してくるのですね。だから、その影響を減らすと、音像は本来の奥のポジションに戻るのです』というのがあります。
このセリフの議論は置いておいて、個人的にとても納得していて実践しているつもりなんですが、目の前に完成形がある!そんな音場が目の前に展開しています。究極に癖を取り除き、音場再現を突き詰めるとこういう世界が現れるのかと心底感動しました。クラシックにおけるオーディオ演奏の最高峰だと感じました。演奏会にもう行かなくてよいので(苦笑)
前回と今回の音の結果は大きな違いがあると思うのですが、数々の細かな違いの積み重ねなのかなと聞いていて感じました。機器やケーブルはそういう方向のものを選んでいるのは前述の通りですが、数千万とかそういうものではないし最新技術満載の、と言ったものでもない、そのポテンシャルを存分に発揮させている『思い』と細かい『調整』、そして実現するんだという『執念』なのだろうと思います。
僕:『爆音でもないのにこの地の底から来る揺らぎない低域が凄いです。この低域が楽器のリアリティを支えている気がします』
GRFさん:『和室とリビングはスーパーツィーターの性能が低域を大きく改善していて、このシステムはスーパーウーファーが高域を改善している構図ですね。面白いでしょう?』
BD30とC30の実験をやり切った結論がここにあるのか!?
いま思えば、和室、リビング、それぞれのスーパーツィーターの有り無しも聞かせていただいた。それぞれの部屋にとてもマッチしていて、スーパーツィーター有りの結論に揺るぎはない。部屋の大きさ等も関係あるのかとハッと気付きました。GRFの部屋における結論に納得です。高域はどこまでも普通に伸び切ります。低域は地面を揺るがします。そしてオケがそこに現れる…
スピーカーの0.01~0.1mmの調整は、スッと触る程度~トントン、のレベルとのことでこれで十分に変わってしまうとのことで、先ほどから俄に信じられない自分がいたので、ちょっとやってもらいました(笑)
GRFさん:『どうです?変わったの気付きますか?』
僕:『(一般人として変わるわけないやないですか!と言いたいけど、ホンマに変わっとる!?マジか!?)
僕:本当に変わりました!信じ難いのですが手に取るように感じました!ビックリです!』
GRFさん:『よかったです。この微調整でこの音になりました。自分でも驚いていますが、みなさんのところでも同じ状況だと思います』
音像や音場が微妙に動くんです。また伸びやかになったり小さくなったり…
これは拙宅でも耳を凝らして地道にやってみなくてはと強く感じました。GRF邸だからという思い込みを捨てることにしました。
とはいえ、本当に楽器が等身大に聞こえるのですが、現実にGRFの部屋で生演奏すると、こうはならないことも想像がつきます。そう、本当に絶妙なバランスで高域と超低域がバランスしているんだと思います。
GRFさん:『前回より低域が出てると思います。再現性もそうですが、オーディオ的快感もあるでしょう?』
僕:『はい… ムチャクチャ気持ちいいです…』
この時、古い例えで申し訳ないのですが、初代ホンダV-TECエンジンの高回転に切り替わった時の胸をすくような快感を覚えていました。分厚い低域トルクでの安定したドライバビリティから踏んだら踏んだ分だけ回転が上がっていったあの感覚、これはレーシングエンジンだ!と感動したあの時を思い出しました。すみません、低レベルな例えで…
CDの後にレコードもかけていただいたのですが、CDとかレコードとかソースの違いがどうこうではなく、そのソースをそのまま再現するメインシステムの圧倒的な様に唸っていました。こういうシステムを構築できれば入力系はそれこそ好みそのもので好きに選択すればいいわけですから。けどGRFさんはレコードの機微も聞いてほしいと不満顔でしたが(笑)
とても濃密な4時間を過ごさせていただきました。
あの後、拙宅の音でいろいろやると当然変化をするのですが、どこの部分がどう変わったかを分析するようにしています。丸くなったりどこかが尖ったりすると、なんか聞きやすく感じてしまったりしますが、いやいやどこが目指している本質なんだっけ?と自問自答しています。0.1mmの奥義は全くまだまだですが、諦めずに変化を理解しようと頑張ってみます。
GRFさん、本当に貴重な機会をありがとうございました!!
by TANNOY-GRF
| 2025-08-11 20:55
| 来たり
|
Comments(1)
アトランティスさん、真夏の暑い中、出張帰りに直行までしていただき有り難うございました。今回は、新たなテレビの部屋のユニコーンも含めて、三者三様の音の違いを聴いていただけました。テレビの部屋のセラミックツィーター効果と、和室の壁が消えて、コンサートホールとうう気が繋がった感覚、それらの調整を通じて見えてきた大きな部屋の大空間。言われる通り、この4年間で違ったのは、微小な音の再現に大変効果がある、フローティングボードの導入だけです。最大の違いは、0.1ミリという想像もつかなかった微小な位置調整が、早朝の無風状態で、逆さ富士が浮かび上がる様に、左右、前後の波紋がきれいに重なった空間上に、あの様なコンサートホールが出現したのです。
この奇跡な様な音をぜひ体験していただくために、この2年間ほど、興味のある方々に解放させていただきました。おかげさまで、いつもコンサートホールに通っておられる方々からは、驚きの声が帰ってきました。2006年に本ブログを開設して、全ての音の変遷を記録してきましたが、わずか01ミリ以下の差で、この様にオーケストラが実物大に現れるとは思いませんでした。
老人力との戦いになりましたが、日暮れる前に何名かのお客様には、その壮大な景色を共有できたと思います。夕暮れ前の穂高連峰や、いつか見たオーロラの空の様に、オーケストラがウチに現れる様になりました。最近の耳の研究では、音楽は装置の精度もありますが、脳が、今までの記憶に照らし合わせて聴いているのだそうです。脳が判断できない音の分野や、経験していない音楽は理解するのに、受け入れるまでに時間がかかります。その意味では老人力の増加は、音楽再生への近道かもしれませんね(苦笑)
この奇跡な様な音をぜひ体験していただくために、この2年間ほど、興味のある方々に解放させていただきました。おかげさまで、いつもコンサートホールに通っておられる方々からは、驚きの声が帰ってきました。2006年に本ブログを開設して、全ての音の変遷を記録してきましたが、わずか01ミリ以下の差で、この様にオーケストラが実物大に現れるとは思いませんでした。
老人力との戦いになりましたが、日暮れる前に何名かのお客様には、その壮大な景色を共有できたと思います。夕暮れ前の穂高連峰や、いつか見たオーロラの空の様に、オーケストラがウチに現れる様になりました。最近の耳の研究では、音楽は装置の精度もありますが、脳が、今までの記憶に照らし合わせて聴いているのだそうです。脳が判断できない音の分野や、経験していない音楽は理解するのに、受け入れるまでに時間がかかります。その意味では老人力の増加は、音楽再生への近道かもしれませんね(苦笑)





