2025年 08月 18日
篠崎史紀と37名の武者たち 真夏の熱いコンサート |
今週はお盆休みでした。通りや公園から人が減り街が静かになる週です。お正月とお盆の時しか休みにならないのは、やはり日本の習わしなのでしょうね。
何も予定の入れていない夏休みの週は、封印している外国の刑事物シリーズを見て夜更かししていました。観はじめると止まりませんから、夏休みの週が唯一のチャンスですね。金曜日の夜には、サントリーホールでのコンサートがあります。明け方まで、連続物のテレビを見ていたので、いささか睡眠不足です。明け方ようやく横になったら目が覚めた時には、11時になっていました。完全に時差ぼけですね。
今日のコンサートは、今年の三月でN響のコンサートマスターを卒業された、篠崎史紀氏とその仲間37名によるベートーヴェン の5番、6番、7番の演奏会です。ベートーヴェン の交響曲を三曲連続して演奏するのも珍しいですが、この38名の構成が凄いのです。演奏者がほぼ全員、在京のオーケストラのコンサートマスターや首席奏者なのです。全員で38名ですから、5・5・4・4・2の構成の20人の弦楽器群と、総勢18名の管楽器と打楽器ですから、弦と管の比率がほぼ1:1です。通常の小編成の室内管弦楽団だと、管楽器は一本づつですが、今日はオーボエ2、フルート2、ピッコロ1、クラリネット2、ファゴット2、コントラファゴット1、ホルン2、トランペット2、そしてトロンボーンが3の大編成用の人数です。特筆すべきはティンパニーで、國内でこの様な素敵なティンパニーを聴いたのは初めてでした。
そればかりか、いつもは何かと弱気なホルンばかり聞かされている日本のオーケストラで、今までの国内のオーケストラのひ弱なホルンと違い、圧倒的な迫力でなっていました。ホルンは新日本フィルの日高さんと読響の上里さんとの二人でした。
最初の曲は、第五番の「運命」です。最初の音が出た瞬間驚きました。最初のアタックの前に風が通り過ぎました。とても5・5・4・4・2の弦楽器から聞こえてくる音ではありません。全員コンサートマスターですから、自信が違います。そしてその迫力は、昔のベルリンフィルやレニングラードの音を思い起こしました。この38名は全員男性です。全員男性の奏者のオーケストラを聴いたのは何年前でしょう。この三十年ぐらい聴いたことのない響きなのです。運命のテーマを弾くときの大迫力は、久しく聴いていない力強い響きでした。文字通り、風が舞い起こります。
第一楽章は完璧です。たった38名で演奏しているとは思えないほどの迫力です。いかにこの第五交響曲が革命的な曲なのかを知らされます。第二楽章では、弦楽器の低音部が今少しあればと思いましたが、たった2名がコントラバスを引いているとはとても思えないほどの力強さです。
第三楽章から、終楽章への広がりは立派で、最後にトロンボーン が3本鳴り響くところでは、背筋がざわざわとしたぐらいの大迫力でした。金管楽器ばかりではなく木管も音が分厚く、大迫力でした。
交響曲三曲ですから、曲間に少し短めですが15分間の休みがあります。廊下はトイレ待ちの人で溢れていました。席に戻ってくると、マロさんが出てきて、オーケストラのメンバーの紹介を始めました。最年少の奏者は、まだ21歳で学生の水野斗希さんです。全日本音楽コンクールで弦楽器部門の第一の逸材です。麻呂さんに勧められて、コントラバスを少し引きましたが、音色・音程が素敵で驚きました。
在京のオーケストラのコンサートマスターと管楽器の首席が、指揮者の束縛を受けず、室内楽の様に相手の音を聴き、自らを没入していくと、これだけのダイナミクスが現れるのだと思いました。ベートーヴェン の曲に限りませんが、オーケストラの旋律は、第二ヴァイオリンが引っ張って行きます。オーケストラの骨格を出すのはヴィオラ・チェロ・コントラバスの内声部から低音楽器のパートです。
この様な自主的で、内声的なバランスは、管楽器群の力も引き出して、日本のオーケストラから聴いたことがない様な迫力あるホルンの音が驚きでした。
第六交響曲は、弦楽器がリードすることも多いので、第五番ほどの驚きはありませんでしたが、フルートとオーボエの音のやりとり、クラリネットのカッコウの音などは感心しました。嵐の部分は弦楽器のバランスが少し弱く感じましたが、逆にティンパニーの迫力が高かったです。
そして、また休憩を挟んで、ベテランの仲間を紹介して、第七番に突入します。素晴らしい演奏です。室内楽的な有機的な響きが深まり、ベルリンフィルの演奏と同じ様に、音が絡まり、深く熱い響きがどんどん湧いてきます。
特に三楽章から終楽章への突入は、間髪を容れず始まります。音の重なりが素晴らしいです。
アンコールもありました。交響曲第一番の終楽章です。エレガントな演奏でした。結局オールベートーヴェン のアルバムでしたね。6時に開演した今日の演奏会、交響曲3曲と、トーク付きでしたから、終わったときは9時を回っていました。久しぶりに大満足な演奏会でした。
ヴァイオリン
篠崎 史紀 (NHK交響楽団 特別コンサートマスター)
石原 悠企 (読売日本交響楽団 首席ヴァイオリン奏者)
大江 馨 (ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団 第2ヴァイオリン首席奏者)
倉冨 亮太 (NHK交響楽団 ヴァイオリン奏者)
小林 壱成 (東京交響楽団 第1コンサートマスター)
戸澤 哲夫 (東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 コンサートマスター)
西江 辰郎 (新日本フィルハーモニー交響楽団 コンサートマスター)
村尾 隆人 (NHK交響楽団 ヴァイオリン奏者)
横島 礼理 (NHK交響楽団 ヴァイオリン次席奏者)
依田 真宣 (東京フィルハーモニー交響楽団 コンサートマスター)
ヴィオラ
川邉 宗一郎 (東京藝術大学大学院修士課程在籍)
佐々木 亮 (NHK交響楽団 首席ヴィオラ奏者)
鈴木 康浩 (読売日本交響楽団 ソロヴィオラ奏者)
中村 翔太郎 (NHK交響楽団 首席代行ヴィオラ奏者)
チェロ
伊藤 文嗣 (東京交響楽団 ソロ首席チェロ奏者)
北口 大輔 (日本センチュリー交響楽団 首席チェロ奏者 )
笹沼 樹 (東京交響楽団 客演首席チェロ奏者)
篠崎 由紀 (SHINOZAKI MUSIC ACADEMY代表)
コントラバス
大槻 健 (Japan National Orchestra コアメンバー/紀尾井ホール室内管弦楽団)
水野 斗希 (Japan National Orchestraレジデントメンバー)
フルート
甲斐 雅之 (NHK交響楽団 首席フルート奏者)
中村 淳二 (NHK交響楽団 フルート・ピッコロ奏者)
林 広真 (東京吹奏楽団 フルート奏者)
オーボエ
荒木 良太 (東京交響楽団 首席オーボエ奏者)
古部 賢一 (新日本フィルハーモニー交響楽団 客員首席オーボエ奏者)
クラリネット
堂面 宏起 (日本フィルハーモニー交響楽団 クラリネット奏者)
松本 健司 (NHK交響楽団 首席クラリネット奏者)
ファゴット
鈴木 一成 (神奈川フィルハーモニー管弦楽団 首席ファゴット奏者)
田作 幸介 (名古屋フィルハーモニー交響楽団 首席ファゴット奏者)
村中 宏 (京都市交響楽団 ファゴット奏者)
ホルン
上里 友二 (読売日本交響楽団 ホルン奏者)
日髙 剛 (新日本フィルハーモニー交響楽団客演首席ホルン奏者)
トランペット
菊本 和昭 (NHK交響楽団 首席トランペット奏者)
重井 吉彦 (読売日本交響楽団 トランペット奏者)
トロンボーン
古賀 光 (NHK交響楽団 首席トロンボーン奏者)
鳥塚 心輔 (東京交響楽団 首席トロンボーン奏者)
野々下 興一 (東京都交響楽団 バストロンボーン奏者)
ティンパニ
岡田 全弘 (読売日本交響楽団 首席ティンパニ奏者)
by TANNOY-GRF
| 2025-08-18 21:18
| 演奏会場にて
|
Comments(3)
ブログの文面から興奮が伝わってきます!
指揮者を置かない室内楽的な演奏はさぞ素晴らしかったでしょうね!
書かれているように、コントラバスがもう1本加われば完璧なバランスになったのでは?と思いますが、演奏の迫力は人数さえ増やせば出せる大音量とは違いますし。
在京の聴衆が羨ましい!
指揮者を置かない室内楽的な演奏はさぞ素晴らしかったでしょうね!
書かれているように、コントラバスがもう1本加われば完璧なバランスになったのでは?と思いますが、演奏の迫力は人数さえ増やせば出せる大音量とは違いますし。
在京の聴衆が羨ましい!
椀方さん 久しぶりに大満足の演奏会でした。ホルンやトランペット、トロンボーン が目一杯、自信持って演奏すると普段聞こえてこない、忖度ばっかりで自己主張しない日本のオーケストラの音になってしまうのだと気付かされました。今回はそういう良い子ちゃんの演奏ではなく、全力投球でキャッチボールをして、相手が思ったところへ予想以上の早い球を返してくれる喜びみたいなものを感じました。
麻呂さん以下の4人の第一ヴァイオリンは、全員コンサートマスターです。一曲ごとに配置が変わっていました。第二ヴァイオリンは私の位置からは背中しか見えないのですが、5人が目一杯の音を出しているのも、弦楽四重奏で、第二ヴァイオリンとヴィオラがやりとりをするあの感じでした。それを受け止めるヴィオラの面々の楽しそうな顔!N響の佐々木さんのあんなに楽しそうな顔は見たことがありません。麻呂さんの関係からでしょうか、N響のメンバーが11人おりましたが、全員、普段と違う本当に楽しそうなお顔をしていました。
女性のいないオーケストラは久しぶりですが、若い頃の、男子寮の生活を懐かしんでいる様な愉快さに満たされていました。一年に一回しか演奏会はないでしょうが、これを目標に上京されるのも素敵です。
先日のメンバーを書き出しました。何かの折にこれらのメンバーのリサイタルがあったらぜひ駆けつけてください。
麻呂さん以下の4人の第一ヴァイオリンは、全員コンサートマスターです。一曲ごとに配置が変わっていました。第二ヴァイオリンは私の位置からは背中しか見えないのですが、5人が目一杯の音を出しているのも、弦楽四重奏で、第二ヴァイオリンとヴィオラがやりとりをするあの感じでした。それを受け止めるヴィオラの面々の楽しそうな顔!N響の佐々木さんのあんなに楽しそうな顔は見たことがありません。麻呂さんの関係からでしょうか、N響のメンバーが11人おりましたが、全員、普段と違う本当に楽しそうなお顔をしていました。
女性のいないオーケストラは久しぶりですが、若い頃の、男子寮の生活を懐かしんでいる様な愉快さに満たされていました。一年に一回しか演奏会はないでしょうが、これを目標に上京されるのも素敵です。
先日のメンバーを書き出しました。何かの折にこれらのメンバーのリサイタルがあったらぜひ駆けつけてください。
外国な大きなオーケストラ、特にコントラバスの音が豊かなオーケストラでは、飽和することの多いサントリーホール でしたが、今回の38名の室内楽的オーケストラにはぴったりのサイズで、初めてホールがいい音だと感じました。これを上野文化会館で演奏しても今回の様な感動は得られないでしょう。音響的には杉並公会堂にもぴったりですが、座席数が1200席だと、興行的には2/3しか得られないから、無理でしょうね。





