2025年 08月 22日
感動があればこそ |
今回のベートーヴェンの交響曲を聴いて、感じたことがあります。オーケストレーションで、音が一つの方向に、時間軸が揃えば、5・5・4・4・2の小編成のオーケストラでも、あれほどのダイナミクス、迫力が生まれてくるのだと。一人一人の響きが重なり、タイミングが合うと音にハーモニー生まれ、使わない弦も共鳴して音が豊かになっていくのです。38名の小編成のオーケストラで、これだけ内声部から充実した音が出てくるのを聞くのは初めてでした。
幕間のマロさんのトークで、21歳の若手の水野斗希さんというコントラバス奏者を紹介していました。音を出しただけですが、音量と音質が今まで聞いたことがないほど整っており、柔らかな音が出ていました。たった二人でも、このスーパーオーケストラの屋台骨を支えられている理由がわかりました。弦楽器奏者がほとんどがコンサートマスターというスーパーオーケストラで、若手二人がコントラバス をまかされているのです。その上のチェロのダイナミックな演奏を支え、こんなヴィオラを聞いたことがないと思うほど音が出ていて、楽しみながら弾いている佐々木さんの笑顔を見ていました。ヴィオラからも太い音がでていました。
モーツァルトやベートーヴェンの時代のオーケストレーションでは、第二ヴァイオリンが、旋律を引っ張っていきます。第二ヴァイオリンが一生懸命弾かれているのは、その背中の動きを見ればわかりますが、木管、金管がとても迫力ある深い音がでていますから、6・6・4・4・2でもよかったぐらいです。そして、第五交響曲と第七交響曲の二楽章は、6・6・4・4・3で、コントラバスが今一本あれば完璧なバランスだと思いました。
マロさんの左上に見えるのRB席で聴いていました。白いマスクをしていますが、わかりますか?(笑)いい席だと思います。木管楽器もバランスが取れていたし、金管楽器、特にホルンは今まで日本のオーケストラ で聴いたことがないほどの大迫力です。弦楽器の人たちも、金管がこのぐらい鳴り渡り、ティンパニーが迫力ある音を出してくれたら、嬉しいだろうと思いました。
音楽的に素晴らしい演奏ですが、音響的にも大満足でした。先日のミューザでの、沖澤のどかと都響の「春の祭典」は風が巻き上がる様な演奏も楽しめましたが、大宮で聴いた日本フィルのマーラー五番も大満足です。今回の38名はそれらの大オーケストラにも負けない音を出していました。
それに比べ、ギラン・アルバート・都響のブラームスは、音が合っていない様な感じがしました。すると、覿面に低音部のが痩せるのです。大きなエネルギーが出ている低音楽器が微妙に音を打ち消し合って、豊かな響きを阻害するのですね。それは弦楽器ばかりでは無く管楽器にも同じ様なこと言えます。今回の様に、室内楽の演奏の様に、お互いを聞き合って、自らの受け持ちのパートを全力投入で弾くと、音が相乗しあって、ハーモニーが生まれ濃密な油絵の様に音や色が重なり合います。
同じことがオーディオの調整にも言えます。ツィーターで高域が出てくると、反対側の低音部が充実していくのです。本来は聞こえないと思っていた最低域の楽器が浮かび上がってくるのには、驚かされます。それも、ほんの少しのコンデンサーの値の変化でも、浮かび上がったり消えたりするのです。
もっと大きな驚きは、ツィーターを導入していない、ハード上はほとんど変化のない「大きな部屋」の音の変化です。この1年間の音の違いは、調整だけなのです。それも左右のSP間の間隔調整だけです。いつもの様にモノラルの音源を流して、中央定位を確かめるだけなのですが、当初は200Hzから20,000Hzまでのほぼ全音域を受け持つTroubadour 80の間隔を整えていました。80の下部をトンと叩くだけで、中央定位の音は動きます。
毎日音を鳴らしていても、聞くとき、その間隔の確認は欠かせません。地球は動いているからでしょうね。地震があったときは、1ミリ〜2ミリぐらい大きくずれていますが、何もない様な日でも0.5ミリぐらいのズレは起こっています。その0.5ミリ程度の微調整を施すのと、そのまま聞くのでは、音楽に迫力、楽しさ、面白さが全く変わります。ほんの少しのずれがお互いのSPの音を打ち消しているからでしょう。
お客さんが来たときは、席に座っていただき、その調整を行います。私が片方のSPの下を軽く、トンと叩くだけで、流れている音楽の雰囲気、勢いが全く変わるのに驚かれます。時には、本当に少し、0.1ミリぐらいの触るだけの違いで、音楽がガラリと変わるのを聴いていただくこともあります。
違いは、左右からモノラルの同じ信号が出ているので、波長の山が合えば、音は大きくはっきりとしますが、少しでもずれていると、お互いの音を打ち消し合う方向に働きます。去年、SP調整のコツを掴んでから、そのズレがどんどんと小さくなってきたのでしょう。
その結果、収録されていた微細な残響音が再生され、収録したホールの音のタイミングが再現されて、コンサートホールの大空間が現れます。一番驚かれるのは、音の奥行き方向への定位です。オーケストラのどのあたりで楽器が鳴っているかが、わかります。一旦定位をすれば、こちら側の聴く位置を変えても、あたかもコンサートホールで、席が変わった時の音の差は出ますが、鳴っている楽器の位置は変わりません。
この状態になると、コンサートホールにオーケストラが出現します。ティンパニーの力強い打撃音も、大太鼓の地を這う低い音も、実際のオーケストラを聴かれている様なバランスで聴くことができます。その驚きと現象を、この1年間、「大きな部屋」を訪れていただいた方々に語っていただいています。本当に不思議ですね。
現在、「大きな部屋=GRFのある部屋」と和室のユニコーン、テレビのユニコーン、大型スクリーンのある部屋のDynaudioConfidence 3とPSD T4で鳴らしている四つの部屋で聴いています。大型スクリーンのある部屋は、最近は滅多に使いません。しかし、この普通の2ウェイSPでも、精密に間隔と、配置位置を揃えると、無指向性のDDDユニットまではいきませんが、音場と大空間、そして楽器の定位が出てきます。
最近の和室では、音場が出てSP自身から音が離れた段階で、それ以上の微調整は行っていません。追加したツィーターが、空間を拡げてくれるからです。周辺の壁の影響を逃れ床も消えて、コンサートホールの空間が現れるのは、オーディオでクラシック音楽を聞かれる方の夢でしたが、調整だけでそれが出現するコツが掴めた様です。
by TANNOY-GRF
| 2025-08-22 19:11
| 演奏会場にて
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