GRFのある部屋

シングルモルトが高いので

ここ何年か、ウイスキーの人気が高まり、全てのブレンドウイスキーの元になるモルトウイスキーが手に入らなくなっています。前よく行っていたウイスキー工場直売所でのモルトウイスキーの販売がなくなりました。コロナ前のインバウンド需要の高まりで、国産ウイスキーのモルトが異常に人気が出て手に入らなくなりました。私は、ハイランドモルト専門なので、国産ウイスキーがなくなってもそれほどは困りませんが、最近の円安と全ての物価の上昇を経て、ウイスキーの価格も大幅に上がってきました。

いつも飲んでいる、ラフロイグの10年も4,000円台から7,000円台と大幅に上がり本当に困っています。一番好きなDalwhinnieなどは箱買いしてあり、ほぼ一生分ありますから困らないのですが、ハイボールで飲むタイプのウイスキーも大変な状況が続いています。

大阪の拠点のそばに、昔ながらの洋酒専門店があり、近くのレストランやバーにお酒を卸している良心的なお店です。業務用のワインは数百円からでもでたくさん揃っていますし、ウイスキーの品揃えも充実しており、車で行った時にまとめて買っています。コロナの時は肝心なお酒を出すところが閉まっていたので、大変な時期を過ごされましたが、その所為か店主は運動不足から最近は少し太り気味です。景気の悪さが現れないと「大将」は笑っていましたが、やはり大変だったのでしょう。

お店に寄ったのは、4ヶ月ぶりぐらいでしたので、今回もウイスキーを供給するつもりで寄りました。すると、3,000円から4,000円台のモルトウイスキーがたくさん並んでいるではありませんか？当人曰く、7000円のウイスキーでは、流石にお店では出にくくなっているので、いろいろ努力して3000円台を仕入れる様にしたそうです。

私も、シングルモルトはまだまだあるので、ハイボールにしても良い様な飲みやすいウイスキーを探していると言ったら、ちょうどこれらの3000円〜がいいと言うことで買ってきました。この店では3000円台ですが、後から調べると普通の店頭では、6,000円から7,000円台でした。お買い得ですね。早速、ハイボールにして飲んでみました。常用のダルウイニーなどから比べると、確かにハイボールむきです。次回の大阪行きも3ヶ月後ぐらいにはなりますから、ちょうどいい感じでしょうか？

右の三つです。

あれから、一週間、ハイボールはなかなか美味しくて、ここまですすみました。

お客さんの準備中に

和室は準備万端になりました。私自身、大きな部屋はコンサートホールに行く位置付けなので、普段は和室の方で聞いています。最近は、シューベルトの最後の三曲のピアノソナタの聴き比べやドヴォルザークの新世界の聴き比べなどをして楽しんでいました。その和室の音が今までより一段と良くなったので、とても気持ちよく鳴ってきました。

和室のアンプ類はMolaMolaと是枝さんの6336Bppなので、大きな部屋と同じ構成ですが、入力系は石田さん自ら改造していただいた25年も前のMS-1改だし、今一台は、こちらも30年前から愛用している工藤さん改造のCD34改です。MS-Iの方は、Henryさんがチューンアップした、MeitnerのDACと組み合わさっていますが、CD34はサーボ系とアナログボードはとことん改造していますが、光学ピックアップやDAコンバーターは、もとのままです。

よくCDの音は眠たく、SACDの方がいいのでと高いSACD盤をお買いになられている方が多いのですが、現在のCDプレーヤーは、信号をDSDに変換するタイプも多く、CDもSACDも音は変わらないと思います。違うとすれば、SACD用にリマスター時に分かりやすい音に変えているからです。私は、レコードと同じで、初版盤をCDでも集めるようにしています。CDの製版不良で星空があるとか、言われますが私自身一度も見たことはありません。レコードの音に比べて、CDが劣るとか言われている方は、今一度装置全体を見直されるといい音がしていると思います。

インシュレーターを多用されている方も多いのですがいい音を求めて色々な要素を足算されている方は、一度原点に戻られて、そこから引き算をしなおしてみると、やはり色付けがされていたと気がつかれるでしょう。フローティングボードを使ってますますその感を深めました。

お客さんを迎えるにあたって、大きな部屋も問題がないかチェックしました。こちらの部屋で最近変わったのは、ターンテーブルを回している、デーレンネヴィルのモーターの台ぐらいです。以前は間に合わせの台として、DSオーディオのイコライザーを使っていました。高さと大きさが手頃だったからです。

実験中はこの仮置きの台でもよかったのですが、いつもの工作所に製作していただいたのが、こちらです。

この様にターンテーブルに合わせた台を作っていただきました。高さは合わせてありますから、台だけを交換したのが出張前です。

日曜日、お客さんが来られて、和室の音を楽しんでいただき、大きな部屋に移動してから、前後のSPの役割を順番に加えていって違いを説明いたしました。その過程で、フローティングボードが入ってから、初めて前方の音だけで聞いてみましたが、十分に奥行きも再現されているのに驚きました。

和室で、1時間、大きな部屋のCDで1時間半と費やし、最後のレコードをを満を満たしてまわしたのですが、私だけが「？」と言う感じになりました。低音が思ったよりでないのです。出ていないわけではないのですが、Dereneville特有の圧倒的な低音が出ないのです。そうか、モーターの台を変えた時、綿密に1/1000まであっていないからだと思いました。お客さんがいるところで、時間のかかる追い込みはできないので、諦めましたが、一番肝心のレコード音の凄さを味わっていただけなかったのが残念です。

やはり徹底的に追い込まないとこの様な結果になります。お客様が帰ってから、調整方法の取説を今一度最初から読み直し、一つ一つ検証していきました。最初は第一段かの調整で、ストロボの動きがほぼ止まるところまで調整します。それでも、1/100単位で、メモリが一つ違うとストロボがゆっくりと流れ始めます。

そこで、次は微調整に入ります。1/1000の数字まで追い込んでいきます。最初は100目盛り動かしても、ストロボは動いていきます。200〜300と動かしていくとその動きがゆっくりしていきます。今回は「451」と言う数字になって、動かなくなり「452」になると反対方向に微妙に動き始めます。「450」「451」「452」と言う数字を動かすたびに分水嶺が変わります。「451」で落ち着いて、それを記憶させます。

大きなストロボを使うと調整がやりやすくなります。そのストロボに定規をあてて、動かない様に追い込むわけです。そしてそのポイントを覚えさせると、次回からこの数値を再現します。早速変えてみました。本当に不思議ですが、コントラバスの最低弦が一本増えた様に豊かな音に変わっているのです。理由はいろいろ考えられるのですが、この変化は誰にもすぐわかる大きな変化なのです。

ぴったりあったので、準備してあったレコードをかけてみました。深い音が出てきました。お客様にお聞かせできなかったのは残念ですが、また来ていただく理由にはなります。

トルクフルなDCモーターですが、ぴったり合った時の音は格別です。33.3rpmが33.33rpmに精度が変わっただけで、何故こんなに低音が変わるのでしょう？

和室の音がまとまってきました

二月に入って出張も重なったので、オーディオ的な進歩はありませんが、音が落ち着いてきたせいか、安心して音楽に専念できるようになりました。和室にもフローティングボードを入れてから、音のフォルムが良くなり、バランスが取れてきて、どんどんと細かい音も再生できるようになってきました。左右の壁の違いによる音像の動きも、本棚側にボードを置いたら随分バランスが良くなりました。ただのボードを立てかけてあるだけなので、見栄えは悪いのですが、音は安定してきました。

西からの沿岸低気圧から追われるように、雪が降る半日前に、新御殿場から山中湖、富士吉田を通って戻ってきましたが、翌日には、大雪になったようです。土曜日の予定は雪で中止になりました。北関東も大雪で、雪かきをするために大山さんが来られなくなったからです。予定がなくなったので、翌日のお客様に備えて、和室の音をもう一度微調整をして精緻な音も出てくるようにしました。音のバランスは、CD34改を鳴らしてみればすぐわかります。16ビット44.1KHzのままでどこまで分解力が出ているか、音がまとまっているかの試金石になるからです。

横位置にしてからは、音の奥行きは少なくなりましたが、まとまりと厚みは随分と増しました。大きな部屋では、音場が現れるのでスピーカーの位置は消えますが、和室では、左右のスピーカーを中心にして音が広がります。後ろの壁の反射も利用して低域の増強を図るのも、横置き配置ならではです。

それでも、左右の間隔はもちろんの事、壁との距離や、左右の壁からの距離も音の出方に大きく影響を及ぼします。大きな部屋では、強固な床と前面吸音した天井、前方のカーテンの開く具合で、微妙な音場と音質のコントロールを行いますが、小さな部屋では壁の反射の利用が大切です。

ユニコーンは、DDDユニットだけで、ウーファーは使用していません。シンプルなシングルホーンだけが再現できる、ステレオの自然な音が素敵です。45Hz以下は出ていないはずなのに、倍音の再現がいいので、聞いている我々は、低く深い音色が出ていると判断するのでしょう。14ビットなのに16ビット相当を再現している、ノイズシェーピングの技術と同じと言ったら言い過ぎでしょうか？耳は物理的な音だけを聞いているわけでしゃなく、これまでに聞いてきた様々な音の記憶を呼び出しているからでしょう。その意味では同じ音を聞いていてもその人の経験によって全く違う音に聞こえてもいるのです。

あとは、大きな部屋の調整ですが、今日は和室で音楽を聞きましょう！

整理整頓 ③ 新しいテープの整理方法

神戸の出張の帰り、久しぶりにCさんのところへ寄りました。年に、2回ほどはテープを運んだりして伺っているのですが、お部屋に上がったのは久しぶりです。お部屋は6畳ほどですが、いつ行ってもきれいに整頓されています。煎じて飲みたいぐらい見事なお部屋です。

2012年から始めた、膨大な４トラックテープのDSDファイル化を終えて、今回からはいよいよ２トラックテープの本格的なファイル化に取り組もうと、その相談に来たのです。その間、編集用のソフトも長足の進歩を遂げており、PCの演算速度の高速化も相待って、学習したものをどんどんと自分で改造していくAIソフトも普及して来ました。テープヒスはもちろんのこと、会場での暗騒音や、録音時の機器類の電源のハム音の削除など、少し前までは、神業的な技術を必要としていた編集作業を、元の音質をほとんど変えることなくできるようになりました。

今日はその実践方法と音質の差を聞かせてもらいに来たわけです。定番のカラヤンの第九のコントラバスの深い音や、弱音時の会場の暗騒音の低減とS/N比の向上など、いろいろと聞かせてもらいました。ランパルの古い録音も、昨日収録されたような新しい音に蘇ります。国宝級の絵画の損傷を復元するような細かく、膨大な知識を必要とする緻密な修復作業も淡々とこなしていきます。低速の9.5センチのテープのヒスの改善には劇的に効来ます。低速のテープはもともと低音は余裕なので、光カートリッジの出現で、レコードが見事に生き返ったような変化が、ソフトの設定でできるのは、時代の進歩だと思いました。

テープの編集と同じように、どの範囲をどのように修復するか、それは編集する人の耳と腕にかかって来ます。AIだからと安易なお任せではなく、細かなところにいかに気を配れるかが、編集者の力量を問われます。

二人で収集して来た、2トラ38のマスターテープ類や、４トラックテープにダビング時に使用された、４トラックテープ用のマスターテープも沢山あります。それらの雑音と音のバランスを整えて、皆さんにも聴いていただけるような体制づくりの第一歩でもあるのです。テープレコーダーは、機器のメンテナンスも部品の確保も大事ですが、何よりも優先するのは、優秀なテープの入手です。

コロナ禍でも、CD、SACD、光カートリッジ、リニアトラッキングアーム、トルクフルな駆動用モーター、そして強力なマグネットを使ったラック類とフローティングボード、それらの開発と導入で音質は飛躍的に向上して来ました。また、ハードの充実も大事ですが、一番大事なのは、音源であるソフトの確保とそのメンテナンスです。緻密で根気と時間はかかるけれど、実物に触れられる喜びもあるのです。

久しぶりに鳴らした大阪のハートレーですが、相変わらず悠々とした響きに、心が癒されます。最近は音楽も含めて、低音で勝負してくる曲が少なく、緊張を強いられ流曲なのは残念です。Cさんと杯を重ねながら、ちあきなおみの演歌を聞いてますますその感を深くしました。

2011年の東日本大震災の時に大阪に来て、この12年間で、外の景色は一変しました。目の前にも、その向こうにも40階以上の高層マンションが、文字通り林立したのです。新御堂を大阪に向かって南下する時、淀川の向こうの景色が一変しましたね。その高いビル群の上を、豊中の空港に降りてくる飛行機が掠めていきます。その様子は、逆に大阪らしい風景ですが、東京も南風の時に新宿、渋谷の直上を２列降りてくるようになりました。三年間のコロナ禍を過ぎたら、トンネルの向こうのように世界が変わっていました。

今日の東京は久しぶりの雪です。

整理整頓 ② 倉庫や蔵の重要性

大昔、母方の祖母の実家に連れられて行った事があります。小学生から中学生になった頃です。典型的な田舎の山の中の大きな家で、蔵が何個もありました。代々のもの大事なものを収蔵しておくスペースがあったのです。都会の家はそのような余裕がないので、断捨離などと言う残酷なことを言っているのです。母方の田舎は富山県で、今でも家の大きさは日本一だそうです。砺波の山居村を見ても、大きな家々が、農家の暮らし用に用途を分けて存在しているのがわかります。収蔵する蔵が何個もある、世代を経た作りです。

都会の家の一番の問題は、そのスペースがない事です。都会と田舎の一番の違いはそのスペースの差でしょう。富山の親戚がうちに来る度に、こんな狭いところに住んで「きのどくに〜」といつも言われました。田舎のうちを訪れると一番の違いは、その収容能力でしょうね。現在では、田舎の暮らしも都会と同じような既製の住宅が主流になって来ました。北海道の車窓から見ていつも思うのは、広大な敷地があるのに小さいな住宅が集合して建ててあり、その大きさが一定な事です。農家と違って、一般の住宅では固定資産税の税率が違うからでしょう。

都会に限らず、今日本中で空き家が増えています。壊して空き地にすると、途端に税金が数倍かかる仕組みになっているからです。夜歩くとすぐにわかりますが、空き家が本当に多くなっています。中には、夜は、ぼんやりと灯りだけを付けている家もありますが、ほとんどは真っ暗ですからすぐにわかります。それらを改造して、スペース貸をすればいいのですが、事業にするとすぐ税金の問題がかぶさって来ます。

都会の人の本当の不幸は、その余裕が許されなく、世代を超えて受けつがれていくべき物さえ、場所がないという理由で捨てられてしまう事です。よく田舎の蔵を開けて、美術品などの掘り出し物がないかと探索する番組がありましたが、本来は、どこの家でも倉庫を作るべきだと思うのですが、、

一般の家を倉庫に使うと、部屋の大きさが小さいので、どうしても置き方が制限されてしまいます。また家は使っていないと、湿気がこもり家がダメになっていきます。家は使わないと、どこからか埃が入って来ます。都会の空気がいかに汚れているかがわかりますね。人がたくさん住み、埃の元になる繊維類を着ているのと、車の通行が多く、その煤塵やタイヤが減ってホコリを作っているのでしょう。

今日のお昼頃です。曇りですけど暖かかったです

茅野の家で一番驚くのは、床にほとんど塵やホコリがない事です。湿気がないきれいな高原地帯の気候も影響しているのでしょう。都会では考えられない空気の差です。普段使わないものは置けるのですが、手元に置いていないと、何かを思いついて調べ物をしようと思っても、行くのに二時間以上かかるのでは本当に保管するだけです。最近は、関西方面にいくのに新東名を使っているので、茅野に寄れる機会も少なくなりました。

近くの空き家を利用した、保管スペースがあればいいのですが、不特定多数の人が出入りする作りではないので、防犯や防火の観点からも実際には難しいのでしょう。また、毎月保管料を払っても、置いておく価値があるかも問われます。最終的にはその人の価値観に行き着きます。レコードの大量処分や古本屋や骨董品屋の存在意義もわかって来ます。長年かかって集めて来た貴重なレコードも、家族には、ただのゴミにしか見えないのかもしれません。ご本人が亡くなるとすぐに処分される書籍やレコード類の段ボールが積み重ねられているの見るのは忍びません。それを目当てに毎朝開店と同時に押し寄せる常連と呼ばれる人たちにも同じことも感じるのです。

常連さんたちも、めぼしいレコードを狙っています。オリジナル版への買い替えもあるでしょうが、置き場所がないので、より価値の高い版への買い替えを勧めているのでしょう。引退された方も増えていきますし、時間がありますから事前の調査も十分なのでしょう。そして、毎朝のようにご出勤されて入れ替え戦に励まれているのです。それも、収納場所が無いからです。

一方、お店にとってみれば、大量にプレスされた有名なレコードの初版盤は、500円で出しても利益確保の換金化ですから、内容や価値ではなく、"遠くの親戚より近くの他人状態"なのでしょう。それらの大量に出回る有名レコードは、それだけ大量に作られたからですね。希少価値という観点から見ると、クレンペラーより高いセルのSAXのレコードとでも言えばお分かりでしょうか。その意味でカラヤンのレコードの価値が上がらないのは、助かりますが。

音楽好き、オーディオ好きの男の子は沢山いました。今でも付き合っている学生時代の友人も何人もいるぐらいですから、どの学校でも、同じ趣味を持っている子は必ずいましたから、確率から言っても50人や100人に一人は、レコードマニアでしょう。これから大きな世代交代が起こっていきますから、700万人いる団塊の世代だけでも、70人に一人なら10万人もいるのです。男の子もまだ同数近く生きていますから30万人からレコードは出てくるのです。それに対して需要する人口は少ないでしょうから、一部のレコードをのぞいて、500円状態は続くでしょうね。

そして、あるときから需要と供給のバランスが崩れて、小林秀雄の全集本のように市場に溢れて、需要も減って最後は100円本状態になるのです。ほとんどの本は、100円の価値もなくなるのです。我々には悲しいのですが。断捨離という言葉の残酷さがわかって来ますね。レコードや本の価値は内容ではなく、需要と供給なのです。